カードワールド ―異世界カードゲーム―

イサデ isadeatu

文字の大きさ
72 / 169
王総御前試合編

しおりを挟む
 しとしとと降っていた雨が止んだ昼過ぎごろ、検問を抜け目的地に到着した。
 立派な石畳(いしだたみ)の街。雨があがって雲に晴れ間がさし、壮麗な王都の景色が俺たちのまえに広がっていた。

 王都というだけあってラジトバウムとは人の多さや建造物のビジュアルもかなり異なる。やたらと背の高い建物が多く、あまり遠くが見えない。

「大都市ってやつか……。じゃ、まずやることは決まってるな」

 俺がそういうと、ハイロが強くうなずいた。

「はい!」

 まず大都市に着いてやることといえば、カードショップめぐりに他ならないだろう。
 せっかくだからボードヴァーサスで王都の猛者たちと一勝負いきたいところだが、さすがに今はそれをやる時間はない。

 まず寄ったのは、王都で一番でかいらしい『ヒューガー』というカード専門店。
 この世界において、同じカードはそう何枚もあるものではない。1枚しかないものもある。
 カードショップごとに置いてあるカードがちがっていたりするので、新しい街につくたびにチェックする必要があるのだ。
 そういうことを前に説明したらフォッシャに怪訝な顔をされた。今も、うしろでラトリーたちは呆れた表情を浮かべているが、俺とハイロは気にせずにカードの展示を見物する。
 今日は特別なイベントの日でもある。ふだんは専用の施設に厳重に保管されているレアカードたち、そのうちの何枚かがカードショップや博物館で公開されるのだ。

「すごい……限定モデルですよ!」

「ああ。馬車に揺られた甲斐があったってもんだよ……」

 目当ては『トリックスターシリーズ』に属する、世界に2枚しかないといわれる限定モデル『ベボイ・トリックスタ<いたずら妖精小僧>』だ。

「すっげぇ……なんて生意気そうな面がまえなんだ……!」

 このイベントのメインは【ライトニング・スピア】という強力なトリックカードだ。世界で1枚しかないらしい。なんだか歴史的に重要なカードらしく、文化遺産に指定されており非売品なのが惜しい。
 警備の人やほかの見学者で、店のなかはごったがえしている。特に『ライトニング・スピア』の前は人だらけで行列ができている。

「あっちのカードはいいワヌか?」

 と、フォッシャが人だかりのほうを指差して言った。
 たしかにあのライトニング・スピアズは審官と並ぶかそれ以上に強力な効果を持っているカード。かなり有名だ。
 だけどこの『べボイ・トリックスタ』も、かなりクセはあるが状況次第では強さを発揮する、とてもユニークなカードなのだ。
 他の人たちは有名なカードの展示に群がっていて、俺とハイロ、それとカードに詳しそうなメガネのお姉さんくらいしか、このカードの前にはいなかった。
 このメガネのお姉さんはよくわかってる。

「カードの良さは人気じゃ決まらないのさ、フォッシャ」

「……なるほどねー。そう言われると強そうにおもえてきたワヌ……」

「名前のとおり奇想天外なちからで、不利な状況も変えられる特別なカード。べボイ、欲しいなぁ……でも文化遺産なんだよなぁ……」

 俺は大きなため息をついて、頭を抱えてガチへこみする。カードが文化遺産ってなんだよ、もう。

「他のカードも見ておきましょう、エイトさん。1年に1週間しか公開されない超レアイベントですからね……!」

「目に焼き付けなきゃな」

 ハイロとくっついて、展示されたカードたちをじっと眺める。ほかにも面白そうなカードが展示されていたけど、やっぱり『べボイ・トリックスタ』いいなぁ。

「世界にはまだこんなお宝カードがたくさん眠っているんですよ……! たまりませんね」

「楽しみだ……はあ」

「はい、時間です。次の方ー」と、スタッフの方に早く移動するよう急かされて俺たちの見学時間は終わってしまう。

「ああ……残念」

 もうすこしゆっくり眺めていられたらよかったのだけど。

「すごい厳重な警備ですね……!」

「ああ……。しかし、いいカードばっかりだったな。あんなカードが使えたら楽しいだろうなぁ」

「わかります……わかりみが深すぎます……」

「ふたりとも、目的忘れてないワヌか?」

 浮かれていた俺たちをフォッシャがたしなめる。
 そう、王都に寄ったのには、ラトリーの留学とこのイベントのほかにもうひとつワケがある。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

自由を愛する妖精姫と、番にすべてを捧げた竜人王子〜すれ違いと絆の先に、恋を知る〜

来栖れいな
ファンタジー
妖精女王と精霊王の間に生まれた特別な存在――セレスティア。 自由を愛し、気ままに生きる彼女のもとに現れたのは、竜人族の王子・サイファルト。 「お前は俺の番だ」 番という名の誓いにすべてを捧げた彼は、王族の地位も未来も捨てて森に現れた。 一方のセレスティアは、まだ“番”の意味すら知らない。 執着と守護。すれ違いと絆。 ――これは、ひとりの妖精姫が“特別”に気づいていく物語。 甘さ控えめ、でも確かに溺愛。 異種族の距離を越えて紡がれる、成長と守護のファンタジー。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~

鈴白理人
ファンタジー
ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。 そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。 母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。 双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた── 前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

処理中です...