63 / 169
ラジトバウム編
45
しおりを挟む
まずいことに、余計な一撃をもろに食らった。
視界もぼやけて、思考もおぼつかない。
ダメージのせいだけじゃない。体が重い。肉体強化魔法の反動が来ているのか。
あのカードはエンシェントでも使うと次の日三日間は筋肉痛がとれなくなるくらい体に負荷がかかる。この世界で目覚めてから、このカードには頼りっぱなしだった。俺が思っていた以上に体に疲労が蓄積していたのかもしれない。
体がふらつくのを剣を杖がわりにしてなんとかこらえるが、それがやっとだ。
ダメージを受けた分だけ一時的にオドを強化するトリックカード【逆襲<ファイトバック>】を俺は手に取ったが――
ぼんやりしているうちにまたあの影が体にまとわりついてきて、払うこともできずに首にまきつかれた。
「エイト!?」
「う……がはっ……」
首を絞められ、息ができない。フォッシャの憔悴しきった顔と、ゼルクフギアが次の攻撃態勢に入っているのがみえる。なんとか、なんとかしないと――
意識が朦朧とした時に、ゼルクフギアの光線がはっきりと視界に入った。
俺は一歩も動けなかったが、フォッシャが俺の首元の影を取り払い、そして俺を突き飛ばすようにして身代わりになった。
倒れた俺は顔の泥を拭いて、すぐさまフォッシャを探す。すこし離れたところに、痛々しい姿で少女が地面に横たわっていた。
「フォッシャ……!」
呼びかけても、応答がない。
フォッシャなしで……どうやって戦うんだ?
トリックカード? ハイロ? ローグ? 色んな案が浮かんでは、可能性が否定され消えていく。
………く……
ダメだ…こいつには勝てない……俺の負けだ……
もう……打つ手がない……
水が揺れる音がして、顔をあげた先には審官がこちらを向いて立っていた。
エースカードは俺になにかを訴えかけるかのように静かな視線を投げかけてから、ゼルクフギアへと突進していった。
フォッシャが意識を失っても、カードがまだ実体化している……まだ逆転の芽はあるってことか!
後ろでうめきごえがして、俺は振り返る。
「このくらいのピンチであきらめるなんて……エイトらしくないワヌ……」
フォッシャが横になったまま、ふっと微笑んで言った。
宙に審官のカードがあらわれ、白い煙と共にまぶしいほどの火花が炸裂する。焼き焦げて震える左手で俺はそれを手に取った。
これは……!?
審官のシークレットスキルがわかる……! カードから俺の心にイメージとスキルの名前が刻まれる。
以前にも見た。まさか……これもフォッシャの力なのか。
彼女は古代のカードを復元させる力があると言っていた。
ただ復元するだけじゃなく、カードの眠っている力を引き出すことができる……
フォッシャ第二のオドスキル。氷の魔女のとき、シークレットが使えたのはそれが理由だったんだ。
それを確かめようにも、もうフォッシャは意識を失ってしまっている。土壇場になるが覚悟を決めて挑むしかない。
ゼルクフギアを押さえ込んでいた審官が、一瞬こちらに視線を向けた。彼の眼差しに宿る強い意志が、俺に決意を与えた。
「……永続封印の儀式……エターナルフルーフ」
審官のシークレットスキルが発動し、巨大な煙と光が混じってゼルクフギア・ラージャを包み込んでいく。
飛龍の抵抗もむなしく、だんだん煙が小さくなっていくと共にゼルクフギアの姿も見えなくなっていった。
俺は最後の力を使いきり、もう立っていることもできずに前のめりに倒れた。
消えていく。俺のエースカードが、オドのカケラになってゆっくりと散っていく。自身を犠牲に、強大な力を封じ込んだのだ。
彼は最後にふっとこちらを振り返って、微笑んでくれた。
ゼルクフギアがカードに戻りきる前に、俺はフォッシャの元へと地べたを這った。
意識さえもてば、あとすこしで彼女の可愛らしい顔を撫でることができそうだったが、伸ばした手はとどかなかった。
視界もぼやけて、思考もおぼつかない。
ダメージのせいだけじゃない。体が重い。肉体強化魔法の反動が来ているのか。
あのカードはエンシェントでも使うと次の日三日間は筋肉痛がとれなくなるくらい体に負荷がかかる。この世界で目覚めてから、このカードには頼りっぱなしだった。俺が思っていた以上に体に疲労が蓄積していたのかもしれない。
体がふらつくのを剣を杖がわりにしてなんとかこらえるが、それがやっとだ。
ダメージを受けた分だけ一時的にオドを強化するトリックカード【逆襲<ファイトバック>】を俺は手に取ったが――
ぼんやりしているうちにまたあの影が体にまとわりついてきて、払うこともできずに首にまきつかれた。
「エイト!?」
「う……がはっ……」
首を絞められ、息ができない。フォッシャの憔悴しきった顔と、ゼルクフギアが次の攻撃態勢に入っているのがみえる。なんとか、なんとかしないと――
意識が朦朧とした時に、ゼルクフギアの光線がはっきりと視界に入った。
俺は一歩も動けなかったが、フォッシャが俺の首元の影を取り払い、そして俺を突き飛ばすようにして身代わりになった。
倒れた俺は顔の泥を拭いて、すぐさまフォッシャを探す。すこし離れたところに、痛々しい姿で少女が地面に横たわっていた。
「フォッシャ……!」
呼びかけても、応答がない。
フォッシャなしで……どうやって戦うんだ?
トリックカード? ハイロ? ローグ? 色んな案が浮かんでは、可能性が否定され消えていく。
………く……
ダメだ…こいつには勝てない……俺の負けだ……
もう……打つ手がない……
水が揺れる音がして、顔をあげた先には審官がこちらを向いて立っていた。
エースカードは俺になにかを訴えかけるかのように静かな視線を投げかけてから、ゼルクフギアへと突進していった。
フォッシャが意識を失っても、カードがまだ実体化している……まだ逆転の芽はあるってことか!
後ろでうめきごえがして、俺は振り返る。
「このくらいのピンチであきらめるなんて……エイトらしくないワヌ……」
フォッシャが横になったまま、ふっと微笑んで言った。
宙に審官のカードがあらわれ、白い煙と共にまぶしいほどの火花が炸裂する。焼き焦げて震える左手で俺はそれを手に取った。
これは……!?
審官のシークレットスキルがわかる……! カードから俺の心にイメージとスキルの名前が刻まれる。
以前にも見た。まさか……これもフォッシャの力なのか。
彼女は古代のカードを復元させる力があると言っていた。
ただ復元するだけじゃなく、カードの眠っている力を引き出すことができる……
フォッシャ第二のオドスキル。氷の魔女のとき、シークレットが使えたのはそれが理由だったんだ。
それを確かめようにも、もうフォッシャは意識を失ってしまっている。土壇場になるが覚悟を決めて挑むしかない。
ゼルクフギアを押さえ込んでいた審官が、一瞬こちらに視線を向けた。彼の眼差しに宿る強い意志が、俺に決意を与えた。
「……永続封印の儀式……エターナルフルーフ」
審官のシークレットスキルが発動し、巨大な煙と光が混じってゼルクフギア・ラージャを包み込んでいく。
飛龍の抵抗もむなしく、だんだん煙が小さくなっていくと共にゼルクフギアの姿も見えなくなっていった。
俺は最後の力を使いきり、もう立っていることもできずに前のめりに倒れた。
消えていく。俺のエースカードが、オドのカケラになってゆっくりと散っていく。自身を犠牲に、強大な力を封じ込んだのだ。
彼は最後にふっとこちらを振り返って、微笑んでくれた。
ゼルクフギアがカードに戻りきる前に、俺はフォッシャの元へと地べたを這った。
意識さえもてば、あとすこしで彼女の可愛らしい顔を撫でることができそうだったが、伸ばした手はとどかなかった。
0
あなたにおすすめの小説
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
魔石物語 - 魔石ガチャとモンスター娘のハーレムパーティーで成り上がり -
花京院 光
ファンタジー
十五歳で成人を迎え、冒険者登録をするために魔法都市ヘルゲンに来たギルベルトは、古ぼけたマジックアイテムの専門店で『魔石ガチャ』と出会った。
魔石はモンスターが体内に魔力の結晶。魔石ガチャは魔石を投入してレバーを回すと、強力なマジックアイテムを作り出す不思議な力を持っていた。
モンスターを討伐して魔石を集めながら、ガチャの力でマジックアイテムを入手し、冒険者として成り上がる物語です。
モンスター娘とのハーレムライフ、マジックアイテム無双要素を含みます。
自由を愛する妖精姫と、番にすべてを捧げた竜人王子〜すれ違いと絆の先に、恋を知る〜
来栖れいな
ファンタジー
妖精女王と精霊王の間に生まれた特別な存在――セレスティア。
自由を愛し、気ままに生きる彼女のもとに現れたのは、竜人族の王子・サイファルト。
「お前は俺の番だ」
番という名の誓いにすべてを捧げた彼は、王族の地位も未来も捨てて森に現れた。
一方のセレスティアは、まだ“番”の意味すら知らない。
執着と守護。すれ違いと絆。
――これは、ひとりの妖精姫が“特別”に気づいていく物語。
甘さ控えめ、でも確かに溺愛。
異種族の距離を越えて紡がれる、成長と守護のファンタジー。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる