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クリスタルハンター編
7 魔法の塔
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7 魔法の塔
町から目的の場所へと移動する。クリスタルのあるダンジョンは魔法の塔と呼ばれているらしい。かなり高い建物で、遠くからでも見つけることができた。
雑木林を抜け、荒れ果てた道をゆく。
「でな、わては言ってやったんよ。[ずいぶんユーモアが効いてるな]ってな」
ヨッゾはおしゃべりな性格なのか、黙々とすすむ俺たちのなかでひとりずっとそんなことばかり言っていた。
俺たちがまったく無反応なのをみて、
「いまの笑うところでしょ」と彼はやや不服そうに言う。
「ああ、ごめん。きいてなかった。カードがなんだって?」
「うっそーん。じゃあもっかいはじめから……ん?」
木々のないひらけた場所にでたとき、人影があるのがわかった。
「人間です、お姉さま」
「ええ。めずらしい」
狐に似た異種族の少女ふたりがこちらを待っていたかのように立っていた。服を着たその姿はどこか艶美(えんび)で色気さえ感じる。
「ここは通れないよ」
会話からして姉妹らしく、堂々としている姉だと思われるほうが言う。
「通れない?」
「救助隊からきいてるだろ。これ以上行方不明者が増えられるとこっちも困るんだよ」
やっぱりその一点張りか。
「あなたたちに任せておいたとして、確実にどうにかなるんですか」
失礼な言い方かもしれないがこの島の住民ではもうずっと事態の収拾はできていないはずだ。
「そう簡単にはいかないだろうね」
じゃあ任せておいたって取り返せるわけじゃないのかよ。
それで引き下がれって言われても納得できないだろ。と俺は心の中で文句を唱える。
「ところでヒトって毛が少なくて、ツルツルしてておいしそうだねえ。味見してみたいんだけど……」
狐少女の姉のほうが、鋭い目つきで俺を見て舌なめずりする。
「私も気になります」と妹のほうも目をかがやかせる。
「ええ……!?」
「冗談だよ。まあ細かい話はここじゃなんだろう。ついてきな」
姉はひとさし指をくいっとまげて、林のなかへとあるいていく。
彼女らのあとをついていくと大きな屋敷のようなところについた。また街の方にもどってきてしまったらしい。
着物姿の母狐が応対してくれた。立派なお座敷に案内され、お茶とともに出迎えられる。
「そりゃできない相談だねえ。なんせあのあたりでは失踪者があいついでいるからねえ」
用件を伝えたがとりあってくれない。彼女によれば、ここの一族が魔法の塔の管理人のような存在らしい。
「なかは迷宮になってて、捜索ははかどってない。あの魔法の塔にはたしかにとんでもない財宝が眠ってるらしい。だけどあそこに足を踏み入れた者は気が狂うと古くから言い伝えられている」
脅すように言っているわけではなく、その表情からすると真実らしい。
「ただでさえ昔はダンジョンだった場所だよ。あんなところにわざわざ行ったやつはもう命を捨てたも同然だよ」
「そこをなんとか……」
ヨッゾも一緒になって頼み込んでくれるが、管理人が聞く耳をもってくれそうな気配はない。
俺は流れが悪いとみて立ち上がって、
「あ、すみません。トイレ借りても?」
「どうぞ。廊下の右の奥でございます」
正攻法ではだめだろう。逆に彼女らの立場で考えてみればわかる。なんだかわからないやつを塔にいれて、これ以上行方不明者が増えれば困るというわけだ。それなら自前で戦力を整えて救助隊を組んだほうがいいという判断なのだろう。
カードゲームの技術その32、相手の側になって考えろだ。
どうすべき頭のなかで模索しつつ、用をすませて廊下にでる。
「えーっと。どっちだっけな」
広い家のなかで迷いかけていると、ひょこっと和室からさっきの狐姉妹がでてきた。さっきとはちがい、綺麗な着物姿になっている。
「ねえねえ、あんたどっからきたの?」
「話をきかせて」
ふたりは好奇心旺盛な子どもみたいにずいずいとこちらに寄ってくる。
「まあゆっくりしてきなよ。そうだ、うちでご飯でも食べていくかい」
「いや、そういうわけにもいかなくてさ」
そう断ったのだが、ふたりはがばっと俺の両脇にまわって腕にしがみついてくる。
「そう固いこと言うなよ~」
「いっしょにあそびましょうよ」
「あたしはニフティ。こっちはサクラ。あんたは?」と、姉が自己紹介してくれる。俺は困って、
「いや……」
「あ、カードでもする?」
なんなんだこのふたりの「おもしろいオモチャみつけた」感は。それとも、もしかして俺って異種族にモテる外見をしているんだろうか。
だれか……たすけてくれ。
町から目的の場所へと移動する。クリスタルのあるダンジョンは魔法の塔と呼ばれているらしい。かなり高い建物で、遠くからでも見つけることができた。
雑木林を抜け、荒れ果てた道をゆく。
「でな、わては言ってやったんよ。[ずいぶんユーモアが効いてるな]ってな」
ヨッゾはおしゃべりな性格なのか、黙々とすすむ俺たちのなかでひとりずっとそんなことばかり言っていた。
俺たちがまったく無反応なのをみて、
「いまの笑うところでしょ」と彼はやや不服そうに言う。
「ああ、ごめん。きいてなかった。カードがなんだって?」
「うっそーん。じゃあもっかいはじめから……ん?」
木々のないひらけた場所にでたとき、人影があるのがわかった。
「人間です、お姉さま」
「ええ。めずらしい」
狐に似た異種族の少女ふたりがこちらを待っていたかのように立っていた。服を着たその姿はどこか艶美(えんび)で色気さえ感じる。
「ここは通れないよ」
会話からして姉妹らしく、堂々としている姉だと思われるほうが言う。
「通れない?」
「救助隊からきいてるだろ。これ以上行方不明者が増えられるとこっちも困るんだよ」
やっぱりその一点張りか。
「あなたたちに任せておいたとして、確実にどうにかなるんですか」
失礼な言い方かもしれないがこの島の住民ではもうずっと事態の収拾はできていないはずだ。
「そう簡単にはいかないだろうね」
じゃあ任せておいたって取り返せるわけじゃないのかよ。
それで引き下がれって言われても納得できないだろ。と俺は心の中で文句を唱える。
「ところでヒトって毛が少なくて、ツルツルしてておいしそうだねえ。味見してみたいんだけど……」
狐少女の姉のほうが、鋭い目つきで俺を見て舌なめずりする。
「私も気になります」と妹のほうも目をかがやかせる。
「ええ……!?」
「冗談だよ。まあ細かい話はここじゃなんだろう。ついてきな」
姉はひとさし指をくいっとまげて、林のなかへとあるいていく。
彼女らのあとをついていくと大きな屋敷のようなところについた。また街の方にもどってきてしまったらしい。
着物姿の母狐が応対してくれた。立派なお座敷に案内され、お茶とともに出迎えられる。
「そりゃできない相談だねえ。なんせあのあたりでは失踪者があいついでいるからねえ」
用件を伝えたがとりあってくれない。彼女によれば、ここの一族が魔法の塔の管理人のような存在らしい。
「なかは迷宮になってて、捜索ははかどってない。あの魔法の塔にはたしかにとんでもない財宝が眠ってるらしい。だけどあそこに足を踏み入れた者は気が狂うと古くから言い伝えられている」
脅すように言っているわけではなく、その表情からすると真実らしい。
「ただでさえ昔はダンジョンだった場所だよ。あんなところにわざわざ行ったやつはもう命を捨てたも同然だよ」
「そこをなんとか……」
ヨッゾも一緒になって頼み込んでくれるが、管理人が聞く耳をもってくれそうな気配はない。
俺は流れが悪いとみて立ち上がって、
「あ、すみません。トイレ借りても?」
「どうぞ。廊下の右の奥でございます」
正攻法ではだめだろう。逆に彼女らの立場で考えてみればわかる。なんだかわからないやつを塔にいれて、これ以上行方不明者が増えれば困るというわけだ。それなら自前で戦力を整えて救助隊を組んだほうがいいという判断なのだろう。
カードゲームの技術その32、相手の側になって考えろだ。
どうすべき頭のなかで模索しつつ、用をすませて廊下にでる。
「えーっと。どっちだっけな」
広い家のなかで迷いかけていると、ひょこっと和室からさっきの狐姉妹がでてきた。さっきとはちがい、綺麗な着物姿になっている。
「ねえねえ、あんたどっからきたの?」
「話をきかせて」
ふたりは好奇心旺盛な子どもみたいにずいずいとこちらに寄ってくる。
「まあゆっくりしてきなよ。そうだ、うちでご飯でも食べていくかい」
「いや、そういうわけにもいかなくてさ」
そう断ったのだが、ふたりはがばっと俺の両脇にまわって腕にしがみついてくる。
「そう固いこと言うなよ~」
「いっしょにあそびましょうよ」
「あたしはニフティ。こっちはサクラ。あんたは?」と、姉が自己紹介してくれる。俺は困って、
「いや……」
「あ、カードでもする?」
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だれか……たすけてくれ。
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