98 / 125
Step10 求婚事件で破局の危機!?
お怒りオーナー乱入!
しおりを挟む「こんの、馬鹿ーっ!!」
突然そんな罵声が響いたかと思うと、腰にとんでもない衝撃が走る。
その勢いに負けて、ノクスは思い切り前にずっこけた。
「へっ!? はっ!? フィル!?」
後ろを振り向いたノクスは、目を白黒させる。
「ノ~ク~ス~? 一体、いつまでここで油を売ってるつもりかなぁ~?」
ノクスを蹴り飛ばしたフィレオトールは、満面の笑みでそう訊ねる。
そんな恋人に、ノクスはパニックのまま息を飲んだ。
なんでお前がこんな所にいるんだ?
というか、そのフォーマルな格好はなんだ!?
そういう明らかなお貴族様の衣装を外でするのは嫌いだったよな!?
ってか、やばい!
オーラが完全に怒ってる!!
しかも、あのフィルが自分に暴力で訴えてくるなんて……
どの面から見ても詰んでる!!
まさかの事態に何も言えないノクス。
その代わりに、それまで彼に猛烈なアプローチをかけていた少女が口を開いた。
「あなた、どちら様?」
「ノクスの本来の雇用主です。ノクスからお聞きになりませんでしたか?」
名乗る気はさらさらないらしい。
珍しく棘のある物言いで少女に答えたフィレオトールは、彼女に敵意剥き出しの目を向けた。
「単刀直入に申し上げますね。うちのノクスをあまりにも長期間拘束されると、我が商会としても大変迷惑なのです。いい加減、彼を返していただきたいのですが?」
それを聞いて、フィレオトールがこんな格好をしてきた意図を察するノクス。
なるほど。
一個人の介入では門前払いだろうから、商会のオーナーという権力を匂わせて要求を飲み込ませようというわけか。
一つ疑問は解消したものの、それで気持ちは安らがない。
そんなノクスの焦りを煽るように、少女がむっとして反論する。
「何よ! 今ノクス君に護衛を依頼しているのは私の家よ!?」
喧嘩上等の口振り。
それに対して、フィレオトールは一貫して冷静を貫く。
「ええ、それは構いません。チェノールからブルペノンに参入してきた身ではありますが、冒険者ギルドとは親しくさせていただいております。当然、今回のご依頼に格別の協力を求むとの話は聞いておりますとも。―――しかし、二週間以上の拘束は契約書になかった項目だと思いますが?」
フィレオトールが懐から取り出したのは、数枚綴りの紙束である。
「あなたの家とノクスの契約は、正確に言えば冒険者ギルドを仲介者とした我が商会からの人材派遣契約です。本来なら長期間に亘るご依頼はお断りしていますが、ギルドマスターに再三頭を下げられたので、条件つきでご依頼を承りました。その条件の中に、少なくとも週に二日は自由を確保することが盛り込まれていますよね? まさか、お父様から何も聞いていないのですか?」
「そ、それは……」
フィレオトールが鋭く告げると、少女が明らかに返答に窮した。
さすがはヴァリアで皇太子の面倒を見る傍ら、自身の商会を帝国一の規模に育てた賢者。
自分が面倒回避のために飲み込ませた契約条件を、そういう建前で使うとは。
というか、抗議のためにわざわざジオンドから契約書の写しをかっぱらってきたのか。
相変わらず、用意周到なことで。
「で、でも…っ」
すでに負け確定なのだが、少女は少しでも言い返そうと必死だ。
「私とお父様がお願いしたら、ノクス君は快くここにいてくれたもの!」
おい、誰が快くだ。
妄想を入れるな。
そんなツッコミを入れる隙もなく、フィレオトールが呆れた顔で溜め息をつく。
「ノクスから聞いていますが、今回の契約では非常にすばらしい報酬をご用意されているようで? 大方、それを餌にしてノクスをここに留まらせているんでしょう?」
お見事。
おっしゃるとおりで。
「だ、だって……そうでもしないと、ノクス君と一緒にいられないから…っ」
「あなたのお気持ちは存じておりますよ。だから、私も多少の契約違反には目をつむっておりました。しかし、いくらなんでも二週間は長すぎます。しかも、ノクス本人が目に見えて嫌がっているではありませんか。」
容赦なく少女を追い込むフィレオトールの双眸に、冷たい凄みがこもる。
「嫌がる相手を無理に留まらせるのは、もはや監禁と同じです。あなたがこれ以上粘着質に食い下がるようなら、私としても然るべき手段で訴えさせていただくしかないのですが?」
「う…っ」
「今さら契約を解消しろとは申しません。ただ、当初の契約に基づいて、週に二日はノクスを返していただきたいのです。私が申していることは、無理なお願いでしょうか?」
「………」
ついに少女が黙り込んだ。
そりゃ、何も言えないだろうな。
フィレオトールの言い分は至って正当なものだし、悪いのは明らかに彼女たちなわけだし。
フィレオトールが怒っていることは気に掛かるが、この様子なら今日は無事に家に帰れそうだ。
そう思って少女から離れてみると、彼女は無言のまま。
今までと違って、こちらに腕を絡めることもなければ、行かないでと訴えてくることもない。
逃げるなら今。
安心したノクスは、遠慮なくフィレオトールの元へと向かうのだった。
5
あなたにおすすめの小説
転移先で辺境伯の跡継ぎとなる予定の第四王子様に愛される
Hazuki
BL
五歳で父親が無くなり、七歳の時新しい父親が出来た。
中1の雨の日熱を出した。
義父は大工なので雨の日はほぼ休み、パートに行く母の代わりに俺の看病をしてくれた。
それだけなら良かったのだが、義父は俺を犯した、何日も。
晴れた日にやっと解放された俺は散歩に出掛けた。
連日の性交で身体は疲れていたようで道を渡っているときにふらつき、車に轢かれて、、、。
目覚めたら豪華な部屋!?
異世界転移して森に倒れていた俺を助けてくれた次期辺境伯の第四王子に愛される、そんな話、にする予定。
⚠️最初から義父に犯されます。
嫌な方はお戻りくださいませ。
久しぶりに書きました。
続きはぼちぼち書いていきます。
不定期更新で、すみません。
不遇の第七王子は愛され不慣れで困惑気味です
新川はじめ
BL
国王とシスターの間に生まれたフィル・ディーンテ。五歳で母を亡くし第七王子として王宮へ迎え入れられたのだが、そこは針の筵だった。唯一優しくしてくれたのは王太子である兄セガールとその友人オーティスで、二人の存在が幼いフィルにとって心の支えだった。
フィルが十八歳になった頃、王宮内で生霊事件が発生。セガールの寝所に夜な夜な現れる生霊を退治するため、彼と容姿のよく似たフィルが囮になることに。指揮を取るのは大魔法師になったオーティスで「生霊が現れたら直ちに捉えます」と言ってたはずなのに何やら様子がおかしい。
生霊はベッドに潜り込んでお触りを始めるし。想い人のオーティスはなぜか黙ってガン見してるし。どうしちゃったの、話が違うじゃん!頼むからしっかりしてくれよぉー!
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
天使のような子の怪我の手当てをしたら氷の王子に懐かれました
藤吉めぐみ
BL
12/23後日談追加しました。
=================
高校の養護教諭の世凪は、放課後の見回り中にプールに落ちてしまう。カナヅチの世凪は、そのまま溺れたと思ったが、気づくと全く知らない場所にある小さな池に座り込んでいた。
ここがどこなのか、何がどうなったのか分からない世凪に、「かあさま」と呼んで近づく小さな男の子。彼の怪我の手当てをしたら、世凪は不審者として捕まってしまう。
そんな世凪を助けてくれたのは、「氷の王子」と呼ばれるこの国の第二王子アドウェル。
冷淡で表情も変わらない人だと周りに言われたが、世凪に対するアドウェルは、穏やかで優しくて、理想の王子様でドキドキしてしまう世凪。でも王子は世凪に母親を重ねているようで……
優しい年下王子様×異世界転移してきた前向き養護教諭の互いを知って認めていくあたたかな恋の話です。
異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる
ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。
アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。
異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。
【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。
αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。
負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。
「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。
庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。
※Rシーンには♡マークをつけます。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる