カードワールド ―異世界カードゲーム―

イサデ isadeatu

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王総御前試合編

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 向かったのはこのあたりの冒険士集会所だ。今日はよくここにくるな。
 フロアに出てくるなり俺はさっき受け取った小袋をかかげる。

「手のあいてる冒険士はいるか? 巫女からのじきじきの依頼だ。この金貨1枚をやるからこのあたりいったいの交通を封鎖してくれ」

 少ない時間で考えた策だった。とにかく道路から人をどかす。そうすればいくらかフォッシャもオドの感じで探しやすくなるはずだ。
 俺にはその鋭敏(えいびん)な感覚は全くわからないのだが、以前フォッシャと一緒にラジトバウムでやってみたことがある。
 あのときたしかに意識を集中するとまわりの音がよく聞こえた。だが雑音だらけで俺にはよくわからなかった。もっと気配や音を消せれば、フォッシャにはわかるはず。

 いきなり出てきた俺に冒険士たちはおどろいていたが、みんなやや戸惑っているようだった。

「そんなこと勝手にできるわけないだろ。だいたいお前、冒険士のスオウザカエイトじゃねえか」

「巫女の依頼って証明できるものはあるんですか?」

 冒険士たちが俺に向けてきたのは疑いの目だった。口々にそんなことを言ってくる。

「証明できるものは……この魔法の薬のカードを見てくれ! だれもみたことないはずだぞ。巫女が貸してくれたんだ」

 俺はふところからカードを出し、まわりにみせる。何人かが寄ってきてちかくで見てくれたが、ほかはそもそもこちらに近づこうともしてくれない。

「この地区から馬車や人が出入りできないようにしてほしい。道にだれもいないのが理想だ。急いでるひとも全部とめてくれ。あとあとの責任はぜんぶスオウザカエイトが取る。だからたのむ」

「ほんとうに? いまいち信用ならないなぁ」

 だめか。けどほかに手が思いつかない。強硬な手段ならあるにはあるが、街中ではフォッシャの力はできるだけ抑えておきたい。

「わかった……。みんな御前試合はみてるか? なら俺がローグ・マールシュと一緒のチームを組んでることも知ってるな」

 あきらかに顔つきが変わる冒険士たち。さきほどまで興味なさそうにしていた者たちまで、俺に注意を向けてきた。
 いいぞ。くいついてきたな。

「約束しよう。手伝ってくれたやつにはこの金貨に、ローグのサインもつけてやる。これでどうだ」

「やるぜ! 道からどければいいんだな?」

 そう言うなり、雪崩のようにドドドと冒険士たちは集会所を出て行った。あとにはもぬけの空で、受付のお姉さんまでいなくなっている。
 すごいな。ローグ効果は絶大だったらしい。

「ローグのサインだけでよかったか」

 とにかくこれで交通量は減らせるはずだ。ローグにはあとであやまっておけばいい。

「エイト、えらい! 金貨あれだけあればたくさんカード買えたワヌのに! みんなのために!」

「いや、あとで巫女からもっともらえるだろ」

「あ、そう……かっこいいと思ったのに」

「なんだよ。それより次の準備といこうぜ」

 集会所を出て通りに戻る。冒険士たちがわれ先にと大声で道行く人たちを止めている。この分ならすぐにでも人が掃(は)けそうだ。

「つぎは、どうするワヌ」

「【安眠術(あんみんじゅつ)<やすらぎの鳴声>】がつかえる『音楽家ギリス』を召喚する。それでこの一帯のひとを眠らせる」

 フォッシャにカードをかざし、紳士服をきたキリギリスに似た小さなウォリアーを実体化させる。

「ねむらせる!? ちょっとムチャじゃないワヌ」

「巫女の責任だろ」

「ギリスも、ほかのひとに見られちゃまずいワヌよ」

「そうだな。あ、いや、縮小化のカードを借りてある。これで虫にしか見えないはずだ」

 縮小化はキゼーノから借りたカードだ。ギリスを小さくさせ、俺の手のひらに乗せてウクレレを演奏させる。するとちかくの通行人と冒険士はゆっくりと地面に手をついて、すやすや眠り始める。

「ケガをさせないように、慎重にいこう」

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