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Step8 縁切り魔族降臨!? 強制テレパシーで大混乱!
想像以上(頭痛)の結果
しおりを挟む「さーて。あいつら、どんだけボロボロになったかなーっと♪」
翌日も夜がどっぷり更けた頃、ジノンはスキップで幻惑の花園を訪れた。
ちょっとした悪戯心と大半の八つ当たりだが、あの二人がムカつくくらい熱々なのが悪い。
恋人たちが愛し合って育んだ精気を、愛が損なわれず回復できる程度につまませていただく。
そんなささやかな幸せが遠ざかって数ヶ月。
ただでさえ飢えているところに大好物をぶら下げられたら、誰だって飛び付くじゃないか。
そして、それを取り上げられたら、いっそのこと逆方向に暴れたくもなるじゃないか。
……まあ、あの二人は幼い頃からの仲だというし、多少気まずくなっても破局まではいくまい。
自分に聞こえてきた内なる声もいっても、片や〝幸せだなぁ〟とほっこりして、片や〝可愛くて襲いたい〟のオンパレードだったし。
仮に問題が起こったとしても、ド直球の煩悩に当てられたフィレオトールがドン引きするくらいなはずだ。
そういった推測の元、遠慮なく強制テレパシーを押しつけてやったけど……万が一にも破局の危機に陥っていたらどうしよう。
そう思った瞬間に不安になってしまった悪人になりれないジノン。
一抹の意地を掻き集め、無駄に明るい笑顔を張り付ける。
「はあーい♪ しけた面を拝みに来てやったわよー♪」
意気揚々を装ってリビングに乗り込むと―――
「やっと来たあぁぁっ!!」
今か今かと待ち構えていたらしく、フィレオトールとノクスがものすごいスピードでこちらに詰め寄ってきた。
「頼む! 一刻も早く、術を解いてくれ!!」
ノクスが懇願する隣で、フィレオトールもこくこくと頷く。
これは、相当深刻な問題でも起こったのかと思ったのだが……
「このままじゃ、マジでフィルを抱き潰しちまう!」
真っ赤になったノクスが告げたのは、そんなことだった。
「―――はあ?」
想定の斜め四十五度を突き抜けるノクスの発言に、ジノンは眉を寄せて低い声を漏らした。
「心の声まで可愛いってどうよ!? 割と本気でベッドにくくりつけておきたい気分なんだけど!?」
「ちょっと。」
「僕も、このままじゃ常に気持ちがいっぱいいっぱいで、そのうち死んじゃうよおぉ~…。ノクスったら、すぐベッドに行こうとするうぅ~…」
「だから待って?」
ノクスには惚気をぶちかまされ、フィレオトールには泣かれで、ジノンは唐突に襲ってきた眩暈に眉間を押さえた。
「あんたら、なんで余計にラブラブになってんのよ。」
ちょっとはぎこちなくなっているかと思いきや、これは一体どういうことで?
ノクスはともかく、フィレオトールがノクスに引いていない理由が分からない。
……とりあえず、話を聞くか。
眩暈を振り払ったジノンは、完全に参った様子のフィレオトールに目をやった。
「そこのウブっ子フィルちゃん? あんた、こいつの本音になんとも思わなかったわけ?」
前置きなど差し込まず、単刀直入に訊ねる。
「えっと、その……」
問われたフィレオトールは大いに狼狽え、指をもじもじとさせながら深くうつむく。
口では言えないのか、その顔があっという間に耳まで赤く染まる。
次の瞬間、ノクスが無言でフィレオトールに両手を伸ばした。
邪な空気を察知したのか、フィレオトールが慌ててノクスの手を自分のそれでガード。
そのまま、二人は微かな呻き声をあげながら膠着状態に。
だめだ。
話にならん。
早くもそれを察したジノンは、別のところに目を向けた。
「そこの精霊たち。今だけあたしに協力してくれない?」
「いいよー♪」
「面白いものを見せてくれたから、特別ー♪」
さすがは魔族とも仲が良いフィレオトールに張り付いている精霊たち。
一般的な精霊たちは魔族とあらば目の敵にしてくるのだが、彼女たちは魔族への敵対心がかなり低いようだ。
「じゃあ、代わりにあんたらに訊かせて? あのウブっ子、煩悩まみれのあいつの声に耐えられたわけ?」
「んーとねー、最初は引いたみたいだけど、割とすぐに受け入れてたみたーい。」
「ノクスの悲鳴を聞いてた限り、そう思ってもらえることは嬉しいって思ってたみたいだよー。」
「マジかよ。案外フィルの方も重症だったか……」
「あとねー…」
頭痛をこらえるように頭を押さえるジノンの周りで、精霊たちは見たままのことを語り続ける。
「一回距離を置こうってことでノクスが外に逃げたんだけど、フィルが寂しいなんて思ったせいで、十分と経たずに帰ってきちゃった。」
「散々悶絶して、結局ベッドで朝まで仲良くしてたね~。」
「苦肉の策なのか、今日はあえてテレパシーで会話してる。」
「けど、ご覧のとおり! 全然改善できてない!」
「なるほどね……」
すでに頭痛がひどくなるような内容ですこと。
渋い顔で唸るジノンの周囲で、精霊たちはにんまりと笑みを深める。
「面白いから、色々とカウントしてみたの!」
「聞いて聞いて!」
こちらの反応が面白いのか、単純に自分たちの遊びの成果を報告したいのか、精霊たちは口を止めなかった。
「ノクスが思わずフィルを抱き締めちゃった回数五十回!」
「キスしちゃった回数は四十八回!」
「寝室にかっさらおうとした回数二十七回!」
「その内、ベッドまでもつれこんだのは十三回!」
「ちょっと待って? 半分の割合で、ヤる一歩手前じゃないのよ。」
「ちなみに、三十九回床やソファーにのたうち回って、心停止の危機に!」
「逆に、そんだけ発作を起こしてて、よく心臓が止まらなかったわね……」
あの煩悩大臣め、いくらなんでも暴走しすぎだろ。
少しは歯止めが利かんのか。
「もしかして、フィルに関するカウントもしてる…?」
「もっちろん!」
嫌な予感は口に出すもんじゃない。
精霊たちが、さらに活き活きとしてしまった。
「叫んだ回数測定不能!」
「恥ずかしすぎてうずくまった回数六十四回!」
「でも、思わずノクスにすり寄っちゃった回数は四十回!」
「ぽわんと惚けた回数四十六回!」
「こっちもやばいぃ…っ」
報告を聞いた結果、頭痛がさらに増した。
「結局、二人が離れていられた時間は?」
「ノクスが逃げた十分と、お風呂や着替え以外の時はゼロ!!」
「こんのバカップル―――ッ!!」
辛抱たまらず。
叫んだジノンは、フィレオトールとノクスに向かって手をかざした。
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