124 / 169
王総御前試合編
48
しおりを挟む呪いのカードによって異世界に飛ばされてしまった俺、スオウザカエイト。元カードゲーマー。そこはカードが魔法の役割を果たす不思議な世界だった。
相棒とともに呪いのカードを探す旅に出る。俺は元の世界に戻るためのカードを、そして相棒もまた、実体化という危険なカードをさがしていた。
やみくもに探しても呪いのカードはまったく見つからなかった。そうして『探索』の魔法カードを手に入れるため王都へ。
王総御前試合という大会で優勝することができればそのカードを手に入れることができる。しかし、一回戦からとんでもない猛者と当たり、俺はカードをかばって重傷を負う。
その相手の話ではこの大会には呪いのカードがまぎこんでいるらしい。めんどうなことになってきた。
早朝に退院し、車椅子をハイロに押してもらってカード研究室へとついた。
「ケガの容態は?」
ゴスロリ服をまとう美女ローグが俺にきいてくる。彼女は一緒に大会にでているチームの一員だ。
「全身打撲。何個か骨にヒビが入ってる。すこしの距離なら歩けるけど、試合は……」
「ムリね。早くて、決勝に間に合うかどうかってところかしら」
「エイトさんは出れませんね……」
チームのリーダー、ハイロが残念そうにいう。
「すまん……」
「あやまることじゃないでしょう。あなたはよくやったわ。私たちは、あのキゼ選手に勝ったんだもの」
あやまる俺をローグがフォローしてくれた。
キゼーノは大したカードの使い手だった。なんとか試合には勝てたが、俺はテネレモをかばってこのありさまだ。
「いまでも、信じられません……!」
声をはずませるハイロ。
「さすがにあれ以上の壁はこの大会にはもうないだろうな。そうじゃなきゃ困る」
「そう願いたいですけどね……」
「でもこうなるとだれかもうひとり、チームにいれなくてはね。最低3人は必要だから、スカウトしなければ……」
「フォッシャじゃだめなのか? ずいぶんカードゲームのうでも上達したぞ」
「問題は腕じゃないわぁ。呪いのカードが関わっている以上、フォッシャを不用意に出すのは得策と思えない」
「……」
フォッシャには実体化の力がある。ウォリアーを実際に召喚したり、かくされた力を解放したり、とにかく強力すぎるスキルを持っている。今まで何度かフォッシャの力で呪いのカードを破ってきたが、フォッシャの力のせいで危険な事件が起きることもあった。
ローグが危惧しているのはそのあたりだろう。
「特訓のおかげで、フォッシャもずいぶんその力をコントロールできるようになったんだけどな」
「だからこそ奥の手としてとっておきたい。まず衆目にフォッシャの力をさらすわけにはいかない。フォッシャにはいざというときのために試合の外から事態を収拾してほしいの」
「なるほど~……」
うなずいたのがそのフォッシャだ。タヌキのような小動物系の不思議な姿をしているが、なかみは女の子だ。
「呪いのカードが関わってるなら、大会を中止にしたほうがいいんじゃないの?」と俺はたずねる。
「ええ。だけど巫女がそうしていないということは、むしろ呪いのカードを破る好機だと考えているのでしょうね。大会を中止にすれば、そのカードは野放しのまま。その後どうなるかわからない。しかし逆に考えれば、大会を開催していれば呪いのカードがあらわれる可能性が高い」
「……逆に考えれば、な」
表向きは開催しておいて、裏ではかなり厳重な警備体制を敷いておくとかそういうことなんだろうな。占いどおり呪いのカードが大会にまぎれこんでいれば、危険はともなうがたしかに破るチャンスではある。
「なに考えてんだ? 俺たちにどうにかしろってことかよ」
狙いはわかるがそうだとしても観客や一般人に被害がでるかもしれない、リスクのある賭けだ。
「こういうことをどうにかするために冒険士や兵士がいるのよ。期待しているのでしょう。ゼルクフギアを倒した存在に……ね」
ローグにそう諭(さと)されても、ため息をつかずにはいられない。
おかしいと思ったぜ。巫女様とやらがわざわざ俺たちを呼びつけたのは実力を見定めるためか。
ハイロは事態をなんとなく察しているようだが、フォッシャはきょとんとしていて会話の内容がよくわかっていないらしかった。
「で、けっきょくあたらしいメンバーはどうするワヌ?」
フォッシャがそう言って、俺たちはそれぞれ顔を見合わせる。
ふと見ると、ローグが机に教科書をひろげているラトリーに視線をおくっていた。
「……え? わ、私ですか? むむむムリですう! 私がエンシェント式なんて……! 普通のヴァーサスだって全然できないのに!」
ラトリーはそれに気づくと、全力で顔のまえで両手をふる。
……さすがにラトリーは無理があるだろ。
「ムリでもきゅうりでもなんとかしないといけないんだわぁ」
「……」
さりげなくよくわからないことを言ったローグに、俺は冷たい目をむける。
「……な、なによ。とにかく、私とハイロでカバーすれば、ラトリーの安全は守られるわ」
「きゅうりだって! アハハハ!」無邪気にフォッシャが笑う。
「笑ってる場合じゃないわぁ……さすがにラトリーにやってもらうっていうのは冗談だけど」
「助っ人……だれかいるかなぁ」
さすがのハイロもないだろと思ったのか、すでにほかの案を模索していた。
「うーん」
ちら、とハイロが見たのは、妹のミジルのほうだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~
桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。
交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。
そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。
その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。
だが、それが不幸の始まりだった。
世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。
彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。
さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。
金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。
面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。
本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ
※月、水、金、更新予定!
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる