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王総御前試合編
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しおりを挟む元カードゲーマー。田舎出身。
現、冒険士兼、結闘士(ヴァルフ)。ラジトバウム出身。
それがこの俺、スオウザカエイトだ。
なぜカードに描かれる戦士のような格好をしているかというと、今まさに俺は異世界で戦士みたいな職業についているからだ。
元いた世界のカードショップに寄ったら奇妙なカードを見つけ、光に包まれて気づいたらこの世界にひとりでいた。
異世界といっても、ポンポン魔法が使えるわけではなく、カードによって全てはシステマチックに管理されている。
腐っても俺は元カードゲーマーだから、そんなカードの世界なら楽勝なんじゃないかって思うけど、それがそうもいかないんだよな……
まあたくさんの苦難があって、体中包帯だらけなわけだ。
緑豊かな道をゆく旅すがら、屋根つきの機械馬車の荷台で揺られる。
同席する少女たちのうち3人は、楽しそうにボードゲームで遊んでいる。
ダイスを振って出た数だけ、プレイヤーによく似たミニ分身(アバター)が、魔法のボードの上のマスを進んでいく、というものだ。
止まったマスごとに物語が用意されていて、ゴールを目指していく。
ボード上に3匹ほどのミニモンスターの立体映像があらわれて、帽子の女の子のアバターを囲む。ゲーム会社もびっくりのよくできた魔法だ。
「『ブルズサーバルの群れに遭遇した。オド値が1減る』……ううーん」
苦そうな声を出す帽子の女の子ハイロは、ゲーム専用の手札からカードを1枚取り出す。
「ではここで魔法『加護の光』を使います。ふぅ、危うくピンチになるところでした」
ボード上からブルズサーバルは消える。
つぎの番で、おなじくゲームに参加している犬だかネコだかのような奇妙な小柄の獣が、手のひらの肉球を器用につかってダイスを持った。
「クックック……フォッシャがトップ独走ワヌ!」
ワヌワヌうるさいこんな喋り方だが立派なレディだ。こいつが俺の相棒、フォッシャである。
「あ、ごめんみんな。[大事件]のマスに止まっちゃったワヌ! 全員にオド値2のダメージワヌ。……特にごめん、エイト」
「おいおいおい。もう俺のこりオド2しかないぞ!? ゲームオーバー寸前じゃねえか……勘弁してくれよフォッシャ……」
絶体絶命まで追い込んでいくスタイル。やっぱりこいつは俺の相棒じゃないのかもしれない。
「エイトお兄さん、まだ逆転のチャンスはありますよ。がんばってください」
一番年下の少女、ラトリーが俺にやさしくダイスを手渡してくれる。なんていい子なんだ。
「よしっ」
止まったマスから表示された文字は「なになに……『素敵な人と出会った。恋の病にかかってしまい、ボーっとしてほかのことになにも手がつかない。オド値マイナス1』…………ハァァァァ!? ふざけんなよ! 恋したらテンションあがってやる気でたりとかそういうのじゃないのかよ! あーもうやってられん。クソゲー乙」
「エイト、こどもの前でそんな言葉を言うもんじゃないワヌよ」
正論だけどお前のせいもあるよね!?
「大丈夫ですよエイトさん。素敵な人って……わたしのことですよね? 私がエイトさんのオドをお守りしますから安心してください。あっ自分で自分のこと素敵って言っちゃった……あああ……わ、忘れてください!」
ハイロお前はなにを意味のわからないことを言ってるんだ!?
俺の隣のラトリーは苦笑いを浮かべていたが、ボソッと「鯉(こい)は鯉でもおぼれる恋……というやつですか」とつぶやいた。
は?
「まあエイトってふだんからボーっとしてるし、ある意味リアルワヌね」
うるせえよ!
パタン、と俺の後ろでなにかが閉じる音がして、みるとゴスロリ美女が本を置いて、
「カードを探すのではなかったの? 遊んでいるように見えるけれど……」
と呆れた様子で言った。
「……あ」
一同がそろえてそんな声を出す。遊びに夢中になって、若干目的を忘れていた。
ゲームに参加せずに一匹狼をつらぬいている彼女はローグ。俺たちを監視するために同行しているらしい。
俺たちの旅の目的は、ある危険なカードを探し見つけることだ。
ここではカードは魔法や科学のような役割を果たしていて、日常生活に溶け込んでいる。たとえばこの機械馬車もカードの魔法だし、このボードゲームもそういうカードだ。
仮にそれらを日常カードと分類する。カードには日常では使えないものもある。それが古代カードや召喚カードだ。
古代の強力なカードは使用できないものが多く、たとえば冒険士という資格を持ってないと使えないものがあったりする。また召喚カードは実際にモンスターを実体化させることはできない。
本来そういう風に危険性の薄いカードだけが普段から実際に使うことができる。のだが……
ある危険なカードとは『古代の復元』というカード。フォッシャの話では古代カードをいつでも使えるようにし、召喚カードを実体化させるというトンデモない呪いのカードらしい。
フォッシャの一族が管理していたらしいがなくしてしまって、彼女がそのカードを探して旅していたところ、俺と出会い一緒に探すことになったのだ。
この世界には他にも結構な数凶悪な呪いのカードというものがあるらしく、俺もどうやらその呪いのカードのせいでこの異世界にくることになってしまったようだ。
俺はどこであろうと時々カードで遊べてのんびり暮らせればそれでもいいのだが、誰かが不幸になるかもしれない呪いのカードの存在は見過ごすことができない。それでとりあえずフォッシャについていっているような状況なのである。
しかし……
「でもいくつか街に寄りましたが、なにも手がかりがなかったですから……気長にいくべきなのかもしれません」
そう、ハイロの言ったとおり危険なカードを探すといってもあまり手がかりはない。なにせ、人々は誰もそんなカードがあること自体知らないのだから。
「その幸運を呼ぶ魔法の首輪とかいうのは、ほんとに役に立ってるのかなぁ?」
俺はフォッシャの首元をみて言う。あのカードはフォッシャにとって大切なものらしく、なにか良いことを呼び込む力もあるらしい。あくまでフォッシャがいうには、だが。
「そうだと思うワヌけどねぇ……あと首輪じゃなくて首飾りワヌ」
「だいたいローグだって、本読んでるだけじゃん」
俺の指摘を、ローグはあざ笑う。
「おばかさんね。私はちゃんと文献からなにか手がかりがないか調べてるのよ。あなたたちはもう少し危機感を……」
「まあいざとなってもローグがどうにかしちゃうワヌからねえ!」
「はい。ローグおねえちゃんはとっても強いですからね」
フォッシャとラトリーが顔を見合わせて言うのに、ローグはまんざらでもなさそうにすこし頬を赤く染めて、
「それはそうかもしれないけど……もっと緊張感をもてって言ってるのよ」
おいおい。ローグもこいつらのペースに飲み込まれつつあるじゃねーか。会ったばかりのころはもっと凶暴なやつかと思っていたんだけどな……
まあたしかに、世界の命運がけっこうかかってるっぽいのに、のんびりしすぎなところはあるかもなぁ。なぜかラトリーが同行してるのもそうだし……
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