35 / 125
Step4 辿る歩みはどこに至る…?
底のない深みへ
しおりを挟む(こいつはもう!!)
ノクスは、たまらずベッドを殴りそうになる衝動を寸でのところでこらえた。
ちょっと待ってくれ。
さっき起きてから、フィルの様子がおかしいんだが!?
おれが眠っている間に、一体何があった!?
こいつは気付いているのだろうか。
さっきのキスで、初めて自分から舌を絡めてきたぞ?
かと思えばキスが嬉しいと言ってきたり、そんな可愛い姿を見せてからに。
普段、体がしんどいからセーブをかけてくれとあんなに頼んでくるくせに、まためちゃくちゃにされたいのか!!
「フィル……自分で誘ってるって認めたんだからな? 今日は、どうなっても文句言うなよ?」
「う……は、はい……」
一度肩を震わせたフィレオトールは、すぐに全身から力を抜いた。
今日ばかりは自覚がある。
どんなに激しく抱かれたとしても、それは自分がノクスの指摘を認めたから。
それに、今日はどこかでノクスに深く触れてほしいと思う自分がいるから……
のしかかってくるノクスの体重を感じると、なんだか胸が高鳴る。
この時の自分は、再び迫ってきたノクスの唇を自分から迎え入れにいっていたかもしれない。
「はう……あっ……」
互いの熱い舌が絡み合って、いつもと違う感覚がなんだったのかを知る。
いつも以上に気持ちいいのだ。
ノクスと直に触れ合っているだけで、とても心地いい。
その息遣いや仕草からノクスの気持ちが伝わってくることが嬉しくてたまらない。
触れられるほどに、このぬくもりがもっと欲しくなる。
誰かを強く求めることが、こんなにも強烈な渇望と快感を生むなんて知らなかった。
「んあっ!」
ちょっと腰にノクスの手が触れただけ。
たったそれだけのことで、体が大きく跳ねてしまった。
「お……おいおい…。マジで、今日のお前どうした…?」
さしものノクスも狼狽える。
「わ……分かんない……」
ゆるゆると首を振るフィレオトールの瞳は、すでに涙で潤んでいた。
「なんか、今日……ちょっと触られるだけで無理かも……」
体も気持ちも、理性の言うことを聞かない。
早く……
もっと……
脳内で、そんな欲求が暴れ回っている。
こんなにも苛烈な衝動なんて知らないよ……
「ま、待った待った! 今日のお前、本気でやばい! おれの理性もはち切れる…っ」
いつもなら問答無用で攻めてくるはずのノクスが、慌てて身を引いていった。
何度も深呼吸を繰り返したノクスが、もう一度覆いかぶさってくる。
しかし、彼から与えられたのは羽が触れるような軽さの額へのキスだけだった。
「さすがに、今日はやめよう。一回楽にはしてやるから、そしたらもう寝ろ。」
「え……でも、そしたらノクスが……」
「まあな! すっげー生殺しだけだけどな!!」
衝動をこらえるように奥歯を噛み締めるノクスは、次に大きく息をついて優しく頭をなでてくれた。
「さすがに、今日は優しくしてやれる自信がない。ただでさえおれの気持ちで振り回してるんだから、こういう時はできるだけ痛くないようにしたいんだよ。いつも無理させちまうけど、これでもおれなりに大事にしてるつもりなんだ。」
真摯に告げられた言葉。
自分を見つめる愛しげな表情。
それが、心を激しく揺さぶる。
言われなくても、大事にされていることなんて知っている。
思い出した過去の数々で、ノクスはいつだって自分のことを第一に考えて行動してくれていた。
今の話を聞いて、出会った時からずっと彼に深い愛情を注いでもらえていたことも分かった。
ノクスの人生を一番独占しているのが自分だってことは、彼の言動の全てが物語っているじゃないか。
(―――ああ…。もうだめだ……)
分かった。
気付いてしまった。
どうして、今になってノクスに触れられるのがこんなに嬉しいのか。
まるで、底のない深みに落ちていくようだ。
理性も本能も、何もかも―――……
これまで、ずっと彼に背中を預けてきた。
傍にいて守ってやると約束してくれたその背中に、もたれかかり続けてきたんだ。
そんな背中が急に振り向いてきたら、当然だけどバランスを崩して、その胸に倒れ込むしかなくて。
今さら離れることなんてできないのに、優しく手を伸ばされて……
早く同じところまで落ちてこい、なんて……
大きくて温かい胸の中に招き入れられたら、もう―――
「ノクス……」
フィレオトールは、ゆっくりとノクスの首に手を回す。
突然胸の奥で花開いた気持ち。
それはとどまることを知らず、あっという間に心を満たして外にあふれ出してしまう。
「―――――大好き。」
19
あなたにおすすめの小説
捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~
水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。
死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!?
「こんなところで寝られるか!」
極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く!
ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。
すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……?
「……貴様、私を堕落させる気か」
(※いいえ、ただ快適に寝たいだけです)
殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。
捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
異世界転生した双子は今世でも双子で勇者側と悪魔側にわかれました
陽花紫
BL
異世界転生をした双子の兄弟は、今世でも双子であった。
しかし運命は二人を引き離し、一人は教会、もう一人は森へと捨てられた。
それぞれの場所で育った男たちは、やがて知ることとなる。
ここはBLゲームの中の世界であるのだということを。再会した双子は、どのようなエンディングを迎えるのであろうか。
小説家になろうにも掲載中です。
冤罪で追放された王子は最果ての地で美貌の公爵に愛し尽くされる 凍てついた薔薇は恋に溶かされる
尾高志咲/しさ
BL
旧題:凍てついた薔薇は恋に溶かされる
🌟第10回BL小説大賞(2022年)奨励賞。2025年11月アンダルシュノベルズより刊行🌟
ロサーナ王国の病弱な第二王子アルベルトは、突然、無実の罪状を突きつけられて北の果ての離宮に追放された。王子を裏切ったのは幼い頃から大切に想う宮中伯筆頭ヴァンテル公爵だった。兄の王太子が亡くなり、世継ぎの身となってからは日々努力を重ねてきたのに。信頼していたものを全て失くし向かった先で待っていたのは……。
――どうしてそんなに優しく名を呼ぶのだろう。
お前に裏切られ廃嫡されて最北の離宮に閉じ込められた。
目に映るものは雪と氷と絶望だけ。もう二度と、誰も信じないと誓ったのに。
ただ一人、お前だけが私の心を凍らせ溶かしていく。
執着攻め×不憫受け
美形公爵×病弱王子
不憫展開からの溺愛ハピエン物語。
◎書籍掲載は、本編と本編後の四季の番外編:春『春の来訪者』です。
四季の番外編:夏以降及び小話は本サイトでお読みいただけます。
なお、※表示のある回はR18描写を含みます。
🌟第10回BL小説大賞での応援ありがとうございました!
🌟本作は旧Twitterの「フォロワーをイメージして同人誌のタイトルつける」タグで貴宮あすかさんがくださったタイトル『凍てついた薔薇は恋に溶かされる』から思いついて書いた物語です。ありがとうございました。
転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜
隍沸喰(隍沸かゆ)
BL
引き篭もりニートの俺は大人にも子供にも人気の話題のゲーム『WoRLD oF SHiSUTo』の次回作を遂に手に入れたが、その直後に死亡してしまった。
目覚めたらその世界で最も嫌われ、前世でも嫌われ続けていたあの落ちぶれた元王族《ヴァントリア・オルテイル》になっていた。
同じ檻に入っていた子供を看病したのに殺されかけ、王である兄には冷たくされ…………それでもめげずに頑張ります!
俺を襲ったことで連れて行かれた子供を助けるために、まずは脱獄からだ!
重複投稿:小説家になろう(ムーンライトノベルズ)
注意:
残酷な描写あり
表紙は力不足な自作イラスト
誤字脱字が多いです!
お気に入り・感想ありがとうございます。
皆さんありがとうございました!
BLランキング1位(2021/8/1 20:02)
HOTランキング15位(2021/8/1 20:02)
他サイト日間BLランキング2位(2019/2/21 20:00)
ツンデレ、執着キャラ、おバカ主人公、魔法、主人公嫌われ→愛されです。
いらないと思いますが感想・ファンアート?などのSNSタグは #嫌01 です。私も宣伝や時々描くイラストに使っています。利用していただいて構いません!
ざまぁされたチョロ可愛い王子様は、俺が貰ってあげますね
ヒラヲ
BL
「オーレリア・キャクストン侯爵令嬢! この時をもって、そなたとの婚約を破棄する!」
オーレリアに嫌がらせを受けたというエイミーの言葉を真に受けた僕は、王立学園の卒業パーティーで婚約破棄を突き付ける。
しかし、突如現れた隣国の第一王子がオーレリアに婚約を申し込み、嫌がらせはエイミーの自作自演であることが発覚する。
その結果、僕は冤罪による断罪劇の責任を取らされることになってしまった。
「どうして僕がこんな目に遭わなければならないんだ!?」
卒業パーティーから一ヶ月後、王位継承権を剥奪された僕は王都を追放され、オールディス辺境伯領へと送られる。
見習い騎士として一からやり直すことになった僕に、指導係の辺境伯子息アイザックがやたら絡んでくるようになって……?
追放先の辺境伯子息×ざまぁされたナルシスト王子様
悪役令嬢を断罪しようとしてざまぁされた王子の、その後を書いたBL作品です。
完結|ひそかに片想いしていた公爵がテンセイとやらで突然甘くなった上、私が12回死んでいる隠しきゃらとは初耳ですが?
七角@書籍化進行中!
BL
第12回BL大賞奨励賞をいただきました♡第二王子のユーリィは、美しい兄と違って国を統べる使命もなく、兄の婚約者・エドゥアルド公爵に十年間叶わぬ片想いをしている。
その公爵が今日、亡くなった。と思いきや、禁忌の蘇生魔法で悪魔的な美貌を復活させた上、ユーリィを抱き締め、「君は一年以内に死ぬが、私が守る」と囁いてー?
十二個もあるユーリィの「死亡ふらぐ」を壊していく中で、この世界が「びいえるげえむ」の舞台であり、公爵は「テンセイシャ」だと判明していく。
転生者と登場人物ゆえのすれ違い、ゲームで割り振られた役割と人格のギャップ、世界の強制力に知らず翻弄されるうち、ユーリィは知る。自分が最悪の「カクシきゃら」だと。そして公爵の中の"創真"が、ユーリィを救うため十二回死んでまでやり直していることを。
どんでん返しからの甘々ハピエンです。
不遇の第七王子は愛され不慣れで困惑気味です
新川はじめ
BL
国王とシスターの間に生まれたフィル・ディーンテ。五歳で母を亡くし第七王子として王宮へ迎え入れられたのだが、そこは針の筵だった。唯一優しくしてくれたのは王太子である兄セガールとその友人オーティスで、二人の存在が幼いフィルにとって心の支えだった。
フィルが十八歳になった頃、王宮内で生霊事件が発生。セガールの寝所に夜な夜な現れる生霊を退治するため、彼と容姿のよく似たフィルが囮になることに。指揮を取るのは大魔法師になったオーティスで「生霊が現れたら直ちに捉えます」と言ってたはずなのに何やら様子がおかしい。
生霊はベッドに潜り込んでお触りを始めるし。想い人のオーティスはなぜか黙ってガン見してるし。どうしちゃったの、話が違うじゃん!頼むからしっかりしてくれよぉー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる