カードワールド ―異世界カードゲーム―

イサデ isadeatu

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王総御前試合編

72 御前試合決勝戦<ファイナル>-4

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 巨大な腕が出現し魔法は打ち払われた。召喚されたのは人より数倍大きい機械の精霊。背中には薄いオドの膜があり、それが鳥の翼のようにも見える。
 あえて出していなかったのはあわよくばこれでカウンターを入れようと考えていたのか。見かけ倒しじゃないこれも高価で強力なカードだ。

「『機装天使ゼラフィム』を召喚。さあ、ヴァーサスの時間ですわ」

 遠近どちらでも強いウォリアー。あんなカードがあっては数的有利もなにもない。うかつに近づけなくなったな。
 さいわいセンはまだいない。1枚1枚攻略していこう。多少無理な手でも今押し込んでおきたい。

 対策を講じつつ、まずは攻撃の形をつくろうとトリックカードをかまえる。が、それより早くチェイスがカードを切ってきた。なにかウォリアーを召喚してくる。

「早々に決めるとするか」

 チェイスがそう言って出したのは、宇宙飛行士のような奇妙な格好のウォリアーだった。分厚い防護服で全身覆われており、顔はヘルメットを装着している。その人相はよくみえないが背格好からして少年のような印象をうける。
 リモコンのようなものが先端につけられた謎の機械棒。それに本を持っている。これらの特徴で、思い当たるカードはないかと記憶をたよる。

「あのカードは!」

 すぐに気がつくと同時に、その手ごわさにどうするかを考え始めた。ハイロも気づいたようで、

「オカルトハンター……のようですね。ゴースト・妖精・悪魔にめっぽう強いカードです。特効のあるスキルを持っています」

 まずいな。ベボイとルプーリンは妖精族。あのカードの攻撃をくらったらかなりのダメージを負うぞ。

 そうしている間にも敵は攻撃をしかけてくる。こちらは近接から中距離の戦闘がのぞましいが、アポロンのレーザーとゼラフィムが手のひらから放つ衝撃弾をかいくぐって圧倒するのはむずかしく、やや不利な混戦模様となった。魔法と弾丸が飛び交うなかでもローグとチェイスは人間離れした機動で戦場を駆け巡り、互いに戦線突破を許さない。

 こちらはオカルトハンターとの兼ね合いで一気にルプーリンを真化させベボイとあわせてハンターとゼラフィムを迎え撃つ。と言っても相手は必要以上にはちかづいてこず、魔法の打ち合いが続いている。
 敵のスタイルは遠距離重視なようだ。ステージが広いのは向こうにとって好都合だろう。こちらも水園の夜城とはまったくちがう戦いをする必要がある。
 俺たちも相手の戦い方などを事前に調査するが当然それは向こうも同じ。あのオカルトハンター、そして近接戦の回避と、こちらのチームに対してかなり研究して対策を組んできたようだな。さすがはセンが率いるチームか。キゼーノ戦に総力をつかったから、ある程度見切られるのはしかたがない。

 戦線を固めて手堅くいきたいところだったが、不利な戦闘は避け隠れて隙をうかがう戦術も視野に入れておかなくてはならないだろうな。
 向こうのプレイヤーがふたりならチャンスだと思ったんだけどな。相手が強力なカードをいくつも隠しもっているのはわかってはいたがこれほどまでだとは。
 
 ハイロもうまく立ち回ってサポートしているが、ルプリアベボイの消耗がはげしい。ゼラフィムの大振りな攻撃を避けても、ハンターが距離をつめて謎の機械電波をとばしダメージを与えてくる。すこしでも気を抜いて敵の突破をゆるせば、移動の遅いテネレモは一撃で葬られるだろう。

 だが序盤からローグの黒い霧を使ったおかげで、なんとか局面は拮抗、あるいはこちらがやや不利程度に持ち込めている。
 このままいいように圧倒されてはいられない。この局面において妖精という特性は弱みであっても、特性であることに変わりはない。俺はトリック【フェアリィ・フォレスト<妖精の森>】で状況の好転を計(はか)る。辺りから木々と植物が生え、やがて辺り一帯を覆った。

 このカードは妖精を強化するだけでなく、自然の遮蔽物を増やして敵の視界をさえぎり近接戦に持ち込みやすくする狙いもある。これで一気に不利からやや有利にまで持ち込めたはずだ。

 森のなかで大乱闘が起きているすきに俺はトリック【オドにささぐ儀式】でオドコストを貯めていく。あのゼラフィムを封じ、ここで一気にたたく。
 コストの準備するのにかなり手間取った。【月光げっこう】【廃墟にひそむ怨念】【呪いの火の玉】3枚のカードをあわせ、ユニオントリック【辺境のお化け屋敷<ホーンテッドハウス>】を呼び出す。
 相手のウォリアー1枚を数分封じることができる。その間ウォリアーカードの力は下がるが妖精の森で強化してあるため心配はない。

 しかし魔法は不発に終わった。満を辞して放ったトリックは、ノコウの対応によって沈黙したらしい。俺もなにが起きたのか、彼女の姿は見えないのでわからなかった。

「甘い甘い! 小手先のわざは弱者の戦術ですわ! 強者は圧倒的なカードの火力で押しつぶすのみ!」

 ノコウの笑い声がきこえてくる。あざ笑う様子が目に浮かぶ。
 呪文を封じるカードも持ってるのか! 世界中からレアカードをかき集めたのかというくらい強いカードばかり持っていやがる。

「キゼーノを倒したのですから、あなた方の力量は認めましょう。ですがけっきょくは、熟練のプレイヤー同士の戦いではどちらがその環境においてより強いカードを持っているか。そこで勝敗はきまるものでございますわ」

 言い返したいところだが、たしかにノコウの対応は見事だった。同じトリックは2度までしか使えない。やつはなんらかの方法で危険を察知して的確に妖精の森ではなくユニオントリックのほうを封じた。
 ハイロに一度勝っただけのことはある優れたカード勘だ。

 それにしてもさっきの呪文封じはどうやったんだ。この木々にはばまれて俺がノコウの姿を確認できていなかったように、ノコウから俺がカードを使うのは見えていなかったはず。
 なんらかの方法で敵はこちらを見ているんだ。姿はみえないが確実にそうだとしか考えられない。

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