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王総御前試合編
71 御前試合決勝戦<ファイナル>-3
しおりを挟む景色が変わる。霧が晴れると、俺は神殿のような神々しい建物のなかにいた。
まず合流をめざさなければ。ハイロたちと連絡をとる。
カードが宙に浮き通話がはじまる。
「なんか、神様をまつってそうな場所にいるぞ」
「天空要塞ですね……人気のある伝統的なステージです。いっけん空中戦の得意なキャラが有利にみえる場所ですが、飛び上がりすぎると要塞に打ち落とされます」
「物騒なところだな」
「ギミックも多いので、慎重にすすみましょう」
天空要塞か。名のとおり、青空と雲がすぐ近くにある。だが建物もおおく身をかくせそうだ。
俺のいる場所は見晴らしがいい。ベボイを召喚して屋根の上に浮かび上がらせ、あたりを見渡してもらう。だが仲間の姿はみえなかったらしい。
ここでは目立ちすぎる。ローグたちがすぐ近くにいないなら、移動する必要があるな。
そう考え、逃げ道も常に意識して警戒しながら進んでいく。
基本的にオドの感じで人の気配はわかるらしいが、俺はそれがほとんど使えない(超至近距離のみわかる程度)のであまり役にたたない。またハイロとローグもフォッシャミジルほどは感知の範囲は広くないらしい。なので今回も俺が下手にふたりを探しまわるより二人がこちらに来てくれるのを待ったほうが安全だ。
道からはずれたところにある屋内の施設へとはいった。このあたりなら敵もそうは寄ってこないだろう。
薄暗く洞窟のようだった。緑のツタが壁を張り巡らしている。
慎重に息をひそめていると、ベボイがなにかを察知したようだった。身構えて待ち、やがて人があらわれた。
チェイスだ。じっとしていた俺とは対照に悠然とあるいている。
俺の姿をみて敵は表情ひとつかえずにカードを取り出す。カードが放つまばゆいオドの閃光とともにウェポンカード、黒い槍を敵は手にした。
それよりも、やつが召喚しているウォリアーを見て自分の背中にひとすじの汗が流れたのがわかった。
『ミルサークルアポロンⅢ』。光類(ひかりるい)。3つほどの球体の機械がチェイスのあたりを囲むように浮いており、すでに照準をこちらに向けている。
厄介だ、激レアカードだぞ。ボード、エンシェントどちらでも評価が高い。そしてそれだけのことはある強カードだ。
対近、対遠どちらも対応できる電磁バリアによる魔法軽減防御。さらにアドバンスはあらゆる状況に活用できる攻撃を補助する射程の長いレーザー攻撃。
相性の関係もあるがテネレモ、ベボイふたりがかりでもあのカード1枚に匹敵できるかどうか。ふつうにやれば難しいだろう。工夫が必要だ。
くわえてチェイスはローグに近い戦闘力があるとまず見ていい。いきなり気の抜けない局面にはいったか。
チェイスが距離を詰めてくる前に先制しておきたい。俺はテネレモを呼び出し、ベボイを前線につけ無属性魔法をぶつける。さらにテネレモの【ドレインフラワー】を放つが、チェイスは軽々とかわして槍で弾き、さらにアポロンの電磁バリアとレーザーで種は落ちる前にすべて破壊された。
3つの角度からから放たれるレーザーさえどうにかできれば接近戦も不可能ではない。しかし電磁バリアは魔法を軽減する。故にベボイのスリップギミックでもあの相手から隙をつくりだすのは無理だろう。だがこういう不利な局面も想定して、中距離戦闘のカードも用意してある。
【ソードオブカード】さらに【ソードダンス・エアリアル<空中剣舞>】を出す。
このカードは遠隔的に自分の刀剣を操作することができる。俺は横払いざまに剣から手をはなしてチェイスに投げつけ、カードを持つ手で空(くう)を何度も切る。この動作に同じて、剣はアポロンをかいくぐってチェイスに複数の剣撃を与える。言うなれば限定的な念動力の魔法だ。ソードオブカード自体の攻撃力もあるためチェイスといえど無視はできないはず。
この隙に煙幕でもはって逃げるつもりだったが見通しは甘かった。
チェイスのスキルはローグから聞いていた。味方全体と自身の移動速度を飛躍的に向上させる【ヘブンズウィンド】。その効果は想像以上で、チェイスがスキル発動のために拳(こぶし)をにぎりしめたかと思った次のときには、槍で剣撃のすべてを受けきりながらこちらに猛突進しはじめていた。
制限があるから今の生物は大したスキルを持っていない、ごくまれにミジルやローグのような人間もいる。という認識だったが、このチェイスも環境としては天才に分類されるスキルの持ち主だったか。それとも鍛錬によって伸ばしたのか。どちらにせよここまでだとは記録映像では確認できなかった、これまでの大会中の試合ではよほど手を抜いていたらしい。
さらにアポロンの動きも早くなっており、まばたきのうちにこちらへと距離をつめてくる。
対応すべく俺はカードをかまえたがチェイスの槍の切っ先は何寸も伸びてきた。やられた、そう思ったとき、なにか見えるより早くけたたましい金属音が鳴りチェイスの攻撃がふせがれた。
目の前に立っていたのはローグだった。【狼憑き】をひきつれて高速の剣打と体さばきでアポロンとチェイスを押し返していく。
このピンチにローグが駆けつけてくれたか。反対に敵に加勢されていたらさすがに厳しかった。
ローグとチェイス二人の戦いはまさに戦闘のプロ同士のやり取りだった。2対2の攻防なのに、その激しさはまるで10数人が入り混じる乱闘のように見える。宙を舞い、何度も矛がぶつかる。
俺もカードをかまえてどうにかローグをサポートしようとしたが手を止めた。もはや戦闘がはやすぎて狙いが定まらず、なにかしてもローグにあたりかねない。
やがてチェイスとローグは洞窟の外まで移動した。綺麗な日の差す庭園のようなところにでた。二人ともこれだけやっても汗をかいていない。アポロンの力もあるので厳密ではないが驚くべきことに力は拮抗しているようだった。しかしハイロ、そして敵のノコウがここに到着したとき、ついに一撃が入った。
うけたのは、ローグのほうだった。かすっただけのようだが、腹のあたりの服が切れていた。
「腕がなまったか。……それとも私がとうとう追い越したか」
チェイスのそう言う声はどこかあかるげなのに、目はまったく笑っていなかった。
こいつはそもそも呪いのカードのことを知っていて大会に潜入したんだよな。そこまでは理解できる。だが実際こうして立ち会ってみると、あきらかにローグへの私怨に燃えているのがわかる。真剣に個人的な勝負にこだわっているんだろう。戦闘力自体は厄介だが、そこを利用すれば突き崩す術はありそうだ。
「やつのスキルヘブンズウィンドは想定していたよりずっと早く加速する。気を抜くな、ハイロ」
「さすがのローグさんも手がいっぱいのようですね。私たちでがんばりましょう!」」
ハイロは頷いてルプーリンのカードをかまえる。彼女もわかっている。センの姿がみえない。敵はノコウとチェイスのふたり、こちらはプレイヤー3人。今が好機(チャンス)だ。
ノコウはウォリアーを召喚しておらず、胸元で扇子をあおいでいるだけだった。
「カードをだしませんね。なにか狙いがあるんでしょうか」
「不用意にちかづかないほうがいいな。援護するから魔法を撃ってくれ。ローグ、チェイスは任せるぞ!」
ハイロと示し合わせ、ベボイの魔法をチェイスに放つ。と同時にローグが狼と共にチェイスとアポロンを押さえ込む。ルプーリンのアドバンス【無属性衝撃魔法:ジャキ】もノコウへと撃つ。
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