こんなスローライフは想定外!~いつの間にか、親友を虜にしてしまっていたようで!?~

うみくも

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Step4 辿る歩みはどこに至る…?

底のない深みへ

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(こいつはもう!!)


 ノクスは、たまらずベッドを殴りそうになる衝動を寸でのところでこらえた。


 ちょっと待ってくれ。
 さっき起きてから、フィルの様子がおかしいんだが!?
 おれが眠っている間に、一体何があった!?


 こいつは気付いているのだろうか。


 さっきのキスで、初めて自分から舌を絡めてきたぞ?
 かと思えばキスが嬉しいと言ってきたり、そんな可愛い姿を見せてからに。


 普段、体がしんどいからセーブをかけてくれとあんなに頼んでくるくせに、まためちゃくちゃにされたいのか!!


「フィル……自分で誘ってるって認めたんだからな? 今日は、どうなっても文句言うなよ?」


「う……は、はい……」


 一度肩を震わせたフィレオトールは、すぐに全身から力を抜いた。


 今日ばかりは自覚がある。
 どんなに激しく抱かれたとしても、それは自分がノクスの指摘を認めたから。


 それに、今日はどこかでノクスに深く触れてほしいと思う自分がいるから……


 のしかかってくるノクスの体重を感じると、なんだか胸が高鳴る。


 この時の自分は、再び迫ってきたノクスの唇を自分から迎え入れにいっていたかもしれない。


「はう……あっ……」


 互いの熱い舌が絡み合って、いつもと違う感覚がなんだったのかを知る。


 いつも以上に気持ちいいのだ。


 ノクスとじかに触れ合っているだけで、とても心地いい。
 その息遣いや仕草からノクスの気持ちが伝わってくることが嬉しくてたまらない。
 触れられるほどに、このぬくもりがもっと欲しくなる。


 誰かを強く求めることが、こんなにも強烈な渇望と快感を生むなんて知らなかった。


「んあっ!」


 ちょっと腰にノクスの手が触れただけ。
 たったそれだけのことで、体が大きく跳ねてしまった。


「お……おいおい…。マジで、今日のお前どうした…?」


 さしものノクスも狼狽うろたえる。


「わ……分かんない……」


 ゆるゆると首を振るフィレオトールの瞳は、すでに涙でうるんでいた。


「なんか、今日……ちょっと触られるだけで無理かも……」


 体も気持ちも、理性の言うことを聞かない。


 早く……
 もっと……


 脳内で、そんな欲求が暴れ回っている。


 こんなにも苛烈な衝動なんて知らないよ……


「ま、待った待った! 今日のお前、本気でやばい! おれの理性もはち切れる…っ」


 いつもなら問答無用で攻めてくるはずのノクスが、慌てて身を引いていった。


 何度も深呼吸を繰り返したノクスが、もう一度覆いかぶさってくる。
 しかし、彼から与えられたのは羽が触れるような軽さの額へのキスだけだった。


「さすがに、今日はやめよう。一回楽にはしてやるから、そしたらもう寝ろ。」
「え……でも、そしたらノクスが……」
「まあな! すっげー生殺しだけだけどな!!」


 衝動をこらえるように奥歯を噛み締めるノクスは、次に大きく息をついて優しく頭をなでてくれた。


「さすがに、今日は優しくしてやれる自信がない。ただでさえおれの気持ちで振り回してるんだから、こういう時はできるだけ痛くないようにしたいんだよ。いつも無理させちまうけど、これでもおれなりに大事にしてるつもりなんだ。」


 しんに告げられた言葉。
 自分を見つめる愛しげな表情。


 それが、心を激しく揺さぶる。


 言われなくても、大事にされていることなんて知っている。


 思い出した過去の数々で、ノクスはいつだって自分のことを第一に考えて行動してくれていた。


 今の話を聞いて、出会った時からずっと彼に深い愛情を注いでもらえていたことも分かった。


 ノクスの人生を一番独占しているのが自分だってことは、彼の言動の全てが物語っているじゃないか。


(―――ああ…。もうだめだ……)


 分かった。
 気付いてしまった。
 どうして、今になってノクスに触れられるのがこんなに嬉しいのか。


 まるで、底のない深みに落ちていくようだ。


 理性も本能も、何もかも―――……


 これまで、ずっと彼に背中を預けてきた。
 傍にいて守ってやると約束してくれたその背中に、もたれかかり続けてきたんだ。


 そんな背中が急に振り向いてきたら、当然だけどバランスを崩して、その胸に倒れ込むしかなくて。


 今さら離れることなんてできないのに、優しく手を伸ばされて……
 早く同じところまで落ちてこい、なんて……


 大きくて温かい胸の中に招き入れられたら、もう―――


「ノクス……」


 フィレオトールは、ゆっくりとノクスの首に手を回す。


 突然胸の奥で花開いた気持ち。


 それはとどまることを知らず、あっという間に心を満たして外にあふれ出してしまう。




「―――――大好き。」



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