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第二章 懇親会編
32、私は胸に手を当てます
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突然ですが、私は今かなり厄介なことに巻き込まれています。いやまあ、厄介なことには生まれながらに巻き込まれてるだろと言われれば確かにそうなのですが、それとはまた別方向の厄介事と言いますか。いつかこの日が来るだろうとは確かに思っていたのですが、とうとう来ましたか。
シユウ様に聞いたところ、別に身構える必要はないと言われました。いや、全く助言になっていませんわ。相も変わらず頼りがいの無いことで。そんな風に本人に聞こえるよう言ったら、首を直角に曲げて凹んでいました。随分と器用な落ち込み方ですわね。
というか、身構えるなというのが無理な話でしょう。私は所詮、滅びかけた国の一介の貴族に過ぎないわけで、本来だったらシユウ様とだってそんな気軽に会話をできる立場にはいないのです。そう考えると、相談相手にシユウ様を選んだ私の判断ミスだったという気がしますが、今は考えないでおきましょう。
ええ、近付いてきているのです。五年に一度行われる、七か国合同の懇親会の時期が。参加するのは各国の王族、有力貴族の子息息女の面々。どう考えても私場違いですわ。確かにシーツァリアという狭い枠組みの中では有力なのかもしれませんが、所詮は滅びかけた国の貴族。他と比べるなどそれ自体がおこがましいです。
などと言うと方々から苦情が寄せられるかもしれませんが、そんなものをいくら叩き付けられたところで私の心の曇りを生み出している要因がただ一つであることに変わりはありません。私が表舞台に出るというそれ自体も確かに頭痛がするようなことではありますが、それ以上に私にストレスを与えているものがあります。
ええ、ええ、我が国の第一王子ですわよ。あれを他国の面前に晒すなど狂気の沙汰です。恥晒しもいいところの、噂への恥の上塗りですわ。私だけなら体裁くらいは取り繕えます。それなりに上品な対応をして不快な思いをさせない心得くらいは身につけています。ですがあれは無理です。
参加する有力貴族には当然シーツァリアの貴族も含まれていて、その参加する令嬢の大半は日頃から第一王子を持ち上げている、死肉に群がる愚かな蝿。せめて死肉をただ食してくれていれば静かなものですが、飛び回り周囲に不快感を齎すのだから始末に負えません。
将来的にシーツァリアが滅亡することを許容している身とはいえ、蝿と同郷と認識され、私まで偏見の目で見られるのは我慢なりません。シユウ様にまで迷惑がかかるかもしれないと考えればなおさらです。もう少しシユウ様にはそういった部分を気にしてもらいたいところです。
とはいえ、今の私の考えこそが偏見に満ちているというのもまた事実ではあります。周囲の視線があれば蝿と言えど多少は大人しくするかもしれないと希望的観測くらいは出来ます。しかしそれはそれで第一王子が面倒なことになるのは全員理解しているはず。
他国の人間の視線を第一王子よりも気にかけていると察されてしまえば、不機嫌になることは確実。そうなれば今まで蝿が積み上げてきた信頼、将来への投資とも言えるそれが無に帰してしまう危険性があります。まあ滅ぶので全部無駄なんですけど。
「ミラ、どう思います?」
「気にしなくていいんじゃないかなあ。そういう意味じゃ、シユウ君の言ってることは案外間違ってない。だってどうせ第一王子と一緒にいないでしょ? だったら気にするだけ無駄だって。アンナって意外と他人からの評価は気にするタイプ?」
「意外も何も、私は人生の大半をそうやって生きてきたのですが? なるべく多くの人間に絶望を与える最期を迎えるために可能な限り理想通りの偶像を演じてきたという話はしましたわよね?」
「されたけど今はもうやめたんでしょ? しかも最近学校の勉強に少し遅れてきてるって話が回って来たけど、大丈夫?」
「必要分の勉強はしています。ただ、もともと私は勉強が得意な方ではないので。地頭は良いとは言われますが、勉学関連でまともに褒められたことはありません」
「成績優秀を演じるメリットを失っちゃったわけだ。まあ、七か国がどうなってるのかとは結構リアルタイムで頭に入ってるし、そっちが出来れば確かに他はいらないか」
シユウ様と会って、告白されて、私の習い事へのモチベーションは下がりました。地に落ちました。別にサボったりしているわけではないのですが、出来ていない所があっても次までに自主的に改善しておくなどといったことは一切しません。テレビを見るのに忙しいのです。
それはまあ冗談としても、シユウ様に教えられた娯楽にどっぷりと嵌ってしまったのは我ながら誤算でした。王族からの誘いということでそちらを優先できたのは嬉しい誤算でしたが、途中で気付きましたがシユウ様に信じらないくらい甘やかされまして。自制心は一応ありますが、以前と比べると堕落に堕落を重ねたような性格になってしまったことは否めません。
シユウ様と出会ってから二年。私は中等部一年になりました。胸はまだ大きくなっていません。
シユウ様に聞いたところ、別に身構える必要はないと言われました。いや、全く助言になっていませんわ。相も変わらず頼りがいの無いことで。そんな風に本人に聞こえるよう言ったら、首を直角に曲げて凹んでいました。随分と器用な落ち込み方ですわね。
というか、身構えるなというのが無理な話でしょう。私は所詮、滅びかけた国の一介の貴族に過ぎないわけで、本来だったらシユウ様とだってそんな気軽に会話をできる立場にはいないのです。そう考えると、相談相手にシユウ様を選んだ私の判断ミスだったという気がしますが、今は考えないでおきましょう。
ええ、近付いてきているのです。五年に一度行われる、七か国合同の懇親会の時期が。参加するのは各国の王族、有力貴族の子息息女の面々。どう考えても私場違いですわ。確かにシーツァリアという狭い枠組みの中では有力なのかもしれませんが、所詮は滅びかけた国の貴族。他と比べるなどそれ自体がおこがましいです。
などと言うと方々から苦情が寄せられるかもしれませんが、そんなものをいくら叩き付けられたところで私の心の曇りを生み出している要因がただ一つであることに変わりはありません。私が表舞台に出るというそれ自体も確かに頭痛がするようなことではありますが、それ以上に私にストレスを与えているものがあります。
ええ、ええ、我が国の第一王子ですわよ。あれを他国の面前に晒すなど狂気の沙汰です。恥晒しもいいところの、噂への恥の上塗りですわ。私だけなら体裁くらいは取り繕えます。それなりに上品な対応をして不快な思いをさせない心得くらいは身につけています。ですがあれは無理です。
参加する有力貴族には当然シーツァリアの貴族も含まれていて、その参加する令嬢の大半は日頃から第一王子を持ち上げている、死肉に群がる愚かな蝿。せめて死肉をただ食してくれていれば静かなものですが、飛び回り周囲に不快感を齎すのだから始末に負えません。
将来的にシーツァリアが滅亡することを許容している身とはいえ、蝿と同郷と認識され、私まで偏見の目で見られるのは我慢なりません。シユウ様にまで迷惑がかかるかもしれないと考えればなおさらです。もう少しシユウ様にはそういった部分を気にしてもらいたいところです。
とはいえ、今の私の考えこそが偏見に満ちているというのもまた事実ではあります。周囲の視線があれば蝿と言えど多少は大人しくするかもしれないと希望的観測くらいは出来ます。しかしそれはそれで第一王子が面倒なことになるのは全員理解しているはず。
他国の人間の視線を第一王子よりも気にかけていると察されてしまえば、不機嫌になることは確実。そうなれば今まで蝿が積み上げてきた信頼、将来への投資とも言えるそれが無に帰してしまう危険性があります。まあ滅ぶので全部無駄なんですけど。
「ミラ、どう思います?」
「気にしなくていいんじゃないかなあ。そういう意味じゃ、シユウ君の言ってることは案外間違ってない。だってどうせ第一王子と一緒にいないでしょ? だったら気にするだけ無駄だって。アンナって意外と他人からの評価は気にするタイプ?」
「意外も何も、私は人生の大半をそうやって生きてきたのですが? なるべく多くの人間に絶望を与える最期を迎えるために可能な限り理想通りの偶像を演じてきたという話はしましたわよね?」
「されたけど今はもうやめたんでしょ? しかも最近学校の勉強に少し遅れてきてるって話が回って来たけど、大丈夫?」
「必要分の勉強はしています。ただ、もともと私は勉強が得意な方ではないので。地頭は良いとは言われますが、勉学関連でまともに褒められたことはありません」
「成績優秀を演じるメリットを失っちゃったわけだ。まあ、七か国がどうなってるのかとは結構リアルタイムで頭に入ってるし、そっちが出来れば確かに他はいらないか」
シユウ様と会って、告白されて、私の習い事へのモチベーションは下がりました。地に落ちました。別にサボったりしているわけではないのですが、出来ていない所があっても次までに自主的に改善しておくなどといったことは一切しません。テレビを見るのに忙しいのです。
それはまあ冗談としても、シユウ様に教えられた娯楽にどっぷりと嵌ってしまったのは我ながら誤算でした。王族からの誘いということでそちらを優先できたのは嬉しい誤算でしたが、途中で気付きましたがシユウ様に信じらないくらい甘やかされまして。自制心は一応ありますが、以前と比べると堕落に堕落を重ねたような性格になってしまったことは否めません。
シユウ様と出会ってから二年。私は中等部一年になりました。胸はまだ大きくなっていません。
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