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「あの女は、俺たちとはまったく関係のない女で…さっき訓練、って言ったけど、その…相手を誘惑して情報を聞き出す、とかそういうことも時としてあるから、俺の訓練のために母が連れてきた、…まあ、捨て子だったんだけど。ジルコニア家の仕事に関することは別として俺たち並みに教育をしてきたもののさっぱりで。母としては、俺の教材、って意味合いと共に、身寄りもないし将来的にはジルコニア家で働かせようって考えてたらしいんだけど、俺が中途半端な関わり方をしたせいで、俺を誘惑して将来は侯爵夫人になる、なんて勘違いしちまって。あの朝、…そうだ!」
いきなり叫んだフェルナンド様にびっくりして見上げると、
「リア。あの朝、言えなかったけど、誕生日おめでとう。そして、夫婦になって一年、ありがとう。愛してる」
と、またチュ、とされる。もう今日だけで一年分したように思う。もういいと思う、フェルナンド様、もう私そろそろ限界が…。
伝えられた言葉に、なんて答えたらいいのかわからない。私は、フェルナンド様をまだなんにもしらない。愛おしいと思う、でも、まだ、
「フェルナンド様、私、フェルナンド様にまだ愛してるって言えません、まだ、」
「当たり前だよ。いいんだよ、リア。俺がリアを愛してるんだから。そんなこと気にしないで」
そう言ったフェルナンド様の瞳は、言葉とはウラハラに寂しそうな色になった。そんな、
「あの!まだ、言えませんけどっ!でも、でも、フェルナンド様を可愛いと思いますし、好きですっ」
「…え?」
フェルナンド様は私の言葉に一瞬呆けたようになり、その後みるみる顔を赤くした。
「…ほんと?」
「え、」
「ほんとに、…俺のこと、好きって、言ってくれるの」
じっと見つめられ恥ずかしくなるが、ここはキチンと伝えなくてはならない。フェルナンド様は私に真っ直ぐ伝えてくれているのだから。
「はい、私、…フェルナンド様を、好きです」
その瞬間、フェルナンド様の顔がほころび、満面の笑みになった。
「リア!嬉しい、…嬉しいっ!ありがとう、リア…俺、一生、リアを大切にするからね。絶対離さない。ああ、嬉しい…リア、ありがとう」
ギュウッ、と抱き締めるフェルナンド様が微かに震えていた。この人は、こんなにも感情表現が激しいのに、あんな風にずっと抑えてきたのかと思うとなんだか申し訳ない気持ちになる。私のせいではないのだけど。
「結婚記念日をリアの誕生日にしたのも、あのクソ親父が絶対に嫌がらせで結婚記念日に仕事入れると思って…リアの誕生日は自分も祝いたいから、さすがにその日には何もしないと思って、」
「効率的だから、じゃなかったんですか…」
フェルナンド様は私の髪の毛にまた顔を埋めた。いろいろ気になるからやめて欲しいんだけど…。
「リアに対して効率的に何かしたいなんて一個もないよ。たくさん手間がかかってもなんでも、すべて大事にしたい。リアに関わるすべてを、大切に大切にしたい。…リア、」
「はい」
「さっきの風呂と同じで、家に帰るまでは我慢するけど、俺、…リアを抱いていいよね。もう、我慢しなくていいよね」
抱く、って、
「性悪夫婦に邪魔された俺とリアの初夜を迎えていいよね、リア」
初夜、という言葉にブワッと頭が熱くなる。初夜、…初夜!?
「フェ、フェルナンド、さま、あ、あの、」
「…ダメなの?」
また耳元で囁かれ、心臓に悪いことこの上ない。こんな色気駄々もれなフェルナンド様と夜を過ごすなんて無理!死んじゃう!あの日、初夜を無視された、なんて悲しんでた私、良かったのよ、むしろ、無視されて良かったのよ…!
「あ、あのあのあのっ!?え、あ、フェルナンド様にっ!?耐性がっ!ないのでっ!耐性が、できてからっ、…ひゃっ」
耳にチュ、チュ、と何度も口づけられ、直接響く音と吐息が耳から全身に伝わりカラダが痺れたようになる。フェルナンド様のカラダには痺れ成分が…なんてなんとか思考を逸らして現実逃避したいのに、今度はフェルナンド様の舌が耳を這い、現実に引き戻される。
「フェルナンド様っ!ま、待って、待ってください、」
「…自業自得とは言え、俺、一年以上お預けくらってるんだよ。リア、一年もあったんだから、準備万端でしょ、心の準備は。さっき、俺にすべてを捧げるって言ってくれたよね。今すぐちょうだい。いや、まだだ。家に帰ってから…」
「だっ、だって、もう、あの日、ひゃっ!や、やめ、フェルナンド様っ、待ってぇ!あの、あの日っ、もうっ、白い結婚だって思ったから…っ!もう、覚悟とか、ない、なくなりまし、たぁっ!や、やだぁ、やめっ…」
容赦なく耳をハムハムされ、痺れ具合が酷くなる一方だ。この人、なんてことするの…!あんなに品行方正に見せかけておいて…!ズルい…!
「リア、いいって言って」
「ズルい、や、…んっ!フェ、フェルナンドさまっ…」
「いい、って言って。リア、お願い、いいって…抱いてください、って言って」
…言葉をすり替えるのおかしいと思う、なんでいきなり難易度上げるの!
フェルナンド様は結局、望み通りの言葉が出るまで私を離してはくれなかった。影の一族の妻になるから身を持って拷問を体験しろということなのだろうか。ひどい。
【了】
いきなり叫んだフェルナンド様にびっくりして見上げると、
「リア。あの朝、言えなかったけど、誕生日おめでとう。そして、夫婦になって一年、ありがとう。愛してる」
と、またチュ、とされる。もう今日だけで一年分したように思う。もういいと思う、フェルナンド様、もう私そろそろ限界が…。
伝えられた言葉に、なんて答えたらいいのかわからない。私は、フェルナンド様をまだなんにもしらない。愛おしいと思う、でも、まだ、
「フェルナンド様、私、フェルナンド様にまだ愛してるって言えません、まだ、」
「当たり前だよ。いいんだよ、リア。俺がリアを愛してるんだから。そんなこと気にしないで」
そう言ったフェルナンド様の瞳は、言葉とはウラハラに寂しそうな色になった。そんな、
「あの!まだ、言えませんけどっ!でも、でも、フェルナンド様を可愛いと思いますし、好きですっ」
「…え?」
フェルナンド様は私の言葉に一瞬呆けたようになり、その後みるみる顔を赤くした。
「…ほんと?」
「え、」
「ほんとに、…俺のこと、好きって、言ってくれるの」
じっと見つめられ恥ずかしくなるが、ここはキチンと伝えなくてはならない。フェルナンド様は私に真っ直ぐ伝えてくれているのだから。
「はい、私、…フェルナンド様を、好きです」
その瞬間、フェルナンド様の顔がほころび、満面の笑みになった。
「リア!嬉しい、…嬉しいっ!ありがとう、リア…俺、一生、リアを大切にするからね。絶対離さない。ああ、嬉しい…リア、ありがとう」
ギュウッ、と抱き締めるフェルナンド様が微かに震えていた。この人は、こんなにも感情表現が激しいのに、あんな風にずっと抑えてきたのかと思うとなんだか申し訳ない気持ちになる。私のせいではないのだけど。
「結婚記念日をリアの誕生日にしたのも、あのクソ親父が絶対に嫌がらせで結婚記念日に仕事入れると思って…リアの誕生日は自分も祝いたいから、さすがにその日には何もしないと思って、」
「効率的だから、じゃなかったんですか…」
フェルナンド様は私の髪の毛にまた顔を埋めた。いろいろ気になるからやめて欲しいんだけど…。
「リアに対して効率的に何かしたいなんて一個もないよ。たくさん手間がかかってもなんでも、すべて大事にしたい。リアに関わるすべてを、大切に大切にしたい。…リア、」
「はい」
「さっきの風呂と同じで、家に帰るまでは我慢するけど、俺、…リアを抱いていいよね。もう、我慢しなくていいよね」
抱く、って、
「性悪夫婦に邪魔された俺とリアの初夜を迎えていいよね、リア」
初夜、という言葉にブワッと頭が熱くなる。初夜、…初夜!?
「フェ、フェルナンド、さま、あ、あの、」
「…ダメなの?」
また耳元で囁かれ、心臓に悪いことこの上ない。こんな色気駄々もれなフェルナンド様と夜を過ごすなんて無理!死んじゃう!あの日、初夜を無視された、なんて悲しんでた私、良かったのよ、むしろ、無視されて良かったのよ…!
「あ、あのあのあのっ!?え、あ、フェルナンド様にっ!?耐性がっ!ないのでっ!耐性が、できてからっ、…ひゃっ」
耳にチュ、チュ、と何度も口づけられ、直接響く音と吐息が耳から全身に伝わりカラダが痺れたようになる。フェルナンド様のカラダには痺れ成分が…なんてなんとか思考を逸らして現実逃避したいのに、今度はフェルナンド様の舌が耳を這い、現実に引き戻される。
「フェルナンド様っ!ま、待って、待ってください、」
「…自業自得とは言え、俺、一年以上お預けくらってるんだよ。リア、一年もあったんだから、準備万端でしょ、心の準備は。さっき、俺にすべてを捧げるって言ってくれたよね。今すぐちょうだい。いや、まだだ。家に帰ってから…」
「だっ、だって、もう、あの日、ひゃっ!や、やめ、フェルナンド様っ、待ってぇ!あの、あの日っ、もうっ、白い結婚だって思ったから…っ!もう、覚悟とか、ない、なくなりまし、たぁっ!や、やだぁ、やめっ…」
容赦なく耳をハムハムされ、痺れ具合が酷くなる一方だ。この人、なんてことするの…!あんなに品行方正に見せかけておいて…!ズルい…!
「リア、いいって言って」
「ズルい、や、…んっ!フェ、フェルナンドさまっ…」
「いい、って言って。リア、お願い、いいって…抱いてください、って言って」
…言葉をすり替えるのおかしいと思う、なんでいきなり難易度上げるの!
フェルナンド様は結局、望み通りの言葉が出るまで私を離してはくれなかった。影の一族の妻になるから身を持って拷問を体験しろということなのだろうか。ひどい。
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