48 / 161
拗らせすぎる知事予定の夫妻たち(三男除く)
3
夕食後、蘇芳さんと共に英樹さんに付いていく。私が食事を終えるまで、結局陛下の妻である水仙さんは現れなかった。上総さんは食べようとするたび、陛下に「上総君、水仙を待ってるんでしょ」と言われてすごい顔をしていた。陛下にしろ英樹さんにしろ、上総さんにあんな対応してるのに…英樹さんなんて私の前で「バカ」呼ばわりしてるのに…それでも、未来の皇帝に一番近い朱雀州知事にしたのはなぜなんだろう。
「さ、どうぞ、ソフィアさん」
英樹さんにソファを勧められて腰をおろすと、すかさずお茶が運ばれてきた。この香りは…緑茶だ。
「いただきます」
…このホワッとくる苦味がまた美味しい。思わずジンッとする。
涙が出そうで慌てて瞬きしていると、「さて、蘇芳」と英樹さんが口を開いた。
「このまま離縁するなら聞かないつもりだったけど、解決しそうだというなら聞きたい。いったい何が原因だったの?いっつもあんなに仲良しなくせに。おまえのことを見て、撫子を嫌いだなんて誰も思わないし不思議で仕方なかったんだよ。心配したんだからね、たった何日であっても」
プンプンした調子でおどける英樹さん。
「申し訳ありませんでした、父上。実はその、僕…勃起不全で…」
「…え?」
「…ですから」
「いや、わかったけど!え、なんで?あんなに撫子にベタベタしてて勃起しない!?」
蘇芳さんは困ったような顔になると、
「ソフィアさんが言うには、肥満が原因ではないかと…ベタベタしてるとは言いますけど、その、…撫子の裸は、まだ、見たこともないですし…っ。む、胸とかも…っ」
と真っ赤になった。
「あの、英樹さん。私も気になったことがあって」
皇室の閨教育事情について先ほど蘇芳さんから聞いたことを話し、
「あんまり奔放なのはマズイでしょうけど、何にも知識がないのもマズイと思います。蘇芳さんなんて、前技なしに撫子さんに突っ込もうとしてたんですよ」
「え!?」
英樹さんは呆然とした顔になって、蘇芳さんを見た。
「蘇芳、それ、ほんとなの…」
「…僕、ナニをドコに挿入するかという知識はありましたけど、準備…女性のカラダを舐めたり触ったりしていいなんて知りませんでしたし、女性が気持ちよくならないと挿入できないことすら知りませんでした」
とたんに頭を抱えた英樹さんは、ガバッと顔を上げると、
「まさか、まさか羅刹と朝霧も…?あのふたりもまさか…?」
とブツブツ呟き、
「羅刹と朝霧にすぐ来るよう伝えてください」
と秘書に視線を移した。
秘書が出て行くと、「まさか、そんなことが原因だったなんて…」と力なく項垂れていた。
「英樹さん、撫子さんはある程度知識はあるみたいでした。漫画を読んだりして、性に対する知識はあったみたいなので…でも、夫である蘇芳さんは知らないわけですから、いざ行為をしようとしたらうまくいかないですし…お互い、不信感も生まれるかもしれませんよね。実践はないにしても、教科書みたいなのは必要なんじゃないでしょうか…このまま放置しておくと、皇室が成り立たなくなるのでは…」
「父上、僕も先ほどソフィアさんに漫画を読むように言われたんですが、セックスというのはああいうものなのかと…思ってた以上に、時間をかけてするものなのだと初めて知りました。普段から、甘い雰囲気も必要ですし、かなり勉強になりました」
英樹さんは疲れたように「…そうなんだ」と言うとまた項垂れ、「あんの腐れババア…っ」と呪いの言葉を吐いた。
「知事、羅刹様と朝霧様がいらっしゃいました」
「…通して」
ドアが開いて二人が入ってくる。
「父上、どうされたのですか」
二人に座るよう促した英樹さんは、座るのを待って切り出した。
「二人は、蘇芳が離縁したいって言ってたのは知ってる?」
「「離縁!?」」
見事に言葉が被った二人は、ブンブンと首を振りギッと鋭い目付きで蘇芳さんを見た。
「兄上、なぜ!?あんなに仲がいいくせに、なぜ…っ」
羅刹さんの言葉に引っ掛かりを覚える。仲がいい「くせに」?
「そうですよ、兄上!撫子様とあんなにベタベタしてるくせに!何を言い出すんですか!」
朝霧さんも「くせに」ときた。つまりは、蘇芳さんが撫子さんと仲良しなのが羨ましい、ってことだよね…?自分たちは違うの…?
当の蘇芳さんは、「いや、その、」と真っ赤になっている。言いづらいよね、わかります。
「聞きたいのはそこじゃなくて。あのさ、二人とも。セックスの仕方は知ってるんだよね」
英樹さんの言葉に部屋がシンッ…と静まりかえる。
「セックス…、ですか、なぜ、」
羅刹さんはそう呟くと、「まさか、」と英樹さんを見た。
「まさか、芙蓉から何かあったのですか!?お、俺が、無理矢理してしまったから…っ!で、でも、あれ以来、触れていません、誓ってしてません!」
「羅刹…説明して。無理矢理ってなに?」
とたんに英樹さんが魔王に変身した。
「さ、どうぞ、ソフィアさん」
英樹さんにソファを勧められて腰をおろすと、すかさずお茶が運ばれてきた。この香りは…緑茶だ。
「いただきます」
…このホワッとくる苦味がまた美味しい。思わずジンッとする。
涙が出そうで慌てて瞬きしていると、「さて、蘇芳」と英樹さんが口を開いた。
「このまま離縁するなら聞かないつもりだったけど、解決しそうだというなら聞きたい。いったい何が原因だったの?いっつもあんなに仲良しなくせに。おまえのことを見て、撫子を嫌いだなんて誰も思わないし不思議で仕方なかったんだよ。心配したんだからね、たった何日であっても」
プンプンした調子でおどける英樹さん。
「申し訳ありませんでした、父上。実はその、僕…勃起不全で…」
「…え?」
「…ですから」
「いや、わかったけど!え、なんで?あんなに撫子にベタベタしてて勃起しない!?」
蘇芳さんは困ったような顔になると、
「ソフィアさんが言うには、肥満が原因ではないかと…ベタベタしてるとは言いますけど、その、…撫子の裸は、まだ、見たこともないですし…っ。む、胸とかも…っ」
と真っ赤になった。
「あの、英樹さん。私も気になったことがあって」
皇室の閨教育事情について先ほど蘇芳さんから聞いたことを話し、
「あんまり奔放なのはマズイでしょうけど、何にも知識がないのもマズイと思います。蘇芳さんなんて、前技なしに撫子さんに突っ込もうとしてたんですよ」
「え!?」
英樹さんは呆然とした顔になって、蘇芳さんを見た。
「蘇芳、それ、ほんとなの…」
「…僕、ナニをドコに挿入するかという知識はありましたけど、準備…女性のカラダを舐めたり触ったりしていいなんて知りませんでしたし、女性が気持ちよくならないと挿入できないことすら知りませんでした」
とたんに頭を抱えた英樹さんは、ガバッと顔を上げると、
「まさか、まさか羅刹と朝霧も…?あのふたりもまさか…?」
とブツブツ呟き、
「羅刹と朝霧にすぐ来るよう伝えてください」
と秘書に視線を移した。
秘書が出て行くと、「まさか、そんなことが原因だったなんて…」と力なく項垂れていた。
「英樹さん、撫子さんはある程度知識はあるみたいでした。漫画を読んだりして、性に対する知識はあったみたいなので…でも、夫である蘇芳さんは知らないわけですから、いざ行為をしようとしたらうまくいかないですし…お互い、不信感も生まれるかもしれませんよね。実践はないにしても、教科書みたいなのは必要なんじゃないでしょうか…このまま放置しておくと、皇室が成り立たなくなるのでは…」
「父上、僕も先ほどソフィアさんに漫画を読むように言われたんですが、セックスというのはああいうものなのかと…思ってた以上に、時間をかけてするものなのだと初めて知りました。普段から、甘い雰囲気も必要ですし、かなり勉強になりました」
英樹さんは疲れたように「…そうなんだ」と言うとまた項垂れ、「あんの腐れババア…っ」と呪いの言葉を吐いた。
「知事、羅刹様と朝霧様がいらっしゃいました」
「…通して」
ドアが開いて二人が入ってくる。
「父上、どうされたのですか」
二人に座るよう促した英樹さんは、座るのを待って切り出した。
「二人は、蘇芳が離縁したいって言ってたのは知ってる?」
「「離縁!?」」
見事に言葉が被った二人は、ブンブンと首を振りギッと鋭い目付きで蘇芳さんを見た。
「兄上、なぜ!?あんなに仲がいいくせに、なぜ…っ」
羅刹さんの言葉に引っ掛かりを覚える。仲がいい「くせに」?
「そうですよ、兄上!撫子様とあんなにベタベタしてるくせに!何を言い出すんですか!」
朝霧さんも「くせに」ときた。つまりは、蘇芳さんが撫子さんと仲良しなのが羨ましい、ってことだよね…?自分たちは違うの…?
当の蘇芳さんは、「いや、その、」と真っ赤になっている。言いづらいよね、わかります。
「聞きたいのはそこじゃなくて。あのさ、二人とも。セックスの仕方は知ってるんだよね」
英樹さんの言葉に部屋がシンッ…と静まりかえる。
「セックス…、ですか、なぜ、」
羅刹さんはそう呟くと、「まさか、」と英樹さんを見た。
「まさか、芙蓉から何かあったのですか!?お、俺が、無理矢理してしまったから…っ!で、でも、あれ以来、触れていません、誓ってしてません!」
「羅刹…説明して。無理矢理ってなに?」
とたんに英樹さんが魔王に変身した。
あなたにおすすめの小説
幼馴染しか見えない婚約者と白い結婚したので、夜明け前にさよならしました
ゆぷしろん
恋愛
公爵令嬢レティシアは、家同士の都合で伯爵アルフレッドに嫁ぐ。
けれど夫は結婚後もずっと幼馴染のシルヴィばかりを優先し、婚礼の夜から夫婦として触れ合おうともしなかった。名ばかりの妻として伯爵家を支え、領地経営まで立て直しても、彼にとってレティシアは“都合のいい伯爵夫人”でしかない。
やがて結婚一周年の夜、アルフレッドが自分を手放す気はない一方で、幼馴染を屋敷に迎え入れようとしている会話を聞いてしまったレティシアは、ついに決意する。
――もう、この結婚には見切りをつけよう。
夜明け前、彼女は離縁の準備を整え、伯爵邸を出奔。
身を寄せた北の港町で薬舗を手伝いながら、自分の力で生きる穏やかな日々を手に入れていく。そこで出会ったのは、身分ではなく一人の女性として彼女を尊重してくれる青年医師ノアだった。
一方、都合よく尽くしてくれる妻を失ったアルフレッドは、ようやく自分が何を失ったのかを思い知ることになる。
幼馴染ばかりを優先する婚約者との白い結婚に終止符を打ち、傷ついた公爵令嬢が新天地で本当の幸せを掴む、離縁から始まる逆転ラブストーリー。
【完結】遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
【残り数話を持ちまして3月29日完結!!】
夫にも子どもにも、私は選ばれなかった。
長年の裏切りを抱え、離縁状を置いて家を出た――。
待っていたのは、凍てつく絶望。
けれど同時に、それは残酷な運命の扉が開く瞬間でもあった。
「夫は愛人と生きればいい。
今さら縋られても、裏切ったあなたを許す力など残っていない」
それでも私は誓う――
「子どもたちの心だけは、必ず取り戻す」
歪で、完全な幸福――それとも、破滅。
“石”に翻弄された者たちの、狂おしい物語。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
【完結】無関心夫の手を離した公爵夫人は、異国の地で運命の香りと出会う
佐原香奈
恋愛
建国祭の夜、冷徹な公爵セドリック・グランチェスターは、妻セレスティーヌを舞踏会に残し、早々に会場を後にした。
それが、必死に縋り付いていた妻が、手を離す決意をさせたとも知らず、夜中まで仕事のことしか考えていなかった。
セドリックが帰宅すると、屋敷に残されていたのは、一通の離縁届と脱ぎ捨てられた絹の靴。そして、彼女が置いていった嗅いだことのない白檀の香りだけだった。
すべてを捨てて貿易都市カリアへ渡った彼女は、名もなき調香師「セレス」として覚醒する。
一方、消えた妻を追うセドリックの手元に届いたのは、かつての冷たい香りとは似て非なる、温かな光を宿した白檀の香水。
「これは、彼女の復讐か、それとも再生か——」
執念に駆られ、見知らぬ地へ降り立った公爵が目にしたのは、異国の貿易王の隣で、誰よりも自由に、見たこともない笑顔で微笑む「他人」となった妻の姿だった。
誤字、修正漏れ教えてくださってありがとうございます!
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
〈完結〉【書籍化&コミカライズ】悪妃は余暇を楽しむ
ごろごろみかん。
恋愛
「こちら、離縁届です。私と、離縁してくださいませ、陛下」
ある日、悪妃と名高いクレメンティーナが夫に渡したのは、離縁届だった。彼女はにっこりと笑って言う。
「先日、あなた方の真実の愛を拝見させていただきまして……有難いことに目が覚めましたわ。ですので、王妃、やめさせていただこうかと」
何せ、あれだけ見せつけてくれたのである。ショックついでに前世の記憶を取り戻して、千年の恋も瞬間冷凍された。
都合のいい女は本日で卒業。
今後は、余暇を楽しむとしましょう。
吹っ切れた悪妃は身辺整理を終えると早々に城を出て行ってしまった。