こんなスローライフは想定外!~いつの間にか、親友を虜にしてしまっていたようで!?~

うみくも

文字の大きさ
101 / 125
Step10 求婚事件で破局の危機!?

オーバーキルです

しおりを挟む
 長い長いキス。


 それを終えて唇を離したノクスは、フィレオトールを見つめて満足そうに笑みを深めた。


「よし、とりあえずは着替えるか。フィルのおかげで時間ができたし、今日は二人でのんびりとしよう。」


 それは、窮屈な格好をしているフィレオトールを早く楽にさせてやろうという気遣いだったのだが……


「ううぅ…っ」


 何故か、フィレオトールが眉を下げて涙ぐんでしまった。


「ど、どうした…?」


 どうしてそんな、捨てられた子犬みたいな顔をするんだ。
 自分は傍にいるのに、寂しさが増していくのは何故?


 状況が読み取れず、困惑するしかないノクス。
 そんなノクスのシャツを掴むフィレオトールの手に、ぎゅっと力がこもった。


「やだぁ……離れたくない。今日はずっとくっついてるぅ…っ」


 涙目、上目遣い、おねだりのトリプルアタック。
 その一撃の威力たるや……


「お前はおれを殺す気かーっ!!」


 そう叫ばずにはいられなかった。


「可愛すぎんのもいい加減にしとけ!! 無自覚なら何をしてもオッケーだと思ってんのか!? 今の一撃でオーバーキルだよ!! そろそろマジでおれの心臓が止まるわ!!」


 報酬のためだとはいえ、この状況でこんなにもフィレオトールを放置するんじゃなかった。


 普通に考えれば、恋人がアプローチをかけてくる相手の元に通うなんて、どんな奴でも不安になるだろうがという話。


 フィレオトールは自分の性格を熟知しているし、物事を達観しすぎている部分もあるし、事情さえ正直に話しておけば大丈夫だなんて……


 イラついていたのもあって、気軽に愚痴ぐちってしまった過去の自分をぶん殴りたい。


 あれだけフィレオトールをべた惚れにさせると意気込んでおいて、フィレオトールの心の広さに甘えているのはどこのどいつだ!!


「だめ…? さすがにわがまますぎ…?」
「ちっがーう!!」


 トリプルアタック、まさかの二撃目。
 それに心臓が止まりそうになりながらも、ノクスは必死に言葉をつむぐ。


「お前、マジでそれだけは誤解してくれるなよ!? お前のそれはわがままに入らんし、おれとしては嬉しい限りなんだよ!! 大歓迎なんだよ!! だけど……今は状況的にあれというか、なんというか…っ」


 フィレオトールのおねだりは嬉しくてたまらないけど、そんなに可愛くなられると、それはそれでつらいなんて。


 全面的に自分が悪いのだが、この複雑な心境をどう説明すればいい!?


「―――ああもう! こうなりゃ直球に言うわ!!」


 考えに考えても、いい言い方が見つからない。


 それに、無駄に気を回して言葉をにごしたら、フィレオトールが自分を責めてしまいそうだ。


 がっしりとフィレオトールの肩を掴んだノクスは、真剣な顔で率直な気持ちを伝える。


「お前な……おれにめちゃくちゃに抱き潰されたいのか? お前が可愛くてたまらん言動ばかりするから、おれはいつも性欲を抑えるのに必死なんだよ…っ。特に今は、二週間もお前に触ってないんだ。お前には無理をさせたくないけど、このままだと朝までコース一直線なんだよ…っ。それでもいいのか!?」


 ストレス過多に欲求不満。


 この状況で理性を手放したら、いつも以上に激しくフィレオトールを抱いてしまう自信がある。


 外はまだ太陽が主役の時間帯だ。
 今から朝までなんて、さすがのフィレオトールも潰れると分かる。


 せめていつもの範囲で暴走をとどめるためにも、可愛い成分を分散して摂取させてくれ。


 切実にそう願ったノクスだったが……


「―――それでもいい。」


 フィレオトールはそう言って、ノクスに思い切り抱きついた。


「へ…?」


 いつもとは真逆を行く答えに、ノクスは赤面して固まる。


 そんなノクスにより一層しがみつきながら、フィレオトールはノクスの胸に顔をうずめた。


「今日はどうなってもいいから、とにかく離れたくない。僕だって、二週間も我慢しててノクスが足りないんだもん。それに……」


 尻すぼみに声を小さくしたフィレオトールの耳が、ノクスと同じくらいに赤くなる。


「それに……今日は、僕もしたい気分かな………なんて……」


 それはまさに、とどめには十分。
 超弩級の一撃だった。


(あ、これをお預けとか無理。マジで可愛すぎる。)


 すさまじきヤキモチ効果。


 ウブをそのまま形にしたようなフィレオトールが、初めてド直球なおねだりをしてきたぞ。


 フィレオトールを不安にさせたことは土下座案件だが、こんなにも美味しくて嬉しい一言を聞けるなんて。


 その一言、何度でもおかわりでお願いします。


「お前なぁ……自分の発言には責任を持てよ?」


 気遣いなんて単語を捨て去ったノクスは、フィレオトールをひょいと抱き上げる。


 フィレオトールはそれに何も答えなかったが、必死にしがみついてノクスを離さない仕草に、彼の気持ちが赤裸々に表れていた。


〝可愛さは凶器〟


 この言葉を、改めて思い知るノクスなのであった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

転移先で辺境伯の跡継ぎとなる予定の第四王子様に愛される

Hazuki
BL
五歳で父親が無くなり、七歳の時新しい父親が出来た。 中1の雨の日熱を出した。 義父は大工なので雨の日はほぼ休み、パートに行く母の代わりに俺の看病をしてくれた。 それだけなら良かったのだが、義父は俺を犯した、何日も。 晴れた日にやっと解放された俺は散歩に出掛けた。 連日の性交で身体は疲れていたようで道を渡っているときにふらつき、車に轢かれて、、、。 目覚めたら豪華な部屋!? 異世界転移して森に倒れていた俺を助けてくれた次期辺境伯の第四王子に愛される、そんな話、にする予定。 ⚠️最初から義父に犯されます。 嫌な方はお戻りくださいませ。 久しぶりに書きました。 続きはぼちぼち書いていきます。 不定期更新で、すみません。

不遇の第七王子は愛され不慣れで困惑気味です

新川はじめ
BL
 国王とシスターの間に生まれたフィル・ディーンテ。五歳で母を亡くし第七王子として王宮へ迎え入れられたのだが、そこは針の筵だった。唯一優しくしてくれたのは王太子である兄セガールとその友人オーティスで、二人の存在が幼いフィルにとって心の支えだった。  フィルが十八歳になった頃、王宮内で生霊事件が発生。セガールの寝所に夜な夜な現れる生霊を退治するため、彼と容姿のよく似たフィルが囮になることに。指揮を取るのは大魔法師になったオーティスで「生霊が現れたら直ちに捉えます」と言ってたはずなのに何やら様子がおかしい。  生霊はベッドに潜り込んでお触りを始めるし。想い人のオーティスはなぜか黙ってガン見してるし。どうしちゃったの、話が違うじゃん!頼むからしっかりしてくれよぉー!

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

天使のような子の怪我の手当てをしたら氷の王子に懐かれました

藤吉めぐみ
BL
12/23後日談追加しました。 ================= 高校の養護教諭の世凪は、放課後の見回り中にプールに落ちてしまう。カナヅチの世凪は、そのまま溺れたと思ったが、気づくと全く知らない場所にある小さな池に座り込んでいた。 ここがどこなのか、何がどうなったのか分からない世凪に、「かあさま」と呼んで近づく小さな男の子。彼の怪我の手当てをしたら、世凪は不審者として捕まってしまう。 そんな世凪を助けてくれたのは、「氷の王子」と呼ばれるこの国の第二王子アドウェル。 冷淡で表情も変わらない人だと周りに言われたが、世凪に対するアドウェルは、穏やかで優しくて、理想の王子様でドキドキしてしまう世凪。でも王子は世凪に母親を重ねているようで…… 優しい年下王子様×異世界転移してきた前向き養護教諭の互いを知って認めていくあたたかな恋の話です。

異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる

ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。 アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。 異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。 【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。 αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。 負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。 「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。 庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。 ※Rシーンには♡マークをつけます。

処理中です...