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第15話
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「エリオット様! レヴァン様! 俺たち、主席で卒業しました!」
一人前の悪魔である証である黒い制服に身を包み、我らの長に挨拶をする。隣には同じく白い制服を着たケイが立っていた。
「レオとケイの活躍は私たちもよく聞いているよ。研修、よく頑張ったね」
エリオット様が俺たちに柔らかい微笑みを向ける。
「最後の課題、人間界での任務はどうだった?」
ケイと視線を合わせる。颯太と悠のことは結果的には幸せにすることができた――でも。ケイの喉仏が小さく上下する。
「……私たちは無力でした。我々にできるのはほんの僅かなアプローチだけ。最終的に行動をするか否かは全て人間に委ねられています。結果としては上手くいきましたが、自分たちの無力さを痛感しました」
ケイと気持ちは同じだった。俺たちは人間に行動をするきっかけを促すに過ぎない。動くかどうかは人間次第だ。するとエリオット様とレヴァン様の眼差しが変わる。これまでの可愛がり、慈しむような視線から、まるで同じ立場の同僚を見ているかのような眼差しへと――
「そうだね。私たちが人間たちにできることは本当に極わずかだ。この仕事は想像よりもずっと地味で根気のいるものだろう。でも最初の研修でそれを十分に理解できた君たちは、きっと良い天使と悪魔になれるよ」
「レオ、ケイ。頼もしい後輩たちが入ってきてくれたこと、俺たちは嬉しく思う」
エリオット様とレヴァン様のお言葉をもらい、ケイと一緒に瞳を輝かす。
「はい! 俺たち2人でたくさんの人間たちを幸せにします! ケイと一緒ならきっとできます!」
我らの長に示すように、ケイの手を取って指を絡ませる。力強く頷いてくれたお二人のように、俺たちも素晴らしい悪魔と天使になる。まだスタート地点に立っただけの俺たちだけど、きっとできると予感が胸を震わせていた。
研修が終わり、いよいよ本格的に任務が始まる。研修時のペアは一度解散となり、新たな悪魔と天使のペアが組まれることになった。
これまで魔界の新人悪魔寮に住んでいた俺は、暁宵城の城下町にある下級天使/悪魔の寮へと移る。同室となるのは新しいペアの天使だ。
研修修了時に「ペア希望」を記入する用紙が配られた。次にペアになるのも絶対にケイがいい、ケイじゃないと嫌だ。そう思った俺は大きな字でケイの名前を書いて提出した。でもそれ以来、どこか怖くてケイとはペア希望の話ができていない。
あいつは、俺を選んでくれただろうか。いや、もちろん選んでいるはず。間違いない。ただペア希望はあくまで参考程度だと教官も言っていた。俺たちの希望は通っているだろうか――そんな不安を抱えながら、今日から暮らす寮の部屋のドアを開ける。
「遅い、レオ。お前の荷物がダンボールの山になってて邪魔だ。早く片付けろ」
そこにいたのは、誰よりも愛おしい天使の姿だった。
「ケイ!」
思わず駆け寄って抱きつくと、自分の背中にもケイの腕が回される。
「私がレオを選ばないとでも思っていたのか?」
「そんなことない。でも希望が通るかわからなかったから、俺……不安で……」
すると俺の頬にひんやりとした手のひらが添えられる。目の前に映るのは、大好きな勝ち気な眼差しだった。
「主席卒業のペアをわざわざ引き離すわけないだろう?」
「……もしかしてケイ、これを見越して主席で卒業しようってずっと言ってたのか?」
返事の代わりにケイの頬がピンクに色付く。なんだ、こいつ、本当に俺のこと大好きじゃん――そんな実感と共に思わず唇を重ねる。
「ケイ。これからもずっと、パートナーとしてよろしく」
「あぁ、それに私と張り合えるのはレオくらいだ」
「そんなの俺だって!」
顔を見合わせて笑い合う。今日からここが俺たち2人が暮らす部屋――そんな相棒兼恋人との生活に胸を膨らませながら、俺たちはいつまでも抱き締めあっていた。
一人前の悪魔である証である黒い制服に身を包み、我らの長に挨拶をする。隣には同じく白い制服を着たケイが立っていた。
「レオとケイの活躍は私たちもよく聞いているよ。研修、よく頑張ったね」
エリオット様が俺たちに柔らかい微笑みを向ける。
「最後の課題、人間界での任務はどうだった?」
ケイと視線を合わせる。颯太と悠のことは結果的には幸せにすることができた――でも。ケイの喉仏が小さく上下する。
「……私たちは無力でした。我々にできるのはほんの僅かなアプローチだけ。最終的に行動をするか否かは全て人間に委ねられています。結果としては上手くいきましたが、自分たちの無力さを痛感しました」
ケイと気持ちは同じだった。俺たちは人間に行動をするきっかけを促すに過ぎない。動くかどうかは人間次第だ。するとエリオット様とレヴァン様の眼差しが変わる。これまでの可愛がり、慈しむような視線から、まるで同じ立場の同僚を見ているかのような眼差しへと――
「そうだね。私たちが人間たちにできることは本当に極わずかだ。この仕事は想像よりもずっと地味で根気のいるものだろう。でも最初の研修でそれを十分に理解できた君たちは、きっと良い天使と悪魔になれるよ」
「レオ、ケイ。頼もしい後輩たちが入ってきてくれたこと、俺たちは嬉しく思う」
エリオット様とレヴァン様のお言葉をもらい、ケイと一緒に瞳を輝かす。
「はい! 俺たち2人でたくさんの人間たちを幸せにします! ケイと一緒ならきっとできます!」
我らの長に示すように、ケイの手を取って指を絡ませる。力強く頷いてくれたお二人のように、俺たちも素晴らしい悪魔と天使になる。まだスタート地点に立っただけの俺たちだけど、きっとできると予感が胸を震わせていた。
研修が終わり、いよいよ本格的に任務が始まる。研修時のペアは一度解散となり、新たな悪魔と天使のペアが組まれることになった。
これまで魔界の新人悪魔寮に住んでいた俺は、暁宵城の城下町にある下級天使/悪魔の寮へと移る。同室となるのは新しいペアの天使だ。
研修修了時に「ペア希望」を記入する用紙が配られた。次にペアになるのも絶対にケイがいい、ケイじゃないと嫌だ。そう思った俺は大きな字でケイの名前を書いて提出した。でもそれ以来、どこか怖くてケイとはペア希望の話ができていない。
あいつは、俺を選んでくれただろうか。いや、もちろん選んでいるはず。間違いない。ただペア希望はあくまで参考程度だと教官も言っていた。俺たちの希望は通っているだろうか――そんな不安を抱えながら、今日から暮らす寮の部屋のドアを開ける。
「遅い、レオ。お前の荷物がダンボールの山になってて邪魔だ。早く片付けろ」
そこにいたのは、誰よりも愛おしい天使の姿だった。
「ケイ!」
思わず駆け寄って抱きつくと、自分の背中にもケイの腕が回される。
「私がレオを選ばないとでも思っていたのか?」
「そんなことない。でも希望が通るかわからなかったから、俺……不安で……」
すると俺の頬にひんやりとした手のひらが添えられる。目の前に映るのは、大好きな勝ち気な眼差しだった。
「主席卒業のペアをわざわざ引き離すわけないだろう?」
「……もしかしてケイ、これを見越して主席で卒業しようってずっと言ってたのか?」
返事の代わりにケイの頬がピンクに色付く。なんだ、こいつ、本当に俺のこと大好きじゃん――そんな実感と共に思わず唇を重ねる。
「ケイ。これからもずっと、パートナーとしてよろしく」
「あぁ、それに私と張り合えるのはレオくらいだ」
「そんなの俺だって!」
顔を見合わせて笑い合う。今日からここが俺たち2人が暮らす部屋――そんな相棒兼恋人との生活に胸を膨らませながら、俺たちはいつまでも抱き締めあっていた。
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