初夜すら私に触れようとしなかった夫には、知らなかった裏の顔がありました~これって…ヤンデレってヤツですか?

蜜柑マル

文字の大きさ
11 / 19

11

しおりを挟む
「わたしのこの髪…これはね、母が首を吊って自殺した、その姿を見てしまったショックでこんな色に…真っ白になってしまったんです」

自殺、

「お母様はなぜ、」

「わたしの母も、わたしと同じ…まあ、わたしが同じですね。マジナイを使える人だったんです。元々住んでいたソルマーレ国からアミノフィア国に来ることになったのは、母がお金のために本来ならするべきではなかったことをしてしまったからなんです」

「するべきではなかったこと…?」

サフィールドさんは「ええ」と頷くと、

「マジナイは、人が幸せになるために使うべきものです。母は常々そう言っていた。わたしは幼いながらもマジナイの力が強かったので、たぶんそうやって教えてくれようとしていたんでしょうね。誰かを苦しめたり、不幸にするために使うべきではない、せっかく授かった力を他人の幸せのために使うべきだと」

「…素敵な考え方だと思います」

ふ、と微笑んだサフィールドさんは、「わたしもそう思う」と言ったあと、

「母は生活のために、その自らの信念を曲げてしまった。幸せのために使うべき自分の力で、ある人を不幸にしてしまったそうです。母は一生困らないくらいのお金を手にし、アミノフィア国に戸籍も作ってもらいあちらを出てきたそうです。でも、良心の呵責に耐えられなかったのでしょうね。ある日突発的に首を吊って死んだ」

サフィールドさんの瞳が昏く揺らめく。この人は幼い時に、そんなツラい経験をさせられたんだ…。

「おかげさまで、お金に困ることはなかったけれど、母が死ぬほど苦しんだ、その苦しめてしまった相手、せめてその人には幸せになって欲しいと毎日毎日祈りました」

目を伏せるサフィールドさんに、そっと声をかける。

「…どんなマジナイだったのか、誰にかけたのかを聞いたのですか」

サフィールドさんは、「ええ」と頷くと、とたんに晴れやかな顔になった。

「…わたしの祈りが通じたとは言いませんが、奇跡的に母のかけたマジナイが解けたのです。これで母も浮かばれると思います。本当に、本当に良かった…」

サフィールドさんはそれ以上話すつもりがないようなので、私も聞かないことにした。少しでもサフィールドさんの気持ちが軽くなったのなら、それで良かったと思う。

「わたしがフェルナンド君の依頼を受けてあの指輪を作ったのも、フェルナンド君とユリアーナさんが幸せになると思ったからなんだけど、フェルナンド君の抱える事情が複雑すぎてうまくいかなかったのかなぁ…でも、役にはたったと思うよ。フェルナンド君の話を聞く時に、どんなマジナイだったのか聞いてみて。わたしは教えてあげられないから」

コクリと頷いてみせると、サフィールドさんはホッとしたように微笑んだ。

「それで…これからユリアーナさんはどうするの?まだフェルナンド君と顔を合わせたくないなら帰りたくないでしょう?ご実家に帰っても、たぶんすぐにフェルナンド君が来ちゃうよ」

「そうですよね…」

サフィールドさんのマジナイでここ、アミノフィア国に来てしまったが、アミノフィア国に知り合いはいない。かと言ってサフィールドさんのところにいるわけにもいかないし…。

「さっきユリアーナさん、ソルマーレ国はお母さんの出身地だと言ってたけど、そちらに親戚はいないの?」

とサフィールドさんに聞かれてハッとする。

「母の実家が…今は母のお兄さん、私の伯父ですが、その方が跡を継いでいて、何度か遊びに行ったこともあります」

母の実家も薬草大好き一族で、それが縁で母は父のところに嫁いできたのだ。母の実家は子爵家で、薬草を効率的に栽培する手法を研究している。温室の中に入った時の薬草のクセのある匂いを思い出し、思わず顔が綻ぶ。

「それなら、そちらにお邪魔してみたらどうかな?急で驚かれるだろうけど、良かったらわたしが送るよ。場所さえ教えてもらえれば」

母の実家の場所を説明すると、「じゃあ行こうか」と手を取られ、次の瞬間には母の実家の前に立っていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最強魔術師の歪んだ初恋

恋愛
伯爵家の養子であるアリスは親戚のおじさまが大好きだ。 けれどアリスに妹が産まれ、アリスは虐げれるようになる。そのまま成長したアリスは、男爵家のおじさんの元に嫁ぐことになるが、初夜で破瓜の血が流れず……?

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

結婚式に結婚相手の不貞が発覚した花嫁は、義父になるはずだった公爵当主と結ばれる

狭山雪菜
恋愛
アリス・マーフィーは、社交界デビューの時にベネット公爵家から結婚の打診を受けた。 しかし、結婚相手は女にだらしないと有名な次期当主で……… こちらの作品は、「小説家になろう」にも掲載してます。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

愛してないから、離婚しましょう 〜悪役令嬢の私が大嫌いとのことです〜

あさとよる
恋愛
親の命令で決められた結婚相手は、私のことが大嫌いだと豪語した美丈夫。勤め先が一緒の私達だけど、結婚したことを秘密にされ、以前よりも職場での当たりが増し、自宅では空気扱い。寝屋を共に過ごすことは皆無。そんな形式上だけの結婚なら、私は喜んで離婚してさしあげます。

すべてはあなたの為だった~狂愛~

矢野りと
恋愛
膨大な魔力を有する魔術師アレクサンダーは政略結婚で娶った妻をいつしか愛するようになっていた。だが三年経っても子に恵まれない夫妻に周りは離縁するようにと圧力を掛けてくる。 愛しているのは君だけ…。 大切なのも君だけ…。 『何があってもどんなことをしても君だけは離さない』 ※設定はゆるいです。 ※お話が合わないときは、そっと閉じてくださいませ。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

処理中です...