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ラジトバウム編
7話 危険なカード
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お店を出て町にもどるといつもどおり人々が行き交い生活している。
俺だけが不慣れでひとり浮いているような感覚がする。
「あ、そうだ。フォッシャのカード探しを手伝うんだったな」
自分のことばかり考えてすっかり忘れてしまっていた。
「いやあ、今はいいワヌよ。たぶん近くにはいないワヌから」
「わかるのか?」
「オドの感じでなんとなくわかるんだワヌ。まあ、これだけ生き物が多い場所だと、はっきりとは言えないけど……」
「ふーん……」
「それに正直、すぐに見つかる気がするからそんなに心配いらんワヌよ」
「な、なにを根拠に言ってるの!?」
「だから、オドの感じワヌ」
「オドの感じか……なるほど」
まあそれおいといて。
カードを探すにしても特徴をしらないとだめだ。俺はフォッシャにたずねる。
「どういうカードなんだ? 特徴は?」
「『古代の復元(ふくげん)』という名前のカードワヌ」
「……どうしてそのカードを探してるのか、きいてもいいか?」
俺がそうきくと、フォッシャはすこし迷うそぶりをみせつつも答える。
「なんていうか……とにかく、危険なカードなんだワヌ」
「危険って、どれくらい危険?」
「……国一つが……」
フォッシャは言いにくそうに、顔を逸らす。
「滅ぶかもしれないくらい、ワヌ」
本気で言っているのかどうかわからないが、物騒な話だ。
しかしフォッシャの表情はやや暗く、冗談を言っているようには見えない。
「そこまではいかなかったとしても……誰かが傷つくことになってしまうかもしれないワヌ。そうならないために、フォッシャはその危険なカードを探してるんだワヌ」
「……それはたしかに見つけたほうがよさそうだな」
どんなカードなのか見当もつかないが、俺は頬をかきながらとりあえず話を合わせておいた。
街を歩き回り、街の人々に尋ねまわってみたがいい返事は得られなかった。
武具屋の怪しい店主も知らないという。
噴水のある広場で休んでいると、フォッシャが立ち上がり言った。
「一応、オドに聞いてみるワヌか」
オド、オドとよくフォッシャは言うが、いったいなんなのだろう。
フォッシャは体を寝かせ、耳を地面をくっつける。
「なにしてるんだ?」
「……カードゲームでもしてるように見えるワヌか?」
いや、皮肉を言えって言ってんじゃないよ。
「ぼーっとしてないで、エイトもやるワヌ。オドに語りかけるんだワヌ」
「……なんなの? オドって……。と、それより、もうちょっと人通りの少ないところにいかないか?」
「それもそうワヌね。これだけにぎやかだと、オドの声が聞こえないワヌ」
そういう意味で言ったんじゃないけど、とにかく俺たちは噴水広場を離れ、ひと気のないわき道に入った。
フォッシャの見よう見まねで、俺も地面に耳をくっつけてみる。
「なにも聞こえないぞ」
「エイト、そのガシャガシャ言うの気が散るから、装備は外してくれワヌ」
やれやれと思いながらも、言われるがまま、俺は装備を外す。
しばらくやっていると、たしかに遠くから聞こえる足音や生活音のほかに、声のようなものが聞こえてきた。
『なんか~こないだの天変地異の影響で、町長さんとこにるろう人がきたらしいっすよ』
『あらまあ。こまってるだろうから歓迎してあげなきゃねえ』
『悪い人じゃないといいっすけどねえ』
『どうかしらねえ……。あ、あれってそのるろう人じゃないの?』
『え? ヘンな生き物連れてたらたぶんそうっすけど……まあそんなに怪しい人じゃないらしいからだいじょ……』
女性ふたりの声がする。だれかの噂話をしているようだ。町長さんのところのるろう人?
はっきりとは聞こえないが、優しい人たちなのだろう。 できれば俺たちのことも助けてくれないかな、と淡い期待を抱く。
『め、めちゃめちゃ怪しいーーー!?』
『な、なにしてるのあの人たち……怖いっすよ!?』
『ま、待って。なにか探しものをしてるようにも見えるわ。ちょっと様子をみてみましょう』
「フォッシャ、なんか人の声がしないか?」
「オドに集中するワヌよ、エイト」
「……それで、フォッシャ、感じるか? オドを」
「もっと強く呼びかけないとダメワヌ」
「呼びかけるたってどうやんだよ……おーい! オドー!? ってか」
『なんか怖いーーーー!?』
「……なんてな。ばかばかしい……」
顔を上げると、町民と思しきおばさん二人が、通りからすたこらと逃げ去っていくのが見えた。その一人が、ちらっとこちらを振り返り、気の毒そうな目を向けて、また去っていった。
「って俺たちのことじゃん!」
「なにガバガバ騒いでるワヌか? エイト」
「いやガバガバは騒いでないけど……それよりあの人らにやばい人たちだと思われたんじゃ……!」
「ああ……まあでも第一印象は強烈なほうがいいんじゃないワヌか?」
「ダメなほうに強烈だろーーー!? 芸人じゃないんだからよ……あーなんか助けてくれそうな雰囲気だったのに。今日の夜メシにだって困ってんだぞ俺らは!?」
「ま、オドがなんとかしてくれるから大丈夫ワヌ」
「そんな都合のいいことある!? まあ、いいけどさ……」
オドの感じとかオドがなんとかしてくれるとか、本当に大丈夫なんだろうかこの子は。なんだか危険なカードとやらより心配になってきたぞ。
俺だけが不慣れでひとり浮いているような感覚がする。
「あ、そうだ。フォッシャのカード探しを手伝うんだったな」
自分のことばかり考えてすっかり忘れてしまっていた。
「いやあ、今はいいワヌよ。たぶん近くにはいないワヌから」
「わかるのか?」
「オドの感じでなんとなくわかるんだワヌ。まあ、これだけ生き物が多い場所だと、はっきりとは言えないけど……」
「ふーん……」
「それに正直、すぐに見つかる気がするからそんなに心配いらんワヌよ」
「な、なにを根拠に言ってるの!?」
「だから、オドの感じワヌ」
「オドの感じか……なるほど」
まあそれおいといて。
カードを探すにしても特徴をしらないとだめだ。俺はフォッシャにたずねる。
「どういうカードなんだ? 特徴は?」
「『古代の復元(ふくげん)』という名前のカードワヌ」
「……どうしてそのカードを探してるのか、きいてもいいか?」
俺がそうきくと、フォッシャはすこし迷うそぶりをみせつつも答える。
「なんていうか……とにかく、危険なカードなんだワヌ」
「危険って、どれくらい危険?」
「……国一つが……」
フォッシャは言いにくそうに、顔を逸らす。
「滅ぶかもしれないくらい、ワヌ」
本気で言っているのかどうかわからないが、物騒な話だ。
しかしフォッシャの表情はやや暗く、冗談を言っているようには見えない。
「そこまではいかなかったとしても……誰かが傷つくことになってしまうかもしれないワヌ。そうならないために、フォッシャはその危険なカードを探してるんだワヌ」
「……それはたしかに見つけたほうがよさそうだな」
どんなカードなのか見当もつかないが、俺は頬をかきながらとりあえず話を合わせておいた。
街を歩き回り、街の人々に尋ねまわってみたがいい返事は得られなかった。
武具屋の怪しい店主も知らないという。
噴水のある広場で休んでいると、フォッシャが立ち上がり言った。
「一応、オドに聞いてみるワヌか」
オド、オドとよくフォッシャは言うが、いったいなんなのだろう。
フォッシャは体を寝かせ、耳を地面をくっつける。
「なにしてるんだ?」
「……カードゲームでもしてるように見えるワヌか?」
いや、皮肉を言えって言ってんじゃないよ。
「ぼーっとしてないで、エイトもやるワヌ。オドに語りかけるんだワヌ」
「……なんなの? オドって……。と、それより、もうちょっと人通りの少ないところにいかないか?」
「それもそうワヌね。これだけにぎやかだと、オドの声が聞こえないワヌ」
そういう意味で言ったんじゃないけど、とにかく俺たちは噴水広場を離れ、ひと気のないわき道に入った。
フォッシャの見よう見まねで、俺も地面に耳をくっつけてみる。
「なにも聞こえないぞ」
「エイト、そのガシャガシャ言うの気が散るから、装備は外してくれワヌ」
やれやれと思いながらも、言われるがまま、俺は装備を外す。
しばらくやっていると、たしかに遠くから聞こえる足音や生活音のほかに、声のようなものが聞こえてきた。
『なんか~こないだの天変地異の影響で、町長さんとこにるろう人がきたらしいっすよ』
『あらまあ。こまってるだろうから歓迎してあげなきゃねえ』
『悪い人じゃないといいっすけどねえ』
『どうかしらねえ……。あ、あれってそのるろう人じゃないの?』
『え? ヘンな生き物連れてたらたぶんそうっすけど……まあそんなに怪しい人じゃないらしいからだいじょ……』
女性ふたりの声がする。だれかの噂話をしているようだ。町長さんのところのるろう人?
はっきりとは聞こえないが、優しい人たちなのだろう。 できれば俺たちのことも助けてくれないかな、と淡い期待を抱く。
『め、めちゃめちゃ怪しいーーー!?』
『な、なにしてるのあの人たち……怖いっすよ!?』
『ま、待って。なにか探しものをしてるようにも見えるわ。ちょっと様子をみてみましょう』
「フォッシャ、なんか人の声がしないか?」
「オドに集中するワヌよ、エイト」
「……それで、フォッシャ、感じるか? オドを」
「もっと強く呼びかけないとダメワヌ」
「呼びかけるたってどうやんだよ……おーい! オドー!? ってか」
『なんか怖いーーーー!?』
「……なんてな。ばかばかしい……」
顔を上げると、町民と思しきおばさん二人が、通りからすたこらと逃げ去っていくのが見えた。その一人が、ちらっとこちらを振り返り、気の毒そうな目を向けて、また去っていった。
「って俺たちのことじゃん!」
「なにガバガバ騒いでるワヌか? エイト」
「いやガバガバは騒いでないけど……それよりあの人らにやばい人たちだと思われたんじゃ……!」
「ああ……まあでも第一印象は強烈なほうがいいんじゃないワヌか?」
「ダメなほうに強烈だろーーー!? 芸人じゃないんだからよ……あーなんか助けてくれそうな雰囲気だったのに。今日の夜メシにだって困ってんだぞ俺らは!?」
「ま、オドがなんとかしてくれるから大丈夫ワヌ」
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