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Step7 旅行なの?仕事なの?新天地は波乱続き!
甘すぎて困ります……
しおりを挟む〝本当の意味で笑ってるフィルを見ること〟
ノクスが一番やりたかったことが、そんなことだったなんて……
パッと頬を染めるフィレオトールに、ノクスは真摯に語る。
「おれは、フィルの傍で全てを分かち合いながら、フィルを守るために生きていこうって……フィルに惚れた自分を受け入れた時に、そう決めた。だからこそ、ヴァリアにいた時は気が気じゃなかったさ。」
そんなことを述べたノクスは、ふと遠くを眺める。
「下心だ思惑だなんだって、誰もが腹に何かを隠して近付いてくるあの世界で、フィルはいつも堂々として相手と張り合ってた。それをすげぇなと思う一方で歯痒かったんだ。護衛として一緒に行動してたって、庶民のおれはああいった場で矢面に立ってやれないからな……」
「でも、その分他のことでたくさん助けてくれたじゃない。」
「そうだとしても、納得はいかなかったんだよ。だって、ヴァリアにいる時のお前は終始毛を逆立てた猫みたいだっただろ? 惚れた奴の心底安らいだ顔を見られないってのは、想像以上にきついもんさ。守るって決めたからには、体だけじゃなくて心も守ってやりたいんだから。」
「………」
そう言われてしまうと、フォローになる言葉が何も浮かばなくなる。
ヴァリアで安らげたことがあるかと問われれば、どんなに楽観的に考えても〝イエス〟とは言えないもの。
「違うんだ、フィル。」
いち早くフィレオトールの憂いを感じ取ったノクスは首を横に。
「なんだかんだ、お前はお前なりにやりたいようにやってたことは分かってる。言ってしまえば、おれが勝手に消化不良でもやもやしてただけだ。疲れたりつらくなった時に一人で対処するんじゃなくて、おれに甘えてくれてもいいのにってさ。」
「……ごめん。そんな風に悩ませてたなんて、全然知らなかった。」
溜め込まずに言ってくれればよかったのに、なんて。
そんな軽々しい発言はできなかった。
ここで大事なことは、ノクスが過去の日々に歯痒さを抱いていたという事実。
自分としては十分に甘えていたつもりだけど、それとは別に事実は事実として真摯に受け止めるべきだろう。
「今さらだな。」
「う…」
「あはは、ちょっと意地悪かったか。まあ、昔のことはいいんだよ。今のお前を見てたら、その時の苦悩なんて帳消しだから。」
そう言うノクスの声は、底抜けに明るい。
「暇だってむくれながらも、今のフィルはすごく安らいだ顔で笑ってくれる。オーナーとしての仕事だって、単純にやりたいからやれそうなんだろ? なら、おれがずっと見たかったもんは、もう見れてる。その上、今は恋人っていうご褒美つきだぜ? こんな最高なことってないだろ。多少の無理を通してでもフィルの傍にい続けてよかったよ。」
傍にい続けてよかった。
その言葉は、しっかりと自分の琴線に触れた。
もう離れていかないでほしいと泣いた自分に、ノクスは手放すつもりなんかないと言ってくれた。
後になってからあれはさすがに重かったかなと不安だったのだけど、これまで一緒にいたことを後悔するどころか、よかっただなんて。
そんなことを言われたら、嬉しくなるじゃないか。
本当に、告白してからのノクスは甘すぎて困る。
どれだけ強力な殺し文句を持っているんだか。
何が恋愛熟練者じゃない、だ。
相手の心を掴んで離さない技術はしっかりとお持ちではないですか。
「なんかずるい…。先にそう言われたら、僕がやりたいことなんて薄っぺらく思えてくるよ。」
どんなに想いを返そうと頑張っても、ノクスが注いでくれる愛の大きさには勝てる気がしない。
完膚なきまでに叩きのめされるとは、こういう気持ちだろうか。
「ん? やりたいことに、薄いも厚いもあるのか? そんな大袈裟に考えるなよ。お前がやりたいことやってんのは、おれのためにもなるんだし。」
「僕だって同じことを考えてたから、ノクスのやりたいことも言ってって言ったんだけど……はあぁ……」
「何故へこむ?」
ノクスは、己の発言がいかにすばらしいかを分かっておられないご様子。
ますます自分の子供っぽさを痛感させられるよう。
別に、ノクスは悪くないんだけどさ。
「ぶぶぶ……」
なんだかちょっと悔しくて、膨れっ面をお湯に沈めたフィレオトールはぶくぶくと空気を吐き出す。
「ほんと、いちいちやることが可愛いな、お前は。」
小さく噴き出したノクスは、フィレオトールの頭をぐるぐると掻き回して笑い声をあげた。
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