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王総御前試合編
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しとしとと降っていた雨が止んだ昼過ぎごろ、検問を抜け目的地に到着した。
立派な石畳(いしだたみ)の街。雨があがって雲に晴れ間がさし、壮麗な王都の景色が俺たちのまえに広がっていた。
王都というだけあってラジトバウムとは人の多さや建造物のビジュアルもかなり異なる。やたらと背の高い建物が多く、あまり遠くが見えない。
「大都市ってやつか……。じゃ、まずやることは決まってるな」
俺がそういうと、ハイロが強くうなずいた。
「はい!」
まず大都市に着いてやることといえば、カードショップめぐりに他ならないだろう。
せっかくだからボードヴァーサスで王都の猛者たちと一勝負いきたいところだが、さすがに今はそれをやる時間はない。
まず寄ったのは、王都で一番でかいらしい『ヒューガー』というカード専門店。
この世界において、同じカードはそう何枚もあるものではない。1枚しかないものもある。
カードショップごとに置いてあるカードがちがっていたりするので、新しい街につくたびにチェックする必要があるのだ。
そういうことを前に説明したらフォッシャに怪訝な顔をされた。今も、うしろでラトリーたちは呆れた表情を浮かべているが、俺とハイロは気にせずにカードの展示を見物する。
今日は特別なイベントの日でもある。ふだんは専用の施設に厳重に保管されているレアカードたち、そのうちの何枚かがカードショップや博物館で公開されるのだ。
「すごい……限定モデルですよ!」
「ああ。馬車に揺られた甲斐があったってもんだよ……」
目当ては『トリックスターシリーズ』に属する、世界に2枚しかないといわれる限定モデル『ベボイ・トリックスタ<いたずら妖精小僧>』だ。
「すっげぇ……なんて生意気そうな面がまえなんだ……!」
このイベントのメインは【ライトニング・スピア】という強力なトリックカードだ。世界で1枚しかないらしい。なんだか歴史的に重要なカードらしく、文化遺産に指定されており非売品なのが惜しい。
警備の人やほかの見学者で、店のなかはごったがえしている。特に『ライトニング・スピア』の前は人だらけで行列ができている。
「あっちのカードはいいワヌか?」
と、フォッシャが人だかりのほうを指差して言った。
たしかにあのライトニング・スピアズは審官と並ぶかそれ以上に強力な効果を持っているカード。かなり有名だ。
だけどこの『べボイ・トリックスタ』も、かなりクセはあるが状況次第では強さを発揮する、とてもユニークなカードなのだ。
他の人たちは有名なカードの展示に群がっていて、俺とハイロ、それとカードに詳しそうなメガネのお姉さんくらいしか、このカードの前にはいなかった。
このメガネのお姉さんはよくわかってる。
「カードの良さは人気じゃ決まらないのさ、フォッシャ」
「……なるほどねー。そう言われると強そうにおもえてきたワヌ……」
「名前のとおり奇想天外なちからで、不利な状況も変えられる特別なカード。べボイ、欲しいなぁ……でも文化遺産なんだよなぁ……」
俺は大きなため息をついて、頭を抱えてガチへこみする。カードが文化遺産ってなんだよ、もう。
「他のカードも見ておきましょう、エイトさん。1年に1週間しか公開されない超レアイベントですからね……!」
「目に焼き付けなきゃな」
ハイロとくっついて、展示されたカードたちをじっと眺める。ほかにも面白そうなカードが展示されていたけど、やっぱり『べボイ・トリックスタ』いいなぁ。
「世界にはまだこんなお宝カードがたくさん眠っているんですよ……! たまりませんね」
「楽しみだ……はあ」
「はい、時間です。次の方ー」と、スタッフの方に早く移動するよう急かされて俺たちの見学時間は終わってしまう。
「ああ……残念」
もうすこしゆっくり眺めていられたらよかったのだけど。
「すごい厳重な警備ですね……!」
「ああ……。しかし、いいカードばっかりだったな。あんなカードが使えたら楽しいだろうなぁ」
「わかります……わかりみが深すぎます……」
「ふたりとも、目的忘れてないワヌか?」
浮かれていた俺たちをフォッシャがたしなめる。
そう、王都に寄ったのには、ラトリーの留学とこのイベントのほかにもうひとつワケがある。
立派な石畳(いしだたみ)の街。雨があがって雲に晴れ間がさし、壮麗な王都の景色が俺たちのまえに広がっていた。
王都というだけあってラジトバウムとは人の多さや建造物のビジュアルもかなり異なる。やたらと背の高い建物が多く、あまり遠くが見えない。
「大都市ってやつか……。じゃ、まずやることは決まってるな」
俺がそういうと、ハイロが強くうなずいた。
「はい!」
まず大都市に着いてやることといえば、カードショップめぐりに他ならないだろう。
せっかくだからボードヴァーサスで王都の猛者たちと一勝負いきたいところだが、さすがに今はそれをやる時間はない。
まず寄ったのは、王都で一番でかいらしい『ヒューガー』というカード専門店。
この世界において、同じカードはそう何枚もあるものではない。1枚しかないものもある。
カードショップごとに置いてあるカードがちがっていたりするので、新しい街につくたびにチェックする必要があるのだ。
そういうことを前に説明したらフォッシャに怪訝な顔をされた。今も、うしろでラトリーたちは呆れた表情を浮かべているが、俺とハイロは気にせずにカードの展示を見物する。
今日は特別なイベントの日でもある。ふだんは専用の施設に厳重に保管されているレアカードたち、そのうちの何枚かがカードショップや博物館で公開されるのだ。
「すごい……限定モデルですよ!」
「ああ。馬車に揺られた甲斐があったってもんだよ……」
目当ては『トリックスターシリーズ』に属する、世界に2枚しかないといわれる限定モデル『ベボイ・トリックスタ<いたずら妖精小僧>』だ。
「すっげぇ……なんて生意気そうな面がまえなんだ……!」
このイベントのメインは【ライトニング・スピア】という強力なトリックカードだ。世界で1枚しかないらしい。なんだか歴史的に重要なカードらしく、文化遺産に指定されており非売品なのが惜しい。
警備の人やほかの見学者で、店のなかはごったがえしている。特に『ライトニング・スピア』の前は人だらけで行列ができている。
「あっちのカードはいいワヌか?」
と、フォッシャが人だかりのほうを指差して言った。
たしかにあのライトニング・スピアズは審官と並ぶかそれ以上に強力な効果を持っているカード。かなり有名だ。
だけどこの『べボイ・トリックスタ』も、かなりクセはあるが状況次第では強さを発揮する、とてもユニークなカードなのだ。
他の人たちは有名なカードの展示に群がっていて、俺とハイロ、それとカードに詳しそうなメガネのお姉さんくらいしか、このカードの前にはいなかった。
このメガネのお姉さんはよくわかってる。
「カードの良さは人気じゃ決まらないのさ、フォッシャ」
「……なるほどねー。そう言われると強そうにおもえてきたワヌ……」
「名前のとおり奇想天外なちからで、不利な状況も変えられる特別なカード。べボイ、欲しいなぁ……でも文化遺産なんだよなぁ……」
俺は大きなため息をついて、頭を抱えてガチへこみする。カードが文化遺産ってなんだよ、もう。
「他のカードも見ておきましょう、エイトさん。1年に1週間しか公開されない超レアイベントですからね……!」
「目に焼き付けなきゃな」
ハイロとくっついて、展示されたカードたちをじっと眺める。ほかにも面白そうなカードが展示されていたけど、やっぱり『べボイ・トリックスタ』いいなぁ。
「世界にはまだこんなお宝カードがたくさん眠っているんですよ……! たまりませんね」
「楽しみだ……はあ」
「はい、時間です。次の方ー」と、スタッフの方に早く移動するよう急かされて俺たちの見学時間は終わってしまう。
「ああ……残念」
もうすこしゆっくり眺めていられたらよかったのだけど。
「すごい厳重な警備ですね……!」
「ああ……。しかし、いいカードばっかりだったな。あんなカードが使えたら楽しいだろうなぁ」
「わかります……わかりみが深すぎます……」
「ふたりとも、目的忘れてないワヌか?」
浮かれていた俺たちをフォッシャがたしなめる。
そう、王都に寄ったのには、ラトリーの留学とこのイベントのほかにもうひとつワケがある。
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