カードワールド ―異世界カードゲーム―

イサデ isadeatu

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王総御前試合編

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 翌日、あやしいやつはいなかったかと街中を聞いて回る。だが誰もそんな姿はみかけてないという。
 
 なにかがおかしい。相手がわからないという巨大な不安感が、俺の心にのしかかっていた。
 聞き込みをつづけるがやはりこれといった情報は手に入らない。

「なかなか犯人の姿がみえてこないワヌね~」

「カードは勝手には歩き回らないだろ。だれかがこのあたりに持ち込んだんだ」

 俺はそうにらんでいた。仮にそんなやつがいるとしたら、許してはおけない。

 カードショップの前を通りかかった。少年の練習相手になっていた場所だ。
 こういうところに情報はあるかもしれないと思い、なかに入って店主に話しかけようとしたときだった。

「エイト選手!」

 声をかけてきたのはあの少年だった。みちばたで見かけたときとはちがい、たのしそうな明るい表情をしていた。
 俺は一連の事件のせいで顔がこわばっていたが、なんとかやさしい調子をとりもどして言う。

「どうだった? 再戦(さいせん)の結果は」

 少年は頬をかいて、すこし申し訳なさそうにして言う。

「……まけました」

 だがその表情はどこか晴ればれとしていた。今の俺の荒れた心情からすると彼のことがうらやましいとさえ思えてきた。

「でも、すごいいい試合ができました。あとちょっとで勝てたってところまで。エイト選手のおかげで、自分のカードのことをちゃんと信じてやれるようになった。向こうもそれを認めてくれて、すこしは仲良くなれた気がします」

 そうか。そりゃよかったよ。俺がおしえたのはわずかな技術やカードの持つ可能性のことだけで、この子にもともと向上心があったからそういう風になれたのだと思う。
 少年はぺこと一礼し、

「ありがとうございました、先生!」

「先生って。仲良くなれたのはすごいな。でも俺は大したことはしてないよ。君が努力したから、カードと力をあわせることができたんだよ」

「そっかな」

 男の子はすこし照れているようだった。

「って、もうそろそろ準決勝じゃないんですか。今日の試合には出ないんですか?」

「ああ。ちょっと色々あってな」

 おそらくいまごろローグたちが試合をしているのだろう。俺のほうも体はかなり回復したので試合には出れたが、大事をとりたかったのと事件のことを優先してミジルに託した。

「決勝はでますよね」

「そうだな。……たぶんだけど」

「たぶん決勝にはワードハープのところがあがってくると思います。かなり強いですけど、災厄の事件も解決しちゃうんですから。エイト選手なら優勝できますよ!」

「……」

 俺はその言葉には答えられなかった。とにかく暗い表情をみせないように、つよがった。

「テネレモはいれるんですか? 自分、あのカード好きです! あと、ベボイとか」

「教えられるわけないだろ」

 目をかがやかせてきいてくる少年。俺は苦笑いをうかべる。

「あのききたかったんですけど、エイト選手が思う強いカードって、なんなんですか?」

 そうきかれて俺はすこし考えた。この子は最初は強いカードを教えてほしいと言っていたっけ。

「強いカード、か……」

 俺が思う強いカードの条件。いや、あるいは『強さ』そのものか。
 カードによって特徴はことなる。それは人間や生物、あらゆる物にも当てはまることだ。

「強さにもいろいろあるってことなんだろうな。単純な勝ち負けもそうだし、ムカつくやつを見返したいって気持ちを持てることだって、立派なつよさなんじゃないか?  ただ俺は……俺だったら……本当に苦しいとき、それでもまだたたかえるっていうかな。どんな逆境でもはねかえすような、そんな強さにあこがれる……かな」

 そういう受け答えになってしまったが、少年はなるほどという感じで何度かうなずいてくれた。

「エイト選手も、大会がんばってくださいね! ぜったい応援しにいきます」

「ああ」

 笑顔でわかれ、カードショップを出る。事件解決の糸口がつかめず焦っていたが、あの子と話してすこし冷静さを取り戻すことができた。

「こりゃ気合いれてがんばらないとワヌね」

 フォッシャが真面目な調子でそういう。たしかに、この事件も大会も、負けるわけにはいかない。
 必ず答えは導き出せるはずだ。必ず。


 いちど考えをまとめるために宿へともどる。
 壁に王都の地図をはりつけ、事件のあった地区を丸でかこんだり、得た情報などを横に書き込んだりしていく。

「おかしい……」

 思わずそんなことをつぶやき、唇をかむ。

「だれかが王都を混乱させようとしてるなら、俺たちはジャマなはずだよな。なのにだれも妨害してこない。いやむしろ誘い込まれてるのか」

「だれかみてる気配はないと思うワヌよ」

「……本当に犯人はいるのかな。だいたい呪いのカードなんて持ち歩いてたら、ふつう自分まで巻き込まれるよな」

「たしかに」

「なにか見落としているような……」
 
 もう頭をかかえるしかない。
 でもどうこの事態をどう説明する? カードはひとりで動いたりはしない。
 俺にこの一連の騒動を解決できるんだろうか。キゼーノがいまごろ何をしてるのか知らないが、あいつみたいに頭のキレるやつに任せるほうが良かったんじゃないか、と思う。

「わかっちゃったかもしれないワヌ!」とフォッシャが突然声をだすので俺はおどろく。

「マジで?」

「カードから足がはえてきて、トコトコ歩いたかのーせーは?」

 思わずその姿を想像してしまった。
 意外性のある発想に俺はひざから崩れそうになるが、一応は意見としてうけとっておく。

「……。ためしてみようか?」

 まどぎわにテネレモのカードを起き、距離をとってそこから離れる。入り口のドアのところに背をついて数分待つ。
 当然変化はない。

「まあそうだよな」

 俺は手をのばし、手元にカードを呼び寄せる。魔法のカードは足は生えはしないが、こうして魔法で移動させることはできる。
 まてよ。そこになにか答えへの鍵がある気がする。

「フォッシャ、俺、いまなにをした?」

「なにって? カードを手元にもどしたワヌね」

「手元に……そうだよな。魔法で……」

 つながってきそうだ。頭の中でここまでの情報をまとめる。突然3枚のカードが王都の街中に出現した。ふつうそんなことは起こらない。風に乗って飛んできたという話も足がはえて歩いたという話もきかない。
 そしてそのうちの1枚は俺たちを気絶させたあと、一瞬で姿を消した。移動したか、だれかが持ち去ったか。
 犯人がいるとしても目撃情報はなく、そもそも呪いのカードを持ち歩くこともむずかしい。

「そうか!」

 わかったぞ。ひとつの可能性。そして驚異的なまでに危険な仮定が。

「エイト、わかったワヌ!?」

「犯人は……こいつだ」

 俺がてにとったのは、キゼーノからもらった手帳。一心にページをめくり、該当(がいとう)する箇所(かしょ)をフォッシャにつきつける。

「災厄のひとつ【不幸(ふこう)の連鎖(れんさ)】。こいつは……ほかの呪いのカードを引き寄せる!!」

 俺たちがたたかっていたのは生物じゃなく、呪いのカードそのものだった。
 そう考えるとすべてのつじつまが合ってしまう。このカードがある限り、まだ呪いのカードがこの街に沸いてくる恐れがある。
 そしてこいつはまだこの王都のどこかにある。

「おもった以上にヤバくなってきたぞ……!」

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