初夜すら私に触れようとしなかった夫には、知らなかった裏の顔がありました~これって…ヤンデレってヤツですか?

蜜柑マル

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9(フェルナンド視点)

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「どんな風に対処するのかセドリックが確認してたら、あんたなんの躊躇もなく水飲んだらしいわね。自室だからって、自分が準備したものじゃないものをなんの警戒もせずに飲むなんて…バカにも程があるわ。自分が楽しむために作ってる、ユリちゃんのお母様…ホランド夫人の毒だったら、あんた今頃ここにいないわよ。童貞のまま死んじゃうところだったわねぇ。あ、ユリちゃんに棄てられたんだからこの先一生童貞か、死んだ方が幸せだったかもね」

「しかも間抜けにも、『明日起こしにこい』なんて口に出して言うんだからな。そりゃあけしかけちゃうに決まってんだろ、このバカ女を。何者も入れねぇようにしてる離れの警護を昨夜はユリたんの部屋限定にしておいた。おめえの部屋のドアに『フェルナンドの部屋』って貼ったのに、それにも気付かねぇくらいに浮かれてやがるし…おめえ、いくらユリたんの作った睡眠薬だからって、あの腐れに脱がされてるのすら気づかねえとは…怠慢にも程があるぞ」

…だったらあんたが飲んでみろ。裸にひんむいて裏の沼に棄ててやる。

「まあねぇ。昨日ようやくジルに性交の許可を出されて浮かれてたのはわかるけど気を抜きすぎよ。あんたさ、指輪になんのマジナイかけさせたの?」

「…不貞があったら、」

「おえっ、キモい!つーか、ユリちゃんが不貞なんかするかっつーの!やっぱり殺す!」

「そんなのわかってますよ!俺の操をたてるつもりだったんです!」

「…童貞拗らせマジキモい」

余計なお世話だ。俺が他の女に靡くことなんかないけど、それでもこういう仕事をしていれば家に帰れない時だってある。少しでもユリアーナに心配をかけたくなくて、指輪を作ったときはまだ真実を話せなかったからあんなこと言ったけど、俺とお揃いだってことを意識してほしくて何回もしつこく言ったけど、それだって「俺は浮気はしない」って毎回誓ってるつもりだったのに…!

「今朝、ユリアーナの誕生日に、すべてを話して、今までのことを詫びて、心置きなくユリアーナを抱くつもりだったのに、」

「…朝からやる気だったの」

当たり前だ。婚約から2年、結婚してから1年、3年もお預けくらったんだ。朝からやったって一週間は籠らないと割に合わないくらいだ。

「…おめえ、ユリたんを監禁とかすんなよ」

「しません」

自分の部屋から出さないことは監禁には当たらない。縛りつけたり物理的に出ていけないような真似はしないし。ただ、俺の腕の中に可愛いユリアーナを閉じ込めておくだけの話だ。監禁ではない。もう一度言う。監禁ではない。

「…フェルの母親は、小さい時に死んだ、って、」

まだ生きてたバカ女が勝手に話に混ざってくる。

「シャルはハソックヒル国の間者に顔を見られちまった。だから死んだことにして、顔を変えて戻ってきたんだ。おめえという教材を連れてな」

「たまたま知り合った娼婦が、朝起きたらあんた置いていなくなってたのよ。だから連れてきたの。ちょうどいいかと思ってさ」

バカ女は、「わたしが、…娼婦の子ども…?」なんてショックを受けたように呟いてるが、

「親と同じだろ。最初が16歳だったっけ?」

「…え?」

「おまえ、よく『処女』なんて言えたな。今まで咥え込んだ男、ひとりひとり思い出させてやろうか?」

バカ女は俺を見てまた真っ青な顔になった。

「…知ってたの?」

「知ってるに決まってんだろ。さっきから話聞いてんのか?おまえが処女じゃないから高級娼婦って案が出たんだよ。結局頭もダメ、品もねえから無理だったけどな。…それより」

ツカツカとバカ女に近づくと、「やめて!来ないで!」なんて叫ぶ。さっきまで触るなって言っても触ってきてたくせに、なんだその掌返しは。

「おまえをこれからどうするか決める。…だいたいおまえが同じ学年にいたせいで、俺はせっかくユリアーナと婚約できたのにおまえの目を欺き自分に意識を向けさせておかなくてはならなかったせいで、ユリアーナと楽しいイチャイチャ学園生活を送ることが叶わなかったんだぞ!俺とユリアーナは婚約したんだと声を大にして言いたかった、自慢しまくりたかったのに!おまえに惚れてるように演技しなくてはならないせいで、記念すべき卒業パーティーすらエスコートできなかったんだ!美しく装おったユリアーナの隣には本来なら俺がいるはずだったのに、それも叶わず悔しくてぶっ倒れそうでユリアーナを見ないようにするだけで精一杯だった…。きさまなんかに触らなきゃならない、エスコートしなきゃならないなんて、1日逆さ吊りにされてたほうがマシだった…そうだ、そもそも婚約した日だって、ユリアーナの前にひざまずいて愛を乞うつもりだったのに、『政略結婚なのだから愛を求めないでくれ』なんて…いや、たしかに求められなくても俺にはユリアーナへの余りある溢れ出る愛情があるわけだから、たとえ…たとえ求められなくても、いや、そんなことはあるわけがない…ユリアーナが俺を求めてくれないなんて…、いや、さっきユリアーナに『離縁する』と言われたんじゃなかったか!?ああっ、このまま記憶喪失になりたい!いやダメだ、ユリアーナのことは忘れたくない、何を忘れようとユリアーナのことは、でも、そうしたらさっきのユリアーナの『離縁します』宣言ももれなくついてきてしまうではないか…っ!どうすれば、どうすれば…っ!…おまえはすぐに処刑だ」

すると母が、

「え、もちろんユリちゃんの開発してくれた薬の被験者にするんでしょ。処刑なんて一瞬で済むことしないでよ、もったいない。ねえ、ジル」

「俺もそのつもりだった。うちの次期当主は大丈夫かよ~。あ、ユリたんに逃げられたから次期当主も無理かな。イアンにやらせるか」

「…それでユリアーナをイアンの嫁にする気ですか?冗談じゃない!俺とユリアーナはまだ離縁してないんです。絶対に探し出して謝罪します、ユリアーナは俺の女だ!今まであんたたちに婚約を認めさせるために頑張ったのは、イアンじゃない、俺だ!」

父と母はニヤニヤすると、「せいぜい頑張れ」と言いバカ女を引き摺って出ていった。

まずはサフィールドのところだ。あの光がなんなのか吐かせないとならない。

「ユリアーナ…」

せっかく今日、彼女のすべてを手に入れるはずだったのに。自分の甘さを呪うと同時にこの家の全員を呪う。俺のことなんだと思ってやがるんだ、どれだけ邪魔すれば気がすむんだ。訓練の一環だなんて尤もらしいこと言って、要はただ俺がユリアーナに想いを告げられないように面白がっているだけのくせに。

まだ彼女に一度しか口づけていない。カラダに触れてもいない。あんなにも恋い焦がれ待ち望んだ彼女をまた取り上げられた。絶対に絶対に取り戻す。俺の腕の中にずっと…一生閉じ込めておく。俺だけのユリアーナなのだから。
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