カードワールド ―異世界カードゲーム―

イサデ isadeatu

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ラジトバウム編

14話 精霊杯予選

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 フォッシャを落ち着かせてから、どうするかを俺たちは決めあった。
「大会の予選に、俺も出てみようかな」

「精霊杯に? エイトが?」

「ああ。あいつとの一戦の前に、練習しておきたい。カードゲームは、まず実際にやってみるのがいいかなと思うし」

「エイト……ヴァーサスなんかできるワヌか?」

「ヴァーサス?」

「カードゲームのことワヌよ」

「……うーん……」

 はっきり言ってルールにもカードの種類にも、そこまで明るくはない。

「うーんて……」

 ま、もし勝てなかったら警察、ここでいう保安庁(ほあんちょう)に頼ればいい。やるだけやってみよう。
 前にフォッシャとカードショップを訪れてからも、実は何度かあそこに足を運んでいた。うしろから試合を観戦してだいたいのやり方はわかっている。
 最初に見た時からあのゲームに興味なくもなかったんだけど、なにせ日々の生活に必死だったからな。
 カードを買ったり遊んだりする余裕なんて、なかったんだ。


 精霊杯の予選会場は、地下にあった。
 案内係のお姉さんの後につづいて、果てしない階段をくだっていった先にある。

 意外に地下の内装は綺麗だった。石造だが地下とは思えないほど明るい。
 照明は見当たらない。なにか火を使っているようには見えないし、これもたぶんカードの魔法がなせる業なのだろう。
 
 予選に参加する選手は、何個かある控え室に振り分けられた。
 どれくらいの数の人が参加しているのかわからないが、俺がいる部屋にはおよそ50人ほどいる。だから全体では、500とかそれくらいの人数じゃないだろうか。

 部屋にはいくつかの椅子とテーブルがあって、壁には2枚のカードが離れて置いてあった。
 一枚には複数の試合の中継が、テレビ画面のように映し出されている。遠くからでも見やすいように、カードから出た大きなディスプレイが、空間に映写されている。

 地下の会場だが、会場のいくつかはスタジアムのようなそれなりに大きい舞台なのか観客も入っていた。それ以外の部屋は、ただ広いだけの部屋に、茶色のマントを着た審判がひとりずついるだけだ。
 できれば俺はスタジアムは避けたい。初戦だというのに衆目の目にさらされるのではやりづらい。
 
 もう一枚のカードディスプレイには、次の対戦の組み合わせなどが表示されている。
 だがあのモニターの試合映像、気になるな。俺の見間違いでなければ、プレイヤーがカードと一緒に戦っているように見えるんだが……

 だがそれよりも気になるのは、カードだ。
 カードが、原寸大と思われるサイズに立体化している。魔法使いや、獣の戦士が、カードを使うプレイヤーと同じように同じ場所で戦っている。
 まるで本当にそこに存在するかのように。

 いや、魔法の力だろうだから本当に存在しているとも言えるのか。
 しょせんは魔法だからか、カードの戦士たちは、ただ淡々と戦うだけで、表情を変えたり、喋ったりはしない。
 それでも、こうして目の当たりにすると驚かずにはいられない。
 これがこの世界のカードゲームなのか。


 ボーっとしていると、俺の番号と顔写真がモニターに表示された。

「203番、試合の準備をしてください」

 係の人間に呼ばれ、俺は部屋を出て行く。
 通り際に、男たちの会話が聞こえてきた。

「次の対戦カード、たしかジャン・ボルテンスだろ。アマチュアホープ杯ベスト4の! なんであんな実力者が予選に出てるんだよ!? あいつランクいくつよ!?」
「なんでも、強者(つわもの)に対戦を申し込んでばっかいるから、ランクは本戦出場に足りなかったらしいぞ」
「うそだろ……二回戦で当たりたくないぜ」

 俺の対戦相手は、結構なツワモノらしい。
 まあ強い人とあたればそれだけこっちも学習するいい機会になる。
 この世界のカードゲームがどんなものか、勉強させてもらおう。

 階段前の廊下で、俺は係の人が来るのを待っていた。出番になれば、呼びにきてくれるそうだ。

 視線を感じてあたりに目をやると、通りがかったひとりの女の子とたまたま目があった。
 丁度いいと思い、俺は話しかける。
「あ、ねえ、君も参加者?」
「えっ……、あっい、いえ、わたしは……」

 少女はあわてて、帽子をさわったり何度も体をゆらす。いきなり話しかけたから驚かせちゃったかな。

 違うのか。会場にいるから、てっきりそうなのかと思ったのだけど。

「そっか。さっきもらったこれがなんなのか知りたかったんだけど、他の人に聞くよ」

 小さな黒い厚手の板を係の人からもらったのだが、使用用途(しようようと)がわからずにいた。

「あ、それは……参加特典のカードホルダーですね……」
 
 少女は、顔をうつむき気にして言う。

「わかるの?」

「はい。カードを収納しておくためのものですよ」

 帽子でかくれていた顔だったが、はじめてよく見えた。愛嬌があるといえばいいのか、優しそうな印象を受ける。

「魔法のカードは呼び出せば出てくれるけど、カードの扱う量が増えるとカードの種類を全部は覚えられませんから。デッキを作って分けておいたり、カテゴリー別にしたりして、自分の手に入れたカードを探す時に便利なんです」

「へえー……なるほどな」

 詳しく教えてくれて、親切な人だなと俺は感心する。

 カードホルダーか。それならわかる。俺の知ってるものよりだいぶ薄型だ。

 よくシールを貼ってデザインアレンジしたりして、自分だけのカードホルダーをかっこよく仕上げてたっけ。

 俺はカードホルダーを左腕の型の横部分に巻きつけ、さっそく起動してみる。
 すると空中に手帳のような魔法があらわれ、アコーディオンみたいにぱらぱらとページがめくれていく。欲しいカードを心に浮かべれば、ホルダーに手をかざすだけで指に収まってくれる。

 自分のことながら一連のアクションのあまりの格好良さに、思わず「おお」と感嘆の声を洩らしてしまった。
 俺のはしゃぐ様子がほほえましかったのか、彼女は優しい表情で、
「大会参加ははじめてなんですか?」
 ときいてきた。

「まあ、そうだね」
「……いい手つきをしています。……がんばってくださいね」

 彼女は俺の手をみてそう言い、一礼してから去っていった。

 ……手つき? なんだかよくわからないが、女の子に褒められたのは悪い気はしないな。
 今の人もどこかで見たような気がするけど、どこでだったかはわからないな。
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