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1巻
1-1
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第一願 神様、どうか雨が降りますように
大阪府こなもん市にあるかつおぶし天満宮の本殿、そのさらに奥に、猫神社と呼ばれる小さな奥宮がある。
そこには神の使者――神使として働く猫宮司がいるという。
その神社で心から願えば、どんな願いでも猫宮司が叶えてくれるらしい。
そう、たとえば……死んでしまった人にすら会わせてくれるのだと――
♢ ♢ ♢
はあはあと息を切らしながら、虹林香澄はかつおぶし天満宮へと続く石段を上っていく。死んでしまった祖母にもう一度会うために。自分たちの店を守るために。
「本当に、あった」
本殿横を通り抜け奥へと進むと、そこには『守護天神』と書かれた小さな宮と、そして一匹の猫の姿があった。その猫こそ、神の使い、猫宮司だった。
♢ ♢ ♢
大阪府こなもん市のJRこなもん駅以北に位置する、ほほえみ商店街の中にある喫茶レインボウ。そこが香澄の職場であり、五歳から育った家だった。
その日、香澄は朝からレインボウで出す新作メニューを考えていた。
夕方、店を閉め、晩ご飯を食べたあと、香澄は喫茶店の二階にある自宅のキッチンにいた。トーストに何を挟むのが一番いいか、先程から作り続けているのだ。
毎日来てくれる商店街の人たちから「何か変わり種が欲しい」と言われたからだ。
変わり種といっても不味い物が食べたいとか珍味が欲しいとか、そういうことではないのを香澄はわかっていた。ただみんな少しだけ、この変わらない日常に刺激が欲しいのだ。
喫茶レインボウは今流行りのカフェではなく、昔ながらの喫茶店だ。香澄の祖母である弥生が、今は亡き香澄の祖父とともに若い頃に始めた。
あの頃は活気があったと、弥生や商店街の他の店主たちが集まるたびに言っているのを聞きながら、香澄は育った。
両親を五歳のときに亡くした香澄にとって、弥生や商店街の人たちが家族のようなものだった。香澄が物心つく前に亡くなってしまった祖父も、随分と香澄を可愛がっていた。その様子は今も写真に残されている。
小さく切った食パンにブルーベリーと苺ジャムをダブルで載せると、香澄はそれを口に放り込んだ。苺とブルーベリーの甘酸っぱさがマッチして意外と美味しいのだけれど、いかんせん口の中が甘すぎる。
これを店のメニューに加えると、健康診断で引っかかる人を増やしてしまいそうだ。やはり健康志向の方がいいだろうか。
香澄はそんなことを考えながら、ふう、とため息を吐くと、窓ガラスに映る自分の顔を見た。
丸顔の香澄はいつまでも年齢より幼く見られる。けれどそんな香澄ももう二十五歳だ。
まだ若いけれど、十代の頃よりは確実に老けた気がする。学生のときに頭髪検査でよく引っかかった薄茶色の髪は、いつの間にか肩よりも長くなっている。そういえば最近、美容院に行ってないな。
そんなことを思いながら、香澄はもう一口トーストを囓る。今度は林檎のコンポートを食パンに載せてみた。先程よりは甘さが控えめでいい感じだ。
「あと二つ作ったんだけど、うーん」
一口サイズとはいえ、夕飯後にいくつも食べるのは苦しい。
そろそろ自分で味見をするのが限界になり、リビングにいる弥生にも食べてもらおうと、香澄は声をかけた。
「おばあちゃん、海苔トーストと餡トーストどっちがいいか食べてみてー」
随分と大阪に馴染んだものの、どうしても両親と暮らしていたときの言葉やイントネーションが抜けない。
小学生の頃は随分からかわれたけれど、弥生は「そんなん気にせんでええ。どんな風に喋っても、香澄は香澄やさかい」と優しく言ってくれた。
だから、香澄は恥じることなく生まれ育った街の言葉で今も話している。
香澄がお皿にトーストを載せながら「私なら海苔、いやでもここは甘い方が」なんて呟いても、一向に弥生がキッチンに来る気配がない。
テレビを見ているのか、ニュースキャスターの声だけがやけに響いている。
「おばあちゃん……? 寝ちゃったの?」
弥生は最近リビングで寝てしまうことがよくある。年のせいだけじゃなく、疲れているせいもあるのだろうと、香澄は申し訳なくなった。
いくら元気だからといっても弥生ももう七十一だ。とっくに隠居していても不思議ではないのに、弥生はまだ喫茶店で働いていた。
本人がまだまだいけると言う上に、この辺りの商店街では七十どころか八十や九十になっても現役で働いている人もいる。
この間も弥生は、「まだまだ若いやろ」と金物屋の澤に言われていた。そんな澤はつい先日の誕生日で九十歳になったというから驚きだ。
二十五歳の香澄が、まるで赤子のような扱いをされるのも仕方ないのかもしれない。
それでも、ここ数日は疲れが出ているようで、弥生は早めに休んだり、こうやってテレビを見ながら寝たりしてしまうことが増えた。
今は毎日店に出ているけれど、週に何日か休んでもらう日を作ってもいいのかもしれない。
香澄がそんなことを考えながらリビングに向かうと、予想通り、テレビの前でうたた寝をしている弥生の姿があった。
「おばあちゃん、そんなところで寝てると風邪引くよ」
身体を揺すってみるけれど反応がない。それどころか弥生は身動ぎ一つしなかった。
嫌な予感に香澄は背筋が冷たくなるのを感じた。
「おばあちゃん! ねえ、おばあちゃんってば」
どれだけ声をかけても反応のない弥生に、香澄は頭の中が真っ白になっていく。
そしてようやく絞り出すように声を出した。
「きゅう、きゅ、うしゃ……」
震える指でスマホを操作する。スワイプ一つするのにも上手く指が動かず、何度も失敗してしまう。
「ああっ、もう」
何度目かのタップでようやく電話は繋がった。
『はい、119番です。火事ですか? 救急ですか?』
「あ、あのっ、救急で……おばあちゃんが……」
声が震えて上手く話せない。喉の奥がつかえたようになって、伝えたいことが溢れてくるのに、言葉が出ない。
「う、動かなくて……倒れてて……」
『大丈夫です。ゆっくりでいいですよ。今どちらにいらっしゃいますか?』
「こ……こなもん市の青のり町三丁目、二番地の家です! あの、おばあちゃんが……」
『わかりました。救急車を向かわせます。ご安心ください』
「で、でも! おばあちゃんが」
『呼吸はしていますか? 意識はありますか?』
混乱する香澄を落ち着かせるように、オペレーターは柔らかな口調で問いかける。
香澄はカタカタと震えながら、恐る恐る弥生の頬に触れた。
その頬はひんやりしていて、思わず手を引っ込めそうになる。
けれど――
「あっ……」
……かすかに、あたたかい息が香澄の手に触れた気がした。
香澄は小さく震える指先を、そっと弥生の鼻先へ近づけた。
「目、開けないけど……息はしてます……」
『ありがとうございます。そのままそばにいてあげてください。救急隊がすぐに向かいます』
オペレーターの静かで優しい言葉に少しだけ安心する。
「……はいっ……」
溢れてくる涙と嗚咽を堪えながら、香澄は震える手で弥生の手を握りしめた。
香澄はその場にへたり込む。壁にかけた時計の針の音が、妙に大きく聞こえた気がした。
――どれぐらいの時間が経っただろう。
遠くから救急車のサイレンが聞こえてきた。窓ガラスに赤いランプが映っているのが見えて、香澄は慌てて一階へと駆け下り、ドアを開けた。
「こっちです」
香澄の案内で、救急隊員は手早く弥生を救急車に乗せた。
「おばあちゃん」
香澄が呼びかけると、弥生は小さく身体を震わせ、薄らと目を開けた。
その手を香澄はギュッと握りしめる。ほんの少しだけ弥生の口が動いた。
「何? おばあちゃん、何が言いたいの?」
「か、す……み……あ……」
「おばあちゃんっ」
弥生は何かを言いかけたけれど、香澄はそれを上手く聞き取れないまま、再び弥生の目は閉じられた。
――そして二度と開くことはなかった。
そのあとのことを香澄はよく覚えていない。心配した商店街の人たちが病院に駆けつけてくれて、弥生の通夜や葬式の手配をしてくれた。
香澄はただ呆然としたままたくさんの人からかけられる「可哀想に」という言葉を聞き続けていた。
♢ ♢ ♢
ふと気づくと朝だった。昨夜、カーテンを閉め忘れたのか、部屋に入ってくる光が眩しくて香澄は目を細める。
そうだ、レインボウの開店準備をしなければ。香澄は妙に重い身体を引きずるようにして一階に下りた。いつものように店の窓を開け、空気を入れ換える。店内が妙に埃っぽいのはどうしてだろう。昨日もちゃんと掃除をしたはずなのに。
「昨日?」
それは本当に? わからない。上手く思い出せない。でも、そんなことどうでもいい。
香澄はドアを開け『オープン』と書かれた札をかけると、キッチンに向かった。
モーニングの準備をしようと冷蔵庫を開ける。けれど、中は空っぽで機械音だけが響いていた。
「どうして……?」
レインボウで出している料理の材料は、全て地元のお店で仕入れている。
仕入れているといえば格好がいいけれど、実際は前日の夕方に香澄が買い出しに行っているのだ。
なので、昨日もいつも通り夕方には買い物に行ったはずだ。
それで、確か――
「……あれ?」
昨日買ってきたものを思い出そうとするのに、いくら考えても思い出せない。
行ったはずだよね? ううん、今はそれよりも。
これでは今日は店を開けることができない。いや、今から買いに行けば間に合うかもしれない。
冷蔵庫を閉める香澄の耳に、ドアベルの音が聞こえた。
「いらっしゃいませ。すみません、今――」
「香澄ちゃん、何してんねん」
そこにはほほえみ商店街でカレー屋を営む雲井とその妻である亜矢の姿があった。
二人はエコバッグを持っていて、中には何かが入っているようだった。
慌てたように入ってくる二人に、香澄は笑顔を作る。
「あ、雲井さんに亜矢さん。おはようございます。ちょっと待ってくださいね。私、昨日買い物忘れちゃったみたいで冷蔵庫空っぽなんです。だから、今から行ってくるんで」
「買い物って……昨日はそれどころとちゃうかったやろ」
「え、あ……」
瞬間、香澄の脳裏に昨日の、そして弥生が倒れていたときの光景が鮮明によみがえる。昨日は弥生のお葬式。買い物になんて行けるはずがない。
店内が埃っぽいのも、弥生が死んだ日からそのままになっていたから――
「おばあちゃん……」
どんなに香澄がいつも通り振る舞っても、もう弥生はどこにもいない。
昨日、雲井をはじめとした商店街の人たちと一緒に弥生を見送ったのだ。もう二度と会えない。
「……昨日は、ありがとうございました」
深々と頭を下げる香澄を見て、雲井は「香澄ちゃん」と静かに名前を呼んだ。
「そないなこと言うてほしいんとちゃう。なんで店開けようとしてるんやって聞いてんねん。弥生さんが亡くなったいうのに」
雲井の言葉に、香澄はなんとか笑顔を浮かべようとして、けれどどうしても笑えなくて、結局、苦笑いを浮かべることしかできなかった。
「おばあちゃんが死んだからってお店閉めてたら、怒られちゃいます」
「そんなわけないやろ。ええからとにかくここ座り。朝はなんか食べたんか?」
雲井は香澄の肩を掴むと、カウンターの椅子に座らせた。
香澄を挟むように雲井たちが横の椅子に座る。
「朝ご飯、ですか? えっと」
雲井の言葉を聞いて、香澄はそういえば朝食を食べていないことに気がついた。
いや、朝食だけじゃない。昨日の夕食も、その前も――
黙ってしまった香澄に、雲井は眉をひそめた。
「まさかと思うけど、あの日から食べてへんいうこと、ないやろな?」
雲井の言うあの日が、三日前、弥生が死んだ日を指していることは明白だった。
香澄は誤魔化すように笑ってみせるけれど、そんな香澄に二人はため息を吐いた。
「なんか食べたいもんあるか? 色々買うてきたし、遠慮せんと言うてや」
雲井はエコバッグを開けると、おにぎりやお粥のレトルトパックが入っているのを見せてくれる。けれど香澄は首を横に振った。
「お腹、空いてなくて」
嘘ではなかった。空腹を感じないのだ。
不思議な感覚だった。別に具合が悪いわけではない。食欲がない、という感じとも違う。ただお腹が空いていない。それだけだった。
けれどそんな香澄に雲井は小さく首を横に振った。
「……香澄ちゃん、それはな空いてないんやなくて食べられへんねや」
「え?」
「大丈夫、元気やって顔してるけどな、ほんまは全然大丈夫と違うんちゃうか? 無理、せんでもええんやで」
そんなことないです、と否定したかった。大丈夫です、一人でも頑張れますと言いたかった。
けれど、口を開いても喉の奥が締まったように苦しくて、上手く言葉が出てこない。それどころか、気づけば香澄の頬を涙が伝っていた。
「どう、して……」
どうしてこんなに心配してくれるのだろう。同じ商店街に住んでいるとはいえ、赤の他人だ。なのに、どうして。
香澄の問いかけに、雲井は優しく微笑んだ。
「弥生さんから頼まれてたんや。自分に何かあったら香澄ちゃんのことを頼むってな」
「おばあちゃんが」
「そうや」
弥生の名前を聞いて、香澄の胸の奥がきゅっと締め付けられる。そんなこと思いもしなかった。
涙を拭うことも忘れて呆然とする香澄の頬に、亜矢がそっとハンドタオルを当てた。
「みんな、心配してんねんで。澤さんも田神さんも、他にもみんな、香澄ちゃんのことを心配してんねん」
「ごめ、な……さ、い……」
「謝らんでええんよ。そうやないの。私たちはね、みんな香澄ちゃんに頼ってほしいねん。一人じゃないんや。みんながついてるんやで」
亜矢は香澄の手をギュッと握りしめた。その手のぬくもりがあまりにも優しくて、香澄は涙が止まらなくなる。
一人じゃないのだと、そう思えただけで、真っ暗だった世界にほんの少しだけど色がついたようなそんな気がした。
ありがとうと伝えたいのに、口をついて出るのは嗚咽ばかりで上手く言葉が出てこない。そんな香澄の背中を、亜矢は優しく撫で続けた。
その日、香澄は三日ぶりに食事をとった。
おにぎりはどうしても胃が受け付けなかったのでレトルトのお粥を温めた。具も何も入っていないただのお粥のはずなのに、涙が溢れるほど美味しかった。
自分は生きているんだと改めて思わされる。
「頑張ろう」
香澄は小さく呟いた。
弥生がいなくなったとしても、香澄は生きていかなければいけないのだ。悲しくても辛くても、弥生が育ててくれた命を大事にしなければいけない。それが今の香澄にできる唯一の恩返しだった。
そう決めてからの香澄の変化は早かった。
♢ ♢ ♢
翌日は弥生が生きていたときと同じように、香澄は六時には起きて朝ご飯を作った。一人で食べる朝ご飯は切なかったけれど、それでも顔を上げて最後まで食べきった。
そのあと『明日から営業を再開します』と書いた紙を扉に貼り、それからレインボウの掃除をした。四日間放置された店内は、埃が溜まっていたり窓が汚れていたりした。香澄は机を一つ一つ拭いて床を掃く。弥生が残してくれたレインボウを自分が受け継ぎ、守っていくのだと噛みしめながら。
四日ぶりにレインボウの扉を開けて掃除をしていると、商店街の人たちが代わる代わる顔を出してくれた。
弥生が生きていた頃と同じように笑顔が溢れる店内に、自然と香澄の表情も緩む。
「私、頑張るから」
――だから、見ててね。おばあちゃん。
キッチンに置いた弥生の写真に向かって香澄は小さく、けれど寂しげな笑みを浮かべた。
何も出せる物はないけれどとりあえず、と香澄がコーヒーを淹れていると、誰かが店内に入ってくる気配がした。
また商店街の人だろうか、そう思いながら香澄が顔を上げると、そこには見覚えのない男性が立っていた。
「あ、すみません。今日はやってないんです。明日から再開しますので、よければ――」
香澄の声を無視して、その男性は店内を見回し、肩をすくめた。
いったいなんなのだろう。そう思いながら、香澄は男性を見る。
黒のジャケットにグレーのTシャツを着て、黒のスラックスを穿いたその人は、店内をあちこち歩き回っている。
談笑していた雲井たちもその男性の行動を不審に思ったのか、怪訝そうに見つめていた。
「あの……」
もう一度香澄が声をかけると、その人は香澄をジッと見て口を開いた。
「虹林弥生さんが亡くなったと聞きましたが事実でしょうか」
男性の口から出た弥生の名前に、張り詰めていた店内の空気が和らいだ。
それは香澄も同様で、弥生の知り合いなのかと警戒を解く。
もしかしたら弥生の死を知って、駆けつけてくれたのかもしれない。
先程店内を見回していたのも、もしかしたら弥生が生きているのではと、自分が聞いたことが嘘だったのではないかと、そう思った故の行動だったのでないか。
そう思うと、香澄は目の前の男性への感情が変わっていくのを感じる。
「はい。祖母は四日前に……あの、もしかして生前の祖母とお知り合いでしたか?」
「お知り合い……そうですね、知り合いと言えば知り合いなのかもしれません。ただ、それは俺ではなく祖父の話ですが」
「おじい、さま?」
話についていけず首をかしげる香澄に、男性はジャケットの胸ポケットから一通の古びた封筒を取り出して見せた。
香澄は差し出された封筒をおずおずと受け取る。すると、裏に弥生の名前が書いてあることに気づいた。
「これは」
「祖父が生前の弥生さんから渡された遺言書です」
「遺言書? おばあちゃんが?」
寝耳に水とはまさにこのことだった。
そんなものの存在を香澄は知らなかったし、それをまさか初対面の男性から手渡されるなんて思ってもみなかった。けれどそこに書かれた文字は、レジ横に貼ってあるメモの弥生の字とよく似ていて、偽物だと否定することはできなかった。
大阪府こなもん市にあるかつおぶし天満宮の本殿、そのさらに奥に、猫神社と呼ばれる小さな奥宮がある。
そこには神の使者――神使として働く猫宮司がいるという。
その神社で心から願えば、どんな願いでも猫宮司が叶えてくれるらしい。
そう、たとえば……死んでしまった人にすら会わせてくれるのだと――
♢ ♢ ♢
はあはあと息を切らしながら、虹林香澄はかつおぶし天満宮へと続く石段を上っていく。死んでしまった祖母にもう一度会うために。自分たちの店を守るために。
「本当に、あった」
本殿横を通り抜け奥へと進むと、そこには『守護天神』と書かれた小さな宮と、そして一匹の猫の姿があった。その猫こそ、神の使い、猫宮司だった。
♢ ♢ ♢
大阪府こなもん市のJRこなもん駅以北に位置する、ほほえみ商店街の中にある喫茶レインボウ。そこが香澄の職場であり、五歳から育った家だった。
その日、香澄は朝からレインボウで出す新作メニューを考えていた。
夕方、店を閉め、晩ご飯を食べたあと、香澄は喫茶店の二階にある自宅のキッチンにいた。トーストに何を挟むのが一番いいか、先程から作り続けているのだ。
毎日来てくれる商店街の人たちから「何か変わり種が欲しい」と言われたからだ。
変わり種といっても不味い物が食べたいとか珍味が欲しいとか、そういうことではないのを香澄はわかっていた。ただみんな少しだけ、この変わらない日常に刺激が欲しいのだ。
喫茶レインボウは今流行りのカフェではなく、昔ながらの喫茶店だ。香澄の祖母である弥生が、今は亡き香澄の祖父とともに若い頃に始めた。
あの頃は活気があったと、弥生や商店街の他の店主たちが集まるたびに言っているのを聞きながら、香澄は育った。
両親を五歳のときに亡くした香澄にとって、弥生や商店街の人たちが家族のようなものだった。香澄が物心つく前に亡くなってしまった祖父も、随分と香澄を可愛がっていた。その様子は今も写真に残されている。
小さく切った食パンにブルーベリーと苺ジャムをダブルで載せると、香澄はそれを口に放り込んだ。苺とブルーベリーの甘酸っぱさがマッチして意外と美味しいのだけれど、いかんせん口の中が甘すぎる。
これを店のメニューに加えると、健康診断で引っかかる人を増やしてしまいそうだ。やはり健康志向の方がいいだろうか。
香澄はそんなことを考えながら、ふう、とため息を吐くと、窓ガラスに映る自分の顔を見た。
丸顔の香澄はいつまでも年齢より幼く見られる。けれどそんな香澄ももう二十五歳だ。
まだ若いけれど、十代の頃よりは確実に老けた気がする。学生のときに頭髪検査でよく引っかかった薄茶色の髪は、いつの間にか肩よりも長くなっている。そういえば最近、美容院に行ってないな。
そんなことを思いながら、香澄はもう一口トーストを囓る。今度は林檎のコンポートを食パンに載せてみた。先程よりは甘さが控えめでいい感じだ。
「あと二つ作ったんだけど、うーん」
一口サイズとはいえ、夕飯後にいくつも食べるのは苦しい。
そろそろ自分で味見をするのが限界になり、リビングにいる弥生にも食べてもらおうと、香澄は声をかけた。
「おばあちゃん、海苔トーストと餡トーストどっちがいいか食べてみてー」
随分と大阪に馴染んだものの、どうしても両親と暮らしていたときの言葉やイントネーションが抜けない。
小学生の頃は随分からかわれたけれど、弥生は「そんなん気にせんでええ。どんな風に喋っても、香澄は香澄やさかい」と優しく言ってくれた。
だから、香澄は恥じることなく生まれ育った街の言葉で今も話している。
香澄がお皿にトーストを載せながら「私なら海苔、いやでもここは甘い方が」なんて呟いても、一向に弥生がキッチンに来る気配がない。
テレビを見ているのか、ニュースキャスターの声だけがやけに響いている。
「おばあちゃん……? 寝ちゃったの?」
弥生は最近リビングで寝てしまうことがよくある。年のせいだけじゃなく、疲れているせいもあるのだろうと、香澄は申し訳なくなった。
いくら元気だからといっても弥生ももう七十一だ。とっくに隠居していても不思議ではないのに、弥生はまだ喫茶店で働いていた。
本人がまだまだいけると言う上に、この辺りの商店街では七十どころか八十や九十になっても現役で働いている人もいる。
この間も弥生は、「まだまだ若いやろ」と金物屋の澤に言われていた。そんな澤はつい先日の誕生日で九十歳になったというから驚きだ。
二十五歳の香澄が、まるで赤子のような扱いをされるのも仕方ないのかもしれない。
それでも、ここ数日は疲れが出ているようで、弥生は早めに休んだり、こうやってテレビを見ながら寝たりしてしまうことが増えた。
今は毎日店に出ているけれど、週に何日か休んでもらう日を作ってもいいのかもしれない。
香澄がそんなことを考えながらリビングに向かうと、予想通り、テレビの前でうたた寝をしている弥生の姿があった。
「おばあちゃん、そんなところで寝てると風邪引くよ」
身体を揺すってみるけれど反応がない。それどころか弥生は身動ぎ一つしなかった。
嫌な予感に香澄は背筋が冷たくなるのを感じた。
「おばあちゃん! ねえ、おばあちゃんってば」
どれだけ声をかけても反応のない弥生に、香澄は頭の中が真っ白になっていく。
そしてようやく絞り出すように声を出した。
「きゅう、きゅ、うしゃ……」
震える指でスマホを操作する。スワイプ一つするのにも上手く指が動かず、何度も失敗してしまう。
「ああっ、もう」
何度目かのタップでようやく電話は繋がった。
『はい、119番です。火事ですか? 救急ですか?』
「あ、あのっ、救急で……おばあちゃんが……」
声が震えて上手く話せない。喉の奥がつかえたようになって、伝えたいことが溢れてくるのに、言葉が出ない。
「う、動かなくて……倒れてて……」
『大丈夫です。ゆっくりでいいですよ。今どちらにいらっしゃいますか?』
「こ……こなもん市の青のり町三丁目、二番地の家です! あの、おばあちゃんが……」
『わかりました。救急車を向かわせます。ご安心ください』
「で、でも! おばあちゃんが」
『呼吸はしていますか? 意識はありますか?』
混乱する香澄を落ち着かせるように、オペレーターは柔らかな口調で問いかける。
香澄はカタカタと震えながら、恐る恐る弥生の頬に触れた。
その頬はひんやりしていて、思わず手を引っ込めそうになる。
けれど――
「あっ……」
……かすかに、あたたかい息が香澄の手に触れた気がした。
香澄は小さく震える指先を、そっと弥生の鼻先へ近づけた。
「目、開けないけど……息はしてます……」
『ありがとうございます。そのままそばにいてあげてください。救急隊がすぐに向かいます』
オペレーターの静かで優しい言葉に少しだけ安心する。
「……はいっ……」
溢れてくる涙と嗚咽を堪えながら、香澄は震える手で弥生の手を握りしめた。
香澄はその場にへたり込む。壁にかけた時計の針の音が、妙に大きく聞こえた気がした。
――どれぐらいの時間が経っただろう。
遠くから救急車のサイレンが聞こえてきた。窓ガラスに赤いランプが映っているのが見えて、香澄は慌てて一階へと駆け下り、ドアを開けた。
「こっちです」
香澄の案内で、救急隊員は手早く弥生を救急車に乗せた。
「おばあちゃん」
香澄が呼びかけると、弥生は小さく身体を震わせ、薄らと目を開けた。
その手を香澄はギュッと握りしめる。ほんの少しだけ弥生の口が動いた。
「何? おばあちゃん、何が言いたいの?」
「か、す……み……あ……」
「おばあちゃんっ」
弥生は何かを言いかけたけれど、香澄はそれを上手く聞き取れないまま、再び弥生の目は閉じられた。
――そして二度と開くことはなかった。
そのあとのことを香澄はよく覚えていない。心配した商店街の人たちが病院に駆けつけてくれて、弥生の通夜や葬式の手配をしてくれた。
香澄はただ呆然としたままたくさんの人からかけられる「可哀想に」という言葉を聞き続けていた。
♢ ♢ ♢
ふと気づくと朝だった。昨夜、カーテンを閉め忘れたのか、部屋に入ってくる光が眩しくて香澄は目を細める。
そうだ、レインボウの開店準備をしなければ。香澄は妙に重い身体を引きずるようにして一階に下りた。いつものように店の窓を開け、空気を入れ換える。店内が妙に埃っぽいのはどうしてだろう。昨日もちゃんと掃除をしたはずなのに。
「昨日?」
それは本当に? わからない。上手く思い出せない。でも、そんなことどうでもいい。
香澄はドアを開け『オープン』と書かれた札をかけると、キッチンに向かった。
モーニングの準備をしようと冷蔵庫を開ける。けれど、中は空っぽで機械音だけが響いていた。
「どうして……?」
レインボウで出している料理の材料は、全て地元のお店で仕入れている。
仕入れているといえば格好がいいけれど、実際は前日の夕方に香澄が買い出しに行っているのだ。
なので、昨日もいつも通り夕方には買い物に行ったはずだ。
それで、確か――
「……あれ?」
昨日買ってきたものを思い出そうとするのに、いくら考えても思い出せない。
行ったはずだよね? ううん、今はそれよりも。
これでは今日は店を開けることができない。いや、今から買いに行けば間に合うかもしれない。
冷蔵庫を閉める香澄の耳に、ドアベルの音が聞こえた。
「いらっしゃいませ。すみません、今――」
「香澄ちゃん、何してんねん」
そこにはほほえみ商店街でカレー屋を営む雲井とその妻である亜矢の姿があった。
二人はエコバッグを持っていて、中には何かが入っているようだった。
慌てたように入ってくる二人に、香澄は笑顔を作る。
「あ、雲井さんに亜矢さん。おはようございます。ちょっと待ってくださいね。私、昨日買い物忘れちゃったみたいで冷蔵庫空っぽなんです。だから、今から行ってくるんで」
「買い物って……昨日はそれどころとちゃうかったやろ」
「え、あ……」
瞬間、香澄の脳裏に昨日の、そして弥生が倒れていたときの光景が鮮明によみがえる。昨日は弥生のお葬式。買い物になんて行けるはずがない。
店内が埃っぽいのも、弥生が死んだ日からそのままになっていたから――
「おばあちゃん……」
どんなに香澄がいつも通り振る舞っても、もう弥生はどこにもいない。
昨日、雲井をはじめとした商店街の人たちと一緒に弥生を見送ったのだ。もう二度と会えない。
「……昨日は、ありがとうございました」
深々と頭を下げる香澄を見て、雲井は「香澄ちゃん」と静かに名前を呼んだ。
「そないなこと言うてほしいんとちゃう。なんで店開けようとしてるんやって聞いてんねん。弥生さんが亡くなったいうのに」
雲井の言葉に、香澄はなんとか笑顔を浮かべようとして、けれどどうしても笑えなくて、結局、苦笑いを浮かべることしかできなかった。
「おばあちゃんが死んだからってお店閉めてたら、怒られちゃいます」
「そんなわけないやろ。ええからとにかくここ座り。朝はなんか食べたんか?」
雲井は香澄の肩を掴むと、カウンターの椅子に座らせた。
香澄を挟むように雲井たちが横の椅子に座る。
「朝ご飯、ですか? えっと」
雲井の言葉を聞いて、香澄はそういえば朝食を食べていないことに気がついた。
いや、朝食だけじゃない。昨日の夕食も、その前も――
黙ってしまった香澄に、雲井は眉をひそめた。
「まさかと思うけど、あの日から食べてへんいうこと、ないやろな?」
雲井の言うあの日が、三日前、弥生が死んだ日を指していることは明白だった。
香澄は誤魔化すように笑ってみせるけれど、そんな香澄に二人はため息を吐いた。
「なんか食べたいもんあるか? 色々買うてきたし、遠慮せんと言うてや」
雲井はエコバッグを開けると、おにぎりやお粥のレトルトパックが入っているのを見せてくれる。けれど香澄は首を横に振った。
「お腹、空いてなくて」
嘘ではなかった。空腹を感じないのだ。
不思議な感覚だった。別に具合が悪いわけではない。食欲がない、という感じとも違う。ただお腹が空いていない。それだけだった。
けれどそんな香澄に雲井は小さく首を横に振った。
「……香澄ちゃん、それはな空いてないんやなくて食べられへんねや」
「え?」
「大丈夫、元気やって顔してるけどな、ほんまは全然大丈夫と違うんちゃうか? 無理、せんでもええんやで」
そんなことないです、と否定したかった。大丈夫です、一人でも頑張れますと言いたかった。
けれど、口を開いても喉の奥が締まったように苦しくて、上手く言葉が出てこない。それどころか、気づけば香澄の頬を涙が伝っていた。
「どう、して……」
どうしてこんなに心配してくれるのだろう。同じ商店街に住んでいるとはいえ、赤の他人だ。なのに、どうして。
香澄の問いかけに、雲井は優しく微笑んだ。
「弥生さんから頼まれてたんや。自分に何かあったら香澄ちゃんのことを頼むってな」
「おばあちゃんが」
「そうや」
弥生の名前を聞いて、香澄の胸の奥がきゅっと締め付けられる。そんなこと思いもしなかった。
涙を拭うことも忘れて呆然とする香澄の頬に、亜矢がそっとハンドタオルを当てた。
「みんな、心配してんねんで。澤さんも田神さんも、他にもみんな、香澄ちゃんのことを心配してんねん」
「ごめ、な……さ、い……」
「謝らんでええんよ。そうやないの。私たちはね、みんな香澄ちゃんに頼ってほしいねん。一人じゃないんや。みんながついてるんやで」
亜矢は香澄の手をギュッと握りしめた。その手のぬくもりがあまりにも優しくて、香澄は涙が止まらなくなる。
一人じゃないのだと、そう思えただけで、真っ暗だった世界にほんの少しだけど色がついたようなそんな気がした。
ありがとうと伝えたいのに、口をついて出るのは嗚咽ばかりで上手く言葉が出てこない。そんな香澄の背中を、亜矢は優しく撫で続けた。
その日、香澄は三日ぶりに食事をとった。
おにぎりはどうしても胃が受け付けなかったのでレトルトのお粥を温めた。具も何も入っていないただのお粥のはずなのに、涙が溢れるほど美味しかった。
自分は生きているんだと改めて思わされる。
「頑張ろう」
香澄は小さく呟いた。
弥生がいなくなったとしても、香澄は生きていかなければいけないのだ。悲しくても辛くても、弥生が育ててくれた命を大事にしなければいけない。それが今の香澄にできる唯一の恩返しだった。
そう決めてからの香澄の変化は早かった。
♢ ♢ ♢
翌日は弥生が生きていたときと同じように、香澄は六時には起きて朝ご飯を作った。一人で食べる朝ご飯は切なかったけれど、それでも顔を上げて最後まで食べきった。
そのあと『明日から営業を再開します』と書いた紙を扉に貼り、それからレインボウの掃除をした。四日間放置された店内は、埃が溜まっていたり窓が汚れていたりした。香澄は机を一つ一つ拭いて床を掃く。弥生が残してくれたレインボウを自分が受け継ぎ、守っていくのだと噛みしめながら。
四日ぶりにレインボウの扉を開けて掃除をしていると、商店街の人たちが代わる代わる顔を出してくれた。
弥生が生きていた頃と同じように笑顔が溢れる店内に、自然と香澄の表情も緩む。
「私、頑張るから」
――だから、見ててね。おばあちゃん。
キッチンに置いた弥生の写真に向かって香澄は小さく、けれど寂しげな笑みを浮かべた。
何も出せる物はないけれどとりあえず、と香澄がコーヒーを淹れていると、誰かが店内に入ってくる気配がした。
また商店街の人だろうか、そう思いながら香澄が顔を上げると、そこには見覚えのない男性が立っていた。
「あ、すみません。今日はやってないんです。明日から再開しますので、よければ――」
香澄の声を無視して、その男性は店内を見回し、肩をすくめた。
いったいなんなのだろう。そう思いながら、香澄は男性を見る。
黒のジャケットにグレーのTシャツを着て、黒のスラックスを穿いたその人は、店内をあちこち歩き回っている。
談笑していた雲井たちもその男性の行動を不審に思ったのか、怪訝そうに見つめていた。
「あの……」
もう一度香澄が声をかけると、その人は香澄をジッと見て口を開いた。
「虹林弥生さんが亡くなったと聞きましたが事実でしょうか」
男性の口から出た弥生の名前に、張り詰めていた店内の空気が和らいだ。
それは香澄も同様で、弥生の知り合いなのかと警戒を解く。
もしかしたら弥生の死を知って、駆けつけてくれたのかもしれない。
先程店内を見回していたのも、もしかしたら弥生が生きているのではと、自分が聞いたことが嘘だったのではないかと、そう思った故の行動だったのでないか。
そう思うと、香澄は目の前の男性への感情が変わっていくのを感じる。
「はい。祖母は四日前に……あの、もしかして生前の祖母とお知り合いでしたか?」
「お知り合い……そうですね、知り合いと言えば知り合いなのかもしれません。ただ、それは俺ではなく祖父の話ですが」
「おじい、さま?」
話についていけず首をかしげる香澄に、男性はジャケットの胸ポケットから一通の古びた封筒を取り出して見せた。
香澄は差し出された封筒をおずおずと受け取る。すると、裏に弥生の名前が書いてあることに気づいた。
「これは」
「祖父が生前の弥生さんから渡された遺言書です」
「遺言書? おばあちゃんが?」
寝耳に水とはまさにこのことだった。
そんなものの存在を香澄は知らなかったし、それをまさか初対面の男性から手渡されるなんて思ってもみなかった。けれどそこに書かれた文字は、レジ横に貼ってあるメモの弥生の字とよく似ていて、偽物だと否定することはできなかった。
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