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Step4 辿る歩みはどこに至る…?
フラグとは、回収されるものでして……
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入ってきたのは、三十代半ばといった風貌の男性だ。
ワイルドに遊ばせたやや長髪の癖っ毛に、少々ごつめのアクセサリー。
何より目を引くのは、無駄に広く開いたシャツから覗く立派な胸板。
なんていうか、ちょいワルなチャラ親父といったイメージを抱かせる人である。
「うっへー、ゼクじゃん。何しに来たのー?」
「おいおい、随分と嫌そうな声を出すじゃねぇか。商会に拾ってくれたばっかの時は、ものすごーく優しかったのに。」
「そりゃ、あの時は五大魔族の一人だなんて知らなかったからね。」
ゼグリュオス・ドラジオン。
瘴気と雷を巧みに操る、魔王を筆頭とした五大魔族の末席に座していた奴だ。
正直、彼が魔族だということは拾った時から知っていた。
自分も勇者の使徒になってから分かるようになったのだが、人間に紛れて暮らす魔族は存外に多い。
ただ、擬人化が上手い魔族ならまだしも、そうじゃない魔族は頑張って擬人化しても、肌が変わった色になったり発音が舌足らずになったりという不都合が生じてしまう。
そして、そういう不都合は人間たちに疎まれやすく、彼らは人間世界に馴染めずにいた。
魔族=絶対悪というわけでもあるまいし、誰も使わないなら遠慮なく引き込みましょうとも。
そんなお気楽思考で善人だと判断できた魔族を商会に誘って生活のフォローをしていたら、ある時に従業員の一人から相談を受けた。
自分と同じように、行き場がなくて困っている仲間がいる。
絶対に損はさせないから、今度オープンする支店を自分に任せてもらい、仲間たちを支店の従業員とすることを認めてくれないか。
相談内容はそんなところ。
そして、行き場がない彼の仲間たちを保護していたのがゼクだった。
さすがに魔族オンリーの支店はリスクが高いと思い、自分の目が届く本店の一部署を任せることにしたんだけど、ゼクの手腕はお見事の一言に尽きた。
おかげで、商会の規模が想定の倍になってしまった。
現在は魔領との境近くの町で重宝されている瘴気避けのアイテムを開発したのも彼である。
そうやって仕事仲間として親交を深めていたゼクの正体を知ったのは、つい一年前のこと。
ゼグリュオスとして自分たちの前に立ちはだかった彼にノクスがとどめを刺す間際―――
『店で待ってるぜ、オーナー。』
自分にだけ密やかに届けられた一言に、どれだけ戦慄させられたことか。
商会が壊滅させられていることも覚悟で店に戻ったら、ゼクは何をするでもなく、文字どおりそこで待っていただけだった。
そこで告げられたのが、彼がスパイとして五大魔族に潜り込んだ穏健派のリーダーであるという事実。
そして、表向きは死んだことになった今、どんな協力も惜しまないという共同戦線の提案だったのだ。
逡巡した末に、自分はゼクの提案を受け入れた。
躊躇いはあったが、数年かけて積み上げてきた信頼を取ったのだ。
結果として、あの選択は正しかった。
魔領と魔王の身辺に精通していたゼクの情報は価値が高く有益だったし、瘴気を操る彼の守りがついたことで、自分たちは瘴気の影響を全く受けなくなったのだ。
しかもこいつ、実は魔王より強いでやんの。
よくもまあ実力を隠して五大魔族の末席程度に収まっていたもんだ。
「どうなの、そっちは。過激派の残党処理、上手くいってる?」
「おお。ジノンが頑張ってるぜ。」
「いや、じじい。お前が働けよ。仮にも新魔王でしょうが。」
「まだまだ若いくせに隠居生活をしてるお前にゃ言われたくないな。」
カラカラと笑ったゼクは、当然のように向かいの席に座ってきた。
「まあ、今のは冗談として…。実際のところ、お前らには感謝してんだ。お前らが魔領に住んでることがいい抑止力になって、残党どもが魔領を出たくても出られないでいる。」
「あー、なるほど…。そういや、残党たちが〝とりあえず人間どもを殺れば魔族の時代が来るんだー〟って暴走しそうになってるって、前に嘆いてたっけ。」
「そう、それだ。頭も幹部も死んだから、各々が好き勝手に暴れてんだ。フィルたちにあっさりと潰されておいて、何が魔族の時代なんだか。これだから、過去の栄華にすがってばかりの脳筋は嫌なんだよ。」
「さっさとそいつらをねじ伏せて、帝国との同盟交渉を進めなよ? ゼクたちのことはしっかりと報告書に書いておいたけど、僕たちが生きてるうちじゃないと効果がないから。」
「ま、善処するわ。でな、ようは何が用件だったかっていうと―――」
ゼクが本題に入ろうとした、まさにその瞬間のことだ。
とんでもない爆発音と共に、大地ごと家が揺れたのは。
「あー…。話す前に、用件の方から出向いてきちまったわ。」
「この疫病神が…っ」
ペロリと舌を出してそう告げるゼクに、フィレオトールは頭痛をこらえるように額を押さえるしかなかった。
ワイルドに遊ばせたやや長髪の癖っ毛に、少々ごつめのアクセサリー。
何より目を引くのは、無駄に広く開いたシャツから覗く立派な胸板。
なんていうか、ちょいワルなチャラ親父といったイメージを抱かせる人である。
「うっへー、ゼクじゃん。何しに来たのー?」
「おいおい、随分と嫌そうな声を出すじゃねぇか。商会に拾ってくれたばっかの時は、ものすごーく優しかったのに。」
「そりゃ、あの時は五大魔族の一人だなんて知らなかったからね。」
ゼグリュオス・ドラジオン。
瘴気と雷を巧みに操る、魔王を筆頭とした五大魔族の末席に座していた奴だ。
正直、彼が魔族だということは拾った時から知っていた。
自分も勇者の使徒になってから分かるようになったのだが、人間に紛れて暮らす魔族は存外に多い。
ただ、擬人化が上手い魔族ならまだしも、そうじゃない魔族は頑張って擬人化しても、肌が変わった色になったり発音が舌足らずになったりという不都合が生じてしまう。
そして、そういう不都合は人間たちに疎まれやすく、彼らは人間世界に馴染めずにいた。
魔族=絶対悪というわけでもあるまいし、誰も使わないなら遠慮なく引き込みましょうとも。
そんなお気楽思考で善人だと判断できた魔族を商会に誘って生活のフォローをしていたら、ある時に従業員の一人から相談を受けた。
自分と同じように、行き場がなくて困っている仲間がいる。
絶対に損はさせないから、今度オープンする支店を自分に任せてもらい、仲間たちを支店の従業員とすることを認めてくれないか。
相談内容はそんなところ。
そして、行き場がない彼の仲間たちを保護していたのがゼクだった。
さすがに魔族オンリーの支店はリスクが高いと思い、自分の目が届く本店の一部署を任せることにしたんだけど、ゼクの手腕はお見事の一言に尽きた。
おかげで、商会の規模が想定の倍になってしまった。
現在は魔領との境近くの町で重宝されている瘴気避けのアイテムを開発したのも彼である。
そうやって仕事仲間として親交を深めていたゼクの正体を知ったのは、つい一年前のこと。
ゼグリュオスとして自分たちの前に立ちはだかった彼にノクスがとどめを刺す間際―――
『店で待ってるぜ、オーナー。』
自分にだけ密やかに届けられた一言に、どれだけ戦慄させられたことか。
商会が壊滅させられていることも覚悟で店に戻ったら、ゼクは何をするでもなく、文字どおりそこで待っていただけだった。
そこで告げられたのが、彼がスパイとして五大魔族に潜り込んだ穏健派のリーダーであるという事実。
そして、表向きは死んだことになった今、どんな協力も惜しまないという共同戦線の提案だったのだ。
逡巡した末に、自分はゼクの提案を受け入れた。
躊躇いはあったが、数年かけて積み上げてきた信頼を取ったのだ。
結果として、あの選択は正しかった。
魔領と魔王の身辺に精通していたゼクの情報は価値が高く有益だったし、瘴気を操る彼の守りがついたことで、自分たちは瘴気の影響を全く受けなくなったのだ。
しかもこいつ、実は魔王より強いでやんの。
よくもまあ実力を隠して五大魔族の末席程度に収まっていたもんだ。
「どうなの、そっちは。過激派の残党処理、上手くいってる?」
「おお。ジノンが頑張ってるぜ。」
「いや、じじい。お前が働けよ。仮にも新魔王でしょうが。」
「まだまだ若いくせに隠居生活をしてるお前にゃ言われたくないな。」
カラカラと笑ったゼクは、当然のように向かいの席に座ってきた。
「まあ、今のは冗談として…。実際のところ、お前らには感謝してんだ。お前らが魔領に住んでることがいい抑止力になって、残党どもが魔領を出たくても出られないでいる。」
「あー、なるほど…。そういや、残党たちが〝とりあえず人間どもを殺れば魔族の時代が来るんだー〟って暴走しそうになってるって、前に嘆いてたっけ。」
「そう、それだ。頭も幹部も死んだから、各々が好き勝手に暴れてんだ。フィルたちにあっさりと潰されておいて、何が魔族の時代なんだか。これだから、過去の栄華にすがってばかりの脳筋は嫌なんだよ。」
「さっさとそいつらをねじ伏せて、帝国との同盟交渉を進めなよ? ゼクたちのことはしっかりと報告書に書いておいたけど、僕たちが生きてるうちじゃないと効果がないから。」
「ま、善処するわ。でな、ようは何が用件だったかっていうと―――」
ゼクが本題に入ろうとした、まさにその瞬間のことだ。
とんでもない爆発音と共に、大地ごと家が揺れたのは。
「あー…。話す前に、用件の方から出向いてきちまったわ。」
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