こんなスローライフは想定外!~いつの間にか、親友を虜にしてしまっていたようで!?~

うみくも

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Step12 世界一愛しい日に贈る最高の誓い

魔族の武器

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「さて、いつまでもなぐさめタイムじゃフィルが気疲れしそうだし、空気を変えてやるか。」


 終わりそうにないフィレオトールと精霊たちのやり取りを見ていられなくなったらしい。


 椅子から立ち上がったゼクがフィレオトールの席へと回り込んだ。


「フィル、ほらよ。」
「わっ!?」


 突然足元に重量を持った何かを置かれ、くうを見ていたフィレオトールは素っ頓狂な声をあげる。


「何これ…? とんでもなく大きな袋だけど……」


 何かがどっさりと詰め込まれた白い布袋。
 一体、何を入れたらこの重量になるのだろう。


「出会ったばかりの頃、俺が使うやりにえらく興味津々だっただろ? 魔族が作る武器なんて見せびらかし用みたいなもんだが、いい機会だからジノンと片っ端から集めてきたんだよ。そこに入らないサイズのやつは、倉庫にぶち込んでおいたぜ。」


 それを聞くや否や、フィレオトールが無言で袋を開ける。


「おおぉ…っ」


 そこから一つの短刀を取り出したフィレオトールは、宝物を見つけた子供のように瞳を輝かせた。


「なんか、武骨で派手なデザインが多いね。ゼクの槍はかなり控えめだったんだ……」


「まあ、俺のやつは人間に紛れて持っても違和感がないように、あれこれと注文をつけて作らせたやつだからな。大抵の魔族は自分を強く見せるために武器を持つから、ゴツいデザインが多くなるのは当然だな。」


「なるほど。実用性なんか考えないから、こうも重たいのか……」


「ん? 重いのか?」


「見た目に反して、結構。どれか持ってみる?」


 隣から手元を覗いてきたノクスに袋を開いて差し出すと、彼は少し悩んだ末に一本の剣を取った。


「あー、なるほど。こんなんばっか振り回してたから、人間の道具で力加減をミスる魔族が多かったんだな。いい筋トレになりそうだぜ。」


 さすがは世界で唯一の勇者様。
 戦うことが本職なだけに、魔族の武器でも簡単に扱えるようで。
 試し斬りでもしたいのか、目がウズウズしている。


「今度、ギルドの依頼を受けて試してきたら? 武器部屋でも作って飾っておくから、好きな時に好きなものを持っていっていいよ。」


「サンキュー。」


 おやおや。
 ゼク&ジノンからのプレゼントは、ノクスもかなりお気に召したようだ。


 地味にテンションを上げるノクスを微笑ましく思いながら、フィレオトールは自分が持つ短刀に再度目を落とす。


「でも、細かく見ると金属の加工技術はすごい。注文次第でゼクのやりみたいな洗練されたデザインも作れるわけでしょ? 魔族って、何を報酬に出せば仕事を引き受けてくれるんだろ…?」


「さすがは商魂のかたまり。まあ、食い物か酒を渡せば喜ぶんじゃねぇか? あいつらは擬人化が下手くそで、人間界に出ようにも出られねぇ奴ばかりだから。それか、拳で語って従わせるかだな。」


「うん、素直に食べ物を持っていく。報酬なしで従わせるのはフェアじゃないからね。」


「魔族には、フェアなんて概念がないんだけどなぁ……」


「でも、フィルならほぼ顔パスで仕事を引き受けてもらえるんじゃない? 前魔王を切り刻んだのはノクスとゼク様だけど、その前に城下を吹き飛ばして魔王城を半壊させたのはフィルなんだし。」


「それ、まだ蒸し返す? ちゃんと、補修のための物資は用意してあげたのに。」


「単純に、あんたを覚えてる魔族が多いって話よ。瘴気を取り込んでパワーアップするなんて、恐ろしい人間がいたもんだって。」


「くう…っ。そのイメージを払拭するためにも、今度はあめ百パーセントで接してやる…っ」


 不本意だと言わんばかりに渋い表情をしたフィレオトール。
 しかし、その顔はすぐにほわんと緩むことに。


「なんだかんだ、すごく幸せそうね。見てて癒されるわ。」


「膝にはモフモフがいて、手元には次なる商売のネタがあるんだから、天国だろうよ。それにしても、お前もだんだんとフィルの生態が分かってきたようだな。おれがフィルを溺愛するのも頷けるだろ?」


「溺愛はともかく、その煩悩は抑えてほしいわね。さっきからうるさいわよ。」


「無理。お前の栄養剤の材料なんだから、少しは我慢しやがれ。」


「あはは……」


 おそらく、ジノンの頭にはノクスの心の声がノーフィルターで響いているのだろう。


 その話題は掘り下げてほしくない。
 自分の精神が死ぬ。


 そんな危機感をいだいたフィレオトールは、気になることがあったのもあり、ノクスのそでを小さく引いた。


「ねぇ……ノクスのプレゼントは?」


 こう言っては催促しているようだが、ちょっと意外だったのだ。


 今までの誕生日は必ず一番にプレゼントを渡してきたノクスが、いつまで経っても見ているだけなんだもの。


 ノクスのことだから誕生日プレゼントを用意していないというオチだけはないだろうし、何か理由があって出せないのだろうか。


 そわそわしてノクスを見つめるフィレオトール。
 そんな彼に優しげに微笑んだノクスは、そっと耳元に口を寄せる。


「おれのは、二人きりの時にな。」
「あ……うん。」


 確かに、恋人からのプレゼントは一番じっくりと見たいかも。
 それこそ、第三者がいない二人きりの時に。


 パーティーが始まってから一番幸せそうな笑みを浮かべて、この後のお楽しみに期待してしまうフィレオトールだった。


(レアル……頑張れよ。)


 瞬く間に甘い雰囲気をかもし始めた二人の向こうで必死にジェアンの気を引いているレアルに、誰もが心の内側で合掌したという。

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