こんなスローライフは想定外!~いつの間にか、親友を虜にしてしまっていたようで!?~

うみくも

文字の大きさ
38 / 125
Step4 辿る歩みはどこに至る…?

【こぼれ話】この子、大丈夫かしら……

しおりを挟む

「アイザック。おれはひらめいたぞ。」
「おー、何があったんだー。どうせフィル絡みのことだろー。」


 突然家に押し掛けてくるや否や神妙な面持ちでそう言ってきたノクスに、アイザックは平坦な口調で相づちを打った。


 ノクスに衝撃の告白をされてから二年。
 帰ってくる度に悶絶や発狂を繰り返す友人の姿にもさすがに慣れた。


「最近、剣術の訓練は二人でやることが多いんだけど……」


「おいおい。とうとう教官まで追い出しちまったのか?」


「訓練の手ぬるさに我慢できなくなったフィルが、おれを相手にし始めたんだよ。」


「まあ、オレもお前の師匠にしごかれるようになってから、騎士団の訓練が手ぬるく感じてるな。改めて考えると、エルフの訓練ってやばいんだな。」


「おれも知らなかったわ。……って、本題はそこじゃない。」


 いやいやと手を振り、ノクスはフィレオトールの話に戻る。


「そん時に厨房を借りて作った軽食を食わせたんだけど、フィルが『ノクスが作るご飯の方が美味しい』って可愛く笑ってさー♪」


「はいはい。ノロケはいいから続き。」


「で、その瞬間ハッとしたんだ。今はそういう意味じゃないとしても、フィルが一番好きなのも一番信用してるのもおれなわけだろ? だったら一番を死守しつつ、フィルがよそ見できないようにじわじわと仕込んでいけばいいんじゃないかと思ってな。」


「ええぇ……」


 正直、真剣なノクスには悪いけど少し引いた。


「よそ見できないように仕込むって……あんまり過激なことはやるなよ?」


「過激なこと? 例えば?」


「お前、無垢むくな顔でディープなことを訊いてくるなよ。詳細は伏せるけど、フィルを自分好みにしたいからって、フィルの自由を制限するようなことはするなってことだよ。」


「何言ってんだ、お前。」


 いまいち要領を得ていない様子のノクス。
 これは、今後の二人のためにも道徳の授業が必要かと思ったのだが……


「フィルはフィルのままでおれ好みなんだ。すでに完璧な天使なの。自由を制限するどころか、むしろ今のままのびのびと育ってほしい。邪魔な雑草をむしり取ることはしても、フィルを直接どうこうするわけねぇだろ。おこがましい。」


(この子、このままで大丈夫かしら……)


 別の意味で心配になってしまった。


 恋は盲目とはよく言うが、よそ見できなくなっているのはノクスの方のようで。
 フィルよ、何をどうしたらノクスをここまで病的にできるのかな?


「……お前の気持ちは分かった。じゃあ、具体的にはどうするつもりで?」


「とりあえず、胃袋から掴む。」


「はい…?」


「ふふふ…。フィルの好みを事細かに知っているのはおれだけだからな。そのアドバンテージを活かして、料理の腕を極めようと思ってるんだ。」


「ふーん…?」


「あと、師匠に頼んで個別訓練の難易度も上げてもらわないと。フィルが他の奴を指名しないように、おれは常に一番強くなきゃいけないからな。あとは……」


(あー、なるほど。フィルを自分好みにするんじゃなくて、自分をフィル好みにして甘やかしまくろうってわけだな。)


 最初の物言いが危なかったから心配したが、これはしばらく泳がしてもよさそうだ。


 フィレオトールを直接どうこうするのはおこがましいとまで言ったあたり、好きが逆転して乱暴に走ることはなさそうだし。


 アイザックがそう判断して見守りに徹した結果、料理や武術に加えて所作やマナーにまで詳しくなったノクス。


 護衛どころか執事でも通用するレベルになっていくもんだから、さすがにセレンもノクスの好意が友人や相棒のそれじゃないことに気付いた。


 ただ重大なミスを犯している気がするのが、小さな頃から鍛練時以外はあめ百パーセントで甘やかした結果、肝心のフィレオトールがノクスの好意の意味を履き違えているということ。


『なんか、ヴァリアに行ってからのノクスって、お祖父様にそっくりなんだよねー。』


 こちら、本人の証言です。


 恋は駆け引きなんだからちょっとは引いてみればいいのに、あめを与えすぎて孫を溺愛するおじいちゃんポジションに思われているじゃないか。


 でも、タイミングをずらして色んな面での一番を訊いてみたところ、全ての答えがノクスになっているんだから、ノクスの仕込みは順調に進んでいるわけで……


 これは純愛と言うべきか、紙一重で偏愛と言うべきか。
 話を聞かされるこちらは複雑になるばかりだ。


 ―――そこまでやったんなら、さっさと告白しろよ。


 そう思うようになるまで、あまり時間はかからなかった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転移先で辺境伯の跡継ぎとなる予定の第四王子様に愛される

Hazuki
BL
五歳で父親が無くなり、七歳の時新しい父親が出来た。 中1の雨の日熱を出した。 義父は大工なので雨の日はほぼ休み、パートに行く母の代わりに俺の看病をしてくれた。 それだけなら良かったのだが、義父は俺を犯した、何日も。 晴れた日にやっと解放された俺は散歩に出掛けた。 連日の性交で身体は疲れていたようで道を渡っているときにふらつき、車に轢かれて、、、。 目覚めたら豪華な部屋!? 異世界転移して森に倒れていた俺を助けてくれた次期辺境伯の第四王子に愛される、そんな話、にする予定。 ⚠️最初から義父に犯されます。 嫌な方はお戻りくださいませ。 久しぶりに書きました。 続きはぼちぼち書いていきます。 不定期更新で、すみません。

不遇の第七王子は愛され不慣れで困惑気味です

新川はじめ
BL
 国王とシスターの間に生まれたフィル・ディーンテ。五歳で母を亡くし第七王子として王宮へ迎え入れられたのだが、そこは針の筵だった。唯一優しくしてくれたのは王太子である兄セガールとその友人オーティスで、二人の存在が幼いフィルにとって心の支えだった。  フィルが十八歳になった頃、王宮内で生霊事件が発生。セガールの寝所に夜な夜な現れる生霊を退治するため、彼と容姿のよく似たフィルが囮になることに。指揮を取るのは大魔法師になったオーティスで「生霊が現れたら直ちに捉えます」と言ってたはずなのに何やら様子がおかしい。  生霊はベッドに潜り込んでお触りを始めるし。想い人のオーティスはなぜか黙ってガン見してるし。どうしちゃったの、話が違うじゃん!頼むからしっかりしてくれよぉー!

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる

ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。 アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。 異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。 【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。 αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。 負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。 「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。 庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。 ※Rシーンには♡マークをつけます。

天使のような子の怪我の手当てをしたら氷の王子に懐かれました

藤吉めぐみ
BL
12/23後日談追加しました。 ================= 高校の養護教諭の世凪は、放課後の見回り中にプールに落ちてしまう。カナヅチの世凪は、そのまま溺れたと思ったが、気づくと全く知らない場所にある小さな池に座り込んでいた。 ここがどこなのか、何がどうなったのか分からない世凪に、「かあさま」と呼んで近づく小さな男の子。彼の怪我の手当てをしたら、世凪は不審者として捕まってしまう。 そんな世凪を助けてくれたのは、「氷の王子」と呼ばれるこの国の第二王子アドウェル。 冷淡で表情も変わらない人だと周りに言われたが、世凪に対するアドウェルは、穏やかで優しくて、理想の王子様でドキドキしてしまう世凪。でも王子は世凪に母親を重ねているようで…… 優しい年下王子様×異世界転移してきた前向き養護教諭の互いを知って認めていくあたたかな恋の話です。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

処理中です...