10 / 12
第10話
しおりを挟む
あたたかい陽の光を受けて瞼を擦る。目を開けて視界に飛び込んできたのは、恋人の穏やかな寝顔だった。
元々ダリオンがソファで寝るのを何とかしたいと思っていたことから、想いが通じたのを機に寝室のベッドで隣り合って寝ることを提案した。おやすみのキスをして、お互いの体温を感じながら眠りに落ちる。朝になってもすぐ隣に愛おしい体温があるのは、何事にも代えがたい幸せだった。
「ん……カイル……また僕の寝顔見てたの……?」
寝起きの腑抜けた声をすぐ隣で聞かせてくれるのがたまらなく嬉しい。眠そうなダリオンの頬を指先でつつく。
「恋人の特権だろ」
くすぐったそうに笑うダリオンの全部が愛おしい。ぎゅっと身体を抱き締めると、愛する悪魔の体温を噛み締める。
「おはよう、カイル」
「ん、おはよう」
自分の背中にもダリオンのあたたかい腕が回される。毎朝こんなに幸せでいいのか。そんなことを思いながら口を開く。
「まだ眠そうにしてるな。朝食の準備をしてくるから、出来上がったら起こしに来る」
「やだ。僕もカイルと一緒に居たい。起こして?」
自分よりも身体の大きなダリオンがこうして甘えてくれるのがたまらなく愛おしくて、胸が苦しくなる。先にベッドから降りてダリオンの腕を引くと、立ち上がったダリオンが勢い余って俺をぎゅっと抱き締めた。
「……今日もカイルの側に居られて嬉しい。大好き」
恋人になってからというもの、ダリオンは惜しみなく愛を伝えるタイプだと認識した。大好きだよ、愛してる――何度も言葉で、時には口付けで愛を伝えてくれるため、こちらの心臓は高鳴ってばかりだ。
朝食の準備をしながらも、時折ダリオンからの口付けが頬や首筋に降ってくる。挨拶のキスではなく、愛を伝えるキスが増えたのも嬉しくてたまらない。こちらも愛を伝えるように、コーヒーメーカーのセットをするダリオンの頬にそっと口付けを贈った。
恋人になり、ダリオンにこれからも俺の家で暮らしてほしいと告げ、改めてここは2人の家になった。
最初は引っ越しも考えていたが、元々1人で暮らすには少し広い部屋だったので、慣れ親しんだこの家で愛を紡いでいる。ダリオンが魔界の役所に行って住民票を移してきたと言われた時は胸が高鳴った。
ダリオンの体調のほうもかなり回復し、休職からも復帰してまずは時短でできる任務から肩慣らしを始めている。最初は見送られるだけだった玄関で、今では2人揃って家を出られるのが特別なことに思えた。
カウンセリングに通うのも続けているが、ダリオンが安心して向かえるようにと送り迎えは欠かさず行っている。カウンセリングが終わったダリオンと合流して、カフェでゆっくりとした時間を過ごしたり、花屋で部屋に飾る花を選んだりする時間が大切で愛おしかった。
「ねぇ、カイルもピアノ弾いてみない?」
ある日夕食を終えるとダリオンに手を引かれてピアノの前に座る。
「俺は無理だ。弾けないよ。練習したけど続かなかったし、そもそも難しいし」
「僕と一緒でも無理?」
茶目っ気のある笑顔をダリオンが見せる。出会った頃には暗く沈んでいた臙脂色の瞳は、今ではルビーのような深い輝きを見せてくれる。
「……ダリオンと一緒なら、できるかも」
「ふふ、そうでしょ。一緒に練習しよう?」
俺でも弾けるような簡単なメロディーを教えてもらい、それが何とか弾けるようになると、ダリオンの伴奏に合わせてメロディーを奏でる。
「連弾なんて、初めてだ」
「僕も初めてだよ。楽しいね」
ダリオンと想いが音を通じて重なり、2人で奏でる音が1つの音楽として成り立っている。魂がひとつの旋律になったかのように感じ、弾き終わった時には思わずその身体を抱き締めていた。
「カイル、すごく上手だったよ」
「……ピアノって、こんなに楽しかったんだな」
視線を合わせるように、ダリオンの手が頬を支える。
「そうだよ。愛する人と一緒に音を奏でるのって、たまらなく楽しいんだ」
そのままどちらからともなく唇を重ねる。これが、俺たちの愛の形だ。そう思いながら、2人で辿り着いた愛を確かめるように何度も口付けを交わしていた。
元々ダリオンがソファで寝るのを何とかしたいと思っていたことから、想いが通じたのを機に寝室のベッドで隣り合って寝ることを提案した。おやすみのキスをして、お互いの体温を感じながら眠りに落ちる。朝になってもすぐ隣に愛おしい体温があるのは、何事にも代えがたい幸せだった。
「ん……カイル……また僕の寝顔見てたの……?」
寝起きの腑抜けた声をすぐ隣で聞かせてくれるのがたまらなく嬉しい。眠そうなダリオンの頬を指先でつつく。
「恋人の特権だろ」
くすぐったそうに笑うダリオンの全部が愛おしい。ぎゅっと身体を抱き締めると、愛する悪魔の体温を噛み締める。
「おはよう、カイル」
「ん、おはよう」
自分の背中にもダリオンのあたたかい腕が回される。毎朝こんなに幸せでいいのか。そんなことを思いながら口を開く。
「まだ眠そうにしてるな。朝食の準備をしてくるから、出来上がったら起こしに来る」
「やだ。僕もカイルと一緒に居たい。起こして?」
自分よりも身体の大きなダリオンがこうして甘えてくれるのがたまらなく愛おしくて、胸が苦しくなる。先にベッドから降りてダリオンの腕を引くと、立ち上がったダリオンが勢い余って俺をぎゅっと抱き締めた。
「……今日もカイルの側に居られて嬉しい。大好き」
恋人になってからというもの、ダリオンは惜しみなく愛を伝えるタイプだと認識した。大好きだよ、愛してる――何度も言葉で、時には口付けで愛を伝えてくれるため、こちらの心臓は高鳴ってばかりだ。
朝食の準備をしながらも、時折ダリオンからの口付けが頬や首筋に降ってくる。挨拶のキスではなく、愛を伝えるキスが増えたのも嬉しくてたまらない。こちらも愛を伝えるように、コーヒーメーカーのセットをするダリオンの頬にそっと口付けを贈った。
恋人になり、ダリオンにこれからも俺の家で暮らしてほしいと告げ、改めてここは2人の家になった。
最初は引っ越しも考えていたが、元々1人で暮らすには少し広い部屋だったので、慣れ親しんだこの家で愛を紡いでいる。ダリオンが魔界の役所に行って住民票を移してきたと言われた時は胸が高鳴った。
ダリオンの体調のほうもかなり回復し、休職からも復帰してまずは時短でできる任務から肩慣らしを始めている。最初は見送られるだけだった玄関で、今では2人揃って家を出られるのが特別なことに思えた。
カウンセリングに通うのも続けているが、ダリオンが安心して向かえるようにと送り迎えは欠かさず行っている。カウンセリングが終わったダリオンと合流して、カフェでゆっくりとした時間を過ごしたり、花屋で部屋に飾る花を選んだりする時間が大切で愛おしかった。
「ねぇ、カイルもピアノ弾いてみない?」
ある日夕食を終えるとダリオンに手を引かれてピアノの前に座る。
「俺は無理だ。弾けないよ。練習したけど続かなかったし、そもそも難しいし」
「僕と一緒でも無理?」
茶目っ気のある笑顔をダリオンが見せる。出会った頃には暗く沈んでいた臙脂色の瞳は、今ではルビーのような深い輝きを見せてくれる。
「……ダリオンと一緒なら、できるかも」
「ふふ、そうでしょ。一緒に練習しよう?」
俺でも弾けるような簡単なメロディーを教えてもらい、それが何とか弾けるようになると、ダリオンの伴奏に合わせてメロディーを奏でる。
「連弾なんて、初めてだ」
「僕も初めてだよ。楽しいね」
ダリオンと想いが音を通じて重なり、2人で奏でる音が1つの音楽として成り立っている。魂がひとつの旋律になったかのように感じ、弾き終わった時には思わずその身体を抱き締めていた。
「カイル、すごく上手だったよ」
「……ピアノって、こんなに楽しかったんだな」
視線を合わせるように、ダリオンの手が頬を支える。
「そうだよ。愛する人と一緒に音を奏でるのって、たまらなく楽しいんだ」
そのままどちらからともなく唇を重ねる。これが、俺たちの愛の形だ。そう思いながら、2人で辿り着いた愛を確かめるように何度も口付けを交わしていた。
0
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
きみに会いたい、午前二時。
なつか
BL
「――もう一緒の電車に乗れないじゃん」
高校卒業を控えた智也は、これまでと同じように部活の後輩・晃成と毎朝同じ電車で登校する日々を過ごしていた。
しかし、卒業が近づくにつれ、“当たり前”だった晃成との時間に終わりが来ることを意識して眠れなくなってしまう。
この気持ちに気づいたら、今までの関係が壊れてしまうかもしれない――。
逃げるように学校に行かなくなった智也に、ある日の深夜、智也から電話がかかってくる。
眠れない冬の夜。会いたい気持ちがあふれ出す――。
まっすぐな後輩×臆病な先輩の青春ピュアBL。
☆8話完結の短編になります。
【完結】アイドルは親友への片思いを卒業し、イケメン俳優に溺愛され本当の笑顔になる <TOMARIGIシリーズ>
はなたろう
BL
TOMARIGIシリーズ②
人気アイドル、片倉理久は、同じグループの伊勢に片思いしている。高校生の頃に事務所に入所してからずっと、2人で切磋琢磨し念願のデビュー。苦楽を共にしたが、いつしか友情以上になっていった。
そんな伊勢は、マネージャーの湊とラブラブで、幸せを喜んであげたいが複雑で苦しい毎日。
そんなとき、俳優の桐生が現れる。飄々とした桐生の存在に戸惑いながらも、片倉は次第に彼の魅力に引き寄せられていく。
友情と恋心の狭間で揺れる心――片倉は新しい関係に踏み出せるのか。
人気アイドル<TOMARIGI>シリーズ新章、開幕!
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
青い月の天使~あの日の約束の旋律
夏目奈緖
BL
溺愛ドS×天然系男子 俺様副社長から愛される。古い家柄の養子に入った主人公の愛情あふれる日常を綴っています。夏樹は大学4年生。ロックバンドのボーカルをしている。パートナーの黒崎圭一の父親と養子縁組をして、黒崎家の一員になった。夏樹には心臓疾患があり、激しいステージは難しくなるかもしれないことから、いつかステージから下りることを考えて、黒崎製菓で経営者候補としての勉強をしている。夏樹は圭一とお互いの忙しさから、すれ違いが出来るのではないかと心配している。圭一は夏樹のことをフォローし、毎日の生活を営んでいる。
黒崎家には圭一の兄弟達が住んでいる。圭一の4番目の兄の一貴に親子鑑定を受けて、正式に親子にならないかと、父の隆から申し出があり、一貴の心が揺れる。親子ではなかった場合は養子縁組をする。しかし、親子ではなかった場合を受け入れられない一貴は親子鑑定に恐れを持ち、精神的に落ち込み、愛情を一身に求める子供の人格が現われる。自身も母親から愛されなかった記憶を持つ圭一は心を痛める。黒崎家に起こることと、圭一に寄り添う夏樹。繋いだ手を決して離そうとせず、歩いている。
そして、月島凰李という会社社長兼霊能者と黒崎家に滞在しているドイツ人男性、ユリウス・バーテルスとの恋の駆け引き、またユリウスと南波祐空という黒崎製菓社員兼動画配信者との恋など、夏樹の周りには数多くの人物が集まり、賑やかに暮らしている。
作品時系列:「恋人はメリーゴーランド少年だった。」→「恋人はメリーゴーランド少年だった~永遠の誓い編」→「アイアンエンジェル~あの日の旋律」→「夏椿の天使~あの日に出会った旋律」→「白い雫の天使~親愛なる人への旋律」→「上弦の月の天使~結ばれた約束の夜」→本作「青い月の天使~あの日の約束の旋律」
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる