こんな私でも、クーデレ幼馴染に「ドキドキしてる」って言わせたい!

null

文字の大きさ
6 / 29
二章 鼓動の音に問いかけて

鼓動の音に問いかけて.1

しおりを挟む
 私は教室の窓越しに、雨で霞む山々をただ上の空で見ていた。

 考えるのは、莉音のこと――ではなく、昨日、唐突に意味の分からないことを口走った蒼井夜重のこと。

 ――『試すのなら、私とにしなさい』。

 うぅん…わけ分からん。

 その前のやり取りから考えると、まるで私が女同士でも恋愛感情を持てるかどうかを夜重自身で試せ、といったような感じだ。

 だけど、そんなのありえない。

 夜重がそんなことを言わなきゃいけない理由が、一つもないじゃん。

 頭はいいけど、時々よく分からなくなる幼馴染のことを考えてたせいで、あっという間に放課後になっていた。

(ま、考えても仕方がないか)

 一日かけて出した答えを無造作に頭のゴミ箱にぽいっと放り込んだ私は、いつものように夜重の姿を探したのだが、彼女の影一つ教室には残っていなかった。

「あれ、夜重は?」

 青葉を呼び止めてそう尋ねると、「夜重なら、放課後になった瞬間外に出てったよ」と言われた。

 おのれ、夜重め…。意味の分からないことを言ってきたくせに、私を避けてやがる。

 お互い、部活に所属してないから、帰り道はだいたい一緒。示し合わせるでもなく、いつも一緒になる。それが普通だった。

「ちぇっ、ありがと」
「ん?なに?すねてんの?」
「は?」青葉の煽るような声に、唇を尖らせて私は答える。「違うよ。夜重がなんの説明もしないから怒ってんの!」

 すると、青葉が首を傾げて尋ねてきた。

「説明?なんの?」
「え、あ、いやぁ…」

 やばい。これは説明できない。なんでか分からないけど、べらべらしゃべらないほうがいい気がする。

 私は適当にその場を誤魔化すと、自分もバックを持って教室を出た。

 昇降口に着いて、もしかすると、ここで夜重が待ってないかなぁと期待したが、彼女の影はやはり残っていない。

(…夜重の馬鹿。いつもいつも、勝手なんだから)

 そうしてイライラしたまま校門を抜けたとき、不意に背後から声をかけられて、私は飛び上がって驚いてしまった。

「祈里」
「ぴぃっ!?」

 変な声出た。従兄弟の飼ってるモルモットの鳴き声みたいな。

 慌てて振り返れば、そこには先に帰ったとばかり思っていた夜重が立っていた。風に流れる髪を片手でなんか抑えたりして、本当に絵になる美少女だ。

 それでさらなる怒りに目覚めた(大げさ)私は、両手を振り下ろしながら夜重に文句を叩きつける。

「もう、夜重!びっくりするじゃん!」
「ご、ごめんなさい」

 率直に謝られ、私は不覚にも言葉を失う。てっきり夜重のことだから、『私がいなくなった時点で、予測ぐらい立てなさい』とでも言うと思っていた。

 こいつ、本当に夜重か…?

 疑いの眼差しで夜重の顔を見つめていると、その視線に気がついた夜重がさっと顔を俯かせた。照れたような行動と染まった頬に、初なアイドルみたいな魅力を覚えたのだが…。

「ん…?」

 まじまじと見つめた夜重の顔。ほんのりと赤い頬は、ただの赤面ではなさそうだった。

「あれ?夜重、ちょっと化粧してる?」
「え、ええ」

 花の女子高生だ。うっすらと化粧をしている生徒なんてそう珍しくもない。そういうのに興味がなさそうな夜重でさえ、二人で出かけるときは軽く化粧をしてくる。

 でも、夜重が学校で化粧をしているなんて初めてのことだった。ってか、さっきまでしてたか?

「珍しいね、学校で化粧なんて」
「まあ…ね。変、かしら?」

 変か、だって?

 私はじろり、と夜重を睨みつける。

 本来、化粧がいらないくらい整った顔立ちにきめ細やかな肌をしているのだ。そんな人間界のメスゴジラみたいなやつが完全武装を始めて、弱くないわけがないだろう。

「なにそれ、嫌味?」と嫌味で返そうとすると、夜重は、「え?」と間抜けな顔をしてみせる。どうやら、嫌味じゃないらしい。

 …だったら、しょうがない。真剣に答えてやるか。

「はぁー…変なわけないじゃん。そういうのもかわいいよ、夜重」
「…ありがとう」
「ぐっ」

 嬉しそうな顔で俯く夜重に、妙な声が出る。

 なんなんだ、今日の――いや、最近の夜重は。全く意味が分からん。女性ホルモンが暴走していて、情緒があれなのか?

 普段のツンケンしている感じは、それはそれで頭にくるときも多いが、やっぱり落ち着くのはそっちだ。

 今の夜重は…こう、むず痒い。

 このままこうしているとなんか余計な話をしそうだと思った私は、「ほら、バス来ちゃうよ」と歩き出したのだが、夜重は動き出すことなく立ち止まっていた。

「夜重?」と声をかける。
「…祈里、久しぶりに歩いて帰らないかしら?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

かつて僕を振った幼馴染に、お月見をしながら「月が綺麗ですね」と言われた件。それって告白?

久野真一
青春
 2021年5月26日。「スーパームーン」と呼ばれる、満月としては1年で最も地球に近づく日。  同時に皆既月食が重なった稀有な日でもある。  社会人一年目の僕、荒木遊真(あらきゆうま)は、  実家のマンションの屋上で物思いにふけっていた。  それもそのはず。かつて、僕を振った、一生の親友を、お月見に誘ってみたのだ。  「せっかくの夜だし、マンションの屋上で、思い出話でもしない?」って。  僕を振った一生の親友の名前は、矢崎久遠(やざきくおん)。  亡くなった彼女のお母さんが、つけた大切な名前。  あの時の告白は応えてもらえなかったけど、今なら、あるいは。  そんな思いを抱えつつ、久遠と共に、かつての僕らについて語りあうことに。  そして、皆既月食の中で、僕は彼女から言われた。「月が綺麗だね」と。  夏目漱石が、I love youの和訳として「月が綺麗ですね」と言ったという逸話は有名だ。  とにかく、月が見えないその中で彼女は僕にそう言ったのだった。  これは、家族愛が強すぎて、恋愛を諦めざるを得なかった、「一生の親友」な久遠。  そして、彼女と一緒に生きてきた僕の一夜の物語。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話

穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

処理中です...