逃げたら追いかけられた

蜜柑マル

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「薫はさ、仕事中はほんと隙がなくて、真面目だし、キチキチしてるし、俺も同期として入ったとき、うわ、苦手かもって思ってたの。それは事実、だけど、仕事丁寧だし、裏表ないし、…笑うと可愛いし」

上杉は、また拗ねたように私を見ると、「薫、まったく自覚ないんだろうけど、狙ってるやつメッチャいたんだからね。だから俺、潰して回るの大変だったんだから」

潰す。また不穏な言葉が出てきましたよ、上杉さん。

「…なんて言えばいいのかわかんなくて、告白して断られたりしたら立ち直れないし、アピールはしつつも思いきれなくて、一晩どうかな、なんてふざけて言ったら薫がオッケーしてくれて…」

上杉は私をじっと見ると、「なんであん時、いいって言ってくれたの」

「それは、上杉が、」

「啓一!」

「…啓一が好きだったからだよ。私と違って、周りとすんごく仲良くて、でも仕事できるし、明るくていいなって。憧れてたから。だから、一晩でもいいって。たぶん、慣れてるから気まずくもならないんだろうって思って」

上杉は嬉しそうに笑うと「言ってよかった。薫、ありがとう」と言ったあとに、「でも俺、遊び人じゃないからね」と私のお尻をキュッとした。

「薫、抱いたとき、仕事中とのギャップにやられちゃって…あんなに甘く蕩けちゃう薫のこと、もっと見たくて…だから、ずーっと家で、どこにも出掛けないで、とにかく抱きたかったの。薫、好き。俺から離れないで、お願い」

上杉は私をまたぎゅうぎゅう抱き締める。苦しい。苦しい。

「…でも、私が長野の話しようとしたら、田舎興味ないって言ってたのに、いいの、転勤しちゃって」

「あれは…」

上杉は私の鼻に自分の鼻をスリスリすると、「…俺が知らない薫のこと、聞いて嫉妬するのイヤだったから」

「え」

そのまま口にチュッとした上杉は、「俺、かなり嫉妬深いよ。独占欲も強いし。薫のこと、本当なら家から出したくないんだからね」

私の胸をサワサワすると、「さっきみたいに痛くはしないけど、毎日俺のシルシをつけるからね、薫」と言って私の手を取り、左手の薬指をベロリと舐め上げた。

「俺の薫。俺だけの薫。もう逃がさないからね。この指に、俺のものだってシルシをつける」

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