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「…なにこれ」
鏡に映る姿形に思わず声が洩れる。典型的日本人である黒髪黒目の容姿とは似ても似つかぬこの姿。銀髪に、…紫、かな、この色。赤みがかった紫色の瞳。そしてこの顔立ち。どこかで見たような。
「…あれ?」
この顔はもしかして、寝る前に読んだ漫画に出てきてた…夫である国王陛下にまったく愛されない顧みられないお妃…『後宮の美しき薔薇』の、気の毒すぎるオパール王妃じゃなかろうか。
『後宮の美しき薔薇』は中世ヨーロッパ風の国、セレンティア王国が舞台で、若き国王ユージーン・セレンティアと彼の側妃として召し上がられた侯爵家令嬢リリア…彼女を国王は「美しき俺の薔薇」と称した…との、真実の愛の物語である。
会社に滅私奉公を強いられやさぐれている三十路の女が読むには向かない、気の毒な王妃陛下に感情移入しまくり、突っ込みまくりの漫画だった。
国王ユージーンと王妃オパールは政略で結ばれた夫婦である。オパールの実家は力のある公爵家であり、オパールの父に代替わりしてからは更に資産を増やすなど、王家としては味方に取り入れたい筆頭貴族であった。その家に長男と同い年の娘が生まれ、国王は頭を下げてその娘を息子の婚約者に納めた。
オパールの父であるダグラス公爵は娘を王妃にすることになんの野望もなく、ただ請われたから受けたのみでその後も領地の経営のみに専念した。典型的な仕事大好き人間で、我がも子孫を残すため貴族の義務として妻を娶ったに過ぎなかったため、愛だの恋だのが存在するとは…存在する必要性などは露程も感じていない男だった。一男一女を授かると慰謝料と称して大金を払い名ばかりの妻とは離縁した。その際に『今後はダグラス公爵家とは一切関わらない、もし関わるそぶりを見せた場合にはどのような目に遭っても文句は言わない(命の保証はない)』という誓約書に署名させて。
まだ赤子のオパールを置いて嬉々として出ていった母親、そしてまったく子供を愛さない父親、その生育環境はオパールを蝕んだ。誰かに愛されたい、甘やかされたい、関わりたい、自分も愛したい。そのベクトルはすべて、婚約者であるユージーンに向いた。
幼い頃はまだしも、12歳を過ぎ王妃教育のため登城するようになると、始まる2時間前には城に行き、ユージーンにつきまとった…そう、つきまとった。教育時間が終わったあともつきまとった。ユージーンが騎士団で鍛練しているのを瞬きすら惜しんで眺め、彼が汗を拭いたタオルを当然のように持ち帰り…ユージーンからは早々に「気持ちの悪い女」と認定されてしまう。しかしながら国王たっての願いでの婚約であり、ユージーンもそれを我儘でどうにかしようとするバカ王子ではなかった。自らの後ろだてにするために父が望んでくれたことなのだからと、オパールとの婚約を解消することなく粛々と結婚した。そして今まで通り放置した。気持ち悪いつきまとい女を。
オパールはユージーンに関して…というより、情緒はポンコツだったが、能力は秀でていたため王妃としては文句のつけようがなかった。結婚と同時に国王として即位したユージーンにとって、オパールは側近同様優秀な自分の右腕となり…ただ、妻として、女として見ることは叶わなかった。行動すべてが相変わらず気持ち悪いつきまとい女でしかないからだ。もちろん初夜も迎えていない。自分の部屋の前に一晩中立っていたと聞かされた時は鳥肌がたった。
仕事は優秀だが、愛情を求めてくる粘着質な視線、そして行動に嫌気がさしたのと、資金面では文句がないが王宮にはやってこない微妙な後ろだての義父が妻を離縁していることを理由に、白い結婚のまま3年したら離縁することに決め、その代わりとして将来的に王妃とする、優秀で家柄の良い令嬢を側妃として娶ることにした。学園の時からお互いに好意を抱いていた相手のリリアだ。
リリアは卒園後、文官として王妃付きにしたため一年もすると王妃の職務を把握できるようになり、また、社交的な性格のため周りからも好意的に受け入れられるようになった。引退した父にも納得させ、オパールとの結婚から二年後、リリアを娶った。
しかしながらユージーンも妙に潔癖なところがある男で、オパールを離縁するまではリリアを抱くことはできないと告げる。あと一年の辛抱だから、と。それでも、性交以外の触れ合いは遠慮なく成されるわけで、オパールのユージーンへの執着は日に日に募っていくばかり。あと一年で離縁されるなど夢にも思っていないオパールは、ユージーンの愛情を奪うリリアを憎み、様々な嫌がらせを仕掛けるようになる。そのことが更にユージーンの気持ちを冷めさせることには気づけずに。
(でもさあ…)
確かにオパールは気持ち悪いと思う。使ったタオル持って帰るとかストーカーかよ、って思う。でも、そんな女に、「父が自分を思って決めてくれた相手だから」という良い子ちゃん発言でオパールを放置し結婚までし、あげくに三年後には離縁することも告げずに関わりたくないからと放置してるユージーンもどうかと思う。そもそも政略だからと割りきったなら最後まで割りきりやがれよ!確かにオパールは中身はちょっとアレだけど、見た目はもう最高の美女だ。おっぱいもデカイ、お尻もキュッと上がってる上に肉感的(に描かれている。悪役ポジだから?)だし、脚は細いし…言うなればどこぞの不二子ちゃんみたいなのだ。…まあ、勃つかどうかは人それぞれだけど。
なんて。
冷静に分析してみたけど、これ、「目覚めたら異世界にいました」的ライトノベル展開ってことなんだろうか。鏡に映る美人をマジマジと見ていると、後ろに人影が映った。
鏡に映る姿形に思わず声が洩れる。典型的日本人である黒髪黒目の容姿とは似ても似つかぬこの姿。銀髪に、…紫、かな、この色。赤みがかった紫色の瞳。そしてこの顔立ち。どこかで見たような。
「…あれ?」
この顔はもしかして、寝る前に読んだ漫画に出てきてた…夫である国王陛下にまったく愛されない顧みられないお妃…『後宮の美しき薔薇』の、気の毒すぎるオパール王妃じゃなかろうか。
『後宮の美しき薔薇』は中世ヨーロッパ風の国、セレンティア王国が舞台で、若き国王ユージーン・セレンティアと彼の側妃として召し上がられた侯爵家令嬢リリア…彼女を国王は「美しき俺の薔薇」と称した…との、真実の愛の物語である。
会社に滅私奉公を強いられやさぐれている三十路の女が読むには向かない、気の毒な王妃陛下に感情移入しまくり、突っ込みまくりの漫画だった。
国王ユージーンと王妃オパールは政略で結ばれた夫婦である。オパールの実家は力のある公爵家であり、オパールの父に代替わりしてからは更に資産を増やすなど、王家としては味方に取り入れたい筆頭貴族であった。その家に長男と同い年の娘が生まれ、国王は頭を下げてその娘を息子の婚約者に納めた。
オパールの父であるダグラス公爵は娘を王妃にすることになんの野望もなく、ただ請われたから受けたのみでその後も領地の経営のみに専念した。典型的な仕事大好き人間で、我がも子孫を残すため貴族の義務として妻を娶ったに過ぎなかったため、愛だの恋だのが存在するとは…存在する必要性などは露程も感じていない男だった。一男一女を授かると慰謝料と称して大金を払い名ばかりの妻とは離縁した。その際に『今後はダグラス公爵家とは一切関わらない、もし関わるそぶりを見せた場合にはどのような目に遭っても文句は言わない(命の保証はない)』という誓約書に署名させて。
まだ赤子のオパールを置いて嬉々として出ていった母親、そしてまったく子供を愛さない父親、その生育環境はオパールを蝕んだ。誰かに愛されたい、甘やかされたい、関わりたい、自分も愛したい。そのベクトルはすべて、婚約者であるユージーンに向いた。
幼い頃はまだしも、12歳を過ぎ王妃教育のため登城するようになると、始まる2時間前には城に行き、ユージーンにつきまとった…そう、つきまとった。教育時間が終わったあともつきまとった。ユージーンが騎士団で鍛練しているのを瞬きすら惜しんで眺め、彼が汗を拭いたタオルを当然のように持ち帰り…ユージーンからは早々に「気持ちの悪い女」と認定されてしまう。しかしながら国王たっての願いでの婚約であり、ユージーンもそれを我儘でどうにかしようとするバカ王子ではなかった。自らの後ろだてにするために父が望んでくれたことなのだからと、オパールとの婚約を解消することなく粛々と結婚した。そして今まで通り放置した。気持ち悪いつきまとい女を。
オパールはユージーンに関して…というより、情緒はポンコツだったが、能力は秀でていたため王妃としては文句のつけようがなかった。結婚と同時に国王として即位したユージーンにとって、オパールは側近同様優秀な自分の右腕となり…ただ、妻として、女として見ることは叶わなかった。行動すべてが相変わらず気持ち悪いつきまとい女でしかないからだ。もちろん初夜も迎えていない。自分の部屋の前に一晩中立っていたと聞かされた時は鳥肌がたった。
仕事は優秀だが、愛情を求めてくる粘着質な視線、そして行動に嫌気がさしたのと、資金面では文句がないが王宮にはやってこない微妙な後ろだての義父が妻を離縁していることを理由に、白い結婚のまま3年したら離縁することに決め、その代わりとして将来的に王妃とする、優秀で家柄の良い令嬢を側妃として娶ることにした。学園の時からお互いに好意を抱いていた相手のリリアだ。
リリアは卒園後、文官として王妃付きにしたため一年もすると王妃の職務を把握できるようになり、また、社交的な性格のため周りからも好意的に受け入れられるようになった。引退した父にも納得させ、オパールとの結婚から二年後、リリアを娶った。
しかしながらユージーンも妙に潔癖なところがある男で、オパールを離縁するまではリリアを抱くことはできないと告げる。あと一年の辛抱だから、と。それでも、性交以外の触れ合いは遠慮なく成されるわけで、オパールのユージーンへの執着は日に日に募っていくばかり。あと一年で離縁されるなど夢にも思っていないオパールは、ユージーンの愛情を奪うリリアを憎み、様々な嫌がらせを仕掛けるようになる。そのことが更にユージーンの気持ちを冷めさせることには気づけずに。
(でもさあ…)
確かにオパールは気持ち悪いと思う。使ったタオル持って帰るとかストーカーかよ、って思う。でも、そんな女に、「父が自分を思って決めてくれた相手だから」という良い子ちゃん発言でオパールを放置し結婚までし、あげくに三年後には離縁することも告げずに関わりたくないからと放置してるユージーンもどうかと思う。そもそも政略だからと割りきったなら最後まで割りきりやがれよ!確かにオパールは中身はちょっとアレだけど、見た目はもう最高の美女だ。おっぱいもデカイ、お尻もキュッと上がってる上に肉感的(に描かれている。悪役ポジだから?)だし、脚は細いし…言うなればどこぞの不二子ちゃんみたいなのだ。…まあ、勃つかどうかは人それぞれだけど。
なんて。
冷静に分析してみたけど、これ、「目覚めたら異世界にいました」的ライトノベル展開ってことなんだろうか。鏡に映る美人をマジマジと見ていると、後ろに人影が映った。
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