悪魔の俺が天使に一目惚れしてハードモードなんだが!?

萌葱 千佳

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第28話

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 暁宵城は見事復興を遂げ、白と黒で彩られた城は天使と悪魔の共存の象徴として本来の姿を取り戻した。天使と悪魔は活発に天界と魔界を行き来し、暁宵城の城下町は両種族が共に商売をし、買い物を楽しむ場所として賑わっている。そんな今日は、暁宵城の前の広場で俺とエリオットが悪魔長、天使長に就任するセレモニーが開かれていた。

「これより、明星門の取り壊しを行う」

 既に天使と悪魔の人間界での活動時間の制限は撤廃されていたが、明星門自体はそこに残り続けていた。天使と悪魔の共存を果たした今、この門は不要なものとなる。広場から続く大通りの先に位置する明星門へ向かって、エリオットと共に手をかざした。
 天使の光と悪魔の炎、2つの力が混ざり合い、大きなエネルギーとなってまっすぐに明星門に進んでいく。明星門の瓦礫はまるで星の瞬きのように輝いて風の中へと消えていった。一瞬の静寂が訪れた後、広場は大きな歓声に包まれる。

「エリオット様、万歳!」
「レヴァン様こそ我々のリーダーだ!」
 天使と悪魔たちの思い思いの言葉が空気を埋め尽くしていく。無事に明星門の取り壊しを終えた俺たちは、一度控室へと戻った。


「まだセレモニーは続きますよ。もう行ってしまうのですか?」
 エリオットが問い掛けた先には、正装から身軽な恰好に身を包んだ元天使長と元悪魔長がそこにいた。

「私たちの負の遺産だった明星門が消えてなくなるのをこの目で見られて満足した。元より、お前たちに長を引き継ぐことは何も心配していない。きっと、上手くやれるさ」
 2人は離れていた300年間を取り戻すため、長としての役目を俺たちに引き継いでハネムーンに出る。今日は俺たちの就任日であり、2人の門出の日でもあった。

 エリオットが胸に手を置き、2人に向かって一礼する。
「アステリオン様、ザハル様、これまで大変お世話になりました。」
「エリオット」
 元天使長がエリオットに1歩近付く。
「初めてルミナスタワーで言葉を交わした時、私はお前に随分とひどいことを言ってしまったね。申し訳なかった。お前は誰よりも賢く、聡明で、優しい天使だ。だからこそこの世界を安心して任せられる。こうして見送りに来てくれてありがとう」
「アステリオン様……!」

 天使の2人が抱き合って感謝の言葉を伝えているのを見た元悪魔長が、俺に向かって大きく腕を広げる。
「……なんだよ」
「いや、俺たちもするのかなって」
「するわけないだろ、この馬鹿」
「おお、こっわ。まぁでもレヴァンらしいな。もっとも、俺もお前にこの世界を託すのを何も心配していない。お前のそのエリオットをまっすぐに愛する強さは、この世界を守る力にもなる。だからその愛が続く限り、絶対にここは大丈夫だ」
「あぁ、もちろんだ」
 差し出された拳をコツンと重ね合わせる。別れの挨拶を済ませると、2人が顔を見合わせた。


「それでは、私たちはもう行くよ。長い長いハネムーンを楽しんでくる。いつになるかわからないけど、きっとたくさんのお土産を持って帰ってくるから、その日を楽しみにしていてくれ」
「はい。私たちはアステリオン様とザハル様が安心してご旅行を楽しめるように、覚悟と責任をもってこの世界を守り、発展していきます」
 エリオットの言葉に力強く頷くと、2人は満足そうに笑った。

「じゃあね、レヴァン、エリオット。また会う日まで」
 元悪魔長の言葉を最後に、2人は空高く飛び立っていく。その背中が大空の彼方に消えるまで、エリオットと静かに見送っていた。


「……行っちまったか」
「そうだね、少し寂しくなるな」
「まぁ、あの破天荒な2人は、きっとこの自由な旅が向いてるよ」
 エリオットと笑い合うと、お互いに視線を合わせて指を絡ませる。

「そろそろセレモニー会場に戻ろう。私たちを皆が待ってる」
「あぁ、俺たちの手で、より良い世界を作ろう」
 誓い合うようにそっと唇を重ねると、俺たちは歓声の待つほうへと歩みを進めた。


 沸き立つ喝采に迎えられ、2人は白と黒で彩られた石畳の上をしっかりとした足取りで進む。手を取り合うその影はひとつに重なっていた。

 ――これは、愛を貫くために世界を変えた、勇気ある悪魔と天使の物語。
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