カードワールド ―異世界カードゲーム―

イサデ isadeatu

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王総御前試合編

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「おふぉー! 学校ワヌ!」

 フォッシャのテンションがいつも以上に高い。今日は、王都立レクッド学院にきている。
 町長夫妻ももう王都に到着しているそうだが、ぎっくり腰と旅の疲労でダウンしてしまったそうだ。二人にかわって、俺たちがラトリーの中等学校の授業参観に来ることになったのだ。
 正直こちらも授業参観にいってる場合ではないのだが、フォッシャとラトリーは仲が良いし、俺も町長さんとラトリーにはお世話になったのでその縁でハイロ、ミジルもついてきた。

 カードと魔法の世界の学校だから構造も特殊なのかと思ったけどそうでもなく、見た目では豪華絢爛(ごうかけんらん)という印象を受ける。

 しかし期待していたカード要素もあって、額縁などに大きなカードが飾られていたり貸してもらった入場許可証もカード製だった。

 授業参観自体は別にふつうのもので、じっさいに授業をやっている教室の後ろの方で、親御さんたちがその様子を見守るというようなものだった。
 ラトリーのいる医学部は子供のうちから通常の教科にくわえて医学的なことを学ぶらしい。俺たちも列にくわわって授業をながめる。ラトリーは真面目にやっていた。
 さすがに俺たちより若い親族や関係者は来ていないようだ。動物連れてきてる人もみあたらない。

「こういう子供たちが、いつか世の中をつくる立派なおとなになっていくワヌねえ。うんうん、ほほえましいワヌ」

 感心するフォッシャ。なに目線だよ。

 授業のさいご、急に保護者参加のクイズ大会タイムになったようで、親御さんたちの間でざわめきが起きる。

「SN345年ごろの人物です。医者でありながらカードの研究家としても活躍し、カードドクターと呼ばれた人は? だれかわかるかな? 親御さん方も、どうぞ考えてみてください」

 女の先生が、カードのビジョンが黒板にうつすシルエットを指していう。
 当然だがこの世界の歴史知識のない俺には全くわからない。まあおとなしくてしておけば別にあてられることもないだろう。

「じゃあそちらの若いお父さん? お兄さん? お答えできますか?」

 当たるんかい。
 完全に先生と目があってしまい、手でさされる。
 まいったな。カードドクターなんていわれても全くわからない。

 詳しいハイロが、手をあげて代わりに答えてくれた。

「レイド・クルク教授でしょうか。エンシェントで傷ついたカードを直すことができたという、天才医師の」

 先生はにこっと笑って、

「正解です。奥様、若いのにずいぶん博識でいらっしゃいますね」

 ふーん。カードの傷を直すことができる人なんていたのか。

 ハイロの隣で、ミジルがメモ帳になにかつぶやきながら書き込んでいる。

「歴史知識×(バツ)……と」

 なにをメモしてるんだ貴様は。


 ラトリーのほうはもう心配いらないだろう。休み時間になると友達らしい女の子と初々しげに話してから、こちらに手を振ってくれた。
 授業を終えた後は、校内をまわって見学する。
 医学部のほかにもカード学部なんてものもあった。教室で子供たちが真剣にカードの授業を受けていたり、机をはさんで対戦したりしているのを見ておどろいた。

「私もこういう学校に通いたかったです」とハイロは興奮気味にいう。俺としては学校でカードを学ぶなんて窮屈そうでちょっと嫌だなと思う。

「なんだか学校生活とかあこがれるじゃないですか。カードの強い男の子と、すてきな出会いをしてしまったりとか……。ふたりは楽しい学園生活を送るわけですね。フフ。そう思いませんか、エイトさん」

「あ、ああ。かもな」

「現実じゃ呪いのカード探しワヌけどね」

 皮肉っぽく言う、ちょっと不機嫌そうなフォッシャ。責任感じてんのかな。
 別にお前のせいじゃないのにな。俺が好きで手伝ってるんだから。

「あんた学校でてんの? そのわりには一般常識に欠けてるっていうか……」

 ミジルは俺に向かってさらっと失礼なことを言ってくれる。ていうか何でお前ここまでついてきてんの。

「ん? ああ、出てるぞ。まあ俺のところはカードの授業なんかなくて、ほかの科目の授業中はデッキの構成どうするかとかとか考えてたよ」

 そんなだから、女の子とはぜんぜん話した記憶がないんだよな。まあそこまでは人前で言わなくてもいいだろう。

「なにそれ。ぜんぜん勉強できてないじゃん。性格、カードのこと以外不真面目、と……」

 ミジルはまたもメモをとる。最近気づいたのだが、どうやら俺の採点をしたり、欠点をメモしているらしい。
 こいつは俺のカードゲーマーとしての能力を疑ってる。ハイロを実家に連れて帰りたいようだが、御前試合のためにはハイロの力は絶対に必要になる。
 下手な行動は慎まなきゃな。フォッシャのことが知られたら、ぜったい危ないからって連れ帰られてしまう。

「いえ、なんだかそういうのも素敵です……」

 ハイロはそう言って微笑む。ミジルの存在は厄介だけど、ハイロが御前試合に出てくれる気なのが救いだ。

「別に素敵な感じではなかったけどな。ハイロたちはカードの学校とかいってなかったのか?」

「はい。いまどきカードがあれば家でも勉強はできますから」

 俺としてはそっちのほうがうらやましいかもな。

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