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クリスマス
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有名な高級レストラン、有名パティシエが作るケーキ、雑誌に掲載されている服、ブランドのハイヒール、ハイスペックな彼氏。
憧れの対象は数えれば数えるほどきりがない。
だけどその年のクリスマスの日、私はその憧れに包まれていた。
「スグル…。」
街はクリスマス、冬の冷たい空気すらクリスマスツリーの光で少しだけ暖かく感じられた。
私がボソッと言ったことをスグルはちゃんと聞いている。
「どうしたの?」
いつもどおり、いつものスグル、完璧なスグルが私に笑顔でそう言った。
多分、クリスマスをスグルは楽しんでいるのだろう。
しかし、その時の私は100%そういう気持ちにはなれていなかった。
目の前には美味しそうな料理があって、周りには私たちと似たようなカップルがそれぞれのテーブルを囲んでいる。
スグルも他のカップルたちもクリスマスを心から楽しんでいるのがよく伝わってきた。
そのなかにいる私はまるで1人だけクリスマスじゃなくてクリスマスイブの日に取り残されたような気分だ。
「ううん、なんでもないの。」
私はスグルに言いかけた言葉をグッと飲み込んだ。
グニャッと心が歪むような感覚がしたが、気のせいだと思ってシャンパンを飲みほす。
「それより、ここのシャンパン美味しいね。」
瞬時に笑顔を浮かべ、私はスグルにそう言った。
私がそう言うとスグルは嬉しそうだ。
「そうだろ!?確かこのシャンパン結構、良いのなんだって。」
スグルは目をキラキラとさせながらメニュー表を開く。
もちろん、シャンパンは本当に美味しかった。
だけど私はスグルに聞けなかったことがある。
美味しそうにシャンパンを飲んでいるスグルを見つめて私はこう思った。
「(スグル、昨日のクリスマスイブは楽しかった…?)」
スグルが他の女性と過ごしていたことはわかっている。
だけどやっぱり気になってしまうのだ。
そもそも自分だってカズキと一緒に過ごしていたわけで、スグルのことをどうこう言える立場ではない。
わかっている。
わかってはいたけど、私はスグルの彼女だから気になってしまうのだ。
「(…。)」
レストランの窓からは幸せそうに歩いている恋人たちが見えた。
きっと私とスグルもその中の1組にすぎない。
きっと大丈夫。
私は少しばかりの不安を胸に抱えながらケーキを口に含んだ。
有名パティシエが作ったケーキは甘すぎなくて大人な味がした。
きっとスグルが求めている女性ってこんな感じのケーキだろうな。
「あのさ。」
急にスグルが私に声をかけた。
その時のスグルの視線はとても真面目だった気がする。
憧れの対象は数えれば数えるほどきりがない。
だけどその年のクリスマスの日、私はその憧れに包まれていた。
「スグル…。」
街はクリスマス、冬の冷たい空気すらクリスマスツリーの光で少しだけ暖かく感じられた。
私がボソッと言ったことをスグルはちゃんと聞いている。
「どうしたの?」
いつもどおり、いつものスグル、完璧なスグルが私に笑顔でそう言った。
多分、クリスマスをスグルは楽しんでいるのだろう。
しかし、その時の私は100%そういう気持ちにはなれていなかった。
目の前には美味しそうな料理があって、周りには私たちと似たようなカップルがそれぞれのテーブルを囲んでいる。
スグルも他のカップルたちもクリスマスを心から楽しんでいるのがよく伝わってきた。
そのなかにいる私はまるで1人だけクリスマスじゃなくてクリスマスイブの日に取り残されたような気分だ。
「ううん、なんでもないの。」
私はスグルに言いかけた言葉をグッと飲み込んだ。
グニャッと心が歪むような感覚がしたが、気のせいだと思ってシャンパンを飲みほす。
「それより、ここのシャンパン美味しいね。」
瞬時に笑顔を浮かべ、私はスグルにそう言った。
私がそう言うとスグルは嬉しそうだ。
「そうだろ!?確かこのシャンパン結構、良いのなんだって。」
スグルは目をキラキラとさせながらメニュー表を開く。
もちろん、シャンパンは本当に美味しかった。
だけど私はスグルに聞けなかったことがある。
美味しそうにシャンパンを飲んでいるスグルを見つめて私はこう思った。
「(スグル、昨日のクリスマスイブは楽しかった…?)」
スグルが他の女性と過ごしていたことはわかっている。
だけどやっぱり気になってしまうのだ。
そもそも自分だってカズキと一緒に過ごしていたわけで、スグルのことをどうこう言える立場ではない。
わかっている。
わかってはいたけど、私はスグルの彼女だから気になってしまうのだ。
「(…。)」
レストランの窓からは幸せそうに歩いている恋人たちが見えた。
きっと私とスグルもその中の1組にすぎない。
きっと大丈夫。
私は少しばかりの不安を胸に抱えながらケーキを口に含んだ。
有名パティシエが作ったケーキは甘すぎなくて大人な味がした。
きっとスグルが求めている女性ってこんな感じのケーキだろうな。
「あのさ。」
急にスグルが私に声をかけた。
その時のスグルの視線はとても真面目だった気がする。
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