こんなスローライフは想定外!~いつの間にか、親友を虜にしてしまっていたようで!?~

うみくも

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Step12 世界一愛しい日に贈る最高の誓い

お祖父様はお見通し

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 それまで気を抜いていたゼクとジノンは、大きく肩を震わせる。


 その理由は、声をかけられるまで他人の気配に気付けなかったことが一つ。
 もう一つは、声の主が話を聞かれることが非常にまずい相手だったからだ。


「うえっ、フィルのじいさん!? いつの間に!?」


「ほほう。魔族のおさとその嫁に気付かれないとは、わしもまだまだ現役で通せるようだな。」


 壁の陰から姿を現したジェアンは、どこか満足そうにひげをなでる。


 まさかの乱入者にゼクは青筋を立て、嫁と言われたことが気恥ずかしいジノンはさっとゼクから離れて姿勢を正した。


「きゅ、急にどうしたんですかい?」


「とうとうアイザックも潰れてしまってな。一人で飲むのもつまらんから外に出てみたら、お前たちが面白い話をしていたもんで聞き耳を立てていたわけさ。」


「そ、そうですか……」


「んなビビるなや。フィルにきつく言わとるから、魔族だからといって喧嘩を売るようなことはせんよ。もうお前らしか残っとらんから、少し付き合え。」


 最初から飲ませるつもりだったのだろう。
 ジェアンの手には、大きな酒瓶と三つのグラスが持たれていた。


「な、なんか拍子抜けですね…。こんなあっさりと受け入れられるとは……」


「何を言うか。中で酔い潰れておる連中、大半が魔族だろう? 受け入れておらんかったら、ここに来た瞬間に引き返しとるわ。」


「……げっ!? じいさん、擬態した魔族を見抜けるんですかい!?」


「半世紀以上も魔獣から領地を守ってきたんだ。そのくらい、経験と勘で分かるわい。とはいえ、こういううたげでは気をつけるんだな。何人かは擬態が解けちまってるぞ。人間から先に酔い潰したから、今日のところは問題ないだろうが。」


「そ、それは大変なお気遣いを……面目ない。」


「気にするな。どうせ、最後には全員潰すつもりだったんだ。潰す順番なんぞ、大した問題じゃないわい。それより、ちょうどいいから訊きたいんだが……」


 グラスに注いだ酒を一気にあおるジェアン。
 その後深く息をついた彼の目が、スッとわった。


「あいつら、いつから恋仲になりやがった。」
「ブ―――ッ!!!!」


 揃って口に含んでいた酒を噴き出すゼクとジノン。
 さすがに、こんな質問が飛んでくるとは想像もしていなかったのだ。


「…………少なくとも、一年は前かと。」


 ここまで派手に反応しておいてはしらを切ることができず、ゼクは素直に答えるしかない。


 その答えを聞いたジェアンは、一度大きく顔をしかめて―――


「はあぁー、やっぱりこうなったか。」


 深い溜め息と共に、がっくりと肩を落とした。


「………え?」


 大噴火を覚悟していたゼクは、これまた予想外の展開に目をまたたく。
 対するジェアンは、至って冷静そうな様子で酒をグラスに注いだ。


「小さい頃から、あの二人は互いが一番だったんだ。あれだけ慕い合える関係というのも、そうそうないだろう。正直、どちらかが女だったなら、さっさと結婚させていたさ。」


「えっと……それはつまり、あの二人の関係を認めるということで?」


「仕方ないだろう。トラウマに飲まれて自分を追い詰めていたフィルを明るい場所に導いたのも、誰よりも近い場所でフィルを支え続けてきたのもノクスなんだからな。……まあ、可愛い孫を取られた悔しさはあるから、しばらくは冷や汗をかかせてやるがな。」


 悔しいと言いながらも、ジェアンの表情は穏やかなもの。
 さらに酒をあおってグラスを空にした彼は、ふと空で揺らめくオーロラを見つめる。


「貴族の務めとはいえ、ソフィアには望まぬ結婚をいてしまった。その上、あちらでは幸せとは言えない生活を送っていたというのだから、親としてはがゆい限りだ。だからこそ……せめて、フィルにはソフィアの分まで幸せに生きてほしい。」


 その瞳に宿るのは、娘と孫に向けた愛情と後悔と、ほんの少しの寂しさ。


「……飲みましょうや。」


 しばしの無言の後、ゼクはジェアンに向かってグラスを掲げる。


「正直、親心ってやつは分かりませんが、俺もそれなりに長く生きてきました。こう見えて苦労性なんで、しんみりして辛気臭い話にはいくらでも付き合えますよ。」


「……はは、そりゃあいい。なら、老い先が短くなってきたじじいの話でも聞いてもらうとするか。」


「ご冗談を。あなたほど元気な魂なら、あと三十年は安泰でしょうよ。死神もビビって近寄れませんって。」


「お前、なかなか言うな。そこまで言うなら、日が昇るまで飲んでも文句はないな?」


「ええー、勘弁してくださいよ。」


 互いに軽口を叩きながら、コツンとグラスをぶつける。
 盛り上がりは一転、その後の時間は静かに穏やかに過ぎ去っていった。

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