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王総御前試合編
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しおりを挟む王総邸にて謁見の機会を与えられ、まるでお城の一部屋のなかのようなところに案内される。
「ふーん……なるほど、これがかの高名な六幻魔札の一角『ゼルクフギア・ラージャ』か。……見ているだけで手が震えてくるのう」
まだ幼い男の子がローグから献上されたゼルクフギアのカードを手に持って、高そうな豪華な装飾の椅子にふんぞりかえって眺める。
俺たちはただその様子を、黙って眺めていた。
「ずいぶん王総って若いんだな」
ハイロに小声で耳打ちすると、
「あれはお孫さんです」
用というのはこれだ。ゼルクフギア・ラージャという災厄カードと戦って封印した俺たちは、表彰のため王総に招かれたのだ。
「じい様、やっぱりいいや、このカード。なんだか怖いし」
孫がそう言うと、王総どのは孫にデレデレな普通のおじいさんのごとく甘い顔をする。
「では、ローグどのにお返しいたしましょう。お手数ですが、そのカードの処置については元護衛部隊隊長におまかせしたほうがなにかと良いでしょう」
「はっ。殿下直々の拝命、たしかに承りました」
かしこまるローグ。ハイロも緊張の面持ちで傾注しているが、俺とフォッシャはだらけて突っ立っている。
「この度の討伐まことに天晴(あっぱ)れでありましたな。ぜひいかようにして六幻魔札を倒したのか、武勇伝をおきかせていただきたい」
本当は封印したのは俺とフォッシャなんだけどな。フォッシャが古代族であることやその能力のことが知れ渡ったらまずいということで、ローグの手柄ということになっている。
変に目立ちたくはないし、元々なにかと有名らしいローグがやったということにしておいたほうが、俺たちとしては都合がいい。
「どんな魔法をつかったのじゃ?」
少年が目を輝かせてたずねる。女の子にも見えるような、綺麗な顔をしていた。
「……いえ。たしかに私は護衛部隊の威信にかけて、たたかいはしましたが……このたび封印に成功したのは、オドのご加護によるところが大きく、実のところ私はあまりなにも……」
そう聞いて、少年は落胆の表情になる。
「なんじゃ、オドか。大立ち回りを期待したんじゃがの~。ま、それもそうか。さすがはオド様じゃ」
こいつ、さっきのカードを見る目つきといいカードゲーマーか。ってこいつ呼ばわりしちゃだめか。王総ってシステムはよくわからないけど、たぶんこの少年は王総子様……いや王総孫さまだもんな。
「ローグどのとラジトバウムの日ごろの行いの賜物でありましょう。大儀でありますな。それなりの褒賞を受け取るにふさわしい。……なんなりと申してください」
王総が言うなり、ローグは間髪いれずに「では」と声を張り、
「宝物庫からあるカードをお貸しいただきたい」
「いいでしょう。そのカードとは?」
「【探索者をみちびく光の標(しるべ)】というトリックカードです。少々入り用がありまして」
ローグから目配せがある。これは前々から話し合っていたことだ。
わかっている。フォッシャの実体化の力があれば本来古代カードでありふだんは使えないはずの【探索】なんちゃらのカードも使うことができる。そして俺たちの目的である【古代の復元】のカードも容易に見つけ出せるというわけだ。
しかし、王総の返事は色よいものではなかった。
「それは……そのカードだけは、差し上げられませんなぁ」
「なにかわけが?」焦りを抑えつつローグがきく。
「いえ、ちょうどよかった。そろそろ3年に1度の王総御前試合の時期でしょう。その優勝賞品のひとつにその【探索】のカードも含まれているのです。高名な結闘士であるローグ様にもぜひ出ていただきたいと思っていたのですが……」
なんてこった。大会の景品にされたのか。
「……身に余る光栄ではありますが、任務があるので大会は……どうにか貸していただくことはできないでしょうか?」
「由緒正しい大会ですから、もう公表してしまっていてどうにも……ローグどのが出られて、優勝なされば良いのでは? それともなにか重大な用があるとか?」
そうなのだが、フォッシャのことは言うべきかどうか。王総といえば重要人物なはず。だが権力者でもあり、100%信用できるわけではない。
世界を変えかねない力があると人が知ったとき、使わずにはいられないんじゃないか。
ローグは黙っている。お前はどうする気なんだ。ここで王総につくのか。それとも俺たちにつくか。
ここは先手を打つ。悩んでもらっているうちに、答えてやろう。
「いいですよ。その大会に出ます」
「なっ――」
おどろくローグ。「おお! それは良い。あなたは……」と王総にきかれ、
「スオウザカエイト。元カードゲーマー。現冒険士です」と俺は名乗った。
「ただし、優勝したときには必ず【探索】のカードをいただきますよ」
「もちろんですとも」
王総は胸を張ってうなずく。隣にいる少年は、
「おもしろくなりそうじゃの」と愉快そうに笑う。
ローグはあきれ果てたという態度で「このお話はまた今度に」と最終的な返答はうやむやにした。
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