120 / 125
Step12 世界一愛しい日に贈る最高の誓い
魔族の武器
しおりを挟む「さて、いつまでも慰めタイムじゃフィルが気疲れしそうだし、空気を変えてやるか。」
終わりそうにないフィレオトールと精霊たちのやり取りを見ていられなくなったらしい。
椅子から立ち上がったゼクがフィレオトールの席へと回り込んだ。
「フィル、ほらよ。」
「わっ!?」
突然足元に重量を持った何かを置かれ、虚空を見ていたフィレオトールは素っ頓狂な声をあげる。
「何これ…? とんでもなく大きな袋だけど……」
何かがどっさりと詰め込まれた白い布袋。
一体、何を入れたらこの重量になるのだろう。
「出会ったばかりの頃、俺が使う槍にえらく興味津々だっただろ? 魔族が作る武器なんて見せびらかし用みたいなもんだが、いい機会だからジノンと片っ端から集めてきたんだよ。そこに入らないサイズのやつは、倉庫にぶち込んでおいたぜ。」
それを聞くや否や、フィレオトールが無言で袋を開ける。
「おおぉ…っ」
そこから一つの短刀を取り出したフィレオトールは、宝物を見つけた子供のように瞳を輝かせた。
「なんか、武骨で派手なデザインが多いね。ゼクの槍はかなり控えめだったんだ……」
「まあ、俺のやつは人間に紛れて持っても違和感がないように、あれこれと注文をつけて作らせたやつだからな。大抵の魔族は自分を強く見せるために武器を持つから、ゴツいデザインが多くなるのは当然だな。」
「なるほど。実用性なんか考えないから、こうも重たいのか……」
「ん? 重いのか?」
「見た目に反して、結構。どれか持ってみる?」
隣から手元を覗いてきたノクスに袋を開いて差し出すと、彼は少し悩んだ末に一本の剣を取った。
「あー、なるほど。こんなんばっか振り回してたから、人間の道具で力加減をミスる魔族が多かったんだな。いい筋トレになりそうだぜ。」
さすがは世界で唯一の勇者様。
戦うことが本職なだけに、魔族の武器でも簡単に扱えるようで。
試し斬りでもしたいのか、目がウズウズしている。
「今度、ギルドの依頼を受けて試してきたら? 武器部屋でも作って飾っておくから、好きな時に好きなものを持っていっていいよ。」
「サンキュー。」
おやおや。
ゼク&ジノンからのプレゼントは、ノクスもかなりお気に召したようだ。
地味にテンションを上げるノクスを微笑ましく思いながら、フィレオトールは自分が持つ短刀に再度目を落とす。
「でも、細かく見ると金属の加工技術はすごい。注文次第でゼクの槍みたいな洗練されたデザインも作れるわけでしょ? 魔族って、何を報酬に出せば仕事を引き受けてくれるんだろ…?」
「さすがは商魂の塊。まあ、食い物か酒を渡せば喜ぶんじゃねぇか? あいつらは擬人化が下手くそで、人間界に出ようにも出られねぇ奴ばかりだから。それか、拳で語って従わせるかだな。」
「うん、素直に食べ物を持っていく。報酬なしで従わせるのはフェアじゃないからね。」
「魔族には、フェアなんて概念がないんだけどなぁ……」
「でも、フィルならほぼ顔パスで仕事を引き受けてもらえるんじゃない? 前魔王を切り刻んだのはノクスとゼク様だけど、その前に城下を吹き飛ばして魔王城を半壊させたのはフィルなんだし。」
「それ、まだ蒸し返す? ちゃんと、補修のための物資は用意してあげたのに。」
「単純に、あんたを覚えてる魔族が多いって話よ。瘴気を取り込んでパワーアップするなんて、恐ろしい人間がいたもんだって。」
「くう…っ。そのイメージを払拭するためにも、今度は飴百パーセントで接してやる…っ」
不本意だと言わんばかりに渋い表情をしたフィレオトール。
しかし、その顔はすぐにほわんと緩むことに。
「なんだかんだ、すごく幸せそうね。見てて癒されるわ。」
「膝にはモフモフがいて、手元には次なる商売のネタがあるんだから、天国だろうよ。それにしても、お前もだんだんとフィルの生態が分かってきたようだな。おれがフィルを溺愛するのも頷けるだろ?」
「溺愛はともかく、その煩悩は抑えてほしいわね。さっきからうるさいわよ。」
「無理。お前の栄養剤の材料なんだから、少しは我慢しやがれ。」
「あはは……」
おそらく、ジノンの頭にはノクスの心の声がノーフィルターで響いているのだろう。
その話題は掘り下げてほしくない。
自分の精神が死ぬ。
そんな危機感を抱いたフィレオトールは、気になることがあったのもあり、ノクスの袖を小さく引いた。
「ねぇ……ノクスのプレゼントは?」
こう言っては催促しているようだが、ちょっと意外だったのだ。
今までの誕生日は必ず一番にプレゼントを渡してきたノクスが、いつまで経っても見ているだけなんだもの。
ノクスのことだから誕生日プレゼントを用意していないというオチだけはないだろうし、何か理由があって出せないのだろうか。
そわそわしてノクスを見つめるフィレオトール。
そんな彼に優しげに微笑んだノクスは、そっと耳元に口を寄せる。
「おれのは、二人きりの時にな。」
「あ……うん。」
確かに、恋人からのプレゼントは一番じっくりと見たいかも。
それこそ、第三者がいない二人きりの時に。
パーティーが始まってから一番幸せそうな笑みを浮かべて、この後のお楽しみに期待してしまうフィレオトールだった。
(レアル……頑張れよ。)
瞬く間に甘い雰囲気を醸し始めた二人の向こうで必死にジェアンの気を引いているレアルに、誰もが心の内側で合掌したという。
5
あなたにおすすめの小説
転移先で辺境伯の跡継ぎとなる予定の第四王子様に愛される
Hazuki
BL
五歳で父親が無くなり、七歳の時新しい父親が出来た。
中1の雨の日熱を出した。
義父は大工なので雨の日はほぼ休み、パートに行く母の代わりに俺の看病をしてくれた。
それだけなら良かったのだが、義父は俺を犯した、何日も。
晴れた日にやっと解放された俺は散歩に出掛けた。
連日の性交で身体は疲れていたようで道を渡っているときにふらつき、車に轢かれて、、、。
目覚めたら豪華な部屋!?
異世界転移して森に倒れていた俺を助けてくれた次期辺境伯の第四王子に愛される、そんな話、にする予定。
⚠️最初から義父に犯されます。
嫌な方はお戻りくださいませ。
久しぶりに書きました。
続きはぼちぼち書いていきます。
不定期更新で、すみません。
魔王様が子供化したので勇者の俺が責任持って育てていたら、いつの間にか溺愛されているみたい
カミヤルイ
BL
顔だけが取り柄の勇者の血を引くジェイミーは、民衆を苦しめていると噂の魔王の討伐を指示され、嫌々家を出た。
ジェイミーの住む村には実害が無い為、噂だけだろうと思っていた魔王は実在し、ジェイミーは為すすべなく倒れそうになる。しかし絶体絶命の瞬間、雷が魔王の身体を貫き、目の前で倒れた。
それでも剣でとどめを刺せない気弱なジェイミーは、魔王の森に来る途中に買った怪しい薬を魔王に使う。
……あれ?小さくなっちゃった!このまま放っておけないよ!
そんなわけで、魔王様が子供化したので子育てスキル0の勇者が連れて帰って育てることになりました。
でも、いろいろありながらも成長していく魔王はなんだかジェイミーへの態度がおかしくて……。
時々シリアスですが、ふわふわんなご都合設定のお話です。
こちらは2021年に創作したものを掲載しています。
初めてのファンタジーで右往左往していたので、設定が甘いですが、ご容赦ください
素敵な表紙は漫画家さんのミミさんにお願いしました。
@Nd1KsPcwB6l90ko
不遇の第七王子は愛され不慣れで困惑気味です
新川はじめ
BL
国王とシスターの間に生まれたフィル・ディーンテ。五歳で母を亡くし第七王子として王宮へ迎え入れられたのだが、そこは針の筵だった。唯一優しくしてくれたのは王太子である兄セガールとその友人オーティスで、二人の存在が幼いフィルにとって心の支えだった。
フィルが十八歳になった頃、王宮内で生霊事件が発生。セガールの寝所に夜な夜な現れる生霊を退治するため、彼と容姿のよく似たフィルが囮になることに。指揮を取るのは大魔法師になったオーティスで「生霊が現れたら直ちに捉えます」と言ってたはずなのに何やら様子がおかしい。
生霊はベッドに潜り込んでお触りを始めるし。想い人のオーティスはなぜか黙ってガン見してるし。どうしちゃったの、話が違うじゃん!頼むからしっかりしてくれよぉー!
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
天使のような子の怪我の手当てをしたら氷の王子に懐かれました
藤吉めぐみ
BL
12/23後日談追加しました。
=================
高校の養護教諭の世凪は、放課後の見回り中にプールに落ちてしまう。カナヅチの世凪は、そのまま溺れたと思ったが、気づくと全く知らない場所にある小さな池に座り込んでいた。
ここがどこなのか、何がどうなったのか分からない世凪に、「かあさま」と呼んで近づく小さな男の子。彼の怪我の手当てをしたら、世凪は不審者として捕まってしまう。
そんな世凪を助けてくれたのは、「氷の王子」と呼ばれるこの国の第二王子アドウェル。
冷淡で表情も変わらない人だと周りに言われたが、世凪に対するアドウェルは、穏やかで優しくて、理想の王子様でドキドキしてしまう世凪。でも王子は世凪に母親を重ねているようで……
優しい年下王子様×異世界転移してきた前向き養護教諭の互いを知って認めていくあたたかな恋の話です。
異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる
ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。
アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。
異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。
【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。
αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。
負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。
「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。
庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。
※Rシーンには♡マークをつけます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる