カードワールド ―異世界カードゲーム―

イサデ isadeatu

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王総御前試合編

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「エイト、なんか服装が変わってるワヌ!」

 トコトコと向かってきたフォッシャが声をかけてくる。
 自分の格好をみると、いつもは着ないような黒と紅のマントにデザインが変更されておりおどろいた。これもゲームの仕様なのだろう、なんだかかっこいい。『暁の冒険者』の格好にすこし似ている気もする。

 そう言うフォッシャも体は獣状態のままだが、いつもとは微妙に服のデザインがちがう。ほかの3人をみると、ローグのストールが黒のベールに変わっていた。ハイロはドレスっぽい更に清楚な姿に、ミジルは逆にスカートの丈が短くなったりと露出が増えていた。

 ゲームの仕様で外見の見え方が微妙に変わるのだろうか。ほかの参加者をみると、髪の毛の色や背丈はおろか、性別までゲーム開始前とは変わっている人も見受けられる。そういう人はだいたい経験者らしく、一向に身動きがとれないでいる俺たちとはちがい、颯爽とどこかへ行ってしまった。

 よくみると、役の所属勢力ごとにデザインのまとまりがある。トレジャーハンターと一般人は軽装、機関は黄色を基調とした制服というわけか。

 さて、もう一度目標をカクニンしておくか。
 パンフレットを見る限り、それぞれの役のクリア条件はこうなっている。

目標
トレハン・一般1 宝をみつける
機関2 危険の排除(ボスの撃破)or3の排除
魔物3 1・2への妨害による全滅

 どれかひとつをもっとも早く達成した勢力の勝利。MVPは敗北したチームから選ばれることもある。

「俺はトレジャーハンターだから、宝っていうのを探せばいいわけだな。みんなはどうするんだ?」

 俺が振り返ると、ハイロがおだやかに答えてくれる。

「私はエイトさんについていきますよ」

「フォッシャも一般人だから、宝探しするワヌ!」

 お前が一般人ってどんな皮肉だよ。とすこし心のなかで思ってしまったが、本人に言ったら傷つけてしまうかもしれないので自分のツッコミを反省する。

「あたしは機関?とかいうのみたいだけど、どうでもいいからついていくわ」

 本当に興味なさそうに言うミジル。ローグは答えるまでもない、という感じで自らの髪を優雅にかき撫でる。ローグも格好をみるに、おそらく機関の人間か。

 となると、このなかには『魔物にのっとられた人間』はいない、ということになるな。自己申告の限りでは。

 疑っていてもしかたないし、ゲームをはじめるとするか。

 とそこで、「スオウザカ」とミジルに呼び止められる。

「そこそこカードは強いみたいだけど。私はあんたがハイロにふさわしい人物だと認めたわけじゃない。今日こそ結論を出させてもらうからね」

 ミジルはハイロを家に連れ戻したがっている。しかしハイロの力はこれから先も必要だ。俺たちにとって彼女が抜けたら痛手になってしまう、そうなるわけにはいかない。
 このイベントもカードとは無関係なわけではない。こういうアクティブなことは得意分野ではないけど、活躍できれば勝負強いところをみせるチャンスだ。

「……精一杯やってみる。ハイロ、協力してくれ」

「もちろんです! 私たちのコンビネーションをミジルにみせてあげましょう!」

 ハイロがフォッシャを抱きかかえ、フォッシャもノリノリで応じる。

「おー!」


「まずは情報収集だな。部屋を調べまわってみよう」

 さっそく俺たちは広間から移動する。

 最初に着いた小部屋ではひとつ資料をみつけた。『世界の破壊者』を復活させようとした狂人の手記のようだ。
 こういう演出の小道具をあつめて、宝のある場所を割り出すというわけか。
 宝探しゲームのようなつもりで童心に帰ったように笑っていた俺たちに、ミジルが忠告する。

「あのさ……あんたたち、ロールプレイングするんじゃなかったの?」

 はっとなって、俺たちはしまったという表情で顔を見合わせる。

「そうだった。ちゃんと役になって活躍しないと、MVPはとれないんだったな……」

 手首の紋章をさわって、自分の役柄の詳細をみる。
 たしか役と一緒で、性格とか経歴もランダムに決まってるんだったっけ。

「俺のは……なんだ、これ」

 俺様系ドSキャラってなに。
 ぜ、ぜんぜん想像がつかない。……とりあえずイメージでやっていくか。

 ふと隣に目をやると、フォッシャが虚(うつ)ろな面持ちで、ただボーっとしている。

「どうした?」と声をかけると、

「キオクソウシツになった一般人……だよ。私の名前はたしかフォッシャ……」

 だからどんな一般人だよ。いやもうそれはいいか。

「私は機関の者です。ここはあぶないので即刻立ち去っていただきたいのですが?」

 おお、ハイロのやつうまいな。たしかにいつもとすこし違うなにかの役になってる。

「そうはいかないぜ。俺様はトレジャーハンターのソーサカ・エイツォ。お宝のウワサをきいてこんな山奥まできたんだ……素直にはいそうですかって帰るわけにゃあいかねえな?」

 こんな感じでいいのだろうか。

[外は嵐で、ここにくるまでの橋も壊れてしまっていまス]とGMマスコットが突然あらわれてアシストをくれる。どうやらゲームの進行に必要な情報をこうして与えてくれる存在でもあるようだ。

「それに途中くるまでの橋も壊れちまった。外はひどい嵐だっていうのに、それでも俺たちを追い出すかい?」

「……しかたありませんね。ただし、妙な行動はつつしんでください。べ、べつにあなたたちのことが心配で言っているわけではないですけどね」

 ぷいっと顔を逸らすハイロ。なんだかこういうハイロは新鮮でおもしろいな。
 ミジルとローグは積極的に参加してこないと思うから、とりあえずこの3人で進めていくとするか。

「とりあえず、館のあるじを探すか? 勝手に泊まるわけにもいかないからな」

「それがいいワヌ……ね」

「それならば、私たち機関の目的とも合致しますが……くれぐれも気をつけてくださいね」

 よし。演技なんてどうすればいいかわからなかったけど、なんだか楽しくなってきた気がする、本当に物語の中の人物になったかのようだ。
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