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王総御前試合編
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しおりを挟むむかしの夢をみた。
元の世界で、カードをやっていたころの記憶。
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世界規模の大会となると、優勝賞金もケタがちがう。3億といわれても、イメージしづらい。
だがカネのためにやるのではない。
己(おのれ)がカードゲーマーとして優れていることを証明する。自分のえらんだカードとデッキが優れていることを証明する。そんな崇高(すうこう)な目的で俺たちは誇りをかけて戦う。
細身の男も多いが、中には屈強な肉体を持った者もいる。世界中から人が集まるためプレイヤーの人種も特徴もかなり様々で、異様な空気はとらえどころがない。だがそれによる緊張も感じてはいない。自分でもふしぎと落ち着いている。
目を鈍く光らせた男たちに囲まれて、ステージにあがる。
《全米選手権2連覇の王者、世界ランク2位ニューク・デーモン! 対するはルーキーにしてブラックホース『無敗の新星』エイト・スオウザカ! 二人の入場だァ!》
実況の声が会場にひびくと、怒号(どごう)のような狂気に満ちた歓声が沸き起こった。ここに集まっているのはかなりのカード狂ばかりだ。
全米選手権。世界大会に次ぐ大規模なトーナメント戦だ。世界ランク1位は病欠で参加していないが、このニューク・デイモン氏はランク2位の実力者。世界大会に俺の力が通用するか試せる、またとないチャンス。
この試合に勝つことができれば、いずれは世界大会のトロフィーも狙える。そう思うと、武者震いで手がふるえた。
ステージには遮音性(しゃおんせい)の高い部屋へのドアがあり、そこが決戦の舞台となる。部屋にしかけられたいくつかのカメラによって、試合の様子が会場やインターネットのモニターに映し出されるというわけだ。
「君の試合をみたよ。スオウザカくん」
部屋へのドアに手をかける直前、デイモン氏が声をかけてきた。集中しきっていた俺は、反応が遅れる。
「え……。あ、そうなんですか」
アフリカ系の彼は、青のメッシュ交じりのドレッドヘアーに俳優のような整った顔をもつクールガイだ。飄々(ひょうひょう)としているが、実に知略に優れるすばらしいプレイヤーだ。彼とこうして戦える日がくるとは。
「僕は君をこの大会最大のライバルだと見ているよ。いい試合をしよう」
精悍(せいかん)な目つきで、彼は語りかけてくる。
「はい。よろしくお願いします」
「だけどいかな君といえど――今回僕の考案した『ヘルゲート』デッキの前では、太刀打ちできないだろうね。システムの穴をついた即死のコンビネーションをみつけてしまったんだ……悪く思わないでくれ」
「……即死のコンボ、ですか」
秘策があるのか。いや、試合前のおしゃべりに惑わされるな。
勝負だけが大切だ。この真剣勝負の場において憶測(おくそく)など無用(むよう)。
試合は意外にも、常に俺の優勢に運んだ。引きも強く、万全の体制を整えもはや勝敗はみえかかっていたとさえ思えた。
やがて、奇妙な間(ま)がおきた。防戦一方のデイモン氏は、俺の出したカードにまずは対応するしかないはずの場面で、なぜか彼は長考した。
しかしこの間が俺に嫌な予感を与えた。この試合、俺が主導権をにぎってはいるが、デイモン氏の力は本来こんなものではないはず。事前の調査とは戦い方も異なっている。
それでも用心深く最善だと思われる構築はできている。強力な戦闘カード3枚を出している俺に対し、デイモン氏は0枚。さらに向こうは手札も少ない。追い詰めているのはこちらのはずだ。
デイモン氏が出したのは、大会ではあまり見慣れない地味な戦闘用のカードだった。しかしその効果で呪文系のカードが続けざまに使われると、俺がにわかに抱いていた嫌な予感は確信へと変わった。
デイモン氏の出すカードの効果の巧妙な連鎖で、彼のターンがずっと終わらない。手札を何枚も引き、さらにそこから何度もカードを出しては使い、俺の出したカードたちをいともたやすく粉砕していく。
たった1枚のカードが、次々と俺がつくったはずの盤面を『殺し』ていった。
ようやく俺のターンが回ってきたとき、99対1だったはずの状勢は、そのままひっくり返っていた。
――逆転された、一気に。
勝利目前のはずが、絶体絶命という疑いようもない現実に、しばらく俺は呆然となるしかなかった。
(あの1枚のカードから、ひっくり返された――しかも、突破する手段がない!?)
こちらの戦闘カード0枚にたいし、デイモン氏5枚。相手はさっきの連鎖を使おうとすればまたいつでも使えるだろう。この対抗策が手札にないどころの話ではない、こちらのデッキに、あの連鎖を止められる手段があるとは、それを作ったこの自分自身でさえ思えない。
デイモン氏は新しい概念をみつけたんだ。こんな手は、みたこともきいたこともない。独自の研究によって得た新しいシステムを、この決勝まで温存していたのか。
(これが――死のコンビネーション――!!!!)
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