こんなスローライフは想定外!~いつの間にか、親友を虜にしてしまっていたようで!?~

うみくも

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Step9 今さらの初デートは、何かがおかしいような…?

誕生日プレゼントは―――

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「……あれ?」


 両手に違和感を感じて、フィレオトールはそろそろと手元を見下ろす。


 いつの間にか、両手には赤いリボンが結ばれていた。


「何、これ…?」


 意図が掴めず、ノクスを見つめるしかないフィレオトール。
 そんな彼に対し、ノクスは小さく肩を震わせた。


「ふふふ…。まあこう言ったところで、フィルが何もしてないことを気にするのは分かってんだ。だからな?」


「わっ!?」


 なんの前触れもなくノクスに抱き上げられ、フィレオトールは素っ頓狂な声をあげる。


 ノクスはまっすぐ寝室に向かい、フィレオトールをベッドに寝かせると自身のネクタイを外す。


 そして―――




「さあ。今日は、思う存分研究に付き合ってもらおうか♪」




 両手でネクタイをピンと張り、わくわくとした笑顔を浮かべた。


(ひええぇぇっ! ドSと研究気質の本領発揮だあぁっ!!)


 音にならない声で、フィレオトールは大絶叫。


 聞こえる。
 誕生日プレゼントはお前という名の実験体だよっていう、ノクスの心の声が!!


「あわわわわわっ…」
「んなビビるなって。別に、痛いことをしようってわけじゃねぇんだからさ♪」


「分かってるから怖いんだよぉ! どんだけ泣かせる気なの!?」
「おれが泣かせようとする間もなく、お前から泣き出すくせに。」


「だ、だってぇ!!」
「そうやってビビりながらも、嫌だとは言わないんだな?」


「う…。だって、今日はノクスの誕生日だし……」
「うんうん、満点の答えだ♪」


 非常にご機嫌のノクスは、フィレオトールの額に軽いキスを落とす。
 そして、ずっと握っていたネクタイをフィレオトールの目元に回した。


「え…っ!?」


 視界が闇に閉ざされ、フィレオトールは大いに狼狽うろたえる。


「ノクス!? 今度は何!?」
「目隠し。」


「それは分かるよ!! なんでこんなことを!?」
「よく言うじゃねぇか。目隠しをすると感度が上がるって。」


「ひえ…っ」


 まさか、心の準備をする間でもなく、もう研究スタートですか!?


 現実についていけない頭をどうにか落ち着けて、これから来るだろう試練に備える。


 しかし、すぐにさらなる異変に気付いた。


「あれぇ!? ノクス、もしかして物音とか気配とか消してる!?」


 おかしい。
 視界がさえぎられたならばと聴覚で補おうとするも、耳に何の情報も入ってこない。
 しかも、ノクスの気配すら感じられないのだ。


「おう。精霊の加護のせいか、お前は五感どころか第六感まで鋭すぎるからな。これで、感度に全集中できるだろ?」


「にゃーっ!! 全集中しなくても、十分なのにーっ!!」


「ほーら。そろそろ、わめくのをやめろ。」


 そっと。
 ノクスの指が唇を塞いでくる。
 それで、彼が思った以上に近くにいることを知った。


「うぅ……」


 途端に、緊張でガチガチに固まるフィレオトール。
 その反応にあやしく微笑んだノクスは、フィレオトールの唇に当てていた指を滑らせた。


「ん…っ」


 その指が耳元に差しかかると、華奢きゃしゃな体がびくりと痙攣けいれんする。
 それと同時に、フィレオトールがノクスの指から逃れるように顔を背けた。


「可愛い抵抗だな。」


 暗闇の向こうで、ノクスが微かに笑う声がする。
 耳元から指が離れていって、シャツのえりにかかった。


 ゆっくり、ゆっくりと。
 シャツのボタンが一つずつ外されていく。


「う……ううぅ…っ」


 早くも脳内が沸騰寸前で、フィレオトールは小さく震える。


「本当に、お前はいつまで経っても反応がウブだなぁ…。まあ、おれみたいな人種には美味しいだけだから、全然構わないんだけどよ。」


「あっ…」


 ノクスの手が素肌を滑っていって、背筋に寒気に似た震えが走った。


「ふ……んん…っ」


 なんだろう。
 すごく変な気分だ。


 ノクスの手つきは、いつもより断然に優しい。


 意地悪に色んなところを攻めてくるわけでもなく、触れる部分は一ヶ所だけ。


 それなのに、どこから触れられるか分からないせいなのか、くすぐられるような刺激にいつも以上に体が反応してしまう。


 ノクスが触れる一点だけに、全神経が集中してしまうのだ。


「ふふ、可愛い。」


 柔らかく体のラインをなぞっていた指が、顎先あごさきにかかる。


(あ…)


 これはどういう意味での行為かが分かって、その先を期待する心がざわついた。


 静かに重ねられる唇。


 思わず動きにくい腕でノクスの首にしがみついたのは、彼の体温をもっと近くで感じたかったからなのかもしれない。


 丁寧にじっくりと。
 そんな風に溶かされていく感覚は、嫌いじゃなかった。


「フィル。」


 散々たかぶらされて、思考がどろどろに溶けてきた頃、ふいにノクスが口を開いた。


 彼はこちらの左手を取ると、そっとそこに口づけを落とす。


「ありがとう。生まれてきてくれて。そして、おれと出逢ってくれて。」
「!!」


 余計な理性が取っ払われた後だったからかもしれない。
 その言葉は、心の奥底に直接響いてくるようだった。


「フィルと出逢えて、おれは本当に幸せだ。」


「ノクス……」


「周りが魅力作用のせいで過剰反応をして、それで自分の存在が怖くて不安になったとしても、これだけは忘れないでくれ。少なくとも、フィルは今目の前にいるおれを幸せにしてるって。」


「………っ」


 この時胸の奥から込み上げてきた想いを、どう表現すればいいのだろう。


 嬉しいなんて言葉じゃ到底足りない。
 幸せなんて言葉でも、この想いは形容しきれない。




「フィル―――愛してるよ。」




 仕上げの言葉がささやかれた瞬間、感情の留め金が弾け飛んだような気がした。

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