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王総御前試合編
70 御前試合決勝戦<ファイナル>-2
しおりを挟む試合前約束どおりセンはこちらの控え室へと訪れてくれた。ノコウ、チェイスもいる。事前に話はとおっているのか二人はやや不満げな表情をしつつもこの場は抑えてくれた。
「あらハイロさん。ホープ杯以来かしら」
扇子(せんす)を手に持ち、えらそうにノコウは言う。ハイロはわずかに頭を下げて、
「あ……どうも」
「おあいにく様、またわたくしが勝ち星をあげさせていただきますわ。格の違いというものをとくとご覧あそばせ。オーホッホ」
「ハイロ、なんか言い返してやれよ」と俺がうながすと、
「えぇ……。よ、よろしくおねがいします」
あまりの彼女の礼儀正しさに、俺はずっこけそうになる。
まあノコウのペースに合わせることもないか。そうしていないのは落ち着いている証拠だ。ハイロは今日はだいじょうぶそうだな。
「おかしな動きをみせたら試合を中断してでも拘束するからな」
チェイスはこちらを威圧するように言う。あきらかにローグのことを敵視して鋭い目線をむけていた。
「ノコウ、チェイス。二人とも、勝手な言動はつつしんでくれるかな。仲間であっても、許さないよ」
センはしずかにそう言ったが、声には迫力があった。「失礼」とチェイスがせきばらいをして後退する。
打ち合わせどおりお互いのカードを裏向きのまま水鏡で調べる。
だが、なにも反応はない。
念のためプレイヤーである自分含む6人も範囲にいれて調べなおした。だが、やはり水鏡はなにもうつさない。
TRPGを無効化できる水鏡であれば擬態を見抜くこともできるはず。
「カードは……ない」
何度かまばたきしてみても同じだった。ここに呪いのカードはない。
「思い過ごし、だったのか」
「それが一番ね」
ローグが肩をすくめて言う。たしかにそれはそのとおりだが、巫女の占いははずれたのか。まだ油断はできないが少なくとも俺たちのなかには災厄のカードを持っている人間はいないことになる。
「エイト」と、センが声をかけてきた。
「ああ……。なにも、ないのかもな。思い切りやるか」
「楽しみだよ」
そこで別れ、センたちは去っていった。
「なんかエイトさん……向こうのリーダーと親しげでしたねぇ」
ハイロが目を細めていってくる。
「えっあぁ。病気をなおした件で縁があってさ」
「ふーーーーーん……」
な、なんなんだよ。そのふーんは。災厄のことはたしかに話はしたけど、こちらが不利になることはセンにはなにも言っていない。
「さあ、いきましょう。必ず優勝して、【探索】のカードを手に入れる」
ローグの言葉に、チーム全員がそれぞれうなずく。
闘技場は最高潮の盛り上がりをみせていた。集まった観衆の熱はすさまじく、大気が振動するような感覚がする。
これまでとはまったく違うボルテージだった。この超満員の闘技場の豪勢な建築は圧迫感さえ放ち、生き物のごとく普段以上に際立つようだった。
まさに[荘厳(そうごん)]。試合が始まる前から異様な、ほかにはありえない場所になっていた。
スタンドのほうにひときわ大きい声援をだしている客がいた。よくみると、ジャン・ボルテンスだった。
「負けんじゃねえぞスオウザカー! やつのスキルはたぶんコスト軽量だぞー!!」
王都にまでわざわざ見に来たのか。あいつはほんとにカード狂だな。
それにしてもコスト軽量ってほんとうなのか。ハイロの事前調査でもセンのスキルはわからなかったのに。にわかには信じがたいな。
観客席を見渡す。こんなに人がいるところで災厄の騒動が起きたらどうなるんだ。警備兵の数は多いようだが、頭数そろえればどうこうなるってもんじゃないぞ。オドの加護とやらが多少は被害を軽減してくれたりもするのかしらんが、本当にこのまま試合をやるのか?
キゼーノもこの会場のどこかにいるはずだ。
特別席には、王総と関係者たちの姿がある。そのすぐちかくには景品のカードたちが飾られている。あのなかのひとつが目当ての【探索】か。
ハイロが舞台へとあがり、センと礼を交わす。俺とローグも後に続いて進んでいく。
あたりが霧に完全に包まれれば、試合開始の合図だ。
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