72 / 125
Step7 旅行なの?仕事なの?新天地は波乱続き!
チャンスは逃さない男
しおりを挟む
それからまた雲が出てきたので、露天風呂はこのくらいにしようと内風呂へ戻ることに。
「ふう……」
普通に自分で髪を洗ったフィレオトールは、顔に流れてくる水滴を手で払いのける。
「なんか、水の感触が違うなぁ…。ノクスもそう思わない?」
「んー? おれにはよく分からん。」
隣から、あまり興味がなさそうな軽い相づちが。
次の瞬間、なんの前触れもなく視界が揺れた。
「わっ!?」
どうやら、ノクスが椅子を引いてきたらしい。
くるりと椅子を回されて、ノクスに背中を向ける構図へと変えられる。
「何?」
「せっかくの機会だから、こういうのもありかなと思ってさ。」
後ろから石鹸の香りが漂ってきて、背中に泡立ったタオルが当てられる。
どうやら、背中を流してくれるということらしい。
少しばかりこそばゆい感じもしたが、フィレオトールは特に異を唱えることはしなかった。
「そういえば、誰かに洗ってもらうなんて何年ぶりだろ…? 十年は前な気がする。」
「それ、貴族としてはかなりの少数派だぞ。」
「お風呂で回収した髪の毛を売りさばかれたり、ほくろの位置をおしゃべりのネタにされてみな? 一人で入る以外の選択肢がなくなるから。」
「えぐいな…。だから、部屋の掃除とかも自分でやってたのか。しかしまあ……改めて見ると、本当に肌が白いな。出身はおれの方が北のはずだけど、お前の方が圧倒的に白いわ。こっちの服を着たお前がもはや現地民だったからさ、本場の雪国の連中と同じ白さってどういうことなんだって思ってたんだよなぁ……」
「ああ…。確かに、何度か地元の人と間違えられたもんね。」
フィレオトールは自分の両腕を見下ろす。
これまで商会のオーナーとして多くの人と接してきたが、ここまで肌が白い人にはあまり出会わなかった。
それが、ブルペノンに来てからはどうだろう。
透き通るような白い肌に、色素が薄い髪や瞳。
そういった特徴を持った人々がほとんどを占めていたのだ。
誰が観光客かなんて一目瞭然レベル。
正反対とも言える色彩を持つノクスが、ものすごく浮いて見えるほどだった。
そして、ノクスとは対照的に、自分は背景の一部にでもなれそうなくらいにブルペノンの人々に溶け込んでいたのである。
そこでふと、思い出したことが。
「そういえば、カランディア家って北方からヴァリアに流れてきたらしいんだよね。もしかしたら、先祖のルーツはこっちの大陸なのかも。」
「なるほど。どうりであんなに馴染んでたわけだ。」
「僕も、なんだか故郷にでも帰ってきた気分だったよ。ちょっと変な感じだけど。」
「確かに。生まれ故郷より故郷っぽいって、笑っちまうな。」
面白おかしく笑ったノクスの手が、背中から離れる。
次はお湯がかけられるんだろうなと、のんびりそれを待っていると……
「わっ…」
フィレオトールは驚いた声をあげる。
突然、泡にまみれたノクスの手が腹に回ってきたのだ。
「ちょっ……背中だけでいいよ! さすがに子供じゃないんだから!」
「………」
「あれ? ノクス?」
「いやぁ、油断してるところ悪いなぁ……」
ぎゅっと腕に力を込めたノクスが、背中にぴったりと寄り添ってくる。
「おれ、チャンスは逃さない男なんだわ♪」
耳元で囁かれたのは、明らかに何かを企んでいる声だった。
「~~~っ!?」
一瞬で脳内はパニック。
そんな!?
さっきまで、そんな空気全然なかったじゃないですか!!
違和感はあったけど、ノクスに失礼だと思って無視したのに。
やっぱり、ノクスはノクスだった!!
声にならない悲鳴をあげて逃走を図るフィレオトールを、ノクスは満面の笑みで胸の中に閉じ込める。
「残念でした。自分の直感を信じておくんだったな?」
「うわーっ!? ばれてたーっ!!」
「食事の時から、もろに顔に出てたぞ? 可愛かったから、あえて泳がせたけど。そしたら、あっさりと警戒を解いちゃってなぁ?」
「だって! 旅行中はこういうことをしないのかと……」
「ん? じゃあ、家の風呂ではさせてくれるのか?」
「無理ですーっ!!」
「だから、こうしてチャンスを待ってたんじゃないの。」
心底楽しそうなノクス。
また遊ばれた!
全てはノクスの手のひらの上だったのか。
一体、何度このくだりをやれば気が済むんだろう。
でも、ノクスを警戒するなんて、今となっては逆に難しい。
それに、ノクスをずっと警戒しているのはやっぱり申し訳ないし、自分も非常に疲れる。
じゃあ結局、自分は彼に遊ばれるのを容認するしかないのか。
そんな悩みはどうでもよくて、今はとにかく……
「うわーん、騙されたぁ! いやーっ!!」
無駄だと知りつつも、羞恥に耐えられないフィレオトールは、情けない声で喚いてじたばたと可愛い抵抗を続ける。
そんなフィレオトールを見るノクスは、それはもうご満悦だ。
「そういや、これはお前のためとか関係なく、純粋におれがやりたいことだな。」
「あ…」
「気付いたか? お前が何を気にしてへこんでたのかは知らんけど、おれは自分がやりたいことを遠慮なくしてるぞ?」
「ほんとだーっ!?」
思えば、自分に迫ってくるようになってから、ノクスは遠慮なんてしたことがない気がする。
今だって、後ろで活き活きしているのが口調から伝わってくる。
「……って、やりたいことって、もっと他にあるでしょ!? なんでこういうことばっかりなの!?」
「テンパってるお前が可愛いから♪」
「やっぱりドSじゃーん!!」
「ほらほら。そろそろ観念しろ。どうせ、逃げられないんだから。」
その瞬間、ノクスの声がぐっと甘くなった。
「ふう……」
普通に自分で髪を洗ったフィレオトールは、顔に流れてくる水滴を手で払いのける。
「なんか、水の感触が違うなぁ…。ノクスもそう思わない?」
「んー? おれにはよく分からん。」
隣から、あまり興味がなさそうな軽い相づちが。
次の瞬間、なんの前触れもなく視界が揺れた。
「わっ!?」
どうやら、ノクスが椅子を引いてきたらしい。
くるりと椅子を回されて、ノクスに背中を向ける構図へと変えられる。
「何?」
「せっかくの機会だから、こういうのもありかなと思ってさ。」
後ろから石鹸の香りが漂ってきて、背中に泡立ったタオルが当てられる。
どうやら、背中を流してくれるということらしい。
少しばかりこそばゆい感じもしたが、フィレオトールは特に異を唱えることはしなかった。
「そういえば、誰かに洗ってもらうなんて何年ぶりだろ…? 十年は前な気がする。」
「それ、貴族としてはかなりの少数派だぞ。」
「お風呂で回収した髪の毛を売りさばかれたり、ほくろの位置をおしゃべりのネタにされてみな? 一人で入る以外の選択肢がなくなるから。」
「えぐいな…。だから、部屋の掃除とかも自分でやってたのか。しかしまあ……改めて見ると、本当に肌が白いな。出身はおれの方が北のはずだけど、お前の方が圧倒的に白いわ。こっちの服を着たお前がもはや現地民だったからさ、本場の雪国の連中と同じ白さってどういうことなんだって思ってたんだよなぁ……」
「ああ…。確かに、何度か地元の人と間違えられたもんね。」
フィレオトールは自分の両腕を見下ろす。
これまで商会のオーナーとして多くの人と接してきたが、ここまで肌が白い人にはあまり出会わなかった。
それが、ブルペノンに来てからはどうだろう。
透き通るような白い肌に、色素が薄い髪や瞳。
そういった特徴を持った人々がほとんどを占めていたのだ。
誰が観光客かなんて一目瞭然レベル。
正反対とも言える色彩を持つノクスが、ものすごく浮いて見えるほどだった。
そして、ノクスとは対照的に、自分は背景の一部にでもなれそうなくらいにブルペノンの人々に溶け込んでいたのである。
そこでふと、思い出したことが。
「そういえば、カランディア家って北方からヴァリアに流れてきたらしいんだよね。もしかしたら、先祖のルーツはこっちの大陸なのかも。」
「なるほど。どうりであんなに馴染んでたわけだ。」
「僕も、なんだか故郷にでも帰ってきた気分だったよ。ちょっと変な感じだけど。」
「確かに。生まれ故郷より故郷っぽいって、笑っちまうな。」
面白おかしく笑ったノクスの手が、背中から離れる。
次はお湯がかけられるんだろうなと、のんびりそれを待っていると……
「わっ…」
フィレオトールは驚いた声をあげる。
突然、泡にまみれたノクスの手が腹に回ってきたのだ。
「ちょっ……背中だけでいいよ! さすがに子供じゃないんだから!」
「………」
「あれ? ノクス?」
「いやぁ、油断してるところ悪いなぁ……」
ぎゅっと腕に力を込めたノクスが、背中にぴったりと寄り添ってくる。
「おれ、チャンスは逃さない男なんだわ♪」
耳元で囁かれたのは、明らかに何かを企んでいる声だった。
「~~~っ!?」
一瞬で脳内はパニック。
そんな!?
さっきまで、そんな空気全然なかったじゃないですか!!
違和感はあったけど、ノクスに失礼だと思って無視したのに。
やっぱり、ノクスはノクスだった!!
声にならない悲鳴をあげて逃走を図るフィレオトールを、ノクスは満面の笑みで胸の中に閉じ込める。
「残念でした。自分の直感を信じておくんだったな?」
「うわーっ!? ばれてたーっ!!」
「食事の時から、もろに顔に出てたぞ? 可愛かったから、あえて泳がせたけど。そしたら、あっさりと警戒を解いちゃってなぁ?」
「だって! 旅行中はこういうことをしないのかと……」
「ん? じゃあ、家の風呂ではさせてくれるのか?」
「無理ですーっ!!」
「だから、こうしてチャンスを待ってたんじゃないの。」
心底楽しそうなノクス。
また遊ばれた!
全てはノクスの手のひらの上だったのか。
一体、何度このくだりをやれば気が済むんだろう。
でも、ノクスを警戒するなんて、今となっては逆に難しい。
それに、ノクスをずっと警戒しているのはやっぱり申し訳ないし、自分も非常に疲れる。
じゃあ結局、自分は彼に遊ばれるのを容認するしかないのか。
そんな悩みはどうでもよくて、今はとにかく……
「うわーん、騙されたぁ! いやーっ!!」
無駄だと知りつつも、羞恥に耐えられないフィレオトールは、情けない声で喚いてじたばたと可愛い抵抗を続ける。
そんなフィレオトールを見るノクスは、それはもうご満悦だ。
「そういや、これはお前のためとか関係なく、純粋におれがやりたいことだな。」
「あ…」
「気付いたか? お前が何を気にしてへこんでたのかは知らんけど、おれは自分がやりたいことを遠慮なくしてるぞ?」
「ほんとだーっ!?」
思えば、自分に迫ってくるようになってから、ノクスは遠慮なんてしたことがない気がする。
今だって、後ろで活き活きしているのが口調から伝わってくる。
「……って、やりたいことって、もっと他にあるでしょ!? なんでこういうことばっかりなの!?」
「テンパってるお前が可愛いから♪」
「やっぱりドSじゃーん!!」
「ほらほら。そろそろ観念しろ。どうせ、逃げられないんだから。」
その瞬間、ノクスの声がぐっと甘くなった。
5
あなたにおすすめの小説
転移先で辺境伯の跡継ぎとなる予定の第四王子様に愛される
Hazuki
BL
五歳で父親が無くなり、七歳の時新しい父親が出来た。
中1の雨の日熱を出した。
義父は大工なので雨の日はほぼ休み、パートに行く母の代わりに俺の看病をしてくれた。
それだけなら良かったのだが、義父は俺を犯した、何日も。
晴れた日にやっと解放された俺は散歩に出掛けた。
連日の性交で身体は疲れていたようで道を渡っているときにふらつき、車に轢かれて、、、。
目覚めたら豪華な部屋!?
異世界転移して森に倒れていた俺を助けてくれた次期辺境伯の第四王子に愛される、そんな話、にする予定。
⚠️最初から義父に犯されます。
嫌な方はお戻りくださいませ。
久しぶりに書きました。
続きはぼちぼち書いていきます。
不定期更新で、すみません。
天使のような子の怪我の手当てをしたら氷の王子に懐かれました
藤吉めぐみ
BL
12/23後日談追加しました。
=================
高校の養護教諭の世凪は、放課後の見回り中にプールに落ちてしまう。カナヅチの世凪は、そのまま溺れたと思ったが、気づくと全く知らない場所にある小さな池に座り込んでいた。
ここがどこなのか、何がどうなったのか分からない世凪に、「かあさま」と呼んで近づく小さな男の子。彼の怪我の手当てをしたら、世凪は不審者として捕まってしまう。
そんな世凪を助けてくれたのは、「氷の王子」と呼ばれるこの国の第二王子アドウェル。
冷淡で表情も変わらない人だと周りに言われたが、世凪に対するアドウェルは、穏やかで優しくて、理想の王子様でドキドキしてしまう世凪。でも王子は世凪に母親を重ねているようで……
優しい年下王子様×異世界転移してきた前向き養護教諭の互いを知って認めていくあたたかな恋の話です。
不遇の第七王子は愛され不慣れで困惑気味です
新川はじめ
BL
国王とシスターの間に生まれたフィル・ディーンテ。五歳で母を亡くし第七王子として王宮へ迎え入れられたのだが、そこは針の筵だった。唯一優しくしてくれたのは王太子である兄セガールとその友人オーティスで、二人の存在が幼いフィルにとって心の支えだった。
フィルが十八歳になった頃、王宮内で生霊事件が発生。セガールの寝所に夜な夜な現れる生霊を退治するため、彼と容姿のよく似たフィルが囮になることに。指揮を取るのは大魔法師になったオーティスで「生霊が現れたら直ちに捉えます」と言ってたはずなのに何やら様子がおかしい。
生霊はベッドに潜り込んでお触りを始めるし。想い人のオーティスはなぜか黙ってガン見してるし。どうしちゃったの、話が違うじゃん!頼むからしっかりしてくれよぉー!
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる
ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。
アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。
異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。
【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。
αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。
負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。
「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。
庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。
※Rシーンには♡マークをつけます。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる