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Step10 求婚事件で破局の危機!?
もやもやは募って……
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それからのノクスは、二日に一度帰ってきては、狂ったように口を零す日々を送っていた。
件のお嬢様は、相当ノクスに熱が入っているらしい。
できる限り距離を置くために彼女が眠る夜の担当を申し出るも、そうすると夜遅くまで隣でマシンガントーク。
健康にも安全にもよろしくないということで、三日と経たずに昼の担当に戻された。
昼だったら昼で、暇な時には絶対に張り付いてくる。
それで彼女の父親もノクスに狙いを絞ってしまい、彼女が出掛ける際の護衛まで任されるはめに。
求婚はすでに断っているし、依頼期間が終わったら縁を切る。
そう語っていたノクスではあったけど、決して我慢強くないが故に、彼は家で発狂モードに陥っていた。
そんなに嫌なら、今からでも依頼をキャンセルしてこればいいのに。
何度かそう言ったのだけど、報酬をもらうまでは意地でもやると言って譲らない。
自分にできることといえば、色んな意味で彼を慰めることだけだった。
そうしているうちに、変化が訪れる。
三日、五日と。
ノクスが帰ってくるまでの間隔が開き始めたのだ。
そして、求婚の報告から一ヶ月半……
「………」
商会の執務室にて。
フィレオトールは、むっとした顔で書類をめくっていた。
忙しいのは分かる。
依頼を無下にできない事情があるのも分かる。
でも、二週間は長すぎるんじゃない!?
家に帰るなんて、テレポートを使えば一瞬じゃない。
商会にいる頻度も増やしたのに、こちらにも顔を出せないなんてどういう状況なの?
そこまでして欲しい報酬って、一体何!?
「オーナー……今日は、随分とご機嫌斜めのようで……」
「まあね。でも、レアルのせいじゃないから気にしないで。はい、こっちはサイン済み。そっちは気になる部分があるから、担当に差し戻して。」
「承知しました。あと、先日面会の打診をした織物工房から了承の返事が来ました。都合はこちらに合わせてもらうとの条件つきですが。」
「了解。他大陸の人間から打診があれば警戒されるのも当然だし、可能な限りあちらの要求を受け入れてあげて。」
「そうですか…。えっと……工房が私たちを怪しがったらしく、面会の場に商業組合の者も同席すると言われているのですが……」
「あーらら…。じゃ、こちらは冒険者ギルドの後ろ楯を借りよう。ジオンドさんにも連絡しておいてくれる? 渋るなら、ノクスが現在進行形で払っている借りを返せって言っといて。」
「分かりました。」
淡々とした態度で頷いたレアルは、仕事に取りかかるために執務室を出ていった。
なんだかんだと長い付き合いだ。
自分が多少不機嫌だろうと、レアルは一切気にしない。
粛々とこちらの指示に従って仕事をこなすのみである。
「………」
ノクスの名前を出してしまったからか。
忙しなく動いていたフィレオトールの手が、ふとそこで止まる。
(僕……なんでこんなにもやもやしてるんだろ…?)
二週間くらいノクスが帰ってこないなんて、今までも普通にあった。
心配になる時もあったけど、ノクスが危ない時には精霊たちが知らせに来てくれるから、その知らせが来ない限りは大丈夫だと安心できた。
その知らせだって、魔族相手ならともかく、魔獣や人間ごときを相手にした時は来ないと断言できる。
でも……今は、精霊からの知らせが来ないから彼が安全だと確信するほど、胸の中にもやもやが募ってしまう。
ノクスが優先するのは自分じゃないのか、と。
流れるようにそう思ってしまうのだ。
「……ちょっと、様子を見に行ってみるか。」
これ以上仕事を進めすぎても仕方ない。
疲れたノクスを笑顔で迎えるためにも、もやもやは早く消化してしまおう。
目を閉じて集中。
精霊たちのネットワークを頼り、ノクスの居場所を特定。
移動前に、気配消しの魔法を自分にかけておく。
そうして辿り着いたのは、丘の上にある大きな屋敷だった。
さすがは名だたる資産家。
こんなに目立つ場所に、こんなに大きな屋敷を立てるなんて。
ノクスの話から察していたが、ここの主人は自己顕示欲の塊のようだ。
そんな感想もそこそこに、フィレオトールはさっくりと屋敷に忍び込む。
どんなに強固なセキュリティを誇っていようと、自分にとってはザル同然。
自分を止めたかったら、ノクス並み実力者が少なくとも十数人はいなくては。
(あ、見つけた。)
広い裏庭で、ノクスの姿を発見。
念には念を入れて、彼の勘に引っ掛からない範囲から様子を窺うにとどめる。
裏庭を大股で歩くノクスは不機嫌そのもの。
その理由は、当然―――
「ノクスくーん♪」
彼につきまとう一人の少女。
フィレオトールは、しげしげと彼女を観察する。
深く見ずとも、彼女がノクスにご執心なのは明らか。
話はガン無視され、腕を絡める度に振り払われているのに、何かの拍子には再び彼へと手を伸ばしている。
あそこまで露骨に態度に出されているんだから、脈なしだって気付けよ。
一途なのと粘着質なのとでは、雲泥の差があるんだぞ?
なんか……―――すっごくイライラする。
すっきりするどころか逆効果。
思わず木の幹に爪を立てたフィレオトールは、次の瞬間くるりと踵を返した。
件のお嬢様は、相当ノクスに熱が入っているらしい。
できる限り距離を置くために彼女が眠る夜の担当を申し出るも、そうすると夜遅くまで隣でマシンガントーク。
健康にも安全にもよろしくないということで、三日と経たずに昼の担当に戻された。
昼だったら昼で、暇な時には絶対に張り付いてくる。
それで彼女の父親もノクスに狙いを絞ってしまい、彼女が出掛ける際の護衛まで任されるはめに。
求婚はすでに断っているし、依頼期間が終わったら縁を切る。
そう語っていたノクスではあったけど、決して我慢強くないが故に、彼は家で発狂モードに陥っていた。
そんなに嫌なら、今からでも依頼をキャンセルしてこればいいのに。
何度かそう言ったのだけど、報酬をもらうまでは意地でもやると言って譲らない。
自分にできることといえば、色んな意味で彼を慰めることだけだった。
そうしているうちに、変化が訪れる。
三日、五日と。
ノクスが帰ってくるまでの間隔が開き始めたのだ。
そして、求婚の報告から一ヶ月半……
「………」
商会の執務室にて。
フィレオトールは、むっとした顔で書類をめくっていた。
忙しいのは分かる。
依頼を無下にできない事情があるのも分かる。
でも、二週間は長すぎるんじゃない!?
家に帰るなんて、テレポートを使えば一瞬じゃない。
商会にいる頻度も増やしたのに、こちらにも顔を出せないなんてどういう状況なの?
そこまでして欲しい報酬って、一体何!?
「オーナー……今日は、随分とご機嫌斜めのようで……」
「まあね。でも、レアルのせいじゃないから気にしないで。はい、こっちはサイン済み。そっちは気になる部分があるから、担当に差し戻して。」
「承知しました。あと、先日面会の打診をした織物工房から了承の返事が来ました。都合はこちらに合わせてもらうとの条件つきですが。」
「了解。他大陸の人間から打診があれば警戒されるのも当然だし、可能な限りあちらの要求を受け入れてあげて。」
「そうですか…。えっと……工房が私たちを怪しがったらしく、面会の場に商業組合の者も同席すると言われているのですが……」
「あーらら…。じゃ、こちらは冒険者ギルドの後ろ楯を借りよう。ジオンドさんにも連絡しておいてくれる? 渋るなら、ノクスが現在進行形で払っている借りを返せって言っといて。」
「分かりました。」
淡々とした態度で頷いたレアルは、仕事に取りかかるために執務室を出ていった。
なんだかんだと長い付き合いだ。
自分が多少不機嫌だろうと、レアルは一切気にしない。
粛々とこちらの指示に従って仕事をこなすのみである。
「………」
ノクスの名前を出してしまったからか。
忙しなく動いていたフィレオトールの手が、ふとそこで止まる。
(僕……なんでこんなにもやもやしてるんだろ…?)
二週間くらいノクスが帰ってこないなんて、今までも普通にあった。
心配になる時もあったけど、ノクスが危ない時には精霊たちが知らせに来てくれるから、その知らせが来ない限りは大丈夫だと安心できた。
その知らせだって、魔族相手ならともかく、魔獣や人間ごときを相手にした時は来ないと断言できる。
でも……今は、精霊からの知らせが来ないから彼が安全だと確信するほど、胸の中にもやもやが募ってしまう。
ノクスが優先するのは自分じゃないのか、と。
流れるようにそう思ってしまうのだ。
「……ちょっと、様子を見に行ってみるか。」
これ以上仕事を進めすぎても仕方ない。
疲れたノクスを笑顔で迎えるためにも、もやもやは早く消化してしまおう。
目を閉じて集中。
精霊たちのネットワークを頼り、ノクスの居場所を特定。
移動前に、気配消しの魔法を自分にかけておく。
そうして辿り着いたのは、丘の上にある大きな屋敷だった。
さすがは名だたる資産家。
こんなに目立つ場所に、こんなに大きな屋敷を立てるなんて。
ノクスの話から察していたが、ここの主人は自己顕示欲の塊のようだ。
そんな感想もそこそこに、フィレオトールはさっくりと屋敷に忍び込む。
どんなに強固なセキュリティを誇っていようと、自分にとってはザル同然。
自分を止めたかったら、ノクス並み実力者が少なくとも十数人はいなくては。
(あ、見つけた。)
広い裏庭で、ノクスの姿を発見。
念には念を入れて、彼の勘に引っ掛からない範囲から様子を窺うにとどめる。
裏庭を大股で歩くノクスは不機嫌そのもの。
その理由は、当然―――
「ノクスくーん♪」
彼につきまとう一人の少女。
フィレオトールは、しげしげと彼女を観察する。
深く見ずとも、彼女がノクスにご執心なのは明らか。
話はガン無視され、腕を絡める度に振り払われているのに、何かの拍子には再び彼へと手を伸ばしている。
あそこまで露骨に態度に出されているんだから、脈なしだって気付けよ。
一途なのと粘着質なのとでは、雲泥の差があるんだぞ?
なんか……―――すっごくイライラする。
すっきりするどころか逆効果。
思わず木の幹に爪を立てたフィレオトールは、次の瞬間くるりと踵を返した。
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