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目覚め
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私の名前は菅原ユウ。
「…。」
寝慣れたベッドの上で私は目を覚ました。
ベッドの端には昨夜、揃えたインナーの上下が転がっている。
昨日の暴れ具合が一目見ただけでわかるようなその残骸。
私はソレを見てため息をついた。
そこに追い打ちをかけるように早朝の秋の冷たさがツンと鼻先をつく。
少し気になって鼻に触れてみたらヒンヤリとしている。
やっぱり秋なんだなと思わされた。
「…。」
ベッドの近くには小さなランプがのったテーブルが置いてある。
そしてランプのすぐそばには灰皿とタバコがあった。
それは紛れもなく隣にいる男が吸った残骸でしかない。
灰皿にすりつけられたタバコは少し折れていた。
その様は男の握力の強さを物語っている。
昨日、その男はどんな男だったかと思いだそうにも思い出せない。
自分のそばには昨夜、飲みほした空の缶が置いてある。
どうやらソレのせいで頭痛まで始まってしまって、記憶すら味方してくれないそうだ。
隣で横になっている男はイビキをかきながら気持ちよさそうに眠っていた。
がっしりとした腕はたくましく、少しパーマがかった髪はライオンを思わせる。
朝だからかいつもは剃ってある髭が少しだけのびていた。
きっと触れたらジョリジョリするんだろうなって思う。
華道をする時に使う小道具の先端ほどの鋭さはなくてもきっと触れたらピリッとするはず。
私は男の風貌からにじみ出る強さを感じながら少しあくびをした。
すると男もあくびをする。
「え?」
ハッとさせられた。
あくびがうつるのは相手が優しい人だからだという話を聞いたことがある。
たしかにこの男、カズキは私に優しい。
昨夜だっていきなり来た私を嫌な顔せずに迎え入れてくれたのだ。
そう、昨夜の私はむしゃくしゃしていた。
なぜなら彼氏のスグルが浮気をしていたから。
忘れることなんて出来ない。
会社の帰り道、スグルが楽しそうに他の女とホテルに入っていく姿を。
わかってはいた。
スグルがモテる男だってことは。
だけどこんなにもまざまざと見せつけられるような感じはすごく嫌だった。
神様は意地悪だ。
あと数分ずれていたら避けることができたはずだったのに。
そんなことを考えていた私は思わず親指の爪を噛む。
ギリギリと音がしそうなくらい噛んでやった。
それくらい私はスグルのことが好きなのだ。
私がそうしていると眠っていたはずのカズキが私を見つめていた。
「またその癖、これで何回目?」
カズキはため息をつきながら呆れた表情を浮かべていた。
「…。」
寝慣れたベッドの上で私は目を覚ました。
ベッドの端には昨夜、揃えたインナーの上下が転がっている。
昨日の暴れ具合が一目見ただけでわかるようなその残骸。
私はソレを見てため息をついた。
そこに追い打ちをかけるように早朝の秋の冷たさがツンと鼻先をつく。
少し気になって鼻に触れてみたらヒンヤリとしている。
やっぱり秋なんだなと思わされた。
「…。」
ベッドの近くには小さなランプがのったテーブルが置いてある。
そしてランプのすぐそばには灰皿とタバコがあった。
それは紛れもなく隣にいる男が吸った残骸でしかない。
灰皿にすりつけられたタバコは少し折れていた。
その様は男の握力の強さを物語っている。
昨日、その男はどんな男だったかと思いだそうにも思い出せない。
自分のそばには昨夜、飲みほした空の缶が置いてある。
どうやらソレのせいで頭痛まで始まってしまって、記憶すら味方してくれないそうだ。
隣で横になっている男はイビキをかきながら気持ちよさそうに眠っていた。
がっしりとした腕はたくましく、少しパーマがかった髪はライオンを思わせる。
朝だからかいつもは剃ってある髭が少しだけのびていた。
きっと触れたらジョリジョリするんだろうなって思う。
華道をする時に使う小道具の先端ほどの鋭さはなくてもきっと触れたらピリッとするはず。
私は男の風貌からにじみ出る強さを感じながら少しあくびをした。
すると男もあくびをする。
「え?」
ハッとさせられた。
あくびがうつるのは相手が優しい人だからだという話を聞いたことがある。
たしかにこの男、カズキは私に優しい。
昨夜だっていきなり来た私を嫌な顔せずに迎え入れてくれたのだ。
そう、昨夜の私はむしゃくしゃしていた。
なぜなら彼氏のスグルが浮気をしていたから。
忘れることなんて出来ない。
会社の帰り道、スグルが楽しそうに他の女とホテルに入っていく姿を。
わかってはいた。
スグルがモテる男だってことは。
だけどこんなにもまざまざと見せつけられるような感じはすごく嫌だった。
神様は意地悪だ。
あと数分ずれていたら避けることができたはずだったのに。
そんなことを考えていた私は思わず親指の爪を噛む。
ギリギリと音がしそうなくらい噛んでやった。
それくらい私はスグルのことが好きなのだ。
私がそうしていると眠っていたはずのカズキが私を見つめていた。
「またその癖、これで何回目?」
カズキはため息をつきながら呆れた表情を浮かべていた。
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