初夜すら私に触れようとしなかった夫には、知らなかった裏の顔がありました~これって…ヤンデレってヤツですか?

蜜柑マル

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ドアを開けた私の目に飛び込んできたのは、ベッドの上で眠っている全裸の夫と、そのカラダに絡み付くように寝ている夫の義妹、アマンダの裸身だった。目の前の光景に頭がついていかず、しかし、カラダが反応してドアによろめく。

「明日は必ずおまえが起こしに来い、忘れずに必ず来いよ」

昨夜そう言われたとき、覚えていてくれたのかと思った阿呆な私を嗤ってやりたい。何を期待してたんだろう。この人は私のことなんて目に入れてすらいないのに。これを、よりによって今日、見せつけたかったわけだ。今までは隠してたつもりだった関係を、とうとう大っぴらにすることにしたわけだ。素晴らしい贈り物ね。私には、何をしてもいいと思っているのね。嫌われてるのはわかっていたけど、こんな貶めを受けなくてはならないほど、私はあなたに何かしたの?

バタン、と閉まる音に反応して目を開けたアマンダは、私を見るとニヤア、と唇を歪めた。

「あら、お義姉様。見られちゃったわね。ごめんなさい、見ての通り、フェルナンドお義兄様はわたしに夢中なの」

そう言うとアマンダは、夫の唇に口づけた。

その瞬間、左手がビリッと電気が走ったような痛みに襲われる。驚いて見ると、左手の薬指の結婚指輪がパリンと割れた。

その指輪だった金属が床に落ちると同時に夫が「ぐ…っ」と呻く。視線を向けると、起き上がった夫の指からも指輪が消えていた。

呆然とした顔で自分の左手を見た夫は、そのまま自分のカラダに視線を移し、隣でしなだれかかるアマンダを見、最後にドアにもたれる私を見た。その瞳が大きく見開かれる。

「今、何をした?ユリアーナ、こっちにおいで、…キミの左手を確認させてくれ!」 

いったい何を焦っているのだろう?自分が待ち望んでいた時が来ただけだというのに。「指輪が外れるまでは仕方ない、外れる時が離縁する時だということを忘れるな」と顔を合わせる度にバカな子どもに言い聞かせるように、何度も言っていたくせに。

叫ぶ夫に抱きついたアマンダは、

「フェルったら、もうユリアーナお義姉様にわたしたちの関係はバレてしまったのよ。…どうする?ユリアーナお義姉様。このまま夫人の座に居座るつもり?」

そう言ってみせつけるように夫の胸を吸い上げた。赤いシルシが浮かぶ。

「バレてしまったのよ」?今さら何を言い出すのだろう。婚約の顔合わせのあの日からバレていたわよ、…最初から。

「何をしてる、離せ!まさかおまえ、」

「なによぅ、昨夜はあんなにわたしを情熱的に求めたくせに。今さら見られたからって、」

「違う!」

そう叫んだ夫は、アマンダの腕を払いのけ、その腕をグイッと拘束した。

「痛い、痛いわよ!フェル、離して!」

「フェルなどと呼ぶことを赦した覚えはない!おまえ、さっき…指輪が割れる前に、何をした!」

アマンダは不貞腐れた顔になると、

「なによ、キスしただけじゃない!」

「キスしただと…?」

夫はアマンダを突き飛ばすと、ベッドから降り私に駆け寄ってこようとした。

「…ご自分のお姿をご覧になっては?」

思った以上に冷たい声が出て自分でも驚いてしまった。おかしくて笑いだしそうになる。わかっていたことだけれど。愛されていないなんて、最初からわかっていたことだけれど。それでも目の当たりにさせられて悔しいと、悲しいと思ってしまうほどには、私はこの人を好きになってしまっていたのだろう。

夫はハッとしたように改めて自分の姿を見ると、シーツを剥ぎ取り腰に巻き付けた。それだけでも様になるのだから美丈夫は得だ。自分の中の抑えきれぬ感情から必死に目を背けようと、そんなことを無理矢理思ってみる。

「…っ、済まない、ユリアーナ、待ってくれ、今身支度を、」

「結構ですわ。…ひとつお願いがございますの」

夫はあからさまにホッとした顔になると、「なんだい、可愛いユリアーナ」と微笑んだ。結婚してから、いや、婚約してから初めて見る顔だ。私にこんな顔を向けてくれたことは一度もない。

「なんだい、愛しいアマンダ、の間違いではなくて?愛を囁くお相手を間違えておりますわよ。私はあなた様の可愛いアマンダではありません。バカにするのもいい加減になさいませ。あなた様にとっては虫けら同然でも、私はあなた様と同じ人間であり、尊厳を認められるべき、その権利がございます。…指輪が外れましたわ。あなた様の願い通りに。ようございましたね、一年も…いえ、婚約時分からすれば三年無駄にしたわけではございますが、でも私だけの責任ではありませんよね、私との婚約、結婚を承諾したのは誰でもないあなた様なのですから。あなた様の望み通り離縁いたしますので、今日中に書類を提出していただきたいのです。それが『お願い』です。今日中であれば何時でも構いませんのでどうぞお二人で引き続きお楽しみになって」

では失礼いたします。

そう言ってドアを閉めた。

涙も出なかった。

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