カードワールド ―異世界カードゲーム―

イサデ isadeatu

文字の大きさ
135 / 169
王総御前試合編

59

しおりを挟む

 あらかじめ決めておいたルートを進みながら人々を眠らせていく。
 眠らせられるのはなにも作業していない人や、道からどこうとしない人たち、あとは役目をおえた冒険士だけだ。全員をねむらせる必要はないし、そんなことをすれば大変な迷惑をかけることになる。
 ギリスを手にのせ、走って街をまわる。道端(みちばた)で居眠りをこく人たちをみていると呪いのカードもとてつもないがフォッシャの力も常識を越えていると再確認させられる。
 念のため道のはじに移動させつつ、街をまわっていく。かなり体力をつかうのでさすがに俺たちも息がきれ、だんだんと走るペースが落ちてしまう。

「効率わるいワヌ! もっといいやり方なかったワヌ!?」

「しょうがないだろ……ハァ。これしか思いつかなかったんだよ。のんびり作戦考えてる間に病気はひろがってく。あんなに苦しんでる人をもっと増やしたいか」

「それはわかってるワヌ。ついてくワヌ」

 あらかた街がしずかになったところで、ギリスをカードにもどす。
 これだけやればすくなくとも雑音や気配は半減できたはず。あとはフォッシャ次第だ。

「いつまで寝てくれてるのかわからない。チャンスは一度きりだ。たのむぞフォッシャ」

 フォッシャはうなずき、目をとじて集中する。

「この感じ、呪いのカードワヌ。こっちワヌ!」

 場所は特定できた。気配は街中ではなく町外れの地帯から感じるという。地図で確認するとそこには炭鉱(たんこう)があった。
 いそいで現場に急行し、あたり一帯をしらべる。人の姿がない。作業員も全員感染したのか。
 洞窟のようになっている坑道をみつけ、そこに入る。
 奥には、たしかにカードがあった。これが蔓延(まんえん)している病の正体。

 【影(かげ)なる手札伝染(てふだでんせん)】。
 まぎれもなく呪いのカード。

 カードゲームですさまじい破壊力を発揮しそうな名前だ。もちろん自分も対戦相手も病気になるからだれもつかうわけないが。
 でもどうしてこんなところにいきなり出現したんだ。発掘作業でぐうぜん掘り当てたにしても妙だ。
 考えるより早くすぐさまベボイを呼び出す。実体化した妖精がパチンと指を鳴らすと、カードは粉々にくだけ散った。

「ふう。これでいっけんらくちゃくワヌね」

「いや……どうかな」

 土に埋まっているからと言っていつ呪いのカードは発動してもおかしくはないはず。ここに元々あったなら、もっとはやくから感染がおきてなければおかしいことになる。
 これで終わったとは思えなかった。


 根源(こんげん)は絶(た)てたので、その後はまた隔離病棟をおとずれた。医師とラトリーに薬瓶を小分けにしたものを渡す。
 もう充分俺たちは働いた。まだ患者はいるが、これ以上はもう彼らに任せておけばいいだろう。
 ラトリーがスポイトで一滴ずつ患者の口にたらしている。みるみるうちに元気な人が増えていき、静寂につつまれていたこの施設に活気がわいた。
 人々に笑顔がもどっていく。一日中走り回って疲れきったが、こうなってくるとやってよかったと思う。

「エイトお兄さん! フォッシャちゃん!」

 ラトリーが満面の笑みをうかべてこちらに手を振った。どうやら友だちが目をさましたらしい。
 フォッシャが俺の肩にのって、片手をあげる。
 カードは笑顔を守るためにある、か。たしかにそうだなと思う。
 まだ心のなかイヤな予感は残っていたが、俺はラトリーにわずかな笑みを返し、その場をあとにした。

 帰り道でフォッシャが、自分はカードの使い方が下手だから俺と会えてよかったと、そんなことを言ってくれた。俺は照れて、「そうか」みたいな言葉しか返さなかった。
 ローグに事件のことを伝えると、やはり俺と同じようになにか気になるところがあるようだった。
 本当に終わったのだろうか。この件は。
 ついでにおそるおそるサインのことを言うと、特に嫌そうな顔もせず承諾してくれた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

自由を愛する妖精姫と、番にすべてを捧げた竜人王子〜すれ違いと絆の先に、恋を知る〜

来栖れいな
ファンタジー
妖精女王と精霊王の間に生まれた特別な存在――セレスティア。 自由を愛し、気ままに生きる彼女のもとに現れたのは、竜人族の王子・サイファルト。 「お前は俺の番だ」 番という名の誓いにすべてを捧げた彼は、王族の地位も未来も捨てて森に現れた。 一方のセレスティアは、まだ“番”の意味すら知らない。 執着と守護。すれ違いと絆。 ――これは、ひとりの妖精姫が“特別”に気づいていく物語。 甘さ控えめ、でも確かに溺愛。 異種族の距離を越えて紡がれる、成長と守護のファンタジー。

『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~

鈴白理人
ファンタジー
ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。 そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。 母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。 双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた── 前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。 それが約50年前。 聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。 英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。 俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。 でも…英雄は5人もいらないな。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

処理中です...