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王総御前試合編
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しおりを挟む「エイトー? だいじょうぶ?」
目をあけるとベッドの横に立ったフォッシャが、俺の頬をぺしぺし叩いたり、体を揺さぶったりしているのがみえた。いつもの獣の姿ではなく、耳としっぽの生えた女の子の姿をしている。
彼女は夜には人間の姿で、昼には獣の姿という特殊な体質の持ち主だ。変化の途中であるところをみるに、おそらく今は深夜か早朝というところだろう。
枕もとの灯かりだけついており部屋の中はうすぐらい。まだ外に日はのぼっていないようだ。
「ふぁ、ああ……」
起きたが、気分がすぐれない。寝ぼけ眼をこすって、自分の顔を片手で覆う。
フォッシャが俺の顔をのぞきこんで、
「うなされてたよ。まったく女の子が起こしにきたんだから、感謝のひとつくらいするワヌ。ほらこれでも飲んで」
カップをフォッシャがくれる。よくフォッシャが飲んでいる、色合いと味はココアに似た飲み物が入っている。あたたかい。
「ああ、ありがとな。……ちょっとまだねぼけてた」
「ずいぶん険(けわ)しい顔してたけど、夢でもみてたの?」
フォッシャは俺のいるベッドに腰掛ける。
まだ、なんだか胸騒ぎがする。なぜ今むかしの夢を?
「……ああ……」
「あててあげる。カードの夢でしょ」
「まぁ、そうだな」
ズズ、と俺は飲み物をのむ。なんだかすこし落ち着いた。
「ほんとにカードが好きだねえ。頭のなかカードしか入ってないんじゃないワヌか」
コンコンと俺の頭をノックするフォッシャ。
「……そうだな。小さい頃からずっとカードが好きだったからな。……夢中になってやってたよ、昔はな」
カップの中をみつめながら、俺は淡々とつぶやくように話す。
「やる場所がないからって公園のベンチで友達とカードやってたら、カードが風に飛ばされちゃったりとかよくあったな。でも、そうやって純粋にカードを楽しんでたのは昔の話だな、もう……」
「……今はそうじゃないワヌ?」
「……ちょっとあってさ。フォッシャ、お前の故郷ってずいぶん遠くにあるんだってな。俺も同じだよ。しかも、そう簡単には帰られない。……いや、帰りたいのかどうかもわからない。帰っても、もうカードはやらないだろうからね……」
急にしんみりした話題を振る俺に、フォッシャは戸惑いの表情をみせる。
「どうしたの、エイト……」
「……ごめん、変なこと言ったな。……夢のせいで変な気分なんだ」
「まだ早いから、もうすこし寝ててもいいんじゃない」
フォッシャは優しく微笑むと、俺の持つカップに手をのばし、代わりにもってくれた。
「……ああ、そうしようかな。もう少しだけ……」
彼女の言葉にあまえて、また横になる。
意外にも早く眠りに落ちてしまう。毛布をかけなおすのを忘れて肩のあたりがすこし心もとなかった。が、フォッシャがかけてくれたのか、だんだんとあたたかさを感じるとともに意識がうすれていった。
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