71 / 169
王総御前試合編
2
しおりを挟む
精霊の古都ラジトバウムを出発する直前、町長さんから呼び止められた。
何事かと思えば、ラトリーが留学するから道中護衛してほしいとのことだった。
「この娘(こ)、王都に留学させるつもりなんですがね。ローグさんたちに守ってもらえれば安心なんですが。わしらはあとから行きますので、どうか……」
町長さんが頭を下げるのをみて、一度助けてもらった恩のある俺は断れない。気まずいのですすすとローグの影に隠れる。
「すみませんが、私たちの旅には危険が伴う可能性もあるので、子供は……」
「いいワヌよ。ラトリーは友達ワヌ!」
ローグがせっかく丁重に断ろうとしたのに、フォッシャが明るく言い放った。
「おいおい……」
「エイトはふたりに恩があるワヌね?」
「……ええェ……」
いやそれはそうかもしんないけど呪いのカードを探す旅に出るっていうのに子供がついてきちゃうのはおかしくね?
ローグはやれやれと言った感じで、ラトリーの両肩に手を置いて、しゃがんで目線を合わせる。
「わかったわ……。あなたは私が必ず守る。だからあなたも、わたしからの言いつけをよく守ってね」
「はい。よろしくお願いします」
ぺこ、と一礼して、ラトリーの髪が揺れる。
それからカード『機械馬車』というのに乗り込んだ。馬の代わりに機械の馬が荷台を引っ張って進んでいく。
車のカードはないのか……?
しかもお、遅い!? 普通に自転車を走らせるのと同じかちょっと遅いくらいか。
でもたしかこの世界はオドが治安を管理してるんだよな。危険な事故とかが起きないように、あえて速度制限を厳しくしてるのかも。
~~~~
夕方、いつも通りキャンプする前に安全確保のため周辺の哨戒(しょうかい)に出る。
ハイロはラトリーローグと、俺はフォッシャとで二手に別れている。
「テネレモ」
俺はカードから、苗のような奇妙な外見の小さなモンスターを召喚する。
これがフォッシャの力だ。『古代の復元』とおなじ、カードを実体化させるスキルを持つ。強力だが危険でもある。
だけどテネレモはずっと一緒に戦ってきた仲だ。心配はない。
はずなんだが。
「仲良くしようぜ、テネレモ……」
テネレモはいつも俺とは目を合わせてくれず、近づくと逃げる。仲良くなりたいのに、なんだか悲しい。
しかしなぜかフォッシャにはなついている。……なにがいけないんだろう。
まさか男とじゃれつくなんて嫌だっていうのか。つれないこというなよ……いや変な意味はなく。
静まり返っている森の中をフラッシュというトリックカードを使って辺りを照らし進んでいく。フォッシャは眠そうだが、なんだかテネレモはいつになく楽しそうだった。
やっぱりテネレモって木か草の精霊っぽい見た目だし、自然が近くにあるとテンションがあがるのかな。
自然か……。そのあたりからなにか仲良くなるきっかけが作れないか、考えておくか。
ふと気づくと、イタチのような小さな野生の動物たちがこちらを見ていた。特に危害を加えようとする風には見えず、興味深そうに数匹で俺の手元のカゴをながめている。クセで集めた木の実がそこにはあるのだが、あのイタチたちはこれが欲しいのかもしれない。俺がためしにポイとつかんで数個投げると、すごい勢いでそれらを持ち去っていった。ふと立ち止まって振り向き、礼を言うかのようにキキとイタチは鳴いた。
キャンプに戻る。炎のトリックカードで火を起こし、食事を終えるとハイロが真っ先に寝る。かなり早寝するタイプらしい。
フォッシャが人間の姿になるよりいつもワンテンポ速い。もしかしたらハイロはフォッシャのこのクセのことを知らないかもしれない。
こういう時、フォッシャとラトリーは仲良く話したりしているのだが、俺は手持ち無沙汰でやることがない。ローグとカードゲームでもすればいいのだろうが、正直まだ打ち解けている気はしないため言い出しづらい上、彼女のほうも本を読んだり周囲を警戒したりするので暇ではなさそうだ。
なので、俺は自分の頭の中でカードゲームのイメージトレーニングをしながら、さっさと寝る。
朝になり、仕度を済ませる。
「一雨くるわね。急ぎましょう」
空をみて、ローグが言った。
「えっ。でも、降水確率は25%ですよ?」
そう言うハイロの手にあるカードには、気象の情報が表示されている。
カードの力は俺が居た世界の科学と近いくらい発展している。降水確率なんてものまであると知ったときはおどろいた。
「いつもオドが頼りになるわけではないわぁ」
この世界の人はオドに頼りきりなのかと思っていたけれど、そうでもないらしい。いやローグが特別なのか。
未だに俺は詳しくはよくわかっていないが、この世界の魔法の源のことをオドというらしい。色んなことを決定付ける、科学でいえば法則のようなものなのだろう。人々はこれを崇めたり、利用したりして暮らしている。
何事かと思えば、ラトリーが留学するから道中護衛してほしいとのことだった。
「この娘(こ)、王都に留学させるつもりなんですがね。ローグさんたちに守ってもらえれば安心なんですが。わしらはあとから行きますので、どうか……」
町長さんが頭を下げるのをみて、一度助けてもらった恩のある俺は断れない。気まずいのですすすとローグの影に隠れる。
「すみませんが、私たちの旅には危険が伴う可能性もあるので、子供は……」
「いいワヌよ。ラトリーは友達ワヌ!」
ローグがせっかく丁重に断ろうとしたのに、フォッシャが明るく言い放った。
「おいおい……」
「エイトはふたりに恩があるワヌね?」
「……ええェ……」
いやそれはそうかもしんないけど呪いのカードを探す旅に出るっていうのに子供がついてきちゃうのはおかしくね?
ローグはやれやれと言った感じで、ラトリーの両肩に手を置いて、しゃがんで目線を合わせる。
「わかったわ……。あなたは私が必ず守る。だからあなたも、わたしからの言いつけをよく守ってね」
「はい。よろしくお願いします」
ぺこ、と一礼して、ラトリーの髪が揺れる。
それからカード『機械馬車』というのに乗り込んだ。馬の代わりに機械の馬が荷台を引っ張って進んでいく。
車のカードはないのか……?
しかもお、遅い!? 普通に自転車を走らせるのと同じかちょっと遅いくらいか。
でもたしかこの世界はオドが治安を管理してるんだよな。危険な事故とかが起きないように、あえて速度制限を厳しくしてるのかも。
~~~~
夕方、いつも通りキャンプする前に安全確保のため周辺の哨戒(しょうかい)に出る。
ハイロはラトリーローグと、俺はフォッシャとで二手に別れている。
「テネレモ」
俺はカードから、苗のような奇妙な外見の小さなモンスターを召喚する。
これがフォッシャの力だ。『古代の復元』とおなじ、カードを実体化させるスキルを持つ。強力だが危険でもある。
だけどテネレモはずっと一緒に戦ってきた仲だ。心配はない。
はずなんだが。
「仲良くしようぜ、テネレモ……」
テネレモはいつも俺とは目を合わせてくれず、近づくと逃げる。仲良くなりたいのに、なんだか悲しい。
しかしなぜかフォッシャにはなついている。……なにがいけないんだろう。
まさか男とじゃれつくなんて嫌だっていうのか。つれないこというなよ……いや変な意味はなく。
静まり返っている森の中をフラッシュというトリックカードを使って辺りを照らし進んでいく。フォッシャは眠そうだが、なんだかテネレモはいつになく楽しそうだった。
やっぱりテネレモって木か草の精霊っぽい見た目だし、自然が近くにあるとテンションがあがるのかな。
自然か……。そのあたりからなにか仲良くなるきっかけが作れないか、考えておくか。
ふと気づくと、イタチのような小さな野生の動物たちがこちらを見ていた。特に危害を加えようとする風には見えず、興味深そうに数匹で俺の手元のカゴをながめている。クセで集めた木の実がそこにはあるのだが、あのイタチたちはこれが欲しいのかもしれない。俺がためしにポイとつかんで数個投げると、すごい勢いでそれらを持ち去っていった。ふと立ち止まって振り向き、礼を言うかのようにキキとイタチは鳴いた。
キャンプに戻る。炎のトリックカードで火を起こし、食事を終えるとハイロが真っ先に寝る。かなり早寝するタイプらしい。
フォッシャが人間の姿になるよりいつもワンテンポ速い。もしかしたらハイロはフォッシャのこのクセのことを知らないかもしれない。
こういう時、フォッシャとラトリーは仲良く話したりしているのだが、俺は手持ち無沙汰でやることがない。ローグとカードゲームでもすればいいのだろうが、正直まだ打ち解けている気はしないため言い出しづらい上、彼女のほうも本を読んだり周囲を警戒したりするので暇ではなさそうだ。
なので、俺は自分の頭の中でカードゲームのイメージトレーニングをしながら、さっさと寝る。
朝になり、仕度を済ませる。
「一雨くるわね。急ぎましょう」
空をみて、ローグが言った。
「えっ。でも、降水確率は25%ですよ?」
そう言うハイロの手にあるカードには、気象の情報が表示されている。
カードの力は俺が居た世界の科学と近いくらい発展している。降水確率なんてものまであると知ったときはおどろいた。
「いつもオドが頼りになるわけではないわぁ」
この世界の人はオドに頼りきりなのかと思っていたけれど、そうでもないらしい。いやローグが特別なのか。
未だに俺は詳しくはよくわかっていないが、この世界の魔法の源のことをオドというらしい。色んなことを決定付ける、科学でいえば法則のようなものなのだろう。人々はこれを崇めたり、利用したりして暮らしている。
0
あなたにおすすめの小説
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
安全第一異世界生活
朋
ファンタジー
異世界に転移させられた 麻生 要(幼児になった3人の孫を持つ婆ちゃん)
新たな世界で新たな家族を得て、出会った優しい人・癖の強い人・腹黒と色々な人に気にかけられて婆ちゃん節を炸裂させながら安全重視の異世界冒険生活目指します!!
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる