こんなスローライフは想定外!~いつの間にか、親友を虜にしてしまっていたようで!?~

うみくも

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Step10 求婚事件で破局の危機!?

それって、もしかして……

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「フィル! 本当に悪かったって!!」


 自宅へと戻った瞬間、ノクスはフィレオトールに平謝りしていた。
 その姿は、さながら浮気がばれた彼氏である。


「さすがに長かったよな!? 寂しかったよな!? おれが悪かった!! 頼むから、機嫌を直してくれって!!」


「………」


 ノクスが必死に言うも、彼に背を向けたフィレオトールは何も答えない。


(……もやもやが収まらない。)


 フィレオトールは、思わず頬を膨らませる。


 ノクスが悪くないのは分かっている。
 それなのに、彼に対する怒りを止められない。
 自分がどうしてこんなに怒っているのかも分からないのだ。


「お前まさか、あの馬鹿令嬢が言ったことを真に受けてないよな!?」


 こちらの無言をどうとらえたのか、ノクスがそう言ってくる。


「お前が粘着質とか、ありえねぇからな!? 一緒にいて息がつまるとかもないからな!? むしろ、お前はわがままやおねだりが足りねぇくらいだから!!」


「………」


「今回の報酬は、どうしても欲しかったんだよ!! どうせこれっきりの縁だし、ちょっとの間我慢して相手をしとけばって……」


「―――相手なんて……」


 勝手に、口からそんな言葉が零れていく。
 とっさの衝動を抑えられなくて、気付けばノクスに詰め寄ってしまっていた。


「相手なんかしないで!! ちょっとの間でもだめ!!」


 こちらが大声を放ったことに驚いたのか、ノクスが大きく目を見開く。


 大好きな人を戸惑わせていると分かっていても、口は止まらない。
 一度爆発してしまったもやもやは、理性ではどうにもできなかった。


「あの子にはノクス以外にも相手がいるからいいよ! でも、僕には最初から最後までノクスしかいないんだよ!? ちょっとの間でも譲りたくないって思っちゃいけない!? ノクスは……僕のなのに…っ」


 それまできりのように正体が掴めなかったもやもやが、一瞬で形になる。
 自分の口からつむがれる言葉を聞きながら、自分の気持ちに気付かされた。


「フィル……」


 しばらく、パチパチとまばたきを繰り返すだけだったノクス。
 やがて、彼はなかば茫然としながら口を開く。




「それって、もしかして……―――ヤキモチ?」




 そう言いながらも、どこか自身の発言を信じられない様子のノクス。
 そんなノクスと目を合わせるフィレオトールも、不思議そうに小首を傾げた。


「え…?」


 その呟きを最後に、室内に沈黙が落ちる。
 数秒後―――


「―――っ!!」


 何かに気付いたフィレオトールが、一瞬で顔を真っ赤にした。
 それを見たノクスは、戸惑いも忘れて噴き出してしまう。


「~~~っ!!」


 時間が流れるほど、フィレオトールが耳まで赤くして体を大きく震わせていき、ノクスは笑いをこらえて体を震わせる。


「◎◇△#□%~っ!!」
「待て待て待て。逃げるな逃げるな。」


 言葉にならない悲鳴をあげて逃げようとしたフィレオトールを、ノクスは苦笑しながら腕の中に閉じ込めた。


「逃げるってことは、本当にヤキモチだったんだな。」
「そうだよ!! そうだよね!? どこからどう見てもそうじゃーん!!」


 両手で顔を覆い、フィレオトールはノクスの指摘を認める。


「うっわぁ!! 僕ってば、何しちゃってんの!? いい年した大人が年下の女の子相手に情けないって話だよ!! 恥ずかしいーっ!!」


 何がもやもやするだ。
 ノクスに指摘されるまで、自分がヤキモチを焼いていることに気付かないなんて。 


 本当に恥ずかしい。
 いたたまれなさすぎる。


 羞恥しゅうちのあまり、甲高い声でわめくフィレオトール。
 そんなフィレオトールを一際強く抱き締めたノクスは―――




「はぁ……―――マジで嬉しいんだけど。」




 ぽつりと呟き、どこかうっとりとした吐息をついた。


「へ…?」


「いや、本気で嬉しすぎる。何これ、サプライズ? ご褒美? 疲れも一瞬で吹き飛んだわ。あー、マジで可愛い…っ」


 フィレオトールに頬擦りをするノクスは超ご機嫌。
 まさかの展開に、フィレオトールは少し混乱してしまう。


「……困らないの?」
「なんで困るんだ?」


 おそるおそる後ろを振り返ると、心底不思議そうな表情のノクスと目が合う。


「お前さ、前におれに一人で魔領から出るなって言われた時、困ったり嫌だったりしたか?」


「ぜ、全然……」


「それと一緒だ。むしろ、ようやくおれの独占欲に追いついてきたかーって思って安心したよ。」


「安心って……」


 どうしてこうなったか分からず、戸惑うフィレオトール。
 ノクスはその頭を優しくなでる。


「お前は仮面を被ることに慣れすぎてて、自分の気持ちを押し込めてばっかだからな。どんな気持ちでも、そうやって表現してくれるのは安心するもんさ。それに、ヤキモチを焼くくらい好きになってもらえてるって分かって、本当に嬉しい。」


「………っ」


 それを聞いてハッとする。


 自分だって、何度〝離れない〟って言われても不安になるのだ。
 ノクスがそう感じていたって、何もおかしなことはないじゃないか。


「ごめん…。これからは、もっと自分の気持ちを言うようにする。」
「ん。そうしてくれると嬉しい。まあ、無理しない範囲でいいからな。」


 しゅんとしてうつむいてしまったフィレオトールに苦笑して、ノクスはその顎先あごさきを捕らえてそっと上向かせる。


 そして―――


「なあ、フィル。たまには、フィルからキスしてくれないか?」


 とびきり甘い声で、そうささやいた。


「え…」


 瞬く間に頬を朱に染めるフィレオトール。
 そんなフィレオトールに、ノクスは柔らかく微笑む。


「頼むよ。今日のことが夢じゃないって、そう実感させてほしいんだ。」
「~~~っ!!」


 ぎゅっと心臓を締め上げられるようなときめきに、フィレオトールはさらに顔を赤くして言葉につまる。


 夢じゃないと実感させてほしい、なんて。
 そんなに嬉しそうな笑顔で、なんてずるいことを言うんですか。


 そんなことを言われたら、嘘や冗談でも〝嫌だ〟なんて言えないよ……


 ゆっくりと、ノクスの首に両腕を回す。
 ドキドキと高鳴る鼓動を感じながら、そっと唇を重ねる。


 二週間ぶりに感じる愛しい人のぬくもり。
 それが嬉しくて、自ら唇を開いて舌を絡めていた。


「ん…っ」


 すぐに激しくなる口づけ。
 その甘さに満たされる一方で、まだ足りないと訴える自分もいる。


 きっと〝えている〟っていうのは、こういう状態のことなんだろう。


 本当に今さらだけど、初めてそんな感情を知った。

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