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拗らせすぎる知事予定の夫妻たち(三男除く)
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「実務以外に心配なことがあるのですか」
私の言葉を聞いた陛下と英樹さんは、途端にニヤリと笑った。…あれ。なんか…変態近衛の笑い方に似てる…?
「ソフィアさんが自分から振ってくれたから言いますね。ソフィアさんからまさか言ってくれるなんて、ねぇ、父上」
「ほんとに、ソフィアさんは人の機微を読むのに長けてるんだねぇ。さすが、中身は40歳」
…そこまで知られているとは。チンピラ国王の、個人情報洩らしが半端ない。
それにしても、なんだかイヤな予感しかないんだけど…。また私、悪魔と契約結んじゃうの?目の前のふたりももう悪魔にしか見えない…!
「今出てきた羅刹と朝霧…わたくしの次男と四男なんですが、彼らは離縁とは言わないものの、夫婦関係がギクシャクしていましてね。険悪な感じではないものの、なんというか…よそよそしい雰囲気しかなくて。食事の時の会話もほんの二言三言交わすくらいで、あちらはあちらで心配なんです。一番の心配は蘇芳と撫子なんですが、彼らが各々の領地に旅立つ半年の間に、なんとか仲を進展させてやって欲しいんです、ソフィアさん」
…え?
「…あの」
「なんでしょう」
「私は、恋愛マスターとかカウンセラーとかではないですし、ましてやご子息たちはもう結婚されているんですよね!?今さら仲を進展させろなんて、」
陛下は途端に悲しそうな顔になると、
「あのね、ソフィアさん。これは私が悪いんだけど…。一年前、結婚式の前日に、初めて顔を合わせさせたの。全員。会った次の日には、もう結婚しちゃったから、知りあってまだ一年なんだよ。だから、進展が必要なの」
「会った次の日に結婚させた…!?そんな無茶な、」
「でも、政略結婚だから。こんな言い方するとソフィアさん気を悪くするかもしれないけど、ごめんね、先に謝っておくね、ソフィアさんはソルマーレ国の国王陛下の王命で皇太子殿下と結婚が決まってたんでしょ、相手のことなんて何にも知らない赤ちゃんの時から。それと同じでしょ」
…そうかな。なんか違う気がするけど…。
「結婚して、夫婦生活を送りながら仲を深めていくことはできるでしょ。でも、一番仲良しのはずの蘇芳は離縁したいなんて言い出すし。羅刹と朝霧はなんだか奥さんとギクシャクしてるし。さっきも言ったけどまだ一年なんだから、なんとかこの先を楽しく送れるようにしてあげて欲しいの。三組とも」
そんな、他人任せにされても心底困るんだけど…丸投げ感が半端ない。そして…三組?
「三男ご夫婦のところは良好なのですか?」
するとふたりとも、いきなり顔つきが変わった。今まではほんわかしていたのに、…感情を捨てた貼り付けたような笑顔になる。
「あのふたりはいいのです。ソフィアさんが何かをしてやる必要などない。そうだ、ソフィアさん。あのふたりが貴女に…申し訳ありません、こんな言い方…どちらかと言えば太っている貴女に…面白がって、ちょっかいという名の嫌がらせをしてくるかもしれない。なので、護衛を付けます。ソフィアさんに何かあったりしたら、ソルマーレ国の国王陛下に顔向けできない」
嫌がらせ?嫌がらせときた。私、一応国交結んだ国の皇太子妃、って立場だよね。他国の一応王族に嫌がらせしちゃうだろうと思われてるそのふたり…。
「あの、先ほど聞いたのですが、最初は蘇芳さんと紫陽さんと言う方が結婚するはずだったのですよね?陛下がお決めになったことなのに、言葉が悪いですけど自分勝手な我儘で覆したりして、でも三男の上総さんの望み通り撫子さんを上総さんの妻から外して紫陽さんに代えたわけですよね。そのことについて、陛下はどう思われているのですか」
「私の決定を覆すことがどういう意味を持つのか、他国のソフィアさんにさえわかるんだけどねぇ。甘やかされて育ってきた上総君にはこれっぽっちもわからないのだよ。わからない人間にわざわざ教えてあげるほど、私は優しくないんだよね、残念ながら」
ニッコリした陛下の目は、まったく笑っていない。チンピラ国王と同じ…国を背負って立つ者の威厳と圧を感じる。
今の陛下の発言…かなりのトゲを感じたけど、英樹さんからは特に何も感じられない。おまえの育て方が悪いからだ、って言われたのも同じなのに。
「甘やかされて育ってきたとは、」
「上総君はね、ソフィアさん。英樹と早苗の子どもなのに、私の妻の水仙が『上総は私の父に似ているから、私が育てる』と訳のわからない理論でふたりから取り上げて、自分の宮に連れ去ってしまったんだよ。その時、取られまいと必死に抵抗して我が子を守ろうとした早苗に傷を負わせたんだ。早苗はその後、うまく歩けない日々が続いてね…今でこそほぼ元通りになったが、…本当に申し訳ないことをしてしまってね」
私の言葉を聞いた陛下と英樹さんは、途端にニヤリと笑った。…あれ。なんか…変態近衛の笑い方に似てる…?
「ソフィアさんが自分から振ってくれたから言いますね。ソフィアさんからまさか言ってくれるなんて、ねぇ、父上」
「ほんとに、ソフィアさんは人の機微を読むのに長けてるんだねぇ。さすが、中身は40歳」
…そこまで知られているとは。チンピラ国王の、個人情報洩らしが半端ない。
それにしても、なんだかイヤな予感しかないんだけど…。また私、悪魔と契約結んじゃうの?目の前のふたりももう悪魔にしか見えない…!
「今出てきた羅刹と朝霧…わたくしの次男と四男なんですが、彼らは離縁とは言わないものの、夫婦関係がギクシャクしていましてね。険悪な感じではないものの、なんというか…よそよそしい雰囲気しかなくて。食事の時の会話もほんの二言三言交わすくらいで、あちらはあちらで心配なんです。一番の心配は蘇芳と撫子なんですが、彼らが各々の領地に旅立つ半年の間に、なんとか仲を進展させてやって欲しいんです、ソフィアさん」
…え?
「…あの」
「なんでしょう」
「私は、恋愛マスターとかカウンセラーとかではないですし、ましてやご子息たちはもう結婚されているんですよね!?今さら仲を進展させろなんて、」
陛下は途端に悲しそうな顔になると、
「あのね、ソフィアさん。これは私が悪いんだけど…。一年前、結婚式の前日に、初めて顔を合わせさせたの。全員。会った次の日には、もう結婚しちゃったから、知りあってまだ一年なんだよ。だから、進展が必要なの」
「会った次の日に結婚させた…!?そんな無茶な、」
「でも、政略結婚だから。こんな言い方するとソフィアさん気を悪くするかもしれないけど、ごめんね、先に謝っておくね、ソフィアさんはソルマーレ国の国王陛下の王命で皇太子殿下と結婚が決まってたんでしょ、相手のことなんて何にも知らない赤ちゃんの時から。それと同じでしょ」
…そうかな。なんか違う気がするけど…。
「結婚して、夫婦生活を送りながら仲を深めていくことはできるでしょ。でも、一番仲良しのはずの蘇芳は離縁したいなんて言い出すし。羅刹と朝霧はなんだか奥さんとギクシャクしてるし。さっきも言ったけどまだ一年なんだから、なんとかこの先を楽しく送れるようにしてあげて欲しいの。三組とも」
そんな、他人任せにされても心底困るんだけど…丸投げ感が半端ない。そして…三組?
「三男ご夫婦のところは良好なのですか?」
するとふたりとも、いきなり顔つきが変わった。今まではほんわかしていたのに、…感情を捨てた貼り付けたような笑顔になる。
「あのふたりはいいのです。ソフィアさんが何かをしてやる必要などない。そうだ、ソフィアさん。あのふたりが貴女に…申し訳ありません、こんな言い方…どちらかと言えば太っている貴女に…面白がって、ちょっかいという名の嫌がらせをしてくるかもしれない。なので、護衛を付けます。ソフィアさんに何かあったりしたら、ソルマーレ国の国王陛下に顔向けできない」
嫌がらせ?嫌がらせときた。私、一応国交結んだ国の皇太子妃、って立場だよね。他国の一応王族に嫌がらせしちゃうだろうと思われてるそのふたり…。
「あの、先ほど聞いたのですが、最初は蘇芳さんと紫陽さんと言う方が結婚するはずだったのですよね?陛下がお決めになったことなのに、言葉が悪いですけど自分勝手な我儘で覆したりして、でも三男の上総さんの望み通り撫子さんを上総さんの妻から外して紫陽さんに代えたわけですよね。そのことについて、陛下はどう思われているのですか」
「私の決定を覆すことがどういう意味を持つのか、他国のソフィアさんにさえわかるんだけどねぇ。甘やかされて育ってきた上総君にはこれっぽっちもわからないのだよ。わからない人間にわざわざ教えてあげるほど、私は優しくないんだよね、残念ながら」
ニッコリした陛下の目は、まったく笑っていない。チンピラ国王と同じ…国を背負って立つ者の威厳と圧を感じる。
今の陛下の発言…かなりのトゲを感じたけど、英樹さんからは特に何も感じられない。おまえの育て方が悪いからだ、って言われたのも同じなのに。
「甘やかされて育ってきたとは、」
「上総君はね、ソフィアさん。英樹と早苗の子どもなのに、私の妻の水仙が『上総は私の父に似ているから、私が育てる』と訳のわからない理論でふたりから取り上げて、自分の宮に連れ去ってしまったんだよ。その時、取られまいと必死に抵抗して我が子を守ろうとした早苗に傷を負わせたんだ。早苗はその後、うまく歩けない日々が続いてね…今でこそほぼ元通りになったが、…本当に申し訳ないことをしてしまってね」
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