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この先の道は
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白虎州知事の息子という拝田織部さんは、身長が190cmはあろうかという美丈夫だった。とても細身に見えるのだが、朝霧さん曰く「鋼のような肉体」らしい。そして、非常に寡黙な方らしく、挨拶してもペコリ、とされただけだった。
「織部は、朝霧の居住区のゲストルームに入る。朝霧、頼むぞ」
英樹さんはそう言うと、挨拶を終えた織部さんを連れてすぐに出て行った。これから、朱雀州の領内を回るそうだ。
「蘇芳様、織部様はどういう、」
「…父上が言うには、就任式の警護を頼みたいらしい。織部の家は武闘派で、織部自身が率いている私兵集団もいるらしいから…下見に来た、ということなんだろう」
撫子さんへの説明を聞いて、なんとなく違和感があった。拝田一族なのだから、皇族の一員であることに間違いないのに、そんな高貴な身分の人に警護をさせる…?むしろ警護を受ける立場じゃないの…?次代の州知事からは外れたから、ってことなの…?
いまいち納得がいかなかったが、私はジャポン皇国の皇室についてすべて知っているわけではない。英樹さんが考えたことに口出しする権利もないのだし。
そしてこの数ヶ月、上総さんに絡まれる回数が増えて辟易していた。私と撫子さんが目に見えて痩せはじめた、そのあたりから、何か理由をつけては蘇芳さんの居住区に入ってこようとし、英樹さんに厳しく叱責されると、今度は食事の時に絡まれるようになった。ジロジロ不躾な視線を寄越し、「寂しいだろうから、慰めてやろうか」などと…いつの時代のオヤジだよ、というような言葉をよこす。
食事の後、部屋に戻ろうとすると同じように立ち上がって付いてこようとするため、朝霧さん、伽藍さんにガッチリ両脇を挟まれて移動を余儀なくされている。
「朝霧さん、すみません…」
「え?なんで?」
「いや、その、伽藍さんとふたりで過ごしたいでしょうに…」
朝霧さんはニッ、と笑うと、「まだ伽藍さんの純潔は奪ってないから大丈夫。我慢できるから」と言った。
「…え?」
「白虎州に行く前に妊娠させちゃったら移動もままならないし、僕、伽藍さんを抱いたら一週間は部屋から出られなくなる自信しかないから、向こうに行くまでは我慢することにしたんだよね。今は、まだキスだけ。ね、伽藍さん」
ウインクされた伽藍さんは真っ赤になり、「キスだけ、って…!カラダにも、してるじゃないか…!」と呟いていた。…やっぱり監禁コースなのかな、伽藍さん。
そんなふうに話している私たちの後ろを付いてくる上総さんを振り返って、「…一発、お見舞いしようか?」と朝霧さんが威圧を飛ばすと、舌打ちをしていなくなる、ということが毎日繰り返されていた。
「…あのさ、ソフィアさん」
遠ざかる上総さんの後ろ姿を厳しく見据えながら朝霧さんは、
「就任式まであと1ヶ月を切ったから、それまでの辛抱だから、絶対にひとりにならないで。…ううん、僕か、羅刹兄さん、蘇芳兄さんから絶対に離れないで。伽藍さんは強いけど、何があるかわからないし。ね、お願いだよ。必ず誰かについてて」
と真剣な顔で言った。
「でも、いくら上総さんでも…ただ、あんなふうに言ってるだけなんじゃ、」
「ソフィアさん、お願い」
「…わかりました」
正直なところ、私の認識は「セクハラを受けている」くらいのものでしかなかった。気持ち悪いことに変わりはないけど、それで精神的に参ってしまうほどではなかったのだ。直接触られたりもしなかったし。
それよりも、せっかく仲良く過ごしている夫婦たちの時間を奪っているようで申し訳なさしかなかった。私なんかのために。
そんなことを繰り返しながら、就任式の前日となった。ソルマーレ国から来る3人を迎えるため、代表で蘇芳さん夫妻が港へ向かい、羅刹さんは陛下と英樹さんの補佐で式典の会場の準備の指揮をし、朝霧さんは織部さんに呼ばれてゲストルームに籠っていた。
チンピラ国王たちが城に着くのは15時頃と聞いていたので、ちょうどその時刻にドアをノックされ、相手を確認せずに開けてしまった。
目の前に歪んだ嗤いを浮かべる上総さんの姿を認識して、慌ててドアを閉めようとしたとき、顔に何かを噴射され、…そのまま、意識が途切れた。
「織部は、朝霧の居住区のゲストルームに入る。朝霧、頼むぞ」
英樹さんはそう言うと、挨拶を終えた織部さんを連れてすぐに出て行った。これから、朱雀州の領内を回るそうだ。
「蘇芳様、織部様はどういう、」
「…父上が言うには、就任式の警護を頼みたいらしい。織部の家は武闘派で、織部自身が率いている私兵集団もいるらしいから…下見に来た、ということなんだろう」
撫子さんへの説明を聞いて、なんとなく違和感があった。拝田一族なのだから、皇族の一員であることに間違いないのに、そんな高貴な身分の人に警護をさせる…?むしろ警護を受ける立場じゃないの…?次代の州知事からは外れたから、ってことなの…?
いまいち納得がいかなかったが、私はジャポン皇国の皇室についてすべて知っているわけではない。英樹さんが考えたことに口出しする権利もないのだし。
そしてこの数ヶ月、上総さんに絡まれる回数が増えて辟易していた。私と撫子さんが目に見えて痩せはじめた、そのあたりから、何か理由をつけては蘇芳さんの居住区に入ってこようとし、英樹さんに厳しく叱責されると、今度は食事の時に絡まれるようになった。ジロジロ不躾な視線を寄越し、「寂しいだろうから、慰めてやろうか」などと…いつの時代のオヤジだよ、というような言葉をよこす。
食事の後、部屋に戻ろうとすると同じように立ち上がって付いてこようとするため、朝霧さん、伽藍さんにガッチリ両脇を挟まれて移動を余儀なくされている。
「朝霧さん、すみません…」
「え?なんで?」
「いや、その、伽藍さんとふたりで過ごしたいでしょうに…」
朝霧さんはニッ、と笑うと、「まだ伽藍さんの純潔は奪ってないから大丈夫。我慢できるから」と言った。
「…え?」
「白虎州に行く前に妊娠させちゃったら移動もままならないし、僕、伽藍さんを抱いたら一週間は部屋から出られなくなる自信しかないから、向こうに行くまでは我慢することにしたんだよね。今は、まだキスだけ。ね、伽藍さん」
ウインクされた伽藍さんは真っ赤になり、「キスだけ、って…!カラダにも、してるじゃないか…!」と呟いていた。…やっぱり監禁コースなのかな、伽藍さん。
そんなふうに話している私たちの後ろを付いてくる上総さんを振り返って、「…一発、お見舞いしようか?」と朝霧さんが威圧を飛ばすと、舌打ちをしていなくなる、ということが毎日繰り返されていた。
「…あのさ、ソフィアさん」
遠ざかる上総さんの後ろ姿を厳しく見据えながら朝霧さんは、
「就任式まであと1ヶ月を切ったから、それまでの辛抱だから、絶対にひとりにならないで。…ううん、僕か、羅刹兄さん、蘇芳兄さんから絶対に離れないで。伽藍さんは強いけど、何があるかわからないし。ね、お願いだよ。必ず誰かについてて」
と真剣な顔で言った。
「でも、いくら上総さんでも…ただ、あんなふうに言ってるだけなんじゃ、」
「ソフィアさん、お願い」
「…わかりました」
正直なところ、私の認識は「セクハラを受けている」くらいのものでしかなかった。気持ち悪いことに変わりはないけど、それで精神的に参ってしまうほどではなかったのだ。直接触られたりもしなかったし。
それよりも、せっかく仲良く過ごしている夫婦たちの時間を奪っているようで申し訳なさしかなかった。私なんかのために。
そんなことを繰り返しながら、就任式の前日となった。ソルマーレ国から来る3人を迎えるため、代表で蘇芳さん夫妻が港へ向かい、羅刹さんは陛下と英樹さんの補佐で式典の会場の準備の指揮をし、朝霧さんは織部さんに呼ばれてゲストルームに籠っていた。
チンピラ国王たちが城に着くのは15時頃と聞いていたので、ちょうどその時刻にドアをノックされ、相手を確認せずに開けてしまった。
目の前に歪んだ嗤いを浮かべる上総さんの姿を認識して、慌ててドアを閉めようとしたとき、顔に何かを噴射され、…そのまま、意識が途切れた。
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