31 / 169
ラジトバウム編
15話 エンシェントヴァーサス
しおりを挟む
廊下で待っていれば係の人がやってくると思っていたが、いつまでたってもこない。
そのうちに、会場へとつながる階段の先から、「スオウザカ・エイト選手」とアナウンスが入り、俺は会場へと向かった。
会場はスタジアムだ。舞台には広い更地が広がり、そのまわりを観客席が囲んでいる。
更地のスペースは運動場かというくらい広いが、観客席のせいかかなりの圧迫感がある。また、地下だからだろう、観客の他愛ない会話や声までよく聞こえてくる。空席ばかりであまり観客の人数はいないが、こんなところにいるくらいだからかなりのカード狂のはずだ。
練習のつもりだったのだが、ギャラリーがいるのではいやに緊張してくる。
奇遇なことに、初戦の相手はさきほどの男だった。
ジャン・ボルテンス。フォッシャの首飾りを持っている張本人。
にらみあう俺たちの前に、審判が割ってはいる。
「ルールはエンシェント3on3。予選ではウォリアーカード2枚とトリックカード2枚で戦っていただきます。予選とはいえ、エンシェントの誇り高く、オドに対して礼儀の心を持ち、マナーをよく守るように」
互いに頭を下げて一礼し、背を向けて定位置に向かう。ここまでは、モニターで見ていたからわかる。
「まさか予選から当たるとはな」
負けるつもりはない。モニター越しで試合を見ていたおかげで、このゲームのおおまかなルールは頭に入っている。
「きっとカードが導いてくれたんだ。この勝負、負けるわけにはいかない」
「……ほう……いくぞ!」
先にボルテンスがカードを引き放つ。一瞬あたりが暗くなり、青い閃光と共にカードのモンスター、ウォリアーが召喚される。
あらわれた屈強な黒ずくめの男が、拳をかまえて臨戦態勢(りんせんたいせい)をとる。遠目からでも異様な殺気をまとっているのがわかる。
フォッシャが言っていたことを俺は思いだす。
カードには二種類ある。結闘でしか使えない古代のものと、いつでも使える現代のもの。
通常戦闘では現代型の魔法カードしか使えないが、エンシェントルールでは古代の戦士を召喚できる。
カードに描かれた戦士がその世界から飛び出てくる。本来なら興奮するような状況だが、そんな悠長なことも言っていられない。
なぜならこのルールでは、自分も闘わなきゃいけない。
俺が知ってるカードゲームとはだいぶちがうな。
ボルテンスが俺をにらみながら言う。
「本来、戦闘行為はオドの法則により禁止されている。そのなかで、冒険士や結闘士だけが特別に闘うことを許されている。それは人間もモンスターも同じ……なのにお前からは、まるでオドに対し敬意(けいい)と忠誠(ちゅうせい)が感じられない。生半可な覚悟でやってもらっちゃあ、こまるんだよ」
ボルテンスは早速攻撃をしかけてきた。黒ずくめの殺し屋がおそろしい速さでこちらに突進してくる。
あのカード、名前はわからないが接近戦が得意なタイプなのだろう。対応が遅れれば命取りになる。
「俺の知ったことかよ」
俺はカードを引き放ち、地面にたたきつける。カードは空中で制止し、光をはなつと共に戦士を召喚した。
宿命の魔審官。高貴な衣装とたたずまいだが、背中には力強さがある。
どれだけのチカラがあるのか、魅せてくれ。
「宿命の魔審官レコードアビリティ。【反逆の双弾丸<ダークディバインブレット>】」
俺が手に持っていたカードがふたたび光る。審官の背後に二丁の拳銃が出現し、羽のように空中に漂っている。
審官がフッと手をかざしただけで銃はそれぞれの方向を向き発砲した。ひとつは殺し屋の動きを封じ、もう一方はボルテンスをめがけていた。
相手はたまらず二枚目のウォリアーカードを切り、なにか戦車のようなカードを召喚したが、弾丸が先にボルテンスに命中した。
一瞬の出来事だったが、興奮で自分の呼吸が速くなっているのがわかる。まるでリアルタイムで行うカードゲームという感覚だ。
俺が先制するのは意外だったようで、会場がざわめく。
「あのカードは!?」
「見たことないわね……」
「それだけじゃねえ、強い……! あんなカード持ってるなんて、何モンだあいつ!?」
地下のため、小声でさえよく聞こえてくる。
ボルテンスのほうを見ると、先制されたことよりも審官の存在に驚いているらしかった。
ボルテンスは顔をおさえ、くっくと愉快そうに笑う。
「いいぜ、いいねえ! そうこなくちゃな。これでこそヴァーサスだ! なんなんだ……そのカードは!?」
やたらとテンションが高いが、彼の反応をみるに、やはりかなり珍しいカードだということがわかる。
「これか? これは『宿命の魔審官』。コスト6、AS2600。スキルは【反逆の双弾丸<ダークディバインブレット>】」
審官、審官だってよ、と観客も俺の声を拾って波のようにざわめきがひろがっていく。
なぜか、ボルテンスはさらに不思議そうな顔をうかべた。
「な、なんで説明してくれたんだ……?」
そこで俺も気づく。
「えっ。あっ……」
し、しまった。説明してやらないでも別によかったのか。ついカードゲームの癖で。
まあいいや、適当にハッタリかましとこう。
「ま、まあ、そのほうがフェアかとおもってね……」
オドとやらがなにか作用しているのか結闘士本体の傷は衝撃程度に軽減されるようで、ボルテンスにダメージはなさそうだった。だが今ので確実にオドライフは減り、俺の勝利は近づいたはずだ。
「まさかそれだけの火力カードを持ってるとは思わなかったぞ。こいつを用意しておいて正解だったな」
声に熱がこもっている。見かけによらず暑苦しいタイプのカードゲーマーだな。
ボルテンスは一枚のカードを額の上にかかげた。
あの歯車と蒸気機関が描かれたハードボイルドな絵柄、カードショップで見た覚えがある。
たしか『<蒸気革命>スチームパンク』とかいうカード。場のすべての機械族ウォリアーの攻撃力を1ターンにつき100加算する。
おそらくエンシェントルールの場合だと時間が経つごとに強化されていく、といったところだろうか。
考えているうちに、戦車の砲撃がすぐ近くに炸裂する。砂埃が舞い、俺は衝撃波と飛んでくる土からとっさに顔を守る。しかしその間に殺し屋が間合いを詰めてきて、拳を振りかぶった。
「テネレモ、レコード【薮盾(やぶたて)】!」
間一髪、テネレモのスキル発動が間にあい、薮でできた盾が敵の正拳突きを防いでくれた。
すぐに審官を近くに戻し、ボルテンスも殺し屋男を下げる。
植物の苗のような外見をしたモンスター、テネレモ。こうして対面するのは初めてだが、なんだかおっとりゆったりしていてあまり頼りはなさそうだ。
だが薮の盾、ヤブというくらいだからあまり役に立たないのかと思っていたが、いい意味で裏切られた。しっかりと攻撃を防いでくれる。
ただの弱いカードなんかじゃない。ちゃんと使い道があるんだな。
あの戦車のカードのほうは遠距離から砲撃を放ってくることはわかった。あの威力が時間が経つごとに増せば厄介(やっかい)だ。
こっちはまだトリックカードを温存しているが、このまま受け身でいるのは、あまり得策ではないかもしれない。
相手が全開でくるなら、こちらも迎え撃つ。
「よし! 行けテネレモ!」
俺は様子見として、テネレモを先行させた。
って遅ォッ!?
あまりに遅い。何度かまばたきしても一歩も進めていない。
さすがにすこし期待しすぎたか。知的好奇心をくすぐられてもうすこしなにができるか見たかったけど、防御タイプのキャラってことか。
「なんだよあいつのカード!」
会場の一部の観客が笑い声をあげているのがわかった。やはり弱いカードとして認知されているのだろうか。俺の使い方が悪いせいで、テネレモに申し訳ないことになった。早く手元に戻そう。
「テネレモ、もどってこい!」
そう号令をかけても、戻ってくるそぶりはみせずに、テネレモはのろのろと前に進もうとしている。
ってオオオオオイイ!! ちがうよ!?
こいつぜんぜん言うこと聞かねえよ……!
てか……あまり目を合わせてくれないんだけど。なんか俺きらわれてるのかな!?
この隙をつかれ、砲撃がさっきよりも近くに落ちて、衝撃で俺は後方に吹き飛ばされた。
だめだ。思っていた以上にエンシェントはモンスターとの戦闘に近い。考える時間がない。
カードゲームの要素のある戦闘だと考えるべきなのだろう。もうすこし柔軟に、かつ迅速に動かないと。
立ち上がったとき、ボルテンスが困惑の表情を浮かべているのがわかった。
会場がすっと静まり、次にはどよめきが起きる。審判も俺の顔を見つめ戸惑っている。
「は……ハハ! どうやらオドのアクシデントがあったみたいだな。棄権したほうがいいんじゃないか?」
ボルテンスにそういわれたと同時に、右目にヒヤリとする感覚があった。液体が目のあたりをつたっていき、俺は出血したことに気づく。
血をふさぐものがないので、骨折している左腕を固定していた布を外し、右目に巻く。巻くといっても片手ではムリなので、布の端を歯で噛んでおさえながらやった。
さっきボルテンスに攻撃が通ったが、傷は負っていなかった。しかしなぜか俺には攻撃がそのまま通っている。なにかオドとやらが関係しているのか。
原因はわからないが、あまりいい状況じゃないのはたしかだ。
「いいや……まだ終わっていない」
血の気が抜けて、頭が冷静になっている。
自分でも不思議と落ち着いてきている。
情報は整理できた。
この神経が研ぎ澄まされていく感覚、久方ぶりだ。まるで100年ぶりにさえ感じられるが、脳内物質がハジけたかのような集中力は、鈍っちゃいない。
頭脳(ずのう)と精神(せいしん)の闘い。この感じ、俺はよく知っている。
そのうちに、会場へとつながる階段の先から、「スオウザカ・エイト選手」とアナウンスが入り、俺は会場へと向かった。
会場はスタジアムだ。舞台には広い更地が広がり、そのまわりを観客席が囲んでいる。
更地のスペースは運動場かというくらい広いが、観客席のせいかかなりの圧迫感がある。また、地下だからだろう、観客の他愛ない会話や声までよく聞こえてくる。空席ばかりであまり観客の人数はいないが、こんなところにいるくらいだからかなりのカード狂のはずだ。
練習のつもりだったのだが、ギャラリーがいるのではいやに緊張してくる。
奇遇なことに、初戦の相手はさきほどの男だった。
ジャン・ボルテンス。フォッシャの首飾りを持っている張本人。
にらみあう俺たちの前に、審判が割ってはいる。
「ルールはエンシェント3on3。予選ではウォリアーカード2枚とトリックカード2枚で戦っていただきます。予選とはいえ、エンシェントの誇り高く、オドに対して礼儀の心を持ち、マナーをよく守るように」
互いに頭を下げて一礼し、背を向けて定位置に向かう。ここまでは、モニターで見ていたからわかる。
「まさか予選から当たるとはな」
負けるつもりはない。モニター越しで試合を見ていたおかげで、このゲームのおおまかなルールは頭に入っている。
「きっとカードが導いてくれたんだ。この勝負、負けるわけにはいかない」
「……ほう……いくぞ!」
先にボルテンスがカードを引き放つ。一瞬あたりが暗くなり、青い閃光と共にカードのモンスター、ウォリアーが召喚される。
あらわれた屈強な黒ずくめの男が、拳をかまえて臨戦態勢(りんせんたいせい)をとる。遠目からでも異様な殺気をまとっているのがわかる。
フォッシャが言っていたことを俺は思いだす。
カードには二種類ある。結闘でしか使えない古代のものと、いつでも使える現代のもの。
通常戦闘では現代型の魔法カードしか使えないが、エンシェントルールでは古代の戦士を召喚できる。
カードに描かれた戦士がその世界から飛び出てくる。本来なら興奮するような状況だが、そんな悠長なことも言っていられない。
なぜならこのルールでは、自分も闘わなきゃいけない。
俺が知ってるカードゲームとはだいぶちがうな。
ボルテンスが俺をにらみながら言う。
「本来、戦闘行為はオドの法則により禁止されている。そのなかで、冒険士や結闘士だけが特別に闘うことを許されている。それは人間もモンスターも同じ……なのにお前からは、まるでオドに対し敬意(けいい)と忠誠(ちゅうせい)が感じられない。生半可な覚悟でやってもらっちゃあ、こまるんだよ」
ボルテンスは早速攻撃をしかけてきた。黒ずくめの殺し屋がおそろしい速さでこちらに突進してくる。
あのカード、名前はわからないが接近戦が得意なタイプなのだろう。対応が遅れれば命取りになる。
「俺の知ったことかよ」
俺はカードを引き放ち、地面にたたきつける。カードは空中で制止し、光をはなつと共に戦士を召喚した。
宿命の魔審官。高貴な衣装とたたずまいだが、背中には力強さがある。
どれだけのチカラがあるのか、魅せてくれ。
「宿命の魔審官レコードアビリティ。【反逆の双弾丸<ダークディバインブレット>】」
俺が手に持っていたカードがふたたび光る。審官の背後に二丁の拳銃が出現し、羽のように空中に漂っている。
審官がフッと手をかざしただけで銃はそれぞれの方向を向き発砲した。ひとつは殺し屋の動きを封じ、もう一方はボルテンスをめがけていた。
相手はたまらず二枚目のウォリアーカードを切り、なにか戦車のようなカードを召喚したが、弾丸が先にボルテンスに命中した。
一瞬の出来事だったが、興奮で自分の呼吸が速くなっているのがわかる。まるでリアルタイムで行うカードゲームという感覚だ。
俺が先制するのは意外だったようで、会場がざわめく。
「あのカードは!?」
「見たことないわね……」
「それだけじゃねえ、強い……! あんなカード持ってるなんて、何モンだあいつ!?」
地下のため、小声でさえよく聞こえてくる。
ボルテンスのほうを見ると、先制されたことよりも審官の存在に驚いているらしかった。
ボルテンスは顔をおさえ、くっくと愉快そうに笑う。
「いいぜ、いいねえ! そうこなくちゃな。これでこそヴァーサスだ! なんなんだ……そのカードは!?」
やたらとテンションが高いが、彼の反応をみるに、やはりかなり珍しいカードだということがわかる。
「これか? これは『宿命の魔審官』。コスト6、AS2600。スキルは【反逆の双弾丸<ダークディバインブレット>】」
審官、審官だってよ、と観客も俺の声を拾って波のようにざわめきがひろがっていく。
なぜか、ボルテンスはさらに不思議そうな顔をうかべた。
「な、なんで説明してくれたんだ……?」
そこで俺も気づく。
「えっ。あっ……」
し、しまった。説明してやらないでも別によかったのか。ついカードゲームの癖で。
まあいいや、適当にハッタリかましとこう。
「ま、まあ、そのほうがフェアかとおもってね……」
オドとやらがなにか作用しているのか結闘士本体の傷は衝撃程度に軽減されるようで、ボルテンスにダメージはなさそうだった。だが今ので確実にオドライフは減り、俺の勝利は近づいたはずだ。
「まさかそれだけの火力カードを持ってるとは思わなかったぞ。こいつを用意しておいて正解だったな」
声に熱がこもっている。見かけによらず暑苦しいタイプのカードゲーマーだな。
ボルテンスは一枚のカードを額の上にかかげた。
あの歯車と蒸気機関が描かれたハードボイルドな絵柄、カードショップで見た覚えがある。
たしか『<蒸気革命>スチームパンク』とかいうカード。場のすべての機械族ウォリアーの攻撃力を1ターンにつき100加算する。
おそらくエンシェントルールの場合だと時間が経つごとに強化されていく、といったところだろうか。
考えているうちに、戦車の砲撃がすぐ近くに炸裂する。砂埃が舞い、俺は衝撃波と飛んでくる土からとっさに顔を守る。しかしその間に殺し屋が間合いを詰めてきて、拳を振りかぶった。
「テネレモ、レコード【薮盾(やぶたて)】!」
間一髪、テネレモのスキル発動が間にあい、薮でできた盾が敵の正拳突きを防いでくれた。
すぐに審官を近くに戻し、ボルテンスも殺し屋男を下げる。
植物の苗のような外見をしたモンスター、テネレモ。こうして対面するのは初めてだが、なんだかおっとりゆったりしていてあまり頼りはなさそうだ。
だが薮の盾、ヤブというくらいだからあまり役に立たないのかと思っていたが、いい意味で裏切られた。しっかりと攻撃を防いでくれる。
ただの弱いカードなんかじゃない。ちゃんと使い道があるんだな。
あの戦車のカードのほうは遠距離から砲撃を放ってくることはわかった。あの威力が時間が経つごとに増せば厄介(やっかい)だ。
こっちはまだトリックカードを温存しているが、このまま受け身でいるのは、あまり得策ではないかもしれない。
相手が全開でくるなら、こちらも迎え撃つ。
「よし! 行けテネレモ!」
俺は様子見として、テネレモを先行させた。
って遅ォッ!?
あまりに遅い。何度かまばたきしても一歩も進めていない。
さすがにすこし期待しすぎたか。知的好奇心をくすぐられてもうすこしなにができるか見たかったけど、防御タイプのキャラってことか。
「なんだよあいつのカード!」
会場の一部の観客が笑い声をあげているのがわかった。やはり弱いカードとして認知されているのだろうか。俺の使い方が悪いせいで、テネレモに申し訳ないことになった。早く手元に戻そう。
「テネレモ、もどってこい!」
そう号令をかけても、戻ってくるそぶりはみせずに、テネレモはのろのろと前に進もうとしている。
ってオオオオオイイ!! ちがうよ!?
こいつぜんぜん言うこと聞かねえよ……!
てか……あまり目を合わせてくれないんだけど。なんか俺きらわれてるのかな!?
この隙をつかれ、砲撃がさっきよりも近くに落ちて、衝撃で俺は後方に吹き飛ばされた。
だめだ。思っていた以上にエンシェントはモンスターとの戦闘に近い。考える時間がない。
カードゲームの要素のある戦闘だと考えるべきなのだろう。もうすこし柔軟に、かつ迅速に動かないと。
立ち上がったとき、ボルテンスが困惑の表情を浮かべているのがわかった。
会場がすっと静まり、次にはどよめきが起きる。審判も俺の顔を見つめ戸惑っている。
「は……ハハ! どうやらオドのアクシデントがあったみたいだな。棄権したほうがいいんじゃないか?」
ボルテンスにそういわれたと同時に、右目にヒヤリとする感覚があった。液体が目のあたりをつたっていき、俺は出血したことに気づく。
血をふさぐものがないので、骨折している左腕を固定していた布を外し、右目に巻く。巻くといっても片手ではムリなので、布の端を歯で噛んでおさえながらやった。
さっきボルテンスに攻撃が通ったが、傷は負っていなかった。しかしなぜか俺には攻撃がそのまま通っている。なにかオドとやらが関係しているのか。
原因はわからないが、あまりいい状況じゃないのはたしかだ。
「いいや……まだ終わっていない」
血の気が抜けて、頭が冷静になっている。
自分でも不思議と落ち着いてきている。
情報は整理できた。
この神経が研ぎ澄まされていく感覚、久方ぶりだ。まるで100年ぶりにさえ感じられるが、脳内物質がハジけたかのような集中力は、鈍っちゃいない。
頭脳(ずのう)と精神(せいしん)の闘い。この感じ、俺はよく知っている。
0
あなたにおすすめの小説
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
魔石物語 - 魔石ガチャとモンスター娘のハーレムパーティーで成り上がり -
花京院 光
ファンタジー
十五歳で成人を迎え、冒険者登録をするために魔法都市ヘルゲンに来たギルベルトは、古ぼけたマジックアイテムの専門店で『魔石ガチャ』と出会った。
魔石はモンスターが体内に魔力の結晶。魔石ガチャは魔石を投入してレバーを回すと、強力なマジックアイテムを作り出す不思議な力を持っていた。
モンスターを討伐して魔石を集めながら、ガチャの力でマジックアイテムを入手し、冒険者として成り上がる物語です。
モンスター娘とのハーレムライフ、マジックアイテム無双要素を含みます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる